『鏡』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
鏡
人間は自分自身の考えを、自分の「外」に反映している。だから、自分自身はもちろん自分が関わるあらゆるものに「自分の考え・観念」をインパクトしている。影響力があるのだ、がっっっつりと。
私の目に映る世界は私が自分の中に持っている「世界はこういうもの」という「考え・解釈・観念フレーム」の反映だ。
さて…現在に私の見ている世界は、私個人に直接関わるのが限定的「部分」であるにせよ、ひどいものだ。言葉にできないほど、酷い。次々と、非道さはエスカレートしたものが展開され、見える世界のトーンを清明なものにしようと足掻くも、新たな闇が深くうごめく。これが鏡なのか?
人間の闇に、もしくは人間が撒いた闇の火種に反応した怒りと復讐心が顕す苦痛の坩堝が放つ残酷さに、飲み込まれそうな何人もの子どもたちの手を、つかんで留めるのが精いっぱいの現況。私はいったい何を、どのレベルで見ている…?
現実から逃げるためじゃない、現実に持ち込むためのvehicle。
消えるためじゃない、照らすためにある光。
こころ喰われるためじゃない、こころ育み成長するための資材である陰と闇。
疲れの自覚は諦めるためじゃない、休養の必要を満たすため。満ちて突破口を狙え。
どんな鏡像だろうと、自分自身の心がいまどこに居るかを知る地図にはなる、というのが現実ってやつのはずだ。現実は現在地を示すだけ…なら、目的地が消えたわけじゃない、きっと。海を目指していいはずだ。
現実は鏡、現実は現在地表示、現実は目的地までの地図。
環境は鏡、身体は鏡、出来事も鏡。
すべて必要な、チャレンジと癒し。
鏡(真似したいお年頃)
普段何かと喧しい双子が静かなことなど滅多にない。
そういう時は大抵余計な、いけない何かに夢中になっているのはもう、お約束だった。
「………おい」
―――ぎくり。
漫画で擬音語をつけるならそれが一番的確であろう双子どもの動作に、思わず吹き出しそうになる。
それでも俺はあくまでも低く、威厳を持って鏡台の前に座る二人に背後から声をかけた。
「………。にいに」
「何しにきた」
振り向きもせず問いかける不自然さに俺は首を捻る。
「何ってこっちのセリフだろうが。親の鏡台の前に居座って、二人で一体何して―――」
るんだ、と。言い終える前に振り返った二人の顔は、―――何とも形容し難いほどの、面白いくらいぶ厚い化粧で覆われていた。
「く、………くくっ」
笑うまい。態度に出すまい。と思えば思うほど込み上げてくる可笑しさに耐えきれず―――俺はとうとう腹を抱えて、双子を目の前に大笑いしてしまう。
「お、お前ら………その、顔」
「にいに! しつれい! れでぃーに向かって!」
「何でわらう! れでぃーにあやまって!」
甲高い声で騒ぐ二人のうるささに俺は耳を塞ぐ。
一体何に感化されたんだ、こいつらは? いやそんな顔でこっち見んな。笑いが止まらん。
「てか謝るのはお前らの方だろ。バレても知らんぞ」
「「え」」
双子が一瞬にして動きを止める。と同時に、青ざめた表情で俺に縋るような目を向けた。
「今からいそいで落とすから、にいにだまってて」
「おねがい。ね?」
「えー? 今まで散々好き勝手やられたからなあ」
どーすっかなあ。
ニヤニヤと圧をかけると、それを受けて途端に双子の態度が一変した。
「いいからだまってて。じゃないとおねーさんにこれ送るよ」
取り出したのは、またも俺のスマホ。
しかも昨日一悶着あったタオルケットで気持ち良く眠っている、写真―――ではなく、まさかの動画。
「は!? 何だそれ!!」
「『にいにはおきにいりのタオルケットを捨てられてけきどして泣いてました』って今からおくる?」
!!!
―――俺はそれをぶん取ろうと必死に追いかけるが、双子は見事な連携プレーで悉く脇をすり抜けていく。
「だまってるってやくそく!して!」
「して!」
〜〜〜〜〜………。
「わかった! わかったから消せ、それ!」
「落として、いんぺいできたら消してかえす」
隠蔽………。
悪賢さに磨きがかかってきた双子どもに、俺は脱力して肩を落とす。
いつかお仕置きしてやると歯噛みするものの、想い人に何を吹き込まれるかと思うと迂闊には手を出せない……。
―――そんな俺に双子どもは鼻歌交じりに鏡台の前でメイクを落としながら、にやりと笑みを浮かべるのだった。
END.
