『麦わら帽子』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
麦わら帽子
夏の帽子
麦わら帽子
麦わら帽子をおしゃれにかぶれる人は
素敵な高原のお姉さんのイメージ
そんな素敵な品のある女性になりたくて
私は麦わら帽子を買ってかぶっている
トトロのめいちゃんにしかならないけれど
それでも満足です
あなたのおかげで夏を満喫しています
「せっかくの夏休みだし、夏っぽいことしたいよね。」
カンカンに照る太陽の下、僕たちは自転車で海へ向かった。
「やっぱり帽子をかぶってきて正解だったよ。」
向日葵みたいな眩しい笑顔の君が言った。
ワンピースに麦わら帽子なんて、そんな見なれない姿に緊張してしまって上手く喋れなかった。
麦わら帽子
夏の日差しがキツくなった最近
新調した麦わら帽子被ってお出かけ
風を通す涼しさ心地よく爽やかになれる
夏にしか使わないけど、
年を重ねていい味出すのかな
ホテルの部屋に着いて、真っ先に奥のベッドへと走り込む愛弟子。
私は床に落ちた麦わら帽子を拾い、テーブルの上に置いた。
「先生、どっちのベッドが良いですか!?」
「特にこだわりはないので、君の好きに選んでください」
「じゃあ私はこっち!」
我が生徒は窓際のベッドを選んだ。
私は先程コンビニで買ってきた弁当をテーブルに広げた。
「さ、ご飯にしましょう。はやくお風呂に入りたいですし」
「はい!」
素直にソファへと腰掛けた彼は、海鮮丼を手に取った。
パクパクと非常に美味しそうに頬張るこの子を見ていると、心が満たされる。つい夢中になってしまったからか、先に食べ終えたのは小さなこの子のほうだった。
「ごちそうさまでした!」
「はい、お粗末様。お風呂、先にどうぞ」
「……」
彼は浴室のほうに目を向けたものの、動こうとしない。
「どうかしましたか?」
「んー、先生……一緒に入らないんですか?」
私は危うくお茶を噴き出すところだった。
「いや、君はもう6年生なんだから、ひとりで入れるでしょう」
「それはそうですけど、せっかくの旅行だし……修学旅行ではみんな一緒に入るんでしょ?」
「それは大浴場だから」
「じゃあ一緒に大浴場行きましょう!」
なぜそこまでして一緒に入りたいのか。いくら私を好いているからといって、少し大胆過ぎないか。それとも、子どもらしく純粋な気持ちなのか?
私は悩んだが、なんとか丁重にお断りすることに成功した。
しかし彼は拗ねてしまい、私が風呂から上がった後も機嫌は直っていなかった。髪も乾かさず、窓際のベッドの縁に座ってスマホをいじっている。
「髪、濡れたままでは風邪を引きますよ」
「大丈夫です。子どもは風の子ですから」
微妙に意味が違うような。
私は軽くため息をついて、ドライヤーをセットした。
「ほら、乾かしてあげますから、こっちにおいで」
「むっ……」
彼は一瞬嬉しそうな顔をした後、またすぐにそっぽを向いた。
「い、いいです!」
「よくありません。風邪を引かせて帰したら、私がお父様に怒られてしまいます」
「……!」
未だ頬を膨らませたままではあるが、大人しくソファへと移動してくれた。
