『閉ざされた日記』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
表紙から裏表紙まで真っ黒な日記があった。
中のページは白いが、書かれている内容は真っ黒――闇だった。
その日あった出来事、そして、「今日もあいつはああだった」「どうしてこれすらダメなのか」「ふざけるな」「許せない」……そんなことばかりが書かれていた。
久しぶりにその日記を見つけた。
「そういやこんなの書いてたなぁ」と感慨深い気持ちにすらなった。
あの時の私は病んでいて、この黒い日記に書き殴ることで精神を保っていた。暫くして限界を迎え、少し休むことになり、今はこうして落ち着いている。
ここに至るまでは大変な道程だったが、今なら「いろいろあったなぁ」と、まるで他人事のように思うことができる。
もう大丈夫。日記は閉ざされ、二度と開かれることはない。
燃えるゴミの袋に投げ入れると、口をきゅっと絞めた。
『閉ざされた日記』
禁酒をしようとしているが続かない
2週間が最高記録
医者に止められてるわけでもないが、何かいい方法は無いものか
失効したクーポンの券を握りしめるみたいに、可能性について考えている、価値も、なにも、わかってる、でも、なんになるん、それが、なんになるん?口に出しても出さなくても、過去も、今も、何もないのに、辛くも、楽しくもない日々は、誰に認めてもらえるだろうと、白い長い道を、山頂の扉を開くまで、考えてみることにする
『閉ざされた日記』
あのひとを亡くした日から
書かなくなった
日記帳
開けば瞬時に
折々の想い出が
溢れ出てくるから
いまはまだ
読み返すのは
あまりにも
辛すぎる
涙が乾いて
懐かしさと愛しさだけで
読める日が来るまで
その日まで
封印して
机の引き出しの一番奥に
仕舞い込む
# 閉ざされた日記
『閉ざされた日記』
森の奥に迷い込んだ僕は、廃れた家を見つけた。いかにも使われていない廃屋だった。
屋根は落ち、壁には苔が付き、屋内から木が生えていた。
その家の中で一番奥の部屋にそれはあった。木漏れ日に照らされたテーブルの上に置かれた一冊の日記。
それは簡単に読めないように、鎖と鍵で固く閉ざされていた。
だが、その鎖も風化しており、触れただけで簡単に崩れてしまった。
僕は日記を開いた。
ボロボロの紙には懺悔が書かれていた。
『私は愛してはいけない人を愛してしまいました。彼は素敵な人でした。見た目が美しいだけでなく、誰にでも優しく、何より私に優しかったのです。彼は私を愛している、私を守ると言ってくださいました。それが、家族に向ける愛だと私はわかっておりました。ですが、いつからか、彼を1人の男として愛してしまったのです。彼は何があっても私を守ってくれる。私を信じてくれる。その優しさを私だけの、私だけのものにしたかったのです。だから私は‥』
ページをめくった途端、紙は破れ砂となり、風に吹かれて行ってしまった。
どうして持ち主は、こんな日記をテーブルの上に置いたままにしたのだろうか。
まるで誰かに読まれるのを望んだように。
だが、それと同時に、読まれるのを拒否したい気持ちもあり、鎖と鍵を掛けたのだろうか…。
風に飛んでしまった日記の書き手の気持ちはわからない。
帰ろう。そう思ったとき背後に人の気配を感じた。
こんな森の奥の寂れた家に。
誰だろう。そう思って振り向いたが誰も居なかった。
『会いたかった…兄様』
そう嬉しそうに呟く声が聴こえた気がした。
-fin-
閉ざされた日記
わたしは日記を書いていた。
日記で望むと
日記に家族の不満を述べると
その願いがかない
不満がなくなることがある
家族が、
たぶん母が日記を読んでいる
と知った
カー、恥ずかしい
もう書かない
閉ざされた日記
「閉ざされた日記」
貴女が亡くなった後に
貴女の遺品整理中で貴女との交換日記を見付けました。
和本綴じで表紙は男結びで締められていました。
紐を解いて日記の内容に目を通しました。
病弱だった貴女は病院の看護婦さんのことや
先生や他の患者さんたちとの会話や
手芸を楽しんでいると書いていたことを
思い出しました。
最後のページには小さな紐で綴じられていました。
解くにも特殊な結び方のようでキツく結ばれていて
手では解くことは出来ませんでした。
このページだけ、何故、見れなくしてしまったのか、
私には分かりません。
ハサミで切ろうとしましたが良く紐を見ると
その紐は彼女が身に付けていた腰紐。
「…そっか…。自分がもう死ぬのが分かってたから…、
最後のページに…」
私は、彼女が、最後のページを見れなくしたのか理解出来ました。
