『通り雨』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
孤独と安堵だけを約束された
世界を映す雫の檻
乱反射する太陽光に彩られた
さびしい、さびしい檻
一歩踏み出せば光の中
けれど世界は恐ろしくて
どんなに追いかけても
追いつくことはない
逃げ場などない
取り残された檻の外
【通り雨】
「お別れ、しよっか」
そんな予感はしていた。
「そ、だね」
僕は視線を落として、そう答えるしかないんだ。
あっさりと離れていく彼の背中がぼやけた。
ああ、通り雨でもいいから降って、僕を隠して。
この涙を涙だとは認めたくないよ。
だって、認めてしまうと彼との思い出が否定されていくようで。
─通り雨─ #77
去年と同じお題だ。
いくら空を見上げても虹を見ることは出来なかったよ。
雨の後には大きな虹、あの時の夢見がちな私はもう居ない。どこを見ても、居ない
くよくよすんな、大丈夫
通り雨みたいなもんでさ
雨雲はついぞ流れてお日様が照らす
雨降って地固まるって言うだろ?
その固まった大地から
芽が息吹き花を咲かせるんだよ
だから大丈夫、
この雨は花を咲かせる為の通り雨なんだから
今回も我ながら良いことを言った、
コイツが女にフラれる度に居酒屋に呼び出される
これでコイツも元気になるやろ、と思ったら
二回目、
向かいで死体の様にうっ伏せてたヤツが急に呟いたので
えっ?何?
何のことか理解出来ずに聞き返すと
テーブルに俯いていた顔をようやく上げ、
真っ赤に腫らした目を真っ直ぐこちらに向け怨めしそうに、もう一度呟く
それ、二回目、
前も言ってた
言われて思い出す
確かに前にも同じく通り雨の話をしたかもしれない、
ゆかりちゃんの時だった気がする
花、咲かないじゃん
そういうとまたテーブルに顔を伏せた
まいったな、今回は深刻だ
忘れてたのは悪かったけどさ
毎回お前が恋して雨にフラれる度に
慰めの名言を考える俺の身にもなって欲しい
いい加減、とっとと花を咲かせてくれよ
『通り雨』
【通り雨】
ねえ、行かないでよ
もう少しだけここにいて
この雨が止むまで
作品No.180【2024/09/27 テーマ:通り雨】
※半角丸括弧内はルビです。
「最っ悪!」
言いながら、杏妃(あずき)は雨に濡れたアスファルトを踏みつける。その度に、水が跳ね、杏妃の足を濡らした。
「さっきまで晴れてたじゃん、ふざけんなよ」
独り言を呟きながら、杏妃は駆ける。
自宅を出る前、よく晴れた青空を確認していた杏妃は、傘を持たずに家を出ていた。顔も髪も服も、どれもバッチリ決めてきたというのに、突然の雨でそれらは完璧ではなくなっていた。自信満々に、鏡の前で決めポーズまでして家を出てきた杏妃にとって、この雨は最低最悪のモノでしかなかった。
「……って」
杏妃は立ち止まり、空を見上げた。まだ雨は降り落ちているものの、灰色の曇り空から一転、空はまた青さを取り戻していた。
「言ってるそばから晴れてるし!」
喜べばいいのか、怒ればいいのか、わからなくなりながら、杏妃は学校への道を急いだのだった。
通り雨は
サーッと来て
サーッと過ぎ去る
いろいろなものを濡らしていく
道路や屋根や子供達
少しの雨は植物を目覚めさせ
窓の埃を振りはらう
街の空気も涼しくなったよう
通り雨
「はい、じゃあ気をつけて帰れよー」
キーンコーンカーンコーン、キーンコーンカーンコーン
森先生の号令と共にクラスメイトはそれぞれの放課後の場所に行く。私はというと、特に用もないのでそそくさと下駄箱に向かう。
「うわー雨降ってる。降るならもうちょい空気読んで私が駅に着いた時くらいに降ってよぉ…」
なんて叶いっこない願いをいつもしっかり考えてしまう。こんなとき「傘入ってく?」なんて言ってくれるイケメン男子がいてくれたらと小学生くらいまでは思っていたけど現実はそう甘くはないことを高校生になった私はよく知っている。
「藤沢、今帰りか?」
お!諦めかけていたけどついに私にも春が…!いや、これは森先生の声だ…
