『雨に佇む』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
「雨に佇む」
雨の中うつろな顔でじっと佇んでいる
いつもと違う魅力的なその姿
まるで映画か何かのワンシーン
……って、違うっ!
単に傘忘れてずぶ濡れなって
さてどうしようかと呆然としてるんです
もう勝手に詩作すなっ!
子供の頃は雨が嫌いだった
友達と外で遊べなくなるからつまらなかった
大人になった今も好きという訳では無い
頭は痛くなるし、時には憂鬱な気分にもなる
ただ何故か不思議と雨に打たれていたい気分になる時がある
自分を守る傘なんか放り捨てて
頭から足先までずぶ濡れになってしまいたくなる
このどしゃぶりの雨が、訳の分からない焦燥感や虚無感、自分への不信感、
周りへの恐怖心など全部洗い流してくれるのではないかと信じながら
今日も私は雨の中でじっと佇んでいる
雨に佇む人がいる。
傘もささずに泣き濡れる。
ロングヘアーが垂れ下がる。
化粧も崩れて、いい女。
俺が代わりに、傘☔差し伸べたいが
失恋💔なのかわからない?
ほっといて!と、降られ三枚目も
バッ悪い、男心も泣き濡れる。
徳博
雨に佇む高校球児
9回裏2死満塁5対2で相手打者は7番打者2ストライク3ボール後1球、1回からノーヒットで押さえてきているとは言え嘗めてはいけない。
ここへ来て8回からの小雨が俄に夏の入道雲からの豪雨に変わる、グランドは、まだ中止なるほど、ぬかるんではいない。審判も最後の1球を待ちピッチャーを凝視する。これが青春の最後の1投とばかりの全力投球。
打者も渾身の力を振り絞り打ち返す、打球は右中間を破り走者一掃のサヨナラランニングホームラン。
マウンドに立ち竦む背番号1の、これまで一人で投げ込んできたエース。
ただ無情にも、いそうきつく雨が青春の全てを流すシャワーのように降りしきる。もっと早くもっと強く雨が降ったならコールドゲームで勝っていたのに。
ただ一人最後までマウンドで雨に佇む、涙と汗と雨水に、びしょり濡れて。
徳博
雨に佇む
急な天気雨
傘は無し
一瞬にして、ずぶ濡れ
面白くて笑う
楽しくて笑う
「勘弁してくれよ……」
傘を持っていない時の雨の鬱陶しさといったらない。それが豪雨で、しかも移動手段が徒歩しかないとなればなおさらだった。
駅を出て、菜緒の待つアパートまで歩いて十五分と言ったところ。一時の避難場所として他人の住居の車庫に駆け込んだ僕は途方に暮れていた。
頭を悩ませているのは菜緒の存在だった。付き合いたての頃はおっとりしていて、二人の最善を考えて行動してくれる女の子だったのに。同棲を始めて結婚を意識するにつれ、彼女の嫉妬深さとヒステリックな部分が徐々に顔を出すようになった。
(早く帰らないと)
昔の彼女に戻ってくれることを期待しながら、実はこれが本性ではないかと気づきつつ目を背けて機嫌をとる日々。僕は疲弊していた。
(菜緒にうるさく言われる)
尻ポケットに入った携帯は既にひっきりなしに震えており、彼女の精神が危うい方に傾きだしていることを告げていた。
(……もううんざりなんだよ!)
