『鏡』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
みんなちょっと鏡に映った自分嫌いすぎるだろ。醜い醜いって。
多分言うほどそうでもないぞ。多分。多分な?
でもぶっちゃけ自分としちゃ、全人類ヘルメットか仮面かつけてた方がいいんじゃねとか思ってる。
なんかあれらしいぞ、人の顔の見えない部分は皆想像で補って考えてるらしいから、自然と無意識の内に面良く見えてるらしいな。
不謹慎ながら、自分正直コロナ期間中はマスクのおかげでだいぶ人の見え方が良くなって、だいぶ助かった節があってさ。
だから皆徐々にマスク取っていってた時は「なんか思ったよりも面良くなかったなコイツら」とか内心実のところ思ってたりした。
最初の下りを思い返す。
ごめんやっぱそうでもあるかも。強く生きろよ。
鏡、鏡、
割らなきゃ、割らなきゃ、
鏡、鏡、
どこ、どこ、
お家に帰りたいよ、早く帰りたいよ、
誰かいるの?私はどこなの?
ねぇ、ねぇ、私はどこなの?
鏡、鏡、
割らなきゃ、割らなきゃ、
私の為に、皆の為に、私が、割らなきゃ。
鏡、鏡、鏡、
割らなきゃ、割らなきゃ。
✡
夏目友人帳より
『鏡』
小さい頃は祖母の三面鏡が憧れで
思春期には学校のトイレで前髪巻いていたり
いつから、鏡を見るのが苦手になった
自信がないのか現状を見たくないのか
鏡の中の自分と目が合わないようにしている
でもそれじゃ“今の”自分が可哀想
自分とちゃんと向き合って
自分のことを愛してあげられたら
見える景色も変わるのかも
鏡に映っているものは必ずしも正しいとは限らない。
私達は脳が補正した世界を見ている。
同じものを見ても感じ方が違うように、
見えるものは少しずつ、隣の人とは異なるのかもしれない。
何が正しいかも人によって違う。
あなたの、私の、正しさは
自分への問いかけであり人に押し付けるものでは無い。
鏡に写す自分の感じる「正しさ」は
その鏡の向こう側を思うところからはじめたい。
【鏡】
十歳のアンは、朝起きると必ずベッド横の等身大の鏡に挨拶をする。おはよう、と言うと、鏡もそっくり同じ顔と同じ声で、おはよう、と返してくる。瞬きのタイミングだけが、ときどき違う。
この国の富める者はみんな、自分専用の“魔法の鏡”を所有している。鏡は自分と一緒に成長し、やがて欠けていく。よくある平面の鏡と違って、“魔法の鏡”は欠けやすい、アンは両親からそう教わった。
ある日、アンは馬車の暴走事故に遭って片足を失う大怪我をした。手術を受けたアンは両足に戻ったが、鏡は片足が欠けてしまった。アンは自分の美しい鏡が欠けたことを嘆いた。鏡なのだから、そっくり同じでなければならないはずだ。そう思ったアンは、鏡と同じように自分の片足を断った。
「これで同じだね」
鏡が持ち主よりも先に言葉を発することはあり得ない。だからそう言ったのはアンであるはずだった。手斧を持って義足で立っているのもアンであるはずだった。血にまみれたドレスで倒れているのは、鏡のほうだ。いや、先日の事故を思い出させる強烈な痛みを感じているのは自分なのだから、自分がアンだったのかも知れない。どちらが所有者でどちらが鏡なのか、アンはわからなくなってしまった。本物のアンも、鏡のアンも、どちらも美しさは変わらない。どちらも片足が欠け、どちらも赤が似合っている。そっくり同じなのだから、どちらがアンでも同じことだろう。
「これで同じだね」
アンはもう一人のアンと同じ表情を浮かべ、同じ声を返した。
アンの事件があってから、魔法のようだともてはやされていたクローン技術は、一転して忌避されるようになった。研究所に出資する貴族はいなくなり、街では出稼ぎをする研究者のクローンが目立つようになったという。
「時代は合わせ鏡、どうせまたすぐに俺らの力を必要とするやつが現れる」
研究者のクローンはみんな、口癖のようにそう言っていたそうだ。そして、中流階級で双子の出生率が増えたのも、この時期である。
「鏡」
笑っているはずの私の顔は
どこか見下しているような目をしていた?
