「閉ざされた日記」
貴女が亡くなった後に
貴女の遺品整理中で貴女との交換日記を見付けました。
和本綴じで表紙は男結びで締められていました。
紐を解いて日記の内容に目を通しました。
病弱だった貴女は病院の看護婦さんのことや
先生や他の患者さんたちとの会話や
手芸を楽しんでいると書いていたことを
思い出しました。
最後のページには小さな紐で綴じられていました。
解くにも特殊な結び方のようでキツく結ばれていて
手では解くことは出来ませんでした。
このページだけ、何故、見れなくしてしまったのか、
私には分かりません。
ハサミで切ろうとしましたが良く紐を見ると
その紐は彼女が身に付けていた腰紐。
「…そっか…。自分がもう死ぬのが分かってたから…、
最後のページに…」
私は、彼女が、最後のページを見れなくしたのか理解出来ました。
日記を箱に仕舞い、他の残された腰紐で縛り直し、
箪笥に仕舞いました。
もうこの先、箱を開けることはないでしょう。
亡くなった彼女が決めた「閉ざされた日記」なのですから。
1/18/2024, 11:55:00 PM