『雪』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
「ゆーきやこんこんっあーられやこんこん」
少女は楽しそうに歌う。
「最近ね、わたしおかしいの!!」
軽やかな言葉で話し出す。
「あなたを見ていると、あの人の名前を呼びたくなるの!
…あなたはあの人じゃないのにね。なんでなの。こえもきこえなければ動くこともない。あなたは…たった一本の、木なのに。
まるであなたがあの人みたい。
…そういえば、わたしがこの世界からいなくなってどれくらい経ったのかしら?」
少女が亡くなったのは84年前のことだった。
10歳にも満たないであろう背丈、声。「あの人」も同じくらいならば、もう……。
その続きの答えは、木に積もった雪が、見せてくれなかった。それは、あの木が見せなかったのか。真実は分からないままだ。
_2024.1.7.「雪」
もりのくまさんの時と一緒の子が主人公です。久しぶりにpk以外の創作書いた…。
外は白銀の世界。私は厚着のせいでもこもこ。心配性のパパは、セーター、コート、マフラー、次々と私を包み込んでいって、ゆきだるまみたいな女の子のできあがり。
白い息を吐きながら、庭を歩く。まっさらな雪にボア入りのブーツで一回り大きくなったわたしの足跡がついていく。冬って素敵。パパの愛情に包まれるみたいにぽかぽかしながら歩いて行く。
同じようにもこもこになった小さな雪だるまが後から現れた。もこもこの弟ゆきだるまが倒れないように、パパがそおっとついてくる。
よちよち歩く三つの陰が、キンと冷えた雪景色の白いキャンバスに映えた。
『雪』
真夜中だというのに明るい。
昼前から降り始めた雪があっという間に積もり、その反射で周囲が明るくなっているからだった。
窓辺に佇み、その明るさに僅かに目を細める。
雪が無ければ外は黒一色だったであろう外は、立ち木の輪郭や家並みの明かりがぼんやりと浮かんでいる。白と黒と灰の三色だけでなく、家の窓から漏れる淡いオレンジが何の変哲もない街を幽玄の世界へと変えている。
男はクリーム色の壁に凭れて雪に埋もれた街を見つめていたが、ふと思い立ってキッチンへ向かった。
ポットのスイッチを入れて、カップを二つ取り出す。
インスタントコーヒーと砂糖とミルク。それらを用意してまた窓辺へ向かう。
しばらくそうして見つめていると誰もいない雪道を一つの影が近付いてきた。
傘にはまばらに雪が積もり、長いコートの裾が濡れている。早足で歩く影が途中何度か滑りそうになるのに、男は小さく笑う。
やがてポットがコポコポと音を立て、湯が沸いたのを知らせると、男はまたキッチンへ戻っていった。
二人分のコーヒーが用意出来たのと、インターホンが鳴ったのはほぼ同時。
「不便なところに住んでるな」
肩や裾に雪を乗せたまま、やって来た影がぶっきらぼうにそう吐き捨てる。
「それでも会いに来てくれたんだろう?」
笑いながら男がコーヒーを差し出すと、影をまとった男はふん、と小さく鼻を鳴らした。
「……」
カップ越しに見える目がギラついている。家主の男は甘いカフェオレを飲みながら、コートの肩に積もった雪が溶けて見えなくなるのをじっと見つめている。
こくりと喉が動いたのは、カフェオレを流し込んだから。それが嘘だということは、二人だけの暗黙の了解。
カチリと小さな音がして、扉の鍵が閉められる。
雪はやまない。
このまま降り続ければ足跡も、声も、匂いも全てをかき消してくれるだろう。触れた指の温かさも――。
あぁ、コーヒーを飲み終えるのが、待ち遠しい。
END
「雪」
雪が降った後の車のフロントガラスは汚い。
「当たり前だ」とか「どうでもいいな」とか思う人が大半だとは思うが、私はそれがなかなか面白いなと思うのだ。
私の住む地方にはあまり雪が降らない。年に一二回パラパラとは降るが、滅多に積もらないのだ。だから、雪は私にとって、結構ワクワクする現象だった。
小さいころは雪だるまと一緒にアイスクリームをつくる絵本が大好きだったから、雪を食べてみたい!と無邪気に思っていた。そう、雪は綺麗なものだと信じて疑わなかったのだ。というか、結構大きくなるまで思っていたし、なんなら今でもちょっとだけ思っている。
けれど、雪が降った後の車のフロントガラスは汚い。どうしようもなく汚い。油をぶっかけたみたいにドロドロしてるし、ワイパーも動きがもたもたする。