【#78】
鏡
鏡を見て「まあこんなもんか」と思っていた顔も、カメラで撮られると残酷な事実があぶり出される。鏡を見るときの目ってやっぱり補正されてるんだな。そういえば、美容室の大きな鏡で見たときも「こんなだったっけ!?」と驚くことがある。元々十人並み以下の顔だけど、見慣れてたらこんなもんかで済むものなんだけど、いつもと違う環境の鏡とかはやっぱり違うね。ショック。
・鏡
今付き合ってる人は鏡と言っても過言では無いくらい自分自身と似ているらしい。
でも私、彼と違ってスマホなんて弄らないし、先約より趣味優先しないし、他に異性なんて作ってないのにね。
一体誰がそんな適当なこと言ったんだろう。
クズが己を正当化したいがために広めた嘘としか思えないや。
「鏡よ鏡、この世で1番美しいのは誰?」
「それは貴方です。この世で1番美しい」
そう言ってくれた。
毎朝言ってくれたわよね、
「貴方は美しい、口紅も宝石も必要ない」
そして毎晩言ってくれたわよね、
「こんな美しい貴方を映せて幸せ」
「ずっと貴方だけを映す鏡でいます。」
そう言ってくれたわよね。
それなのにどうして、
映っているのは私じゃないの?
粉々に砕けた鏡の破片に
醜い私が映っているの?
ねぇ、早く答えてよ、
「この世で1番美しい」って
「美しい貴方だけを映す鏡です」って
◎鏡
王国の広場には、夜中0時に質問を投げかければ正確な答えを教えてくれる鏡があった。
夜な夜な国民が訪れては質問をしていく。
「鏡よ鏡───」
***
某日男が訪れてこう言った。
「この世で一番の、不良物件は俺ですかぁ?」
『彼女と喧嘩をしたのだな。答えは──』
「いや、待って」
『……なんだ』
「俺にだって言い分ってのがあるんだよ!」
『私は質問に答える鏡だ。愚痴なら他所に行って───』
「アイツさぁ!家でさぁ!俺の許可もなくマンドラゴラ植えてて───」
『憲兵さーん!』
***
某日少女が訪れてこう言った。
「ねぇねぇ、アタシね!学校に行きたくないの!先生ったらね!男の子にばっかり───」
『……質問は?』
「無いわよ!そんなことよりね───」
『憲兵さんとか親には黙っててあげるから!早く帰りなさい!!』
「嫌よ!折角夜のお外に出れたのに!もったいないわ!」
『夜のお外は危険なの!!』
***
某日老婆が訪れてこう言った。
「じいさん……」
『……』
「じいさん……」
『……』
「……じいさん」
『……』
「おや、じいさん。口がついてるってのに返事もないのかい?そろそろあたしの杖が火を吹くよ?」
『いや!【鏡よ鏡】くらい言えよ!!』
「おや、返事できるじゃないか。まったく、じいさんったらモウロクしちゃって……」
『アンタもな!』
「あ゛?なんか言ったかい!?」
『あ゛ぁ゛ーー!なにも!なにもない!』
「そうかい。次なんか悪く言ったらぶっ叩くからね」
『もう嫌だぁ!憲兵さぁーん!!』
***
某日以下略。
(おや、今日は誰も来ないな?)
