『風に乗って』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
『風に乗って』
長い草が風になびいて波のように揺れている草原。かき分けて進むと灯台があった。近寄って見ると張り紙があり、
〖この先、ご自身の分身が数人、共同で暮らしている島がありますので、そこでご自身達と生活できます〗と、書いてあった。
灯台の扉が開いて、中から私に似た人物が一人出て来て、「迎えにに来たよ。一緒に島に行こう」と、言った。「ここは死後の世界なの?」と聞くと、そうだと言った。
ここまでの道のり、誰も迎えに来ないし、道案内もないから分からなかったが、私が死んでも迎えに来る人なんかいるまい、と思っていた。
でも、来てくれた。けど、それも私なのなら、結局誰もいないのと同じことなのだし、相変わらず、一人なのだが、それでいいと思った。
死んだからには、自分と向き合うことになるということか。生きてきた人生も逐一おさらいして、生きる意味を探るのか。
「その必要はない」と、分身は言った。「木や草や花も虫も、小鳥も猫も、蛸や提灯アンコウなんて不思議な生き物だって、ただ生きてそこにいるだけで、意味なんてない。だから、そこにいればよかったんだよ」
お日様の笑顔と
海の匂いと
波の歌声とを
3分の1ずつ混ぜた
特製絵の具で
広い 広い
青空のカンバスに
さらさら きらきら
流れる風と
ほわほわ ふんわり
浮かぶ雲とを
想いをこめて描きます
風に乗ったこの雲は
わたしから
あなたへの
精一杯のメッセージ
あなたの
お部屋の窓から
見えますか
# 風に乗って (123)
昨夜の余韻は風にのり、遠く遠くの砂漠の隅で、夜空を眺めるラクダの背中に舞い降りた。
突然の甘い甘い訪れに、ラクダはそうっと目を閉じた。
昨夜の余韻が風にのり、どこかどこかに消えてった。
窓を開けたその時に、すうっと飛んで消えてった。
春の空を仰いで
浮かぶハレゾラの雲に手をかざす
舞吹く風は全てを巻き込み世界を旅する
まぶたを閉じて…そっと呟く
そこに連れていって一緒に行きたいと
春の空は綺麗で
始まりと終わりを連れていく
旅の路中、連れてきたモノを降ろして
再び空へと舞い上がる風
季節を乗せ 香りを乗せ 想いを乗せ
まぶたを開けばただ佇む影
歩いた跡の静けさと飛ばされた心の手紙
伸ばした手は届かないまま季節はめぐる
テーマ:風に乗って #168
風に乗って
紙飛行機よ、飛べ。
学校の屋上なんてあんまり来ないけど
今日はそういう気分だった。
青く広がる空は
授業をサボった私の心など知らず
眩しすぎるくらいの光を放つ。
白い紙を折って作った
何年ぶりかに作った紙飛行機。
前作ったものよりも
きっとうまくなっている。
紙飛行機を飛ばした。
屋上から。
私の心は風に乗る紙飛行機のように
自由だろうか。
授業をサボって
屋上に行き
紙飛行機を飛ばす。
自由なのだろうか。
私の心も一緒に飛ばして。
もうすぐで地面につく。
紙飛行機は
自由なの?
香る幸を たずさえて
羽毛の使いは扉を叩く
薄荷は身代わり
高く低く踊るように
身軽に浮けば
夕日が流れ
いつかの約束のはじまりへ
風に乗って
涙と共に新しい風が
流れるの
こわいの…不安なの…
でも…
あなたがいるから
あなたがいるから
きっと…
乗り越えられる
こわいの
足がすくむの
うごけないの…
だけど…
あなたが
そっと…
やさしい手を
差し出してくれたの
…
涙が溢れて…
風の音が良く聞こえる
足取りも軽い
このままどこまでも行ける気がする
好きな歌を口遊んで
今日は気分が良い
*風に乗って
瑞々しい香りが、髪を撫でる
葉擦れの音が、耳をくすぐる
全てを届けて
全てをさらう
風は気まぐれ者だから。
好きだった人を忘れられんじゃなくて
その人がいない時間に慣れただけ
日は昇り、日は沈み、あえぎ戻り、また昇る。風は南に向かい北へ巡り、めぐり巡って吹き、風はただ巡りつつ、吹き続ける。
風と言われると昔読んだ旧約聖書コヘレトの言葉のこの部分を思い出す。変わらない繰り返し、同じところを巡り続ける世界が描かれ、冒頭の「空しい」のリフレインに続いて徒労感を感じさせる文章だが、この風の部分だけは、読んでいると自分が風の視点で方々を巡り吹き抜けるような爽快さが一瞬感じられて、それで印象に残ったのかもしれない。同じところをぐるぐる回るのは嫌いじゃない。小さい頃行った田舎の水族館(何年か前になくなってしまった)には、ドーナツ型の水槽があった。年取った大きなサメが、いつみても一定の速度でゆっくりと水槽を回っていた。水族館に行った日の夜はサメのことを考えた、サメは今もぐるぐる回っているんだろうと思いながら眠った。コヘレトの頃から変わらず巡り巡って吹きつづけ、南だか北だか知らないどこかの空を吹いている風のことを想像すると、今でも少しだけ気分が軽くなる。それは作者が意図していたこととは違うかもしれないけど。
(風に乗って)
[風に乗って]
「……元気にしてるかな、お兄さんは」
私がお兄さんの部屋を出てもうすぐ半年。季節はお兄さんと過ごしたあの春から2つ目の季節を迎えてる。秋口の涼しい風が肌に心地良い。