日記を箱に仕舞い、他の残された腰紐で縛り直し、
箪笥に仕舞いました。
もうこの先、箱を開けることはないでしょう。
亡くなった彼女が決めた「閉ざされた日記」なのですから。
好きな子の日記帳が教室の机の上に無造作に置かれていたら、そりゃ読みたくなるでしょうよ。
たとえその日記帳の上に伏せた籠が棒に支えられて置かれていて、日記帳を手に取ったらカゴに捕まるタイプの罠だったとしても、籠くらいならすぐ脱出できるし、命に別状はないので大丈夫だと思う。
もしその籠が鉛とかでできていて、内側にびっしりトゲが生えていたら危ないけど。そんな殺傷力のある籠はそもそも籠として機能しないし、おれは無印良品に売っているような普通の籠の方が好きだなあ。
で、日記帳である。なんで学校に日記帳持ってきてるんだ。家で書けや。
忘れて行ったのだろう。外は真っ暗で部活も終わるこんな時間じゃ、優雅に日記帳読書、いや読書という言葉は書を読むだからこの場合読日記帳か、分かりにくいわ、ともあれ紅茶とか淹れて小指なんか立て飲みながらゆっくり日記を1ページ1ページ読んでも誰も咎めるものはいないのだ。
でも実のところおれは紅茶そんなに飲まない。麦茶が最強だと思っている。
話題を逸らそうとしても無駄だ。おれはこの日記帳を読みたい。おれにとってこれは彼女の攻略本だ。何が好きか、何が嫌いか、そしておれのことをどう思っているか。
おれのこと? 日記に書くほどおれは彼女の視野に入れているのか?ただ隣の席の平凡なクラスメイトで、たまにグループワークするとか、それくらいの関わりで。おれについては何も書かれていないかもしれない。それはそれでショックだな。
それに本人に無断で日記帳を読むなんてやっぱりできない。しかしこんなところに置かれていたら、おれじゃなくても他の人の目につくかもしれない。
それなら中身を見ずに、本人の机の引き出しにそっとしまっておいてあげるのがベストじゃないか。でもそうすると、どう足掻いても日記帳には触れることになってしまう。うっかり手が滑って開いちゃったらどうしよう。
「丸山くん」
何か、こう、素手で触ってしまうのに抵抗があるならハンカチとか、シャツの袖とかを間に挟んで処理しても良いし。おれは危険物処理班か。そうだ。これは危険なものだ。でもいくら間接的に触れたとしてもその質量は手で感じてしまう。日記帳を持ってしまう事実は変わらない。
「丸山くんてば」
じゃあ引き出しを開けておいて、日記帳を棒か何かでつついて、引き出しに落とすようにするか。待て、そうすると彼女の引き出しを開けるというこれまたハードルの高いことをやらないといけない。
「何してるの?」
顔を上げると、日記帳の持ち主である花村さんと目があった。
「うわあああ!」
後ずさりしたら自分の椅子につまずいてバランスを崩し、そのまま着席してしまった。
「すみませんすみません何も見てません」
おれは持っていた筆箱を振り回した。これで日記帳をつついて引き出しに入れようとしたのだ。チャックが閉まっておらず、振り回したついでにシャーペンが数本飛び出して床に散らばった。おれは何をしているんだ。
「見てないって、何が?」
花村さんは日記帳を持ち上げ、表紙を開けて中からキャンディを取り出した。
キャンディ?
「友達からもらったの。ブック型のお菓子セット。かわいいでしょ」
花村さんはにこっと笑って、キャンディを一粒おれに渡した。
「遅くまでお疲れさま、学級委員くん」
日記帳、もといお菓子の箱をカバンに入れて、彼女は教室から出て行った。
そういうことか。おれは手のひらに乗せられたキャンディを見る。透明なフィルムに包まれているのは、水色のハート型キャンディ。
彼女からおやつをもらうなんて、初めてだ。
記念に写真を撮り、包みをあけて匂いを堪能し、意を決して口に入れる。甘い。
日記帳ではなかったけれど、これはこれで悪くない。
【お題:閉ざされた日記】
【閉ざされた日記】
閉ざされた日記を
紐解くと
あの日常が浮かび上がる
どす黒い感情が
とぐろを巻く
やり切れない感情が
とぐろを巻く
持って行き場のない感情が
とぐろを巻く
労わるようにそっと撫で
また日記を閉ざした
自分だけが知っている驚くような事実や心情がそのまま書かれていて、他人がみれば感情を害して自分の評価を損ないかねないような秘匿された日記なんてのはそんなにはなくて、毎年のように新年も今頃になると、習慣になりきらず、開かれることなく無意識の片隅に忘れられてしまったような日記帖ばかり。
たいがいが無駄に日付が入った丈夫な雑記帳になってしまう...