「鏡よ鏡……」
(憲兵さんじゃないか)
「アンタが鏡に乗り移った悪魔だってのは本当なのか?」
『……答えは”そう”だ。神の怒りに触れたために封印されている』
「そこまで聞いてないぜ?」
『……口が滑った』
「ははっ、前から思ってたがアンタ随分と人間らしいな」
『人間らしいだと?私がか?』
「なんだ、自分のことはわからないのか?」
『……”そう”だな』
「なら、封印の解き方もわからないのか?」
『”わかる”。だが、協力者が必要なのでな。無理な話だ。』
「ふぅん。……じゃあ、協力してやろうか」
『……何を期待している?』
憲兵を満月が照らす。
鏡───悪魔は目を見開いた。
その表情に、目を奪われた。
「解放したらさ……俺の旅の相棒になってよ」
『憲兵さん……さては貴様阿呆だな?』
「駄目なのか!?」
『ハァ……せめて、【自分を殺さないこと】くらい条件として提示しろ!悪魔との取引なんだぞ!?』
「えぇ……じゃあ、俺を殺さないこと。それと、俺の旅の相棒になること。これでどうだ!」
『本当にそれで良いのか……?まぁ、良いだろう。契約成立だ!手を差し出せ!』
憲兵が鏡に手を添えると表面が波打ち始める。
いつの間にやら憲兵の姿を映さなくなった鏡の奥に人影が映った。
徐々に近づいて来るその人影は、紅い目をギラリと光らせると憲兵を押し倒してその姿を現した。
「ぅおわっ」
『ふふ、はははっ!久々の外界だ!』
悪魔は立ち上がり体を伸ばす。
『憲兵さん、良くぞ解放してくれた!私の名はセトゥ。セトとでも呼ぶといい。』
「そうかセト、よろしくな。俺はハルスだ。憲兵は辞めるからそう呼んでくれ」
二人は笑い合い、満月の下を歩く。
ひび割れた古い鏡はその後ろ姿を鏡面に映し出していた。
「それは自己暗示であり呪いでもある」
「鏡にうつる自分に向かって『お前は誰だ』って言い続けると、発狂するらしいぞ」
「あー、なんか聞いたことある。何回もやってるうちに自分が誰かわからなくなって、鏡の中の自分に恐怖心を抱き始めるとかなんとか」
教室の隅でこの話を聞いてから暫くは、鏡のなかの自分と目を合わせるのが怖かった。
小さい頃、鏡が怖かったから尚更。
鏡にうつる母は、普通に見ているのとどこか違って──左右逆だということが、何故かとても怖かったのだ。
今、その鏡に真っ直ぐに向き合っている。
家のためだけに嫁ぐ私が、しなくてはならないことは、いつまでも私のなかに巣食うあの人への想いを断ち切ることなのだろう。
今からすることは、自己暗示であり、呪いでもある。
正気でなんていられるはずがない。
どんな代償でも払う。
全て忘れても構わない。
良かったことでさえも。
自分の想いを捻じ曲げるくらいならば、心ごと全て自分で葬ってしまおう。
鏡にうつる自分に手を伸ばす。
────鏡
鏡に映った私はその瞬間(とき)によって変わって見える
時に強く前向きにまだましな顔してるって思ったり、時に弱くすぐにでも崩れて消えてしまいそうな程醜く歪んで見えたりもする
他の人はどうなんだろう
いつも同じに見えるのかな
「鏡」
私は、ある「鏡」を持っている。
これは、母の形見。だから誰にも見せてはいない。
母の他界する前に言われたこと。
「この鏡は、お前以外みてはいけないよ。」と
ある日、私はその鏡を使いながら化粧をしていると、
友人が、「鏡」を覗いてきました。
私は、「鏡」を見て驚きました。
「見ちゃだめ」と声を上げてしまいました。
私は、「鏡」で見ると友人の顔が死人の顔に映りこんで
数年後、友人は不慮の事故で他界しました。その顔が
あの時、「鏡」で見たのと同じ顔だった。
私はそれ以来、あの「鏡」が怖くてあるお寺に持って行き
お祓いしていただき、住職が、言うには
「その鏡は、見たものの死人の顔が映り込む。持主には
それが見えるが、写っているものには見えないようじゃ。」
といわれましたので、その「鏡」はお寺に奉納しました。
それ以来、新しく「鏡」を変えかえました。
(これはフィクションです。)
【お題:鏡 20240818】
『お前、歳食ったよな』
それは、唐突に掛けられた最愛の人からの最悪な言葉。
出会った頃に比べれば、当然私も歳をとります。
だって人間だもの、エルフや吸血鬼じゃない、普通の人間の女ですから。
これでも色々と努力はしているし、友達には若いねって言われるけれど?
