『香水』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
あの子の匂いがした。
俺は今、とある高層ビルの最上階にいる。
何故、と聞かれると思うが、まあ聞いて欲しい。
数年前、俺には彼女がいた。
その彼女は五年ほど付き合っていて、よく俺の家に泊まりにきていた。
だが、その彼女が急に泊まりに来なくなった。
俺がその彼女の浮気を疑っていた頃、
彼女が既婚者だったということが判明した。
判明した原因は、その彼女の夫を名乗る人物が弁護士と共に家を訪ねてきたからだ。
彼女が既婚者だったと知らなかった俺にとっては目から鱗のようなことだったが、相手方からするとよくあることだったらしい。
手慣れた様子で弁護士との話を進めていた彼女の夫は、
「俺には慰謝料等を請求しないが、その代わり裁判で証言してほしい。」
と言ってきた。
ショックで殆ど放心状態だった俺は、証言台に立つ約束をし、一度帰ってもらった。
その後数回の打ち合わせを挟み、俺は証言台に立った。
その頃には、もう既に彼女に対して怒りしか湧いていなかったので、
救いを求めて俺に対して何かを叫ぶ彼女は無視して、証言を続けて、彼女から慰謝料をもらうことになった。
その出来事から数年後、俺はここ最近の不景気によるリストラ祭りの被害を受け、会社を辞めていた。
幸いなのかどうかはわからないが、数年前に彼女から搾り取った金があったので、今は就職活動しながら細々と暮らしている。
ある日、就職活動の帰り道に、街中にあるには不自然なものを見つけた。
かなりの長さの紐?だ。
その紐は赤い色をしており、近くの高層ビルの最上階にまで続いているようだ。
何かの訓練だろうか?そう思ったが、本当にそうなら誰かがこの場所を見ていなければいけないのでは無いかと思ったので、除外した。
まあその時はそんなに気にしていなかった。
すれ違う人に驚いて振り返る。君とは違う長い髪に、痛くなるからと履かなかったヒール。全然似てないね。なのに、この香りを感じる度に君の事ばかり思い出すんだ。ずっとずっと、後悔ばかり。
『香水』
周囲を威圧するように
香水を纏うあのひと
自分だけの安心真空地帯
香水は あのひとの こころの なみだ
なのだ
〘香水〙
どこからか緑の香りただよいて心ほころぶ始まりの朝
(あれ…この匂い…)
大好きだったあの人がつけてた香水の匂いがした。
ハッと振り返る。
数年前突然消えてしまったあの人の匂い。
大好きで安心して落ち着くあの匂い。
振り返るとそこにはいなくなったあの人が手を広げて待っていた。
カーテンから差し込む日が、がらんどうの部屋を照らしだす。
昨日までいた君は、もういない。
窓から吹き付ける風が少し埃くさい。
煙草と香水の匂いが、シーツに残る。
その残り香だけが、君がいた証拠だ。
「アレか。『別に君を求めてないけど』か?何か思い出すのか?」
よほど日常的に愛用してるヤツでもなけりゃ、香水、意外と余りがち説。
某所在住物書きは「香水」をネット検索しながら、アロマオイルやルームフレグランスとしての香水活用術を見つけ、軽く興味を示した。
「個人的に、『この店の「この香り」を、香水でもルームフレグランスでも良いから、持ち帰りたい』って、たまにあるわ。例として無印良◯とか」
あと内容物要らないから、香水の容器だけ欲しいとかな。物書きは付け足し、未知のサプリに行き着いた。
「……『食べる香水』と『飲む香水』?」
――――――
8月27日投稿分から続く、ありふれた失恋話。
雪国出身の若者が東京で初めての恋に落ち、その恋人にSNSでズッタズタに心を壊され、
ゆえに居住区も職場もスマホの番号も、恋人に繋がる「一切」を変えて、逃げ続けた筈の約8年。