雪は綺麗じゃない!それが結構私には衝撃だった。なんで人間は白ければ綺麗だと思ってしまうのだろうか。無邪気に雪空に口を向けていたあの頃の自分に「やめなさい」と諭してくれた大人の気持ちが今ならわかるぞ。
ああ、雪は綺麗だと信じきっていたかったような、雪を本格的に食い出す前に知れてよかったような、不思議な気持ちである。
: 雪
「雪」
かもしれない。
ひとりふたりと
期待するように
雪雲見上げる
見知らぬ者たち
寒い、寒い。
手には、もう感覚がない。
少しでも、早く火を起こそう。
しかし、木が湿って火を起こせない。
塹壕の中では、やはり何でも湿ってしまう。
私の足すらも……。
私も、彼らのように足を切断せねば、ならないのだろうか。
こんなことなら、いっそのこと自殺しようかな。
ハハ…。
戦争って、こんなんだっけ。
おかしいな、昔の戦争はこんなに永くは続かなかった。
おかしいな、昔の戦争はこんなに兵士は死ななかった。
おかしいな、此処まで兵士を人間として扱わなかったっけ……。
あれ?今迄、私は何のために生きてきたんだっけ。
「雪」
雪を見ると高校のときの彼女を思い出す。
高校2年のときに引っ越してきた彼女。
すごく目立つようなタイプじゃなかったけど、
誰に対してもすごく優しくて、
いつも微笑んでるけど本気で笑ったときの
無邪気な笑顔が俺は大好きだった。
都会からきた彼女が雪を見て「…綺麗」って言った
その横顔があまりに可愛くて。
「でも、都会の夜景には叶わんやろ?」
と、ドキドキを隠して笑っていった。
そしたら、彼女は振り返り微笑んで、
「んー。どうだろ?
きっと、はじめて夜景見たら感動すると思うよ。
その時は、光の先にあるたくさんの暮らしを想像して。
でも、今目の前にあるのは、
この誰にも踏まれてない一面の雪だよ?
今ここを楽しまなきゃ損だよ!」
と言って、俺の手を掴んで雪道を駆け出した。
そのときの彼女の笑顔が忘れられない。
と、いう話を今隣にいる妻にしたらきっと
「そんなこともあったね」って
俺の大好きな笑顔で笑ってくれるだろう。
#雪
風花が降り注ぐ寒夜
君との出逢いを噛み締め想う
雪が降ってうれしいって思う人は、多分しあわせな人だと思うんだ
あんなに冷たいもの、そうじゃなかったら喜べない
寒くて寂しいだけだよ
雪…❄
ふわふわザクザクな感触だけど、
いざ触るとサラーっと溶けて無くなる。
自分の心を見透かされてるみたいに…。
それと同時に心がスッキリする。
真っ白な雪みたいに生きて最後は溶けたい。
〝雪〟
雪の降る朝、いつもより早く目が覚めた。
いつもと少し違う街を、ゆっくりと歩いて行く。
ふと、小さな雪だるまを道端で見つけた。
微笑ましく思い、隣にもう一つ雪だるまを作った。
そしてまた、ゆっくりと歩いて行く。
雪
雪が静かに舞い降りてきた。
空気は久しぶりに冷たく底冷えする寒さ。四季折々の景色を楽しむ視点から考えれば、雪が降り積もる景色もまた、情緒が漂うのでしょうが今はその時ではない。
寒さで苦しんでいる人々がいる中で、暖かな日々が、早く訪れることを心から願う。
雪
最近雪見ないな。
手を真っ赤にして雪だるま作るの好き。
『雪』
夢を諦め熱を失い
ゆらり ゆらりと落ちていく
生きたくないけど死にたくない
死にたくないけど生きたくない
贅沢でいて我儘な
矛盾を行ったり来たりする
冷たいままに彷徨い歩き
かじかむ心の感覚は
いつしか麻痺して無くなった
差し伸べられた手を避ける
今のこんな自分では
人肌でさえ溶けそうで
雪
全ての音を包み込み
世界に静寂をもたらす
冷たいけれど温かい
そんな矛盾を感じる
白く綺麗だけど
何色にも染められる
空から深々と降り注ぎ
今もほらまた一つ二つ
白い息が出て、頬が紅くなる今日この頃
昔と何ら変わりない君が少し、ほんの少し
大人びた気がして
真っ白い地面に目をやった。
【163,お題:雪】
手に乗せた雪は程よい冷たさを残して静かに無くなっていく
指の隙間を伝って溢れる涙にも似た水滴
それを少しの間ぼうっと眺めてから、手を振って水滴を払い落とすと
その人はまた歩きだした。
「わたしはきみのことが好きなんだなあ」
さんさんと光り輝くお天道様がにっこりと笑って云いますと、ちいさな雪うさぎは椿の葉っぱをそよりと折り曲げました。
