『風に身をまかせ』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
「ね、今から海行かない?」
毎朝同じ電車に乗るだけで話したこともない、隣のクラスの女子がそう声をかけてきた。胃が痛いなと思いながら下を向いていたので、まさか私だとは思わなかった。とはいえ辺りをどう見回しても彼女がまっすぐに見るのは私だけで、仕方なく自分を指差して首を傾げる。
「そ。学校サボって海って、超良くない?一緒に行こうよ」
そう言って彼女は素敵な笑顔を浮かべる。
どうして私なのか、とか今からじゃないといけないのか、とかわからないことがいくつもあった。けれど、確かに私も「超良い」気がして、少し迷って頷く。
「やった!学校とはホーム逆だから行こ!」
名前も知らない彼女は私が同行すると決まっただけで心底嬉しそうに笑って私の腕を取る。どうしてだかわからないけれど、胃の痛みは先程よりおさまっていた。
"風に身をまかせ"
紙ヒコーキのように
ふわりと飛んでみたい
たんぽぽのように
ふわふわと飛んでみたい
鳥のように
すーと飛んでみたい
風に身を任せ
飛んでみたい
風にもいろいろあって、
風呂上がりに当る扇風機の風は心地よいが、
「上州の空っ風」と言って群馬県の冬に吹く風の、厳しくて冷たい風は有名である。別名、「赤城おろし」とも呼ばれる。
私は、それを経験した事はないのだけれど、話には聞いていて、
北国育ちだったから、雪が降り積もる前に自転車をこいだ時に、
向かい風があまりにも冷たくて、手も耳も寒くて限界なのに、それでも歯を食いしばってこぎながら、「上州の空っ風」とはこんなものじゃないかしらと、何度となく思っていたものだ。
私が子供の頃、『木枯らし紋次郎』がテレビで放映されて、大ヒットした。
木枯らし紋次郎は上州新田郡三日月村の生まれである。貧しい農家の6男だったため、間引かれそうになった。赤子にコンニャクを無理矢理飲み込ませて窒息させるのである。
そのトラウマで紋次郎はコンニャクだけは食べる事が出来ないのである。
時代劇の股旅ものは、長谷川伸という人が開拓者で、『沓掛時次郎』『関の弥太っぺ』『瞼の母』など名作があるが、
それらの主人公をもっとハードボイルドにしたのが紋次郎なのである。
いかにも強そうだが、実はそんなに強くない。
いや、強いのだが、それまで私が観ていた王道時代劇の『水戸黄門』の助さん格さんや、『大岡越前』みたいに圧倒的な剣の達人ではなく、普通の人より少しだけ強いかんじなのだ。
だから、殺陣(たて)もあるが、とてもみっともない。泥仕合みたいで、ハアハア息を切らしながらも、やっとこさ勝つ。
それが逆にリアルで良かったのだろう。
そして、時代劇の主人公は正義の味方で、困っている人を助けるのが当たり前なのに、紋次郎はあっさり「断る」のである。
「あっしには、関わりのねぇこってござんす」
ニヒル、シビア、凄くかっこいいのだ。色仕掛けも通じない。
しかし、もともとが貧しい百姓の出で、親に殺されそうになった過去のためか、
貧しい百姓の哀れな訴えには、弱く、「勘弁してくだせぇ」と断りながらも、何度も泣きつかれて、結局は頼みを承諾し(無償である)、裏切られて殺されそうになるのがパターンなのであった。
紋次郎の時代、世の中は荒みに荒んでおり、信じられるものなど、何処にもないのであった。彼は、何のために生きてるやら分からない、
名を挙げて、売り出して博徒の世界で出世したいなんて希望もない、そもそもヤクザの親分なんて信じちゃいない、
何もかも、どうでも良いぜ。半分そう思いながらひたすら旅を続ける紋次郎が、受けたのだ。
紋次郎の、末は旅の空で、野垂れ死にするのだろうが、
あのように生きられたら、良いのにと、憧れる人が多かったのだと思う。
「あークラゲが飛んでるー」
道を歩いいたら小さな子どもが空を指さした
見るとスーパーのビニール袋が風に身をまかてフラフラと飛んでいる
いや
よく見るとあれはゲイラカイトだ
小さな頃兄貴が買って貰っていて、それは羨ましかった外来種の凧
やっこ凧なんかとは一線を画した、黒や白の三角に模様の入ったビニール製の洋凧は
小学校でも持っている子どもは少なかった
子どものお小遣いでは買えない値段だったそれを
スーパーの袋を代用してそれっぽいモノを作ってみては
本物の飛行とは比べ物にならないクラゲを作ったものである
風を受けて高く上がる
風に吹かれて糸をのばす
やがて伸ばしきった糸が切れ
兄貴のゲイラカイトは野生の凧になった
およそ30年の時を経て
まさかこの令和で
私の頭上に
まだ飛んでいたのだろうか
動力は風
自然の力を鼻で笑うような飛行に
私は小さな敬礼をした
風に身を任せて、自由な舞いを織りなす心の羽根
時を超えて、青空に揺れる。
それはまるで自由の輝き
風に身を任せ
随分と疲れ果てていたんだと思う。あんな事もあった手前、仕方がないと言えば仕方がないのだろうが。
思わないだろう。昨日までいつも通り、会話をしていた親友が死ぬなど、誰が思うか。
なぁ。風になった気分はどうだ?