若者は今の名字を藤森と、恋人は元カレ・元カノの安直ネーミングで加元という。
散々ディスり、なじり倒したのだから、藤森のことなど放っておけば良いものを。
己の所有物に対する理想と執着の強い加元は、無断で姿を消したアクセサリーを探し続け、
とうとう前々回、藤森の職場にたどり着いた。
『藤森は今回も「一切」の連絡手段を断ち、この区から居なくなってしまうかもしれない』
長年仕事を共にしてきた後輩がアレコレ考え、実行に移したところで、今回の物語のはじまりはじまり。
――「いっぱい考えたの」
加元に住所まで特定されぬよう、藤森が一時的に身を寄せている親友の一軒家、その一室。
「加元さん追っ払えたら、先輩逃げる必要無いかなとか。魔除けアイテム買ったら安心するかなとか」
藤森の部屋から唯一の花を、その底面給水鉢を救出し、届けに来た後輩。
ガラスの小瓶を置いたテーブルをはさみ、向かい合って座っている。
「でも、私は先輩がつらい今グイグイ干渉しまくってるけど、先輩は、私がつらかった3月18日頃、干渉しないで、ただ私の話、聞き続けてくれたよねって」
だから、これだけ買ってきたの。後輩はテーブルの小瓶を右手で取って、左手の甲に近づけた。
「……リラックス効果がある香水だって。先輩、今絶対苦しいから、先輩の好きな花とか草とかの香りがあれば、ちょっとは、落ち着けるかなと思って。
すごくいい香りなの。良かったら、不安になった時使ってみて」
しゅっ、しゅっ。
手の甲に拭き付いた香りは、2種類程度のスッキリしたフローラルかシトラスをまとい、ひとつの確固たるメインとして木の香りが据えられている。
それは藤森が昔々よく嗅いだ、故郷の木の香り。
ヒノキ科アスナロ属、日本固有種「ヒバ」、すなわちアスナロの優しさであった。
「懐かしい」
加齢と過度なストレスで涙腺の緩くなった30代。ひとすじ涙を落として、藤森が呟いた。
「あの公園の、遊歩道の香りだ」
花咲く空き地、草木生い茂る森、水路きらめく田んぼと畑。それらをただ愛し、駆け抜けた時代。
都会の荒波も地方との速度の違いも知らず、SNSで陰口を投ずる仕組みも分からず、それらと出会うことすらなかった過去の雪国の田舎町。
それらの、なんと善良で、崇高で、美しいことか。
「いつか、連れてってよ」
小瓶を両手で受け取り、じっと見つめる藤森に、後輩が言った。
「加元さんの一件が全部片付いたら。加元さんが嫌って先輩が愛して、私が知らない先輩の故郷に。1日だけで良いから、連れてって」
藤森はただ目を閉じ、頷くことも、首を横に振ることもしない。
それが何を意味するか、後輩には分からなかったが、
せめて己の購入してきた香水が、心に傷負った先輩に、少しでも寄り添ってくれることを願った。
#香水
贈る文香りをつけて届くかな君が私を忘れない様
独り寝に思い出してねこの香りいつでもそばに居るから私
古今集より
五月待つ花橘の香をかげば袖ぞ昔の人の香ぞする
香水の香りを嗅ぐと昔好きだった人のことを思い出す
って聞いて、
相手に私のことを思い出して欲しいと願って、人生で2種類だけ香水を持ったことがある。
1つは当時付き合ってた人が買ってくれた、彼の好きな香り。
私には甘ったるすぎて合わないと思いながら、その人に染まろうとつけていた。
でも別れてから、私が香りを嗅ぐ度に相手のことを思い出してしまって辛くて、ルームフレグランスとして早めに昇華させた。
2つめは好きになりかけてた人を振り向かせようと私自身で選んだ香水。
結局その恋愛はすぐ終わりとなった。
未練も残らなかったせいか、私が好きな香りのせいか、不思議と辛さは残らなかった。
だから今も使っている。
香水は選び方1つ、思い出1つで
私までもが振り回されてしまうのだと思う。
そのくらい強烈に残りかねない。
🐚『忘れ物』
入道雲に乗って