私の人生における暗黒時代に日記を始めその日記は読めていない
明るいことを書くための日記だったけど開くとその時の状態が思い起こされて落ち込みそうだから
色んなものをその日記に置いてきてしまったからそこに戻ってしまっては抜けられなくなりそうだから
開ける時は私が真に強くなった証拠ね
閉ざされた日記
亡くなった、妹の机の上には閉ざされた日記が置いてある。
だが、誰もその日記を開けずにいてる。
何がかかれているかわからない。
いつ開けてみるのはだれが最初なのか。
あなたと過ごした2年とちょっとの間
私は欠かさず日記を書きました。
大切な思い出を忘れてしまわないようにと
彼とはもうすぐ3年の付き合いになるって時に
2人でデートに行った行きました。
あの日からその日記は開けていません。
彼はあの日私に別れを告げました。
彼は私との未来が見えないから
別れてくれと言っていました。
正直ショックで言葉を失いました。
私も彼も結婚適齢期を過ぎていたし
この人と結婚するのかななんて
考えていましたから
あれから数年後
私も彼も別の方とお付き合いをして
結婚しています。
あの彼との思い出日記は
実家の押し入れの奥に今も眠っています。
─────『閉ざされた日記』
亡き君と
交わした言葉も
約束も
忘れられない
閉ざされた日記
お題☆閉ざされた日記
◯閉ざされた日記◯
結婚30年。短いようで長い貴方と過ごした日々。
お別れは唐突で早く、気持ちの整理が追いつかないの。
貴方の遺した物を見る度に自然と涙が零れます。
口数が多い方では無かった。
お見合いで出逢い、新婚当初一度だけ聞いた事がありましたね。
貴方の妻が私で良かったですか? 幸せですか?と。
“あぁ”と一言の返事に少し寂しさを覚えましたが。
“この言葉は直接聞きたかったですよ…あなた”
新婚当時の日付が記してある懐かしい日記。
長く閉ざされていた日記の裏表紙、見つけて欲しいのか欲しくないのか分からないけれど懐かしい文字が並んでいた。
《良き妻、私は果報者だ》
少しだけ、私が隣にいくまで待っていて下さい。
私も同じだと、貴方に伝えたいんです。
閉ざされた日記
閉ざされた日記は黒く
負の感情で淀んでいる。
閉ざされた日記は白く
自分領域が守られている。
閉ざされた日記の世界はモノクロで
内と外のバランスを保っている。
#閉ざされた日記
妹は記憶喪失になった。
妹の部屋には鍵のついた閉ざされた日記が一つ
大量の血痕が付着していた日記があった。
妹の文字は独特で私達は警察の職員に文字の解釈を頼まれた。
いつか読んでもらえたらいいと、あなたに対する想いを、毎日書き続けた日記があります。
けれど、毎週顔を見て、色んな話をして。それでもあなたは、私が1番伝えたい事に気づかない。
顔を見て話しても伝わらない事を、文章にしたら伝わると思う?
自分に問う。
伝わると思えないから、そんな自問自答をしているのだ。
いつの間にか、書き続けることに否定的な自分まで生まれた。
時間の無駄だから。
なんのためにもならない、そんな日記。
今でも私の気持ちは続いている。
閉ざされた日記をこのままどうしようかと気に留めているという形で。
あなたに伝えたい思いを、未だ諦められない自分も続いている。
閉ざされた日記
五歳の時。初めてひとりで留守番をしていた時だった。ごめんください、の声を聞いて玄関に行くと、荷物を背負った男が立っていた。
品の良い中折れ帽を取りながら、貸本屋です、といった。字が嫌だ、と言ったら、ならこれを、と背負子から赤い本を差し出した。開いてみると、真っ白だった。男を見返すと、寝る前に読んでください、そういって去っていった。
夜、再び開いた。すると本のページから小さな光の玉が飛び出し、額の中に侵入してきた。その瞬間、眩しい映像が一気に流れた。これは……。
どうやら人の記憶のようだ。生まれてから死ぬまで。この記憶は、お医者さんみたいだ。頑張って勉強してお医者さんになって、沢山の人を助けて、助けられなくて。そういう映像が頭の中に映った。家族の映像もある。この人はなかなか幸せそうだった。
目が覚めた。朝だった。気になって本を開いたが、真っ白のページがあるだけだった。
それから毎晩、1ページずつ開いた。光の玉がいろんな人の記憶を映してくれた。新聞記者、先生、蕎麦屋さん、政治家、ケーキ屋さん、野球選手。よく笑う人、よく泣く人、外国の人、病気の人、誰かを心配する人、有名な人もそうじゃない人も。毎日、一人の記憶を見た。
時が流れた。私は、ベッドにいた。
全身だいぶ痩せた。こうやせ細った腕では、もう本のページをめくる力も出ない。
でも良く生きた。いい人生だった。
失礼しますよ、と声がした。閉じかけの目にうっすらと影が見えた。中折れ帽だった。
お代を頂戴に上りました、軽く帽子を取ったしゃれこうべがいった。
充実された人生のようで何よりです。ああ、何も心配はいりません。どうか安らかに。
そういって私の額に指を突っ込んで、光の玉を取り出した。しゃれこうべが玉を本に挟むのを見て、私はそっと瞼を閉じた。
閉ざされた日記?なんじゃそれ?
日記と言えば、たまたま書いてた日記帳に祖父の最期を記したことがあった。
その時はまさかそれが最期の記録になるとも知らずに。
そしてそこには、祖父の実の娘である伯母による記録も加えられた。
あの日記帳は今も遠く離れた実家に眠ってるはずだ。