川柳えむ

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 表紙から裏表紙まで真っ黒な日記があった。
 中のページは白いが、書かれている内容は真っ黒――闇だった。
 その日あった出来事、そして、「今日もあいつはああだった」「どうしてこれすらダメなのか」「ふざけるな」「許せない」……そんなことばかりが書かれていた。

 久しぶりにその日記を見つけた。
「そういやこんなの書いてたなぁ」と感慨深い気持ちにすらなった。
 あの時の私は病んでいて、この黒い日記に書き殴ることで精神を保っていた。暫くして限界を迎え、少し休むことになり、今はこうして落ち着いている。
 ここに至るまでは大変な道程だったが、今なら「いろいろあったなぁ」と、まるで他人事のように思うことができる。
 もう大丈夫。日記は閉ざされ、二度と開かれることはない。
 燃えるゴミの袋に投げ入れると、口をきゅっと絞めた。


『閉ざされた日記』

1/19/2024, 12:58:50 AM