勿論返答が返ってくるはずもなく。もういっその事、その返事を求める事を理由に、俺も風に身を任せてしまおうか。
なんて、そんな度胸、自分にあるはずないのだが。
手を離された。
あれほど「離さないで」って言ったのに。
裏切り者。
落ちながら彼女にあるだけの憎悪を込めた目線を向ける。彼女はキラキラの笑顔で私を見つめている。
「お手紙、お父さんに届くかな~!」
紙飛行機が一つ、青空へ吸い込まれていった。
風に身を任せたままで。
お題「風に身を任せたまま」
「風に身をまかせ」
私の生家は坂の上にあった
町外れの坂の上
中学に上がり、通学には自転車が必要になった
登校は坂を一気に降る。山から降りてくる追い風に背中を押され、更に加速する
見晴らしのいい田園風景の中を、車の心配もなく私はひたすら自転車を加速させた
下校はひたすら坂を登る。田んぼだらけで日陰はなく、登校中は最高の相棒だった自転車はこの時ばかりは重い荷物だ。朝はあんなに背中を押してくれた風もなぜか止んでいた
行きは20分、帰りは40分
出来ることなら、風に身をまかせたい。そのほうがどんなに楽か。強い風、弱い風、荒々しい風、頬を掠める優しい風、他にも色々な風があるだろう。少しでも風が吹けば、何とかなりそうものだ。今の俺は凪。
どうにもこうにもならない。今日は風がなくても、明日はどうにかなると淡い期待を持って、酒を呑む。明日からのエネルギーになればと。
#2 風に身をまかせ
風に身をまかせ
風の吹くまま気の向くまま、なんて言葉があるけどそういう意味のお題かな。
散歩する時なんかに今までいったことのない道にいってみる。そういう気まぐれが風に身をまかせるってことなんだろうな。
最近はそういうことをしなくなったけど今までいったことのない道、場所にいくのは楽しいからな。
風にみをまかせて
何故 泣くの?
風にみをまかせて
砂に まみれた 涙の 跡を
ひたすらに 追った
太陽と サラサラ 流れる 汗に まみれた
体温を ただ 抱きしめて いたい
なぜだか 君が 遠くへ
消えて しまう ような 気がして
ただ 風に 憧れて
覚えたての ギターを 鳴らす
風に 巻かれた ハープに
君の 面影 そっと 映す
何故 震える
あんなに好きだった歌が
少し 寂しく 何度も 笑って
恋い焦がれ 泣いた
再びは 会えない 気がして 君を どこかで
幻に ただ 口づけを 交わし
会えない 日々が 余韻も
消して しまう ような 気がして
ただ 風に 任せて
あなたへの 想いを 失う
風に 巻かれた 答えは
君に 話さず そっと しまって
風に身をまかせ君をさらっても
いいですか?
誰にも見せずに君を隠したいのです
私だけのものにしたいのです
でも君はそれを望まないから
せめてそばにいさせて
会社に行かなくちゃ
遅刻しちゃう
大雨でも
電車が止まっても
そういうものだから
そういうものだったのに
いちご農園は
月、金、雪の場合はお休み
そういうものってなんだっけ
行きたいんだっけ
枷を外したら
風に身をまかせたら
どこまで行けるんだろう
「なら、今なんじゃない?」
彼女は言った。まるで息を吐くように、さも簡単に、当たり前のように。
正直、そんな軽々しく言うなよ、と思った。これはオレだけの問題じゃない。周りのこととか、他にも都合云々が関わってくると言うのに。
「そんなの言い訳だよ。始める、って決めたんなら、あとはなんにも考えずにやってみればいいんだよ」
ほらまた、そんなふうに。生憎オレはそんな楽観的に考えられる質じゃないんだ。物事を決める時は、慎重に、確実に。石橋を叩いて渡るような生き方のほうが良いんだから。
「でもそれだとあなたは、石橋を叩いて壊してるよ」
あれこれ余計なこと考えすぎて、せっかくの橋を自分で壊しちゃってるんだよ。これまた彼女はひょうひょうと言った。そんなこと初めて言われたから、何も返せなかった。同時に納得もしてしまう。時には大胆になりなよ。まるでオレの心にとどめを刺すかのようにそうつけ加えた。
「明日のことは明日の自分がなんとかしてくれるんだから。あれこれ考えたってしょうがないでしょ」
羽のように軽い声と笑顔だった。きっとオレは、この何百倍の頭の重さをしているんだろう。たしかにこんな鉛みたいな考え方じゃ、いつまでたっても変われないよな。