『俺さぁ、オバさんって無理なんだわ』
半分ニヤけた顔でそんな事を言っているけど、私がオバさんなら、貴方もオジさんよね?
だって私達、同い年じゃない。
出会いは二十歳の時、友達の紹介で知り合った。
あの頃私は大学生で、貴方はバイトをしながら役者を目指してた。
時間もお金もあまりなくて、デートと言えば家で映画を観るとか、近所の大きな公園で一日中話をしたりしてどこかに旅行に行くとかそんなのなかったけど、二人の距離は近かった。
私の就職を期に同棲して、少しだけ生活に余裕が出来たけど、やっぱり旅行とかはできなくて、それでも毎日が楽しかった。
ただ、多分きっとその頃から少しずつ、歯車がズレ始めたんだと思う。
私はもっとお給料が良い会社に務めるために、勉強して資格を取って転職した。
少し忙しくはなったけれど、貰えるお給料は倍近くまで増えた。
そしたら、貴方はいつの間にか働くのを辞めていた。
役者の仕事に専念したいから、確かそんな事を言ってたような気がする。
増えたお給料はほとんど貴方に渡す感じになっちゃったけど、それでも構わないと思ってた。
それで貴方が追いかける夢に近づく事が出来るのならば、と。
でもきっと、これがダメだった。
私は更に頑張って、キャリアアップし給料も増えたけど、貴方は何も変わらない⋯⋯ううん、寧ろ昔ほどの情熱が無くなって、役者の夢も何処かに置いてきているみたいだった。
『と、言うわけで、お前もういいや。光莉(きらり)が俺の新しい女。若くて綺麗だろ?』
そりゃそうよね、二十歳の子と私とは一回りも違うもの。
もちろん貴方とも十二歳離れているけど。
まぁ、その瞬間目が覚めた、というか、愛が冷めたというか。
「はぁ、馬鹿らしい」
どうしてあんな男が好きだったのか、過去の、いえ五分前の自分に聞きたい。
愛情なんてゼロどころかマイナスを更新中、留まるところを知らない。
『お前、部屋出ていけよ』
ポカーンですよ、ええ、開いた口が塞がらないとはこの事。
出ていくのはあんただろうが!
あの部屋の契約者は私で、あんたじゃない。
因みに、家賃も水道光熱費も食費もスマホ代もあんたのお小遣いも私が稼いだお金だから。
もっと言えば、家の家具も家電もぜーんぶ私が買ったものですから!
そのままだと、罵声を浴びせるところだったから化粧室に来たけれど、さてどうしてくれよう。
「⋯⋯そうね、気にする必要はなくなったんだし、いいわよね」
鏡の中の自分に言って、早速一本電話を入れる。
相手は以前から声を掛けていただいていた、とある人。
明日話す約束をして、電話を切った。
こうなるとやらなければならない事が山積みで、一分一秒でも時間を無駄には出来ない。
「遅かったな。それでいつ出ていくんだ?」
「⋯⋯すぐには無理だわ。2週間くらい時間が欲しいんだけど」
「チッ、仕方ねぇな。早くしろよ」
「⋯⋯えぇ」
「俺は暫く光莉の所にいるからな。あと、今月分、俺の口座に振り込んどけよ」
「⋯⋯わかったわ」
言いたい事を言うだけ言って、二人は腕を組みながら店を出て行った。
勿論、支払いは私が行う。
何で別れた彼女からお小遣いが貰えると思ってるのかしら?