夏休みは行ってしまった
さよならのかわりに
素晴らしい夕立をふりまいて
今日 空は真っ青
木々の葉っぱの一枚一枚に太陽が
新しいあいさつをかわしている
だが君 夏休みよ
もう一度戻ってこないかな
忘れ物をとりにさ
迷子のセミ
さびしそうな麦わら帽子
そして僕の耳の奥でいつまでも
鳴りやまない波の音
高田敏子✨
🐚🫧🐚🫧🐚🫧🐚🫧🐚🫧🐚
#香水
空中にワンプッシュ。部屋に広がる香りを胸一杯吸い込んで顔をしかめる。
「ちょっと違うんだよなあ」
求めているのは、もっと刺激的でセクシーな香りだ。似ているけど足りない。完成するにはひとつの香りが欠けている。
身軽になったあの人は別の魅惑的な香りを身に付けて次の人を口説いてるのかな。やっぱり「気に入ってくれたなら、一生これ使うよ」なんて、嘘ばっかり。
唯一手元に残った香水瓶を揺らすと、半分満たない液体がちゃぷんと踊った。
【瓶詰めされたラストノート】
「香水がいいな」
あなたにリクエストした誕生日プレゼント。
少し 困り顔が 理解出来なかったの。
選んでくれたのは
華やかでいて どこか懐かしい感じのする
フローラルな香水。
「君のイメージにぴったりだよ」
とてもとても嬉しかったけれど
その後気づいた 私の過ち。
あなたと一緒にいる時に 香水は付けられない。
私イメージの香水は いつしか あなたのイメージに。
あなたのいない週末に
私は ひとり あなたの香りに包まれる。
#香水
#64 香水
「いい香りね」
誰にともなく呟いてしまった、仕事の帰り道。
今年の夏は暑すぎて、
エアコンの効いた社内の空気すらも汗ばんでいるように感じる。
人のにおいは苦手。
リフレッシュにと思い、寄ったのは香水屋さん。
爽やかなシトラス。
華やかなフローラル。
目の醒めるようなウッディ。
甘いバニラ。
どれも素敵。だけど…
(自分につけても分からなくなっちゃうんだよね)
自分で分かる程に香る場合、香水をつけ過ぎているので注意、ということは。
つまり自分で香りを楽しむものではないんだろう。
他人へのアピール、フェロモンのような。
(そうじゃないんだよなぁ)
冷やかしになってしまって申し訳ないと思いつつ、
電車に乗るため、店を出た。
---
香りから自分自身に対して効能を得ようとするアロマとは目的が違うんだよなぁ、ということで。
何気なく立ち寄ったアンティークショップ。
私はそこで綺麗な香水の瓶を見つけた。中身はまだ残っている。
試しにほんの少しだけ手の甲にかけてみる。
鼻を近づけるが、何の香りもしない。
不思議に思っていると、店長がぼそりと呟いた。
「その香水は自分以外の人にかけるものだ。その人にとって最も幸せな記憶に結び付いた香りがする。香水を使用したものにしか香りはわからないがね」
まるで都市伝説のようだなぁと思いつつ、私は興味をひかれて香水を購入した。
試しに、学生時代の友人の手に香水をかけてみる。
友人は首を傾げていたが、私にはシャンプーのような香りがした。
この香りには覚えがある。もう亡くなってしまった、彼女の愛犬の匂いだ。
店主の話はどうやら本当らしい。
それから、私の毎日にちょっとした悪戯が加わった。友人や職場の人にそっと香水をかけてみるのだ。
家の独特の匂い(実家かな?)、高級な香水の匂い(彼氏からのプレゼントかな?)、美味しそうなトマトソースの匂い(レストランかな?それとも手作り?)…。
その人の大切な思い出を勝手に覗き見るようで良くないことだとも思うが、それがまたスリリングで楽しかった。
ある日、私はいつも明るいムードメーカーの後輩くんに香水をかけてみた。
いつも楽しげな彼の幸せな思い出ってなんだろう。想像を巡らせながら彼の香りを探す。
しかし、彼にかけた香水からは、何の香りもしなかった。
