「紅の記憶」
幼い時に別れた姉がいる
その姉はいつも夕方になると
テーブルの上に置いた鏡の前で、
口紅を塗っていた
日によって
その口紅の色は違っていた
必ず紅系色を選んでいた
時には淡く
時には真紅
時には深紅
時には秋色のような
時にはピンク寄りの紅色
ある日の夕方に
いつも通りに
姉は綺麗なワンピースを着て
紅の口紅を塗っていた
ただ、その日は
今まで見てきた口紅の色より
紅い紅い色…
その日を境に
姉は帰って来なかった
化粧品コーナーで
口紅を見ると
思い出すのだ
姉の最後の姿に
紅い紅い口紅をした唇を
「夢の断片」
淡く輝く光から伸びてきた無数の手に光の奥へ引き摺りこまれて
その先の光景を見た途端に絶叫とともに起きた
手を腕を確認する。手も腕もあるけど…?何かが…?
「見えない未来」
どんなに頑張って覚えて実行しても見えない未来(結果)に絶望
「吹き抜ける風」(一行詩)
吹き抜ける風とともに僕はでビル街の中を飛んでいく
「記憶のランタン」(一行詩)
一つ一つ火を付けていく 思い出させるため
「冬へ」(語り?)
秋をどっかに押し込んで第一冬歩兵軍が動き出したぞ
「君を照らす月」(一行詩)
月の顔は妖しくも光 君を照らす光は君の表情を般若に変える
「木漏れ日のあと」(一行詩)
木漏れ日が射した後に如雨露で絵を書き始めた
「ささやかな約束」(詩)
祝い事が嫌いな君にささやかな約束をした
それは、君の好きな馬巡り全国旅行の約束
「祈りの果て」(語り?)
画面に結果を見つめる先に祈りのは届かなかった(つまり惨敗)
「心の迷路」(一行詩)
買うか買わないかで格闘している
「ティーカップ」(詩)
君が作ってきたティーカップは世間で見るティーカップから欠け離れてる形をしてるけど、ティーパックが沈まないように端に切り込みが作られてる些細な気遣い
「寂しくて」(一行詩)
真夜中に目覚めるは寂しくて寒くてと布団に潜り込む飼い猫よ
「心の境界線」(一行詩)
ここまでは許せるけどここまでは入ってこないでと扉の明け閉めが激しい君
「透明な羽」(一行詩)
小さな体に黒と黄色の胴体に透明な羽根を動かして君は花の蜜の品定め
「灯火を囲んで」(一行詩)
暖かい光に囲まれて 聖歌を歌う
「冬支度」(語り?)
飼い猫の首筋に冬毛を発見したら自分も冬支度の合図
「時を止めて」(一行詩)
時を止めた世界は自分の時も止まることに気付くことはなかった
「キンモクセイ」(語り?)
窓を開ければ秋の到来を知らせる匂い…だけど…
あぁ、トイレ掃除をしよう
「行かないでと、願ったのに」(詩)
彼の地に行ってしまったアナタは標本となって帰って来た
標本になることを知っていたはずなのに…
「秘密の標本」(一行詩)
人体骨格模型は他メーカーの目や頭蓋骨の標本を密かに集めている
「凍える朝」(一行詩)
窓に結露の跡に指先で落書きをする君の姿
「光と影」(一行詩)
光は影になり影は光になる 二つの本当の姿は誰も知らない
「そして」(語り?)
絵本の最後はそして、王子様とお姫様は幸せに暮らしたとさ
でも初版は離れたり暮らしてないよ
「tiny love 」(一行詩)
一輪の花を君に捧げる 足りない愛かもしれないね
「おもてなし」(ミニ小説?)
最高の料理も良いけど、お握りとお新香と味噌汁と煮物がいいわと
社長令嬢のリクエスト
「消えない焔」(一行詩)
午後5時に点灯される炎は点灯夫の手によって管理されている
「終わらない問」(語り?)
終わりが見えないこの蒐集したモノの整理よ
「揺れる羽根」(一行詩)
孔雀色の羽根は鈍い音を出しながらも餌を貰いに行く姿は日常茶飯事
「秘密の箱」(詩)
小さな秘密から世界の秘密を詰め込んだ箱は
一人の女の手によってかき集められたのだった
秘密の箱をある国の首相に莫大な金額で取引中に
秘密の箱から五本の腕が現れ秘密の箱の中に二人とも引き摺り込まれて仕舞われてしまったとさ