まぁ、馬鹿の考えることは分からないわ。
とりあえず、不動産屋に連絡をして、引越しの準備もしないと。
暫くはウィークリーマンションでいいから、その辺は今日中に決めちゃおう。
後は、レンタル倉庫も借りて⋯⋯、うん、やっぱり忙しくなるな。
あの日から今日でちょうど二週間、こんなに早くことが進むとは思わなかった。
「⋯⋯しつこいなぁ」
スマホの画面には元彼の名前が表示されていて、今朝から既に百件近い着信が入ってる。
LINEのメッセージの数も半端じゃない。
『鍵が開かない!どうなってるんだ!』
『光莉の荷物が入れられない』
『返事をしろ!』
『賠償を請求する』
『ふざけるな』
『無視するな』
大体がこんな感じ。
まぁ、そろそろ教えてあげてもいいか、暫くは⋯⋯下手すれば一生会うことも無いだろうし。
『部屋は解約したので入れません』
『貴方の荷物は九州のご実家へ着払いで送りました。今日辺り届くと思います。ダンボールで30箱くらいです』
『私は今から日本を離れます。では、光莉さんとお幸せに』
『あぁそうそう、光莉さんに伝言です。畠中裕二さんの奥様と名乗る方が「慰謝料はきっちりいただきますから。逃げられると思わないで下さい」と仰っていました。あと、同じ内容の事を佐倉修造さん、細田嘉人さんの奥様も仰っていました。確かにお伝えしましたので。それでは、お元気で』
「着信は拒否にして、LINEはブロックっと。うん、これでお終い」
空港の化粧室の鏡に映った自分を見つめる。
2週間前とは随分と違う、晴れ晴れした顔の女が一人、この先の生活に夢と希望を抱いて笑っている。
二年前から話のあった海外勤務。
何度か出張という形で行ってはいたけれど、元彼の事があって、断っていた。
が、あの日の前日、また海外勤務の話をされた。
向こうでそれなりのポジションが約束されている話で、今までとは待遇が全然違う。
キャリアアップにも繋がるし、勿論自分の力を試すのにも最高の環境が用意されていて、どうしようか悩んでいた。
そこにあれだ、断るはずがない。
OKの返事をしたところ、あれよあれよという間に話は進んで、今日、フライトというスケジュール。
まぁ、ひと月後に一度戻っては来るのだけれど、その時もこんな笑顔で居られるよう、私は私にために頑張ります!
━━━━━━━━━
(´-ι_-`) 鏡を見て、マイナスの面ではなくプラスの面を探すようにしてます。
No.94『鏡』
鏡よ鏡、世界で1番〝醜い者〟はだあれ?
この答えは返ってこない。これは魔法の鏡じゃないから。
でも鏡に映る私が言うんだ。
「それはお前だ」
って。
鏡
現代日本で鏡を持っていない人はそういないだろうな。個人ならともかく鏡が家にないって人はいないんじゃないか。
まずどの家にもある身だしなみを確認するための必須アイテム、鏡。俺は一人暮らしだけど鏡は三つ持っている。
一つは携帯用の小さな鏡。二つ目は設置できるタイプで顔が映るくらいの大きさの鏡。三つ目は全身を見るための姿見。
俺は割りと鏡を持っているほうだと思うけどそれでも普通はこの三つのどれかは持っているだろう。
この三つの鏡だと一番持っている人が少なそうなのは姿見かな。俺ももらっただけで自分で買ったわけじゃないし持ってない人はそれなりにいそう。
姿見は当然だけどでかいからな。それも買うハードルがちょっと高いよな。もし俺が姿見を持ってなかったとしたら別に買わないだろうし。
ここまで割りと書いたけど今日はなにもない無の日記って感じだ。自分で書いててもだからなにって思ってた。
だって鏡だもん。小説ならともかく日記で鏡をお題になにを書けというのか。鏡にまつわるエピソードなんてないし。
最近のガチャガチャで一番気に入っているのが、スプーン印の上白糖やグラニュー糖のミニチュアミラーなのです。
縦5cm×横3.8cmと小さくて可愛くてしかも実用品という、まるで走攻守三拍子揃った有能さ。このサイズがリップポーチ等に入れて持ち運ぶのにいい感じなんですよ。