彼の長くコシのある髪を丁寧に乾かす。私と出会った頃から伸ばしている様子で、理由を聞いても教えてくれないのだ。
ようやく充分に乾いた頃、私のほうの髪はほぼ自然乾燥していた。
「センセイ、アリガト……」
拗ねていても御礼の言葉を忘れないあたり、本当に良い子育てをされてきたのだなと実感する。
「どういたしまして」
「……先生」
「何でしょう」
「先生は、私が子どもだから……」
「……うん?」
「……いえ、何でもないです」
彼は悲しげな表情を浮かべて、自分のベッドに寝転がった。その元気のなさは、日中と比較してしまうと恐ろしいほどだ。
私は少し考えて、彼のベッドに腰掛けた。
「私は君を大切に思っています」
「……わかってます」
「それはよかった。では、その理由もわかってくれていますか?」
「え、えっと……生徒だから?」
「違います」
彼が振り返る気配がした。
「君が、とても魅力的な人間だからです」
「魅力的?」
「はい。私は君が思うほど出来た人間ではありません。『生徒だから』とか『子どもだから』というだけの理由で、無条件に好きにはなれません」
「先生、私のこと好きなんですか?」
「大好きですよ」
間髪入れずに答えたのが効いたのか、喉を鳴らす音が聞こえた。
「で、でも、私の好きとは違うんでしょう?」
「そう思いますか?」
私は振り返って彼の顔を見つめた。もちもちのほっぺたがほんのり紅く染まっている。
「先生、私は、先生のこと、その、キ、キスとかしたいくらい好きです……!」
目を瞑って一生懸命に言葉を紡ぐ姿。まったくいじらしい子だ。
私はそんな彼の額にご褒美を落とした。
びっくりして目を開けた彼が息を吸うよりはやく、私は壁際のベッドへ移動した。
「さて、寝ましょうか」
「せ、先生! 先生も私のこと」
「駄目ですよ、煌時くん」
急に名前を呼ばれて息をのむ生徒。
「答え合わせは、君が大人になるまで禁止です」
玄関の扉を開けた途端、父から強烈な抱擁を受けた息子は「ぐえっ」と呻いた。
何か問題はなかったかと聞かれ、すんなり何もないと答えた私とは裏腹に、動揺する彼。ほんの短い時間ではあったが、父親が気がつくには充分すぎた。
麦わら帽子を両手で掴み、更に深くかぶって自室へと駆け込んでいったあの子。見送った父親が、次の瞬間には私を鬼の形相で睨んだことは言うまでもない。
テーマ「麦わら帽子」
『麦わら帽子」
母さんからは
「出かけるんなら、被っときなさい。今日も暑いんだから」って言われてたけど、
正直、あんまり気が進まなかったの。
だって今日のスカートには絶対似合わないし、
セットした髪だって崩れちゃう。
だから、カバンの底に押し込んで、
仕舞っておこうかとも思ったんだけど、
待ち合わせに現れた君の笑顔を見た途端、
思わず被ってしまったわ。
あんまり眩しかったんだもの。
麦わら帽子が似合う女の子になりたかった。
どんな服も似合う顔ではあると思っている。
ただ性格が伴わないってだけ。
鍔の広い麦わら帽子を被って涼しげなワンピースを着た
清楚な雰囲気の漂う黒髪ロングの女の子。
そんなの嫌いな人いる??羨ましすぎるよ。
どうやったら女の子らしい性格になれるのか???