お兄さんと一緒に過ごした一ヶ月はとても楽しかった、それこそ私の人生の中で一番楽しかったって言ってもいいくらいにはお兄さんとの生活は居心地が良かった。最初不安が無かったと言えば嘘になる。初めての家出で、助けてくれたとはいえ見ず知らずの男の人の家に行くだなんて襲われでもしたら、なんて女の子ならそんな考えの一つ二つ考えてしまうものだしね。
でもお兄さんはずっと優しかった。家での理由も聞かずテレビを見せてくれたし一緒に話もしてくれた、ベッドだって一つしかなかったのに譲ってくれた、朝も忙しかったのにご飯まで作ってくれた、帰る前にシャワーも貸してくれた。
優しすぎて逆に胡散臭かったりもしたけど、お兄さんはただ優しいだけだった。
パンッと小気味良い音が満天の下に響く。打たれた頬がじくじくと痛んで熱を持っていく。お兄さんの態度に絆されて帰ってきたことを一瞬で後悔した。このビンタが私を心配した愛情からくるものだったら私だって家出したことを一瞬でも後悔出来たのかな、なんて外で怒鳴り散らす父親を黙って睨むとまた打たれた。娘にDVしたいだけのクズのくせに。
「あ、ははは……。昨日ちゃんと帰ったんだけどね、また出てきちゃった」
殴られた跡を見てからお兄さんは家に帰ろと言わなくなって、私も私でお兄さんに甘える形でダラダラと同居生活を続けてたある深夜。
「魘されてるね、大丈夫かな……っ、お兄さん気が付いた?」
「………、…」
「どうしよう、やっぱり起こしたほうがいいかな」
「……き、だ」
「なに、お兄さん」
「おれも…きみが、…すき、だよ」
「っっ!!」
あの言葉を聞いて潮時だと思った。お兄さんの人生で偶然ほんの一瞬交わっただけの私がお兄さんとこれからも一緒にいていい筈がない。
だからあの日私はお兄さんが仕事に行ってる間に何かあった時用に取っておいた少額を下ろしてお兄さんが買ってくれたものを全部バッグに突っ込んで逃げるように家を出た。勝手に家を出たから怒ってるかな、きっと怒ってるよね。
送るつもりもないくせに書いた手紙を破ると何の偶然か一際強い風が吹いていくつかの便箋の欠片が窓から風に乗って飛んでいく。
いっそこの想いごとお兄さんのところまで届けてくれたらいいのに。
『お兄さん、会いたいよ』
※[刹那(23/04/28)]のアンサーです。刹那テーマの方を読んで頂くと物語の流れが分かり易いと思われます。全容を知りたい方は是非そちらも合わせてお楽しみ頂けると幸いです。
風に乗って飛んでいく紙飛行機
離陸場を見れば、男の子が笑顔でこちらを向いている
飛行機は私の膝の上に着陸した
私へのメッセージだろうか
無防備に私の膝の隙間で傾く紙飛行機
私は彼行きのそれを出発させた
窓枠を越え、それは風に乗って彼のもとへ飛ぶ
青く染まった空はそれどころか全てを受け止めるように笑う
私は病室のベットの上でため息をつく
向かいのベットにいた男の子
今日君は風に乗って空へ舞った
もうじき私もそちらへ行くかな
私はどこまでも飛んでいくそれを眺めた
風に乗って
ん、なんか臭。
仕事の帰り道に1回は思う事
風に乗って
もしも風に乗れるなら
あの鳥のように
空が飛べるだろうか。
青い空の向こうの世界
私も何度もあこがれた。
ジャックと豆の木のお話を
何度も聞いてワクワクしていた
あの頃。
空の向こう、きみは知っているの?
そこに連れていってくれる?
もっと知りたいまだ見えてこない
きみを。きみのみている空を。
風に乗れるよ、あなたならと
きみが言うなら。
本当はきみの正体を知る前に
確かめたいんだ。
きみが本当にほしいものを。
私自身なのか。
私の命なのか。
ちょっとこわいけどね。
信じたい、かけてみたいんだ。
前者の方に。
風に乗って
ふわりふわりと舞う
行き先は何処だろうか
答えは誰も知らない
そんな旅も
一生に一度くらいはいいんじゃないだろうか
風の向くまま
誰にも告げず
ただひたすら空を行く
雨の日にはどこかで通り過ぎるのを待ちながら
終着駅を決めぬままに
ただひたすら飛び続ける
そしていつの日かたどり着いたその場所に
来年の春
私は黄色のお日様のような花を咲かせるだろう
風に乗って やってくる
花粉に黄砂
遠くのサイレン
子どもの遊ぶ声
お出しの香り 焼き魚
きんぴらごぼう 生姜焼き
沈丁花に それからジャスミン
少し湿って雨のにおい
運ばれてくる暗い雲
いそげいそげ
おうちに帰ろ
「風に乗って」
#91
風に乗って
あなたのところまで
風に吹き飛ばされたい
きっと あなたは笑って
私を 手でつかまえてくれる
一人呟いた君の名が、風に乗って届けばいい。遠くで生きる君が折れそうなときに、思い出せるように。
ある古い書物の一節にて。
現代よりさらに古代の時代、「風の民」が居た。現代では伝説と語られている民族。風を操り、自然と一体化する。時には風が凶器にもなる。特徴的なのは、深緑色のチロルハットを被っていること。
そして、小柄でよく小人と間違われるほどだ。
その「風の民」はどこかふわふわと風に乗って、然るべき人の道標を示し、その人の前に現れる幻の民。
ー オリジナル小説・ドゥコ作中の書物ノン・ドゥカ・ドゥコから ー