「そんなあ、困りますよ。だってぼくは、ぼくは、あなたとは一緒に居られないのですから」
雪うさぎは、その小ぶりな足元にさあっと広がる白をじいっと見つめてため息をつきました。きらきら、ふわりときめ細やかで、まるでお砂糖みたいな、甘あい新雪で御座います。
「嗚呼、ため息は幸せが逃げていってしまうよ」
「まったく、誰の所為だと思っているのですか」
「だってきみは、とってもかわいいんだもの。真っ赤な目も、つんと立ち上がった緑の葉っぱも。ぎゅっと押し込められた雪の、なんと艶やかなことか!宝石みたいだ」
「へへ、そいつはどうも」
「きみを見ていると、わたしはどんどん熱くなってしまうんだ。胸のどきどきが抑えられないんだ。もっときみを見ていたい。もっときみのことを知りたい!……ねえ、この気持ちはなんなのかな。きみの声も、きみの姿も、全部をわたしのものにしたい、嗚呼、嗚呼!わたしは、きみのことがすきだ!」
「わ、わ、わ。ちょっとちょっと、熱すぎですよ」
お天道様はいつの間にか、雪うさぎの南天の目よりも真っ赤に燃え上がっておりました。よく見ますと、まるで心臓のように大きくなったり、小さくなったりを繰り返しているではありませんか。雪うさぎは頭を真っ白にして狼狽えました。
「あ、ああ。ぼくのからだが」
雪うさぎは溶け出してしまいました。雪うさぎは、氷の粒から出来ているのです。ざんざん、ぎらぎらと眩い光を当てられたら、水に還ってしまうのです。
「待って、お天道様、お願いします。どうかぼくを好きにならないで」
「そんな、雪うさぎさん、待って、待って。わたしは、ただきみを愛したかっただけなんだ」
冬のからっと晴れやかな空は一転、どす黒い雲に覆われていきます。ずっととおくの街からは、がらごろと雷様のお怒りさえ聞こえてきました。雪うさぎは、もうからだを保っておりませんでした。そこに在ったのは、お天道様を鏡のように映し返す小さな水たまりで御座います。
「わたしも、雪になって仕舞えばいいのに」
お天道様も泣き出してしまいました。幽かな雲の切れ間から差し込む光が、たった一筋だけ、真っ赤な実を弱々しく照らしておりました。
#2 お題『雪』
『雪』
空から、ちらちらと舞う雪を見ると日本の工房を思い出す。
今はあの寂しがりやなくせして、誰にも頼ろうとしない弟子が私の代わりに使っている。
日本には少し似つかわしくない見た目の建物で売っている物も人形とくれば、来るお客はだいたい私の古くからの顧客のみ。
でも私は中の窓から見る雪景色が好きだった。
異国にいながらも祖国を思い出して感傷に浸れるから。
今日本では雪が降っているだろうか。
降っていたらあの弟子はどう雪をみているだろうか。
本当は弟子なんて取るつもりは無かったのに、あの日ショーウィンドウ越しに見た彼の表情があまりにも輝いていている癖して、目だけは絶望をまとわりつかせていて思わず声をかけてしまっていた。
マナーも何もなってない彼に呆れながらも、作らせてくれという真剣な表情に絆されてついいいですよなんて返して、面倒を見て…でも。あの弟子は決して私を頼ろうとしなかった。
口が悪く噛みついて来たとしてもただのじゃれ合い。
人形制作に没頭して、没頭して。
魂を人形に移して消えたがっているのだと気づいたのはフランスに誘って5年目の冬。
怖い程の集中力に声すら届かず、恐怖を覚えた。
だから、一旦彼が生まれた日本に返すことにしたのだ。
『恋とか関係無しに愛せる人を探しなさい。
まずは日本に行き、頼れる人を探しなさい』
このままでは彼はただのショーケースに入った人形になってしまう。
私では世界を見せることができなさそうだから。
突き放す事は最良だったかはわからない。
けれど少しでも彼が変わればいい。
「あのバカ弟子の為に頑張りましょうか」
彼が変われれば、変わった先はいくらでも用意してやれる。彼の人形の作る才能は凄いのだから。
いくらでも売り手を見つけてやろう。
雪は好きだ。
またあの工房の景色がまた見れるように
自分も、弟子も変化があるように私は頑張らないといけない。
雪に付く足跡は前に前に増えていった
今回の冬、自分が住んでいる地域では全く雪がふらない。
暖冬なんだろうけど
少しは降ってほしい願望がある。
【雪】kogi