麦わら帽子といえば夏、青い空、強い日差し、そして数え切れないほどのヒマワリ。
その中で麦わら帽子をかぶる人たちのショーが始まる。
アロハシャツとサングラスでキメてる人もいれば、白いワンピースで王道をゆく人もいる。
子どもがカブトムシを持って夏休みを満喫する自分を演出しているさまも面白い。
向こうでは農具を持って農作業スタイル。
麦わら帽子のつばを片手でつまんで不敵に笑う、クールなポーズの人もいる。
そして、椅子とビニールプールも用意して、さながら金魚すくいの店の人というのもなかなかいいセンス。
麦わら帽子で色々な演出ができるものなんだなあ。
『麦藁帽子』 / 西条八十
母さん、ぼくのあの帽子どうしたでせうね? ええ、夏、碓氷(うすい)から霧積(きりづみ)へいくみちで、 渓谷(たにぞこ)へ落としたあの麦藁帽子ですよ。 母さん、あれは好きな帽子でしたよ。 ぼくはあのときずいぶんくやしかった。 だけど、いきなり風が吹いてきたもんだから。
母さん、あのとき向こふから若い薬売りが来ましたっけね。 紺の脚絆に手甲をした。 そして拾はうとしてずいぶん骨折ってくれましたっけね。 だけどたうたうだめだった。 なにしろ深い谷で、それに草が背丈ぐらい伸びていたんですもの。
母さん、ほんとにあの帽子どうなったでせう? そのとき旁で咲いていた車百合の花は、もう枯れちゃったでせうね、 そして、秋には、灰色の霧があの丘をこめ、 あの帽子の下で毎晩きりぎりすが啼いたかもしれませんよ。
母さん、そしてきっといまごろは 今晩あたりは、あの谷間に、静かに雪が降りつもっているでせう。 昔、つやつや光ったあの伊太利麦の帽子と その裏にぼくが書いたY・Sといふ頭文字を埋めるやうに、静かに寂しく。
麦わら帽子
こんなの全員“ルフィ”って書くんじゃないでしょうか。だから私はあえて“ルフィ”とは書きません。
ええ、お題が麦わら帽子だから“ルフィ”なんて、いくら何でも安直過ぎるでしょう。
だいたい、いい歳した女が麦わら帽子と聞いてすぐ“ルフィ”を思い付くなんて、あり得ませんよ。あり得ない。
“ルフィって絶対書く人いるよね?”とか、こちらのアプリを立ち上げた管理人さんに言われたくないですし。
“ルフィ”とか“ワン”とか“ピース”とか書いたら、管理人さんの思うツボですからね。
書きませんよ、絶対。
これを見てくださるあなた様も、たまたま通りすがったどちら様も“ルフィ”とか“ワン”とか“ピース”とは書かないようにしてくださいね。
約束しましたからね。
書かない女に私はなるend
帽子は苦手
小さいときに、母に買ってもらった気に入りの麦わら帽子。
いつものバスに乗っていたら、開いていた窓から風で飛ばされて、田んぼの方へいってしまった。
バスはいつも通り走り続け、涙だけが停滞していた。
麦わら帽子
思い浮かぶのはやはり夏。それか海賊王を目指す彼。
青い空広がるひまわり畑。青い海集う彼と仲間たち。
【麦わら帽子】
小学5年の冬頃、、だったと思う。ちょっと寒かったから。
珍しく早く起きた朝。
朝ごはんそっちのけでテレビを見ているお父さんに近寄り、何を見ているのかと画面に目を向ける。
『、、、何これ?』
初めて見た時、正直面白くなさそうだなって思った。
でもアニメが好きだったから、これを機に見てみるのも悪くないなぁって思った。
幸いアマプラにあったそれは、一気に私を虜にさせた。
最初は途中から見始めると言うオタクの風上にも置けない行為をしていた。
でも、第一シーズンから見始めた時には鳥肌が立ちっぱなしだった。
感動シーンも面白シーンも満載で、いつしかそれは私の心の支えになっていた。
もうすぐで完結だけど、私はずっと推し続ける。
出会わせてくれてありがとう。
これからも感動と笑顔を届けてください。
今でもONE PIECEは、私の心のプロテインだ。
『麦わら帽子』
燦々と照りつける太陽。
麦わら帽子から透けて見える
日光と君の笑顔。
大丈夫、とっても可愛いよ。