「はい、でも雨降ってきちゃいましたー」
森先生は去年大学を卒業したばかりの新人教師なのでなんだか話しやすい。明るくて面白くて積極的に生徒と関わろうとしてるところも理由なのかもしれない。みんなも森先生だから面白おかしくグリーンティーチャーなんて呼んでいる。
「まじかーちょっと職員室に貸せる傘あるか見に行ってくる。待ってて」
そう言って走っていってしまった。
「あ、ひよりー今帰り?」
振り向くと幼なじみのけいちゃんが下駄箱から見える中庭から手を振っていた。部活をやるはずが雨が降ってきたから今は休憩中らしい。
「うん!でも雨降ってるから帰れなくて…森先生が職員室から傘取って来てくれるって言ってた!」
「まじ?私、前職員室に傘借りに行こうと思って行ったけどうちの学校は傘貸してないって職員室の先生に言われたよー?」
「えぇ〜じゃあ私帰れないじゃん…」
「貸せるのか貸せないのかわからないのに走っていくのは頭より体が先に動く森先生らしいわ。まぁなんとかして頑張れ!」
けいちゃん、めっちゃ他人事だ…意地悪な笑みを浮かべて部活に戻ってしまった。
それから何分か経って森先生が走って戻ってきた。
「森先生、わざわざありがとうございました。でもな…」
「傘あった!めっちゃあった!」
えぇー。この人は何を言ってるんだ。まさか他の先生の借りパクしてきたんじゃ?わたしが怪訝そうな顔をしてると焦ったように弁解してきた。
「いや違うよ?借りパクってないよ!まじで!コンビニとかで安いビニール傘だからって持っていくやつ俺嫌いだし!」
あまりにも真剣に弁解するもんだから思わず笑ってしまいそうになる。
「とにかく、今日はこの傘で帰って!絶対非正規の方法で手に入れた傘じゃないから!本当に職員室あったから!」
「ふふ、分かりました。先生が頑張って探してくれた分この傘でしっかり帰ります!」
「よし!それでよろしい!」
森先生から傘を受け取り校舎から出る。
傘を開いてみると緑色のビニール傘だった。「珍しい、こんなのどこに売ってるんだ?」なんて考えてると黒い小さなテープみたいなのに気づいた。ん?これなんだ?気になって少し剥がしてしまった。
「森章太郎」
ハッとして先生の方を振り向く。先生はただ笑顔で気をつけて帰ろよーなんて言っていた。
「先生は傘なくてどうするんだろう。あ、そういうことを考えさせないためのテープだったのか。なんか悪い事したなぁ。」
お気遣いありがとうございます!と言おうとしたけどなんだか声が風邪みたいに詰まってしまった。おかしいな、まだ雨に濡れてないんだけど…
鼻歌を歌いながら歩いていたらいつもは遠く感じていた駅に着いていた。そのうち雨も弱くなって太陽が雲の陰から光を差した。よかったこれで森先生も帰れるだろう。
雨はいつも憂鬱だ。セットした髪はうねるし、靴下はいつのまにかびしょびしょになる。でも今日は雨でも嬉しい。平凡な日常にわたしにとっての小さなドラマを与えるなら通り雨は大歓迎かもしれない。
きみと一緒に帰れる
うれしいけど
ちょっとはずかしくて
前を向いて話すきみの横顔を
見ながら歩いた
ぽつぽつと降りだした雨に
雨やどりできるところを探す
きみが繋いでくれた手があたたかい
時が止まってほしいと思う
ずっとこのまま…
雨はすぐ止んで
きらきらと光る道を
またきみと歩き出す
通り雨か、、笑
真っ先に思い浮かんだのは、顧問の顔だ。
雨予報でも顧問がグランドに来ると、急に晴れる。
居なくなると急に通り雨のような雨が降る。
その先生に出会ってから、天気予報は信じられなくなった笑笑
神様が練習しろと言っているんだな。
雨は基本的に嫌い。
気持ちが沈むし出かけるのも億劫。
通り雨、最近ではゲリラ豪雨って言ったりするけど
空からの嫌がらせとしか思えない。
通り雨降らせるくらいの中途半端な嫌がらせは
とりあえず洗濯物干してる時はやめてくんない?
あと微妙にずーっと降るくらいなら降らないか
がっつり降って?
かなり迷惑なんですけど?