そういえば昔、祖母が使っていた鏡台には布が掛けられていました。
実は子どもの頃、その鏡がちょっと怖かったんですよね。
その布は鏡を保護する為のカバーだったと思うんですけど、私はそこに何か隠されているんではないかと思ったりして。何か封印されているんじゃないか、夜中に何か出てきたらどうしようとか。
隠されているからこそ、その向こう側を何故か怖い方向に想像してしまう。多分、畏敬の念みたいなものを感じていたのでしょう。
まぁでも、鏡を覗くということは、深淵を覗くことに似ているのかもしれません。
「鏡は深淵に似ている」などと適当なことを言いつつ、今はその深淵っぽい鏡をガチャで手に入れ気軽に持っちゃうんですけどね。
(あ〜このお砂糖の鏡、もう一個欲しいわ)
鏡
ストリートピアノが流行っている。
僕自身もSNSの動画で見るし、知り合いも度々弾いている。
しかし、ストリートヴァイオリンは存在しない。いや、弾いている人もいる。だが、ストリートピアノとは大きく異なる。
なぜならストリートピアノは、誰かから弾いてもいいと許されたピアノが存在する。加えて、大衆もどこか期待してピアノを見る。
それに対してヴァイオリンをストリートで弾くには、自身でヴァイオリンを持参する必要がある。つまりきっかけは、聴いて欲しくて弾く自分勝手なヴァイオリンということだ。
ではなぜ僕が弾いているのかというと——
「兄ちゃん弾いてくれよー! 俺ヴァイオリンが1番かっけえ楽器だと思うんだ。兄ちゃんのヴァイオリンもっと見たいよ」
「今散々弾いただろう。僕も腕が疲れちゃったからなあ」
「弾いて弾いて〜」
「しょーがないなあ」
煽られて弾いているのだ。
「あんたねえ」
共に出かけていたひなはため息混じりに言った。
言い訳をするなら、演奏家たる者、自身の楽器が1番カッコいいと言われたら嬉しくもなる。だから、この少年のようにせがまれたら拒むことなどできない。加えて一度弾いてしまえば人は集まりカメラを向けてくるのだ。少年のお願いを蔑ろにするプロの姿をインターネットに流すわけにはいかない。宣伝だと思って弾くしかないのだ。
呆れ顔のひなも実は弾きたいに違いない。僕ばかりが弾く状況にムズムズしている姿を隠しているようで隠せていない。
「よし。次はひなと弾こうか。それで最後」
人も集まってきたことで通行の妨げになっている。警察のお世話になるわけにもいかないし、切り上げるにはいい頃合いだ。
「最後は皆んなの知っている曲にしよう」
魔女の宅急便より——海の見える街。
豊かな風を浴びて新たな風景に出会うであろう観客へ。少しでも良き出会いがあればと願えば願うほど観客は目を輝かせた。
観客は演奏家にとって鏡である。
だから今の演奏が間違いなく良いものだと断言できた。
【鏡】
私は己の容姿が嫌いだ。脳内で真人間に修正したそれを真として行動している。だが、鏡は偽りの真を砕き、現実という醜悪を映す。ああ、嫌だ嫌だ嫌だ。しかし、歪を理解しなければ修正も出来ない。遠く離れた容姿を生成すれば他との認知のズレが起き、違う意味で苦しむ事になる。ルッキズムが蔓延る世もそれに過敏な己も大嫌いだ。
古びた古物店の奥に、埃をかぶった一面の鏡がひっそりと佇んでいた。その鏡は1800年代から存在し、時代を超えて幾度となく持ち主を変えてきたが、いずれも不幸な結末を迎えるという噂が絶えなかった。ある日、店に訪れた若い女性がその鏡に心を奪われ、無意識に手を伸ばした。
「この鏡を…」
店主は無表情で頷きながら、その鏡を彼女に売った。彼女が自宅に持ち帰り、部屋に飾ると、鏡はじっと彼女を見つめ返すように光を放った。その夜、鏡の中から微かな声が聞こえ、彼女は夢の中で昔の風景を目撃する。女性は徐々に鏡に魅入られ、やがて鏡の中の世界に取り込まれてしまう。
次の日、古物店にはまた別の誰かが訪れ、同じ鏡を見つけた。鏡は変わらず、次の犠牲者を静かに待っていた。