上京の荷物の中から覚えのない麦わら帽子を発見したのは、引越しの翌日の昼ごろだった。
春から東京の大学に通うことが決まり、一人暮らしをすると母親に告げた時は、あそう、がんばって。という淡白な返事だった。引越しの荷造りは一人で進めた。その時に麦わら帽子が紛れ込んだわけがない。じゃあ母親が入れたのだろうか。多分そうだ。なんのために?小さめのダンボールに居座る麦わら帽子を見つめていると、大きめの傷を発見した。
これは…!オレが5歳の時、つけた傷?確か木登りしてて足を踏み外し、小枝が引っかかってできた傷だ。これを皮切りに懐かしい田舎の風景がいくつも思い出される。麦わら帽子が大好きだった幼き日のオレの感動と共に。母親がオレに、東京に染まるなと言いたいのかもしれないと思った。素直な心を忘れるな、かもしれない。確かなのは、オレがちょっとだけ嬉しかったことだ。
電車が終点に到着して、旅行中の恋人たちがゆっくりとホームに降りる。そこに広がるのは青い空。漂う潮の香りが鼻をくすぐった。
「うわぁ!!」
「いいところでしょ?」
「はいっ!」
愛らしい恋人の満面の笑みを見る青年は口角が上がる。以前、職場の仲間たちと来た時、とても楽しかったこの場所に、彼女を連れてきたかったのだ。
「日差しが眩しいですね」
「そうだね。でも、晴れてよかった」
朝から電車に揺られて陽も天に昇りきった頃合で、その陽射しは強く痛みを覚える。
青年は自分の鞄から折りたたみができる麦わら帽子を取り出して、彼女の頭に被せた。
「わ!?」
「被って、日焼けしちゃう」
彼女は驚きつつも、柔らかく微笑んだ。
「ありがとうございます」
「どういたしまして」
この麦わら帽子は、彼女へのプレゼントに用意したものだった。頭の調節しやすい太めの紐はリボンに見える。その紐はふたりが好きな夏の時によく見る爽やかな空の色。
色素の薄い肌の彼女が、日焼けしないようにと青年が選んだ。
照れつつ嬉しそうに微笑む彼女を見ていると、青年は嬉しさが込み上げてくる。
絶対、君に似合うと思ったんだ。
おわり
お題:麦わら帽子
さて、今朝書いた文章(終点)は、常総線の中での出来事を書いただけで終わってしまった。
その文章も改めてこちらに載せた方が、親切なのだろうか。けれど、あちらも長いからなぁ…。
うーん…。
長くて読み辛いかもしれないけれど、ちょっと一応こちらにも置いておきますね。
その為今回は「終点」と「麦わら帽子」のテーマで、一つの文章となっています。
いつもとは違う作りですが、夏休みの番外編と思ってもらえれば幸いです。
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母親と行く親子二人旅。
車のない我が家は、電車旅が多い。
母親も私も、乗り鉄や撮り鉄ではないが、電車に乗ることは好きな方だ。
人生の中で一度は乗ってみたいと言い続けていたSLに今回とうとう乗ることになった。
SLの発車駅「下館駅」に向かうには、つくばエクスプレスの「守谷駅」から関東鉄道常総線へ乗り換え、「水街道駅」にて再度乗り換えが必要となる。
常総線「守谷駅」のプラットフォームにいると、母親が面白いことに気がついた。
通常、駅のアナウンスは「電車」という言葉を使うが「列車」という言葉を使っているという。
耳をすましアナウンスに注意を向けると、確かに「列車」と言っている。
プラットフォームに入ってきた車体を見て、納得した。
2両編成の車両の上部には、パンタグラフが付いていない。
調べてみると「ディーゼル」を使用した「気動車」と出てきた。
普段乗らない列車に乗るだけで、旅の気分は格段にあがっていく。
「下館」行きと書かれた列車に乗車したのだが、三駅先の「水街道駅」で乗り換えが必要だという。
通常、行き先の電車に乗れば、乗り換えは必要ないはすなのだが。路線ルールなのだろうか。とても不思議な感じがした。
「水街道駅」にて乗り換えをし、今度は一両編成で終点の「下館駅」へと向かう。