「水鏡、鏡文字、鏡餅、鏡面反射、魔境現象、合わせ鏡に内視鏡に心理学としてのミラーリング効果、脳科学のミラーニューロン。三種の神器に『白雪姫』に『鏡の大迷宮』。鏡花水月は四字熟語よな」
8月、難題お題の方が簡単お題より多い説。
某所在住物書きは鏡という鏡を検索で探し回り、己の引き出しの無さを再認識して早々に力尽きた。
単語は複数出せる。そこから先が酷く少ないのだ。
「『田んぼの水路とかため池とか、風の無い日には空だの風景だのがよくリフレクションして、エモい写真撮れる』ってネタは知ってるが、知ってるが……」
前々回で、そういう田舎の帰省シリーズ、使っちまってるもんな。物書きはため息を吐く。夜の湖に鏡面反射する月以外のネタはどこにあるだろう。
――――――
ようやく東京も、37℃だの38℃だの酷い最高気温をあまり見なくなってきた。
なんなら木曜日に、最高気温30℃未満が表示されてる。「最低」じゃない。「最高」だ。
常時真夏日に慣れきった体だから、木曜には「寒い」なんて言葉が出てくるかもしれない。
もうすぐ東京の夏の終わりが来る。 多分。
なお私が3月一緒に仕事してる同僚の付烏月さん、ツウキさんによると
『人間、実はバチクソ酷く暑い日はそうでもないけど、適度に暑い日は犯罪が増える説』らしい。
それが事実かどうか分かんないけど、
今日は、いっつも過疎って常連さんくらいしか来ない私達の支点に、数ヶ月ぶりに変なお客さんが来た。
暴言吐くおっちゃんだ。
言葉のブーメラン投げるおっちゃんだ。
理解不能で意味の通らない主張を続けて怒鳴り散らしてウチの新卒ちゃんを酷く怖がらせて、
最終的に、支店長が満面のビジネススマイルで警察に通報して、おまわりさんにご送迎頂いた。
「言葉は鏡だ」
めっちゃ怖がって震えてる新卒ちゃんのメンタルケアをしながら、支店長が言った。
「覚えておきたまえ。相手の話す言葉と抑揚を知れば、相手がどのような人間かよく分かる。
言葉は君の性質を正確に映し出す鏡なのだよ」
新卒ちゃんは真面目だから、言われた助言をちゃんとメモに残す――で、納得したらしく数度頷いた。
鏡ね(ところで:支店長のあだ名が教授)
……鏡ねぇ(ところで:ブーメラン客の鏡とは)
「さっきのおっちゃんは、『言葉が自分の鏡』ってだけのハナシじゃなさそうだけどねぇ」
「どゆこと付烏月さん」
「『言葉は鏡』は、俺もバチクソ同意なの。賛同なの。でも人間、加齢とともに頭のブレーキがだんだん緩くなってきちゃうんだなぁ」
「で?」
「しゃーない部分はあるの。我慢しづらくなっちゃうのも、多少は脳の発達過程なの」
「それでもキレて吐いた言葉は『その人』でしょ」
「ごもっともです」
言葉が鏡で加齢でブレーキで、難しいなぁ。
私と付烏月さんのハナシからも学びを得ようとしてる新卒ちゃんは、なにやらこっちを見ながら、だけどメモに触れてるペンが止まってる。
何か書きたいけど、どう書きたいか分からない、そんな悩みの顔をしてた。
「ちなみにそれ言ったら、言葉を鏡とすると顔とか仕草とかも鏡でコミュニケーションツール」
困ってる新卒ちゃんにイタズラな笑顔をして、付烏月さんが言った――ホントに良い笑顔だ。
「言葉で言ってることと心で考えてることが違う人の顔よく観察してみなよ。多分左右非対称だよ」
ヒヒヒ。自慢気に笑う付烏月はバチクソ楽しそう。
「言葉は鏡」。たしかに鏡だと思った。
付烏月さんってそーいうところがあると思う。
「どしたの後輩ちゃん」
「なんでもないです」
「なんか俺のこと考えてそう」
「なんでもないでぇ〜す」
外面だけを見たままに映す
不思議な道具。
どうも私は笑っている。
笑顔が一番だとよく言われる。
誰だって笑顔が似合う
心まで映してくれたら
こんなに泣かなくて済む。
たまには嫌な姿すら見せてしまいたい。
笑ってなどいない。
笑ってなどいられない。
–鏡–
《鏡》
映す 反射 左右反転 天体望遠鏡 御神体 青銅 継母の問いかけ 曇る ガラス ひび割れる 異世界への入口 化粧台 姿見 コンパクト ヴェルサイユ トリック 前向きのまま背後を見る よーじやのあのマーク
鏡に映るのは、自信、勇気、恐れ、怒りがよく見える。
普段から鏡はそんなに見ない、
自分が見たくないものが見える気がして。
色んな人と関わっていると、
自分ってなんだろう
何が自分にとって大事なんだろう
ってよく分からなくなるときがある。
そんなときにふと鏡で自分の顔をみると
ほっと胸をなで下ろせる。
あまり鏡で自分自身を見ることは無いけどたまに自分に自信をつけるために鏡を見ることはある
今の自分は
自分の行きたい
人生を生きていますか?
鏡で見てみたいです。
全うな人生なら
鏡は光輝くでしょう!