もちろん本人には言えない。一を言えば百が返ってくるからだ。
「雨宿りですか?」
その落ち着いた声は、乾いた大地に染み込む水のように僕の耳を抜けて全身に広がり、馴染み、吸収されていった。こんな感覚は初めてだった。
「あっ、すみません、貴女はこの家の方……?」
僕は驚きながらも、隣に立つ女性をまじまじと見つめてしまう。自分よりも年上に見えた。派手さとは無縁そうな、淑女と言うのが似合う品のある顔立ち。胸のあたりまで伸ばされた真っ直ぐな髪が、濡れて艶々している。
「いいえ、通りすがりです。要は私に話しかけられてビクビクしている貴方と一緒、なのかしら」
そう言って歯を見せて笑う大人の女性は、子供のような無邪気さに溢れていた。僕はどきまぎして返事が出来なかった。彼女の白いシャツが透けて、すみれ色の下着の輪郭が浮かび上がっていたのがいけなかったのかもしれない。
「通り雨だといいんだけど」
僕の様子に構うこと無く、彼女は呟いた。
そうだ、その通り。こんな雨はさっさと止んでもらわなければ困る。
早く帰って、ただいまと言って、わめく菜緒に遅い帰宅の弁明をして、着替えたらすぐに夕飯を食べて、奈緒の愚痴っぽい話を聞いてあげて──。
僕はポケットに手を突っ込み携帯の電源を切った。微弱な振動を受け続けた尻が痺れている。菜緒との連絡手段は失われた。何故こんなことをしたのか。つまり。そうだ。僕は疲弊している。雨宿りの偶然がそれを決定的なものにした。
「あの、雨、止むまで、ここにいますか?」
「え? うん、そうね、そうするしかなさそう。貴方は?」
ざあっと雨音が強まった。叩かれた地面が水煙をあげている。
「僕も、止むまでここにいます」
「そう」
穏やかに微笑む彼女の身体から、滴るような甘い香りが漂った。やはり鼻を抜けて全身に広がり、馴染み、吸収されていく。
あるいはそれは、今の僕にしか分からない匂いなのかもしれない。
▼雨に佇む
雨に佇む(創作)
ポタポタと水もしたたるその人は。
傘も差さずに何を思うのか。
そんなことを思いつつ
自分自身は傘を差して見つめていると、
その人は気づいて犬のようにやってきた。
「遅いよぉ」
「…………遅いよ、じゃないよ。何してんの」
呆れた顔で、その人を見つめた。
へにゃりと笑うその顔に、少しだけ腹が立った。
信号機が発する光を、水滴が反射している
赤、青、黄色。私がここに来てから、何度変化しただろう
涙を誤魔化し雨に佇む姿なんて
この淡い光に溶かされてしまえばいいのに
(雨に佇む)
雨だ。
このまま濡れて帰ろう。
泣いてるのが分からないように。
「雨に佇む」
彼から突然「別れよう」そう言われた帰り道。
トボトボと歩いていると、突然雨が降りだした。
私は雨宿りすることもせず、傘もささず、歩くのを止めて、ただ雨に濡れる。
雨に打たれながら、そういえば彼と出会いも雨の日だったと思い出した。その日も、こんな天気で、その時は彼が傘を貸してくれたんだった。
ザーザー降る土砂降りの雨は、弱まる事を知らずに降り続けている。それは、まるで私の心の中を現しているようだ。
泣けない私の変わりに、空が泣いてくれているのだろうか。きっと、そうだ。
なら、この雨は暫く止まないだろう。
題.雨に佇む
きみを待っている時間ほど、
愛おしいものはなかった。
ぼちぼち、良い歳になる。
家庭を築き、母親になり。
歩幅の合わない、パートナーとも
連れ添って10年…14年にもなろうと
している。
ひとりになりたい。
ふと思い立ち、雨降る夜、外に出る。