田畑が目立つ長閑な景色を列車は行く。
途中途中に止まる小ぢんまりとした駅も、味があって良い。
旅の気分を味わっていると、田園と筑波山の雄大な姿が織りなす、見事な景色が車窓に広がった。
薄黄緑。緑。時折、黄金色。
稲穂が風に吹かれている。
その光景を見て、思わず「あっ」と声を上げた。
一人散歩の時の景色が頭の中に広がっていく。
思い出の中の景色は、目の前の広大な景色よりも小ぢんまりとしたものだったが、記憶の彼方に置き去りにされていた、中学生の時の言葉が蘇ってきた。
「山が見えたら、もっと素敵なのに」
生きていると不思議な事はある。
つい最近懐かしいと思い出していた光景の、理想の光景が目の前に広がっている。
このタイミングで忘れていた言葉を思い出すだなんて。
まるでこうなることが、初めから決まっていたかのような。まるで、運命のような。
車窓の奥では、筑波山に見守られる稲穂が、そよそよ風に揺れている。
その光景を観ていると、滾々と感情が湧いてきて、体の隅々にまで行き渡っていくのを感じた。
透明で清らかなものに満たされていく心が、ふるふると揺れ琴線に触れはじめる。
過去。現在。全てに共鳴しあった心が、ハーモニーを生み出していく。
穏やかでどこまでも優しいその音に、鼻の奥がツンとする。
鼻を啜りはじめた私に、母親が「アレルギー?」と心配そうに聞いてくる。
違う。違うよ。
心が溢れて零れそうなんだ。
そう伝えたかったけど、言葉にならなかった。
終点の下館駅に着くまで、私の心は共鳴の音を奏で続けていた。
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真岡鉄道は、茨城県の下館駅と栃木県の茂木駅を結ぶ、全長41.9キロの路線だ。
SLは、9月と10月を除く土日に運行している。※一部例外がある為、乗る際は要事前チェック
SL発車時刻の1時間前に着くようにしたのだが、SLのプラットフォームにはすでに人が居る。
家族連れ。カップル。撮り鉄の方だろうか、立派なカメラを持った人もちらほら。
皆、何故かプラットフォームの前あたりで待機している。
プラットフォーム後方のベンチに座りながら「皆さん早くから居るんだなぁ」と感心していると、踏切が鳴りだした。
ガタゴトと車輪の音を響かせプラットフォームに入ってきたのは、SL真岡の回送・補助をするDE10 1535。赤いガッチリとした車体は、ラガーマンのように頼もしい。
力強い走行に見惚れていると、その後ろに茶色い客車が3両と黒光りする車体の後ろ姿が見えた。SL真岡。主役のご登場だ。
車輪の回転音に混じって、蒸気を吐き出すシューッと言う鋭い音がする。
ブレーキと共に重たい金属音が、ガチャンと響いた。
ラガーマンの様な赤い車体を写真に収め、人だかりのある前方へと向かう。
これまでSLは博物館などで見たことがあるのだが、現役のSLを見るのはこれが初めてだ。
人の邪魔にならないよう後ろの方から、SL真岡をそっと伺った。
漆黒の重厚な車体は、まるでスチームパンクの世界から抜け出してきた乗り物のように見える。その一方で、歴戦の戦士といった貫禄も滲み出ている。
非常に格好良い。
つい何枚も写真を撮ってしまった。
車体待機の間、汽笛の音と黒煙を吐き出す姿を堪能出来るので、早い時間に行くのはおすすめだ。
SL真岡の車内は、緑色のボックス席とロングシートの2種類がある。天井には細い蛍光灯と古い型の扇風機があり、荷物を載せる網棚は金属製というレトロ感満載な作りをしている。
ボックス席に座ることが出来たので、ここでも写真をいっぱい撮ってしまった。
午前10時35分。
汽笛が鳴り、車体がゆっくりと動き始めた。
シュッシュッと言う音に、ガタンゴトンと重いジョイント音も響く。
窓の外では、黒煙がスーッと流れていく。
電車では決して見られない光景だ。
SL真岡には扇風機以外の冷房がない為、乗客の多くは窓を開けている。
その窓から、黒煙が入り込むからだろうか、車内は不思議な香りがする。