こんなことは初めてだった。どんな些細な思い出にも匂いは必ずつきまとう。
なのに、彼からは何の香りもしない。
彼には幸せな記憶がないのだろうか。
仮に、今まで幸せな思い出がなかったとしても、今ここに存在していることも幸せではないのだろうか。
この楽しげな笑顔も、彼の仮面にすぎないのか。
興味本意で覗いてしまった彼の心は、虚無が続く底の見えない深淵だった。
それ以来、私はあの香水を使うことをやめた。
香水
夜にだけ行われる祭り。夜祭。
暗闇の中、黒い着物を着た女性たち。
黒い団扇を手に輪になって踊っている。
誰も一言も発しない。
静かに聞こえてくる、乾いた下駄の音。
カタカタ。
一緒に見に行った友人がいた。背が高かったと思う。
参道に吊るされた提灯。文字が書いてあるのは分かるが、ぼやけて読めない。
友人の顔を見ようと目を凝らして見上げる。
だがろうそくの灯りでは、彼の顔はどうしても見えない。
体の周りに充満する、たくさんの人と、人以外の気配。
目も鼻も口も体全部を、大きな影が覆いかぶさってくるようだ。
それらに圧され、思わず彼のコートに触れた時、ぱっと漂ってきた香り。
その記憶。
祭りの。
夜の。
香水か。男だから縁がないな。臭い対策するにしても精々ファブリーズで十分だろ。
てか女性でも香水つけてるのって少数なのでは?接客業してるけど香水つけてる客はほとんど見ないな。夜勤だから言うほど接客しないけど。
香水じゃないけどアロマオイルは興味あるんだよな。ああいうのって寝る時に使うとよく眠れるって言うけど本当なのかね。
前に興味あったから色々調べたけど結局やらなかった。理由は当然金だ。貧乏人はアロマオイルを試すことすら悩むし金がかかるからという理由でやらないのだ。
匂い関連だと入浴剤もあるな。これは試したことがある。でもあまり効果を実感できなかったから続かなかったな。
入浴剤も金があれば毎回使って効果を実感できたのかもしれないけどちょっと使ってみて効果がなければやめちゃうよね普通。
結局世の中金がすべてなんだよね。体験は金がなければできないし継続も金がなければ続けられない。つまり世の中くそってことか。わかってたことだな。
香水にアレルギーなのか
いつもお店に行くと鼻水が止まらない
君がいつも香水をつけるせいで
毎日ケンカばかりだった
それでも今涙が止まらなくて
鼻水が止まらないほど
君の香水が
ただ恋しいよ
《香水》
#64
若い頃は柑橘系のサッパリとした香りが好きだった。
サボンもよかったけど、独特の甘ったるい匂いが肌にまとわりつく感じがして好きにはなれなかった。
今はもう香水なんていらない。
だって部屋の中で咲く小さな花々の優しい香りと水をたっぷり含んだ葉や土のホッとする匂いに包まれているから。
自然の香水が今の私のお気に入りなの。誰にも真似できない私だけのものってなんだか素敵でしょう。
【題:香水】
香水
君からすごくふわっといい香りがしてきたんだけど…、シャンプー?、香水?かなって思ってるんだけど違うかな?
あ、香水だったのか。なんの匂いか当ててっていわれてもなぁ…(;´_ゝ`)
うーん、なんとなくせっけんの匂いな感じもするような?あとみかんの匂いも混じってるから二個匂い入ってたりする?
あ、二個入ってるんだ!しかも当たってるじゃんか!やったぜ!俺すごくね?
せっけんとみかんがほんのりいい香りしてたんだな。君ってやつはかわいいなぁ!
俺も香水つけてみようかな?
終わり
香水
ふいにきみから香るカオリ
無邪気なきみと香水
アンバランスで興味深い
いつもどの香水なの?
怪訝なかおでぼくを見るきみ
なんの匂いがしてるんだろう
シャンプー
入浴剤
ボディソープ
洗濯用洗剤
候補をあげていくきみ
既製品の香水ではないようだ
きみのカオリは手に入らない
それが答えか
残念