傘も要らぬほどの小雨。
遠くの空では、雷が光っている。
あの雷が一瞬にして
私の元まで走り稲妻を落とす確率は
どれくらいだろうか。
バカな空想だ。きっと私は疲れているんだ。
だけどもう少しだけ、ひとりでいたい。
小雨がいつの間にか
大粒の雨に変わり、アスファルトを
強く打つ。
その中で、私はひとり、雨に佇む。
【お題:雨に佇む】
ぽたっ ポタリ ぽたっ ポタリ ポタリ ポトポトポトポト ポタポタポタポタタタタタ ザー
頭のてっぺんが冷たい。肩や手には雫が乗っている。そのうちに雨雲が空を覆い始めた。
急いで雨宿りできる場所を探す。ザーザーゴー。 少し歩くと商店街のアーケードが見つかった。
急いで駆け込み、雨をしのぐ。
お気に入りのワンピースはびしょ濡れ。長い黒髪は雨でベタベタ。不思議と気持ち悪さはない。
しばらく降り続くのかわからない。少し離れたところには同じような境遇の人が1人いた。
お題「雨に佇む」
雨に佇む
雨は嫌いだ。
そういう人間は別に珍しくもないと思う。傘を持つのは面倒だし、遠出もしにくいし、濡れたら気持ちが悪い。
でも大学生の時につき合った彼女は、雨になるといそいそと傘をさして出かける人だった。
週末に部屋に行くよと約束していても、明るいうちに雨が降ると彼女は居ない。部屋から出て、近所の公園に居るからだ。さすがに大雨のときは出ない。
「またか、仕方ないなあ」
僕が迎えに行くと、誰もいなくなった公園に水色の傘がぽつんと見えた。傘は木々の下を時々揺れては、しばらく立ち止まる。僕はすぐには声をかけずにそれを眺める。
遠目には雨に佇むといった風情の彼女だったけれど、実際のところは、公園の木々が雨に濡れる様子や見つけたカタツムリなんかを喜々として観察しているのだった。
「晴れてる時と全然違うよ」
彼女は絵を描く人で、雨に濡れた草木をよく絵に描いていた。元々は晴れた日に描いていたらしいが、ある日にわか雨に降られ、目の前の景色が濡れて刻々と変化していく様に目を奪われたのだそうだ。
「どこがそんなにいいの?」
「だって、すごく綺麗だから」
「晴れた日の方がいいと思うけどなぁ」
首をかしげる僕に彼女はふっくらした唇を尖らせ、しばらく考えてから言った。
「えーっとね、そうだ、グラビアアイドル!」
「は?」
彼女はいい例えだと言うように、明るい目をしてこっちを見上げるけれど、僕にはどういう意味かさっぱりわからない。
「ほら、グラビアアイドルのコとか、濡れた格好で写ってるのあるよね」
「あるけど、それが何?」
「だから、濡れてる姿が綺麗だと思う人がいるってことでしょ」
確かにグラビアの彼女たちの濡れた姿ってのは、こちらの妄想をかき立てるところがある。
「でもあれは、ちょっとやらしい感じがするんだけど……」
彼女の説明に僕がそう突っ込んでみると、彼女はぎょっとして目を丸くした。
「えっ? ま、まあ、そういう感じもあるかな。でも私、そんなこと考えて描いてないよ!」
「わかったわかった」
僕たちは楽しくつき合っていたと思う。でも一足先に社会人になった僕は、日々の忙しさに追われて余裕を失い、すれ違い、結局彼女とは別れてしまった。今ならもう少し違う道があったような気がしてならない。
僕は雨が嫌いだけど、雨の中で楽しそうにしている彼女を見るのは好きだった。
あれから何年経つだろう。
今日の雨は、彼女が好きだと言ったあの日の優しい雨に似ている。
読んでいただいてありがとうございました。
ニワカですが、昨日の男子バスケの試合は面白かったですね! 熱かった!