木が燃えた時とも、炭の香りとも違う。
これまで、体験したことがない香りだった。
車内で読もうと、銀河鉄道の夜を用意していたのだが、読もうとして驚いた。
表紙がザラザラとしている。
どうやら窓から入り込んだ煤がついてしまったらしい。
これまた電車ではあり得ない経験だ。
本を読むのではなく、SLを堪能しなさいという事だろう。
内心感動しながら鞄の中に本をしまい、SLに身を任せることにした。
SLが走るリズムは、電車のリズムとは異なる。
通常の電車は、ガタンゴトン…ガタンゴトン…とリズミカルだが、SLはガタンゴトトン、ガタン。人のことをとやかく言えないが、意外とリズム音痴だ。
けれどそれがまた、味があると感じるのだからSLというのは不思議である。
…もしかしたら、贔屓が過ぎるのかもしれないが。
SLに乗っていると、手を振る人たちとよく出会う。
麦わら帽子を被った小さな子だけでなく、バスの運転手さんやカフェの店員さん。道を行く人や自家用車に乗る人たち。
皆がニコニコしながら手を振っている。
そういう人たちを見かけるたびに、私も母もそっと手を振り返した。
とても平和な光景だと思う。
その一方で、よく考えると不思議な光景だとも思う。
SLに向かって、或いは、SLの乗客に向かって、何故人は手を振るのだろう。
何故、手を振り合うと、こんなにも心がほっこりとするのだろう。
心理学の中には、ミラーリングという行為がある。
人の行動を真似することによって「共感」が生まれ好意などを抱くという効果があるが、それとも違う気がする。
もっと、人の奥底にある温かさの根源に繋がっているような──。
笑顔で手を振り返す人が、こんなにもいるのだと思うと、自分の人生も捨てたものではないなぁとしみじみと感じた。
沢山の初体験をしたSL旅の一部を文章で綴ってみたが、綴りながらも良い体験をしてきたなと心から思う。
また、こういう旅が出来ることを願いつつ。
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最後まで読んでくださりありがとうございます。
少しでも楽しんでいただけたら幸いです。
向日葵畑の真ん中で僕があげた麦わら帽子をかぶり
「私に似合う?」と笑う君
そんな君を撮る僕
少しジメッとしたあの夏から20数年
棚に置かれた若き写真を眺めている僕の隣で寝ている君はあの時と変わらない笑顔を僕に向けている
あの帽子は娘にあげたらしく、君と同じように気に入ってるみたい
麦わら帽子をかぶった娘は世界で2番目に可愛い
いつまで経っても世界一可愛くて綺麗な君
嗚呼、やはり貴女は狡い人だ
そんな貴女に惚れ込んだ僕も大概かな
『麦わら帽子』
「くぅ!やられたぁぁぁ」
麦わら帽子を被った息子にパンチされ
床に倒れて伸されたふり……
「おれは海賊王になる!」
フンッと鼻息
ふんぞり返った息子が去ると
「ちょっとアナター!
ビールは夜までお預けって言わなかった!?」
大根役者の俺は妻に現行犯逮捕
手渡された麦わら帽子と軍手
真夏の炎天下で庭掃除
当然ながら
夕方には演技なしで床に沈没だ
#麦わら帽子
うっすらと汗をかきながら目覚める朝
幼なじみと目を擦りながら行くラジオ体操
セミの合唱の中自転車で森を走り抜け
いつもの市民プールでくたくたになるまで泳ぐ
そうめん、麦茶、スイカ
扇風機の前で少しだけ眠る
母に言われた通り麦わら帽子を被って公園へ
虫取り、ボール遊び、上の学年の子から聞くちょっと怖い話
日が沈んできたら迎えに来てくれる母がいた
普遍的な夏を過ごしたあの日の麦わら帽子の少女。
帽子の顎紐のゴムをパチンパチンとのばしながら、
ヒリヒリする日焼けの後を気にして過ごした日々。
あ また来ないかな?
い どうだろ
あ 何かやりとりがさ
い 命がけだったけどね
あ 向こうだって精一杯で
い もう、こんなとこまでは
あ ま、な
い 憧れみたいな…
あ 向こうもうちらも、な
『麦わら帽子』