さっきから彼女の言葉はまるで魔法の呪文のようにオレの心に響いてくる。聞いてるうちに何でもできそうな気がしてくる。
そして、次の言葉がとうとうオレを突き動かした。
「たまには委ねてみなよ。風に身を任せたら、案外遠くに飛べちゃったりして」
風に任せる、か。うまく乗りこなせたら、予想外な場所へ連れて行ってくれるかもしれないな。だからもう文句を垂れるのはやめよう。オレは黙って頷いた。彼女はにっこり笑ってくれた。
有難うよ、オレよりずっと若い魔法使いさん。
お題『風に身をまかせ』
風が吹きすさぶ丘の上で僕は震えている。僕の住む村では空を飛んで資材を調達するのが当たり前だ。ある程度の年齢になったら、マントを身にまとって空を飛んでいいって、母さんとか兄さんが言ってたっけ。
昔から空を飛ぶ兄さんたちを見て、憧れていた。僕もいつかあぁなれたらいいなって。だけど僕は高所恐怖症で、丘の上に立つだけで『落ちたらどうしよう』と震えるのが精一杯だ。
うしろについていた兄さんが言った。
「最初怖いのはみんな一緒さ。だけど飛び降りた後、無理に体を動かしてはいけないよ。風に身をまかせていればいいんだ」
言いながら兄さんは僕の背中を押した。丘から下に急降下する。
(あっ、まずい。これは死ぬかも)
そう思ったのもつかの間、僕の体は宙にふわふわ浮いていたのだ。
「これはもしかして?」
風に乗りながら僕は上に浮上する。兄さんがにこにこしながら頷いていた。僕もやればできるんだ。
風に身をまかせて、僕はしばらくマントを使って空中浮遊を楽しんだ。
蝶になった夢を見た。
ふわり、ふわりと、宙を舞う。
風に身をまかせ、どこまでも飛んでいく。
このまま飛んで行ったら、
貴方のところにたどり着けるかな。
夢の中でくらい、
貴方の傍にいたいもの。
「風の流れに身を任せて生きたい。それが楽じゃん。
お前さ、そんなに頑張って何になるんだよ。ボクシングなんて辞めて地元のみんなで遊ぼうぜ。」
彼は、地元を離れてボクシングに打ち込む私にそう言った。
周りの言うままに、高校を卒業したら適当な会社で働く。休みの日は地元の友達や彼女と遊ぶ。早めに結婚して家庭を築くき、子供が産まれると自分の夢を子供に託す。
私の地元ではそれが理想とされている。
その理想を達成していない人はコソコソと近所で噂になる。
彼もその理想を掲げるうちの1人だ。
彼には夢もあったようだが、それを諦め、今は地元で理想とされる生き方に準じて生きている。
学生時代は仲が良かった私たちだが、いつからか疎遠になってしまった。人生への価値観が違うため、話が合わなくなってしまったのだ。
地元で理想とされる生き方。その通りに生きる彼から見た私は、「理想通りに生きることができないダメな奴」に見えているようだ。いつからかバカにしてくることが増えた気がする。
そう感じてからは会うこともなくなった。
バカにされると、苛立ちより寂しさを感じる。地元の友達と心が離れていくように感じるからだ。
彼のことは好きだった。しかし、彼もいつからか私の苦手な地元の人間と同じようになってしまった。
こうやって良い意味でも悪い意味でも皆大人になっていく。
寂しいが、こういうものなのかもしれない。
またいつか、話せる時が来たらいいな。
その時が来るのを、風に身を任せて待ちたい。
風に身をまかせ
猫の様に気ままに歩く
隣にある花は風を味方にして綿毛がふわふわと飛んでゆく
どこまでもどこまでも広い世界へ飛んでゆけ
きっとそこには夢がいっぱい詰まってるから
どんなに辛い思いしても踏みつけられても
そこにいるだけでみんなが笑顔になれる幸せになれる花みたいに私もなりたい
そうして、ぼっーと川っぺりに寝そべって夕日を見ると涼しい風が『帰ろ?』ってまた背をそっと押してくれる
この地球にいらないものなんてない
そんな気持ちにさせてくれる
私にとって風はそういうもの。
風に身をまかせて
ふわりと何処かへ飛んでいきたい
だけど行くのはいいとして
帰りは風まかせにできないから
自分の足で歩いて帰ろう
風に身をまかせ
いつもの道を走る
まだ寒さが少し残る頃
多くの悩みを抱えた青年1人
「同じ人間なのにどうして」
青年の心の中の口癖だった
風に身をまかせ
いつか笑顔で彼だからこそできることを
見つけ羽ばたいて欲しい