とてもすてきな
あなたのアート
YES!取れない
YES!落ちない
鏡に貼られた
アンパンマンのシール
鏡
自分の姿が見られるもの
でもなんでだろう
その鏡によって少しだけ見え方が違うように見えるのは
ものって不思議
鏡
私の前に座るあなたが
私を映し出しているというのなら
あなたが語る声や
私の声に耳を傾ける表情は
私も同じなのかと思うと
不思議なくらい
同じ声や表情をもっていて
あなたには大切な人がいるのに
私がその大切な人なのではないかと
勘違いしてしまいそうになる
あなたは悪い人
お題『鏡』
鏡を見て、自分の顔を確認する。
腫れぼったかった一重は、まぶたを切開して二重にして、ついでに目頭も切開して目の形をよくした。
うすかった唇も分厚くなりすぎない程度に厚くした。
ホームベースみたいでコンプレックスだった顎は切って卵型といえる顔の形になった。
鼻も高くした。
その結果、今まで私のことをブス呼ばわりしてきたやつらが急に手のひらを返すように「かわいい」だの「美人」だの言ってくるようになった。
ついでにかっこよくて金持ちの彼氏も出来た。
でも何かが足りない。何が足りないんだろう。
また鏡で作られた顔を見ながらふと、思う。見つめているうちにふと、鼻が気になってしまう。
「あ、鼻が低くなってきてる。メンテしないと」
私は鏡からはなれるとさっそく行きつけの美容外科のネットサイトにスマホでアクセスして、予約状況を見始めた。
【鏡】〜Mrs.GREEN APPLE様〚Hello〛〜
君はもう少しばかり
人をそっと愛さなきゃね
君はもう少しばかり
鏡の人を愛さなきゃね
置き去りにされた
愛のある唄と共にgood night
僕らの世界は
想うほど汚くないからさ
――――――――――――――――――――――――――
※(Oh)の部分をなくしています!
鏡の中には、きっと私とは違うわたしがいるの。
あの中の私は、ポジティブで、世の中の苦楽をすべて噛み分けた、私よりもずっと大人なわたしに違いないわ。
その中で、わたしはきっと優雅にくらしていて、
日々の楽しみをわたしなりにみつけているはずだわ。
もう一人のわたしで
同じわたしで
こちらは現在人生迷走中
そちらは一体どんな人生送ってる?
鏡の前に立って、深夜に「お前は誰だ?」とか言ったり、合わせ鏡にして友だちと一緒に勝手に怖がってたりしてたの懐かしい。
いまは鏡に写る画の酷さに萎えてばっかだけど、鏡がないと生きていけないレベルで日常に染み付いてるなあ。
何年ぶりかにシラユキヒメ読んでみたくなった、継母視点のやつ。
問い掛けには答えない
自問自答にしかなり得ない
誰と問えば見慣れることも無い
自分なんていつも曖昧だと思った。
ー 鏡 ー
鏡に映る痩せた自分に
歳を重ねたな、と一人つぶやく
愛した君は、まだ幼く
離れて別の思い出を重ねるのだろう
ごめんね
ありがとう
待ってるよ
君が思うよりずっと
頑張ったよ
鏡は致し方なく少しだけみているよ
君と離れてから
2人の刹那さにずっとずっと
不思議な感じがする
どこで会える?
君を、忘れずにもう会えない日が来るなんて
優しさに無理はしないでね
砕けた鏡の破片ひとつひとつに、小さな私が映っている。
そのうちの一つくらい、他所を向いたり、違う表情をしていたりするのではないかとじっくり見つめてみたが、鏡の中の私はどれもこれも面白みのない顔で見返してくるだけだ。
そういえば、鏡は悪いものを跳ね返してくれると聞いたことがある。
確か母方のばあちゃんが言っていたのだったか。
妊婦が葬式や法事に出席するときには、胎児を連れて行かれないように腹に鏡を潜ませるのだと教えてくれたのもこのばあちゃんだった気がする。
しかし考えてみれば、亡くなった親類縁者を、胎児を連れて行く悪霊扱いしているのだから酷い話だ。
神棚に鏡が祀られていたのも、同じ理由なのか。
疎い私には良くわからない。
しかし、こうして断面を晒している鏡は、魔除けのアイテムと言うよりは、寧ろ鏡の中になにかを閉じ込めてしまう、封印のアイテムのように見える。
いいものも悪いものも、触れたもの皆封じ込めてしまうような。
このまま見つめ合っていると、鏡の中の私と入れ替わってしまいそうだ。
とりあえずこのままにしておくわけにはいかないので、ちりとりと箒を持ち出して破片を片付ける。ガシャガシャと音を立てて、破片がちりとりに集められていく。
雑多に反射する光は相変わらず私を映し続けている。ビニール袋にまとめ、新聞紙で包み、さらにビニール袋に入れて、ワレモノ注意と書き添える。
これで終わりだ。最早私を映すこともない。
(お題:鏡)