落ちる涙に
雨が降る
泣いていいよと
雨が降る
# 雨に佇む (259)
歩いていたら、急にどしゃ降りの雨が降ってきた。嗚呼、傘なんて持ってきてないや。とりあえずこのまま雨に濡れよう。辛いことや悲しいこと、苦しいこと、悩んでること、全部流してしまえ。
降られすぎて風邪をひいてしまいそうだ。
しかし家にも入れはしない。
ドアベルを鳴らしても何も帰ってはこない。
殺人鬼から逃げられたのは私だけだから
【雨に佇む】
ポツポツと音を立てて、鉛色の曇天から雨粒がこぼれ落ちる。その響きと煌めきが美しくて、僕は思わず道端で足を止めた。雨足を避けようと慌てて走っていく人々は、僕の存在なんて気にも留めない。まるで世界で一人きりになってしまったようで、ひどく甘美な心地がした。
どれだけの時間、そうしていたか。濡れた服が肌に吸いつき、髪先からポタポタと雫が伝うようになった頃、不意に視界に影が落ちた。
「雨の中にボーッと佇むクセ、そろそろやめなよ。いい加減本気で風邪引くよ?」
振り返れば晴れた空のような清々しい水色の傘が、僕へと差し向けられている。呆れたようにため息を吐いた君と、これで世界に二人きり。
「大丈夫だよ、馬鹿は風邪を引かないんでしょ?」
「君が馬鹿なら、世界の八割くらいが馬鹿になるんだけど。無意識に全世界に喧嘩売ってるの?」
「成績が良いことと馬鹿かどうかって、全く別の話じゃない?」
「まあ確かに、雨のたびに道端に立ち尽くしてる君は馬鹿かもね」
ほら、帰るよ。そう笑って傘を揺らした君と肩を寄せ合って、君の差した一つ傘の下を歩いていく。傘に守られた二人きりの世界は、柔らかな安らぎに満ちていた。
雨に佇む彼女を見た。
傘を彼女に向けようとした。
でもそれは僕の役目じゃなかった。
だって彼が居るから。
僕は彼女が好きなただのモブに過ぎないから
雨に佇む彼女を見ていたくなくて
僕は彼女に背を向けて歩く
離れていく彼女との距離
彼女を呼ぶ彼の声
僕も主人公になりたかったな。
─────『雨に佇む』
#雨に佇む
雨が降ってきた。
先程まではからりと晴れていたというのに。
ザァザァと雨が空から落ちてくる。
この音を聴いていると、この世に自分一人しか居ないのではないか、なんて馬鹿げた考えが頭を占める。
走って帰った方が速いかな。
僕は、買ったものを自分の服の中に隠して雨の中に飛び出した。
いっそ、君が死んでくれたら良かった。
なんて思ってしまう僕は、酷いやつだなと、我ながら思う。
長年付き合ってきた彼女と別れた。彼女に好きな人が出来たから。僕の知らないところで、彼女はとっくに結婚していた。それを知って僕が愕然としていると、彼女が言った。
「これからは、仲の良い友だちとしてよろしくね」と。
僕たち、今まで何をしていたのだろう。相手の何を見ていたのだろう。恋人がいないと馬鹿にされる世の中に急かされて、お互いに手頃だったから付き合っていただけなのか。
僕は彼女を愛していた。結婚になかなか踏み切れなかったのは、持病のせいだ。彼女に負担をかけるのが怖かった。それでも、何とかやっていける道を探していたけれど、それは恐らく遅すぎた。
彼女は僕を愛していた、のかは分からない。しかし少なくとも、付き合っている間は僕はそう感じていた。前の男で酷い目にあって、男性恐怖症だと言っていたから、中性的な僕とは付き合いやすかったのかもしれない。そんな傷付いた彼女を大事にしたくて、彼女の望みには応えるようにしたし、彼女が嫌がることはしなかった。大切に、大切に、付き合ってきたはずだけれど、彼女には何か足りなかったらしい。
僕には何の言葉もなく、他の男と付き合っていた。彼女が男性恐怖症を克服できたことを喜びたいのに、僕はもう、善人でいられる気がしなかった。
悪びれることもなく、これからは友だちとして付き合えだなんて。僕が今、どんな気持ちでいるのか想像もしてくれないらしい。それくらい、彼女は僕のことを優しい人間だと勘違いしている。
雨が降る。恐ろしく風のない夜。
僕は彼女らの新居の前にいた。手にはバールと縄を持っている。僕は監視カメラも気にせずに、堂々と歩いた。僕がこれから何をしても、刑務所に入れられる心配はないからだ。彼女のように無防備な窓ガラスを、僕はバールで割って家へ侵入。そのまま寝室を目指し、ふたりを絞殺……することはなかった。僕はただ、新品の建物を眺めながら、雨に佇む。
雨と涙でぐちゃぐちゃになった顔を覆って、
「 」と溢した。
持ってきた縄は、彼女らのためのものではない。
これは僕のための縄なのだ。バールはただの護身用だ。
さて、彼女は翌朝、どんな顔をするのだろう。
僕は何も期待しないで、手頃な樹木に己の命を預けた。