月風穂

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【1つだけ】

「この中で1つだけ人生を選べ。」
そう言われて私はこの世に生を受けたのであろうか。
私は日頃から運命はすでに決まっている説を唱えている。
ついぞ芦田愛菜ちゃんも同様のことを語っており、私の考えは随分と“高尚”なのだなと感じたほどであった。
つまり決まりきった人生を私は歩んでいる。

明日何をしようかなど私の意思が存在しているようで、それはすでに決まった一手なのである。
私が今にもこうして“私は生きている価値があるのだろうか”と悲壮の意に煩悶としていることすらも、既に決められていることなのだ。
ただひたすらに生を享受しているが、何の考えもなくダラダラと日々を消費している私は、なぜ今の人生を選んだのだろう。
もっと愉快で、快活で、世の中の価値そのものである生き方を選ぶべきだったのに。


ある一定の時間を越すと、この考えは打ち消される。
人とは何とも間抜けである。
ただぐるぐると同じ思考を反芻することに意味はないが、私はこの無意味な脳の運動に踊らされている。
「はぁ、苦しみのないところに行きたいな。」と呟くも、苦しみのないところは脳の機能が停止した先、つまりは死を意味する。
死にたくはないので瞑想を試みるが、脳は快活にマイナス思考を呼び起こす。
私の脳は賢くないのにどうやら心配性であるようだ。
瞑想でこの脳の運動を止めることができればどれほど幸福だろう。
脳みそごと誰かと取り替えてやりたい具合である。

くどくどと書き記したが、私は私であり、馬鹿みたいな劣等感すらも抱えて生きねばならぬのだ。
自分のことだけを考えて生きていられない今時分であるから、己の自己中心さにあきれ、他人への関心のなさに辟易とする。
それでも生きていられるのだから、有り難く生を全うでもする次第である。

4/3/2024, 12:23:57 PM