人間なんで自然に従うしかないんですけどね。
いち人間があーでもないこーでもない言ったとこで自然には逆らえないんだけどね。
でも人間、知能や感情ありますので文句は言いますよ。
今年の夏は、通り雨が多かったですね。
通り雨と言えるような短さではなかったかもしれませんが。
貴女に危険が及ぶことがなくて、俺たちは嬉しいです。
貴女が健康に、安全に、幸福に生きていてくれることだけが、俺たちの望む最高善なのですから。
今にも泣き出しそうな君
涙まで我慢しなくていいのに
通り雨のあとはきっと
すぐに晴れるから大丈夫だよ
通り雨
いっそ土砂降りになってくれれば
傘を差し出す手が
こんなに怯えていることも
悟られなかったはずなのに。
ずっと嵐でいい
この世の終わりのような顔をしたくせに
何事もなかったように
カラリと晴れるなんて許せない
向こうの空に晴れ間が見えて
わずかな相思相愛は隔たれた
また空が泣いたら
ここで会いましょう。
通り雨
とつぜんの
とおりあめに
きみのてを
にぎり
はしりだして
………
くれるひとがいない
かさのないひは
なみだもあせもけしょうもなにもかも
ながれてしまえばいい
#63 通り雨
[救いの傘は]
雨が来た。
救いの傘は、自分に使った。
雨に打たれなくて良かった。
けれども、隣に雨に打たれて瀕死の人が居た。
雨が止んだ。
救いのお日様が、ちらり。
温かくて、嬉しい。
隣の人が、パタリと倒れた。
雨が来た。
救いの傘は、他人にあげてみた。
雨に打たれて寒い。
けれども、心は温かい。
雨が止んだ。
救いのお日様が、姿を見せる。
助けた人に感謝された。
とっても温かくて、嬉し涙。
通り雨
天気予報ではあと数十分でこの雨は止むらしい
折りたたみ傘は毎日持ってきているので、急に雨が降ってきたからといって困ることは無い。ただ、あと数十分待てば少しも濡れずに帰れるというのなら、あと数十分待とうと思った。
「珍しいね、いつも早く帰るのに。今日は帰んないの?」
前の席の彼が話しかけてきた。
「雨が止んでから帰るつもり」
「傘もってきてないのか?」
「持ってきてない」
本当は持ってきてるけど、傘を持ってると本当のことを言ったら、彼と話す時間は減ってしまうのではないかと思い、誰にでも優しく接する彼はいつもすみっこで本を読んでるような私にも声をかけてきてくれる。席が隣になってからは、前よりも話す回数が増え、私は、彼のことを気になり始めた。そんな彼が話しかけてきた。話の話題を作ってくれた雨に感謝しなければ。
「君は傘もってきてるの?」
彼に聞くと、
「毎日オレは傘持ってきてるよ。最近急に降り出して濡れることが多いからさ」
「そうなんだ」
毎日折りたたみ傘を持ってきているということに私は親近感が湧いた。
「確か君と帰る方向一緒だよね?」
「そうだよ」
そう答えると彼は笑って、
「じゃぁ一緒の傘に入る?相合傘!」
と言った。思考が止まった。
もうみんな帰っており教室には私と彼の二人きり。ザーザーという雨の音だけが教室に響いた。
「相合傘?」
聞き間違いかもしれないと思って、もう一度聞いた。
「そう」
「相合傘はカップルとかがするんじゃないの?」
「君が嫌なら別に。濡れて風邪ひかれても困る。話し相手が居なくなるじゃん」
私以外にもはしている人は沢山居るのに、そんなことを言うなんて…なんで思わせぶりな人なんだろうと思った。まぁ、片思いなんて勘違いしたもん勝ち。
「私は全然良いよ。雨に濡れたくないからね」
特に予定もないためあと数十分位なんて待てるし、傘も持ってきてるので、一緒に帰る必要性はないけれど、近づけるチャンスだと思って、一緒に帰ることにした。
いつもより近い彼との距離。周りから見たらカップルだと思われてるのかな。彼はどう思ってるのだろうか。気になって仕方がないけど、いつも通りの平常心を保って、彼と会話をしながら帰った。私の家の方が彼よりも学校から近いため、先に私の家に着いた。着く前に雨が止んだため、途中からは傘を閉じて歩いた。こんなにも通り雨に怒りの感情が湧いたのは初めてだ。
「傘入れてくれてありがとう」
お礼を言った後に彼は、
「一緒に帰りたかったからね。また雨が降って、君が傘を持ってなかったらまた一緒に帰ろうね」
と言った。今度からは午前中晴れで、午後が雨の天気予報だったら、傘を持って行かなくていいかなぁと思ってしまった。
「わかった!また明日ね」
別れた後、リビングのソファに寝転んで抑えきれない興奮を何とか抑えようとしたが、なかなか収まらなかった。今までは濡れたり、湿気でベトベトしたりして、雨の日はあまり好きではなかったが、今日で雨の日が大好きになった。
また雨降らないかなぁ。次の雨の日が楽しみだ。
大切な人が死んだ
憎らしいほどよく晴れた日だった
私は葬儀に参加した帰り道で
彼との思い出に浸っていた時
手に雨が落ちる
あぁ…通り雨か…
すぐ止むはず…
すぐ…
2024/09/27
今日も勉強できなかった。
どうして私は自分に甘いんだろう。
いつか弱い私を壊せるのかな。
私は雨が好きだ。雨が降るときだけのあの匂いや音、普段なら人が居る場所にも誰も居ないあの新鮮さ、そして何より雨は何か洗い流してくれるような、包み込んでくれるような暖かたみがある。
これらは一見、長期的な雨が降ったときに限るような感覚であり、通り雨には無いものだと思う人も私の周りには多数居る。
それは雨が好きでなければそんなことに気を配らないし、常識的に考えての結果だろう。
しかし、それは全くもって違うのだ。
雨が降ったあとも匂いはするし、雨音は身近なものであるため雨が止んだあともすぐに音を思い出すことができる人も恐らく多いだろう。
田舎や公園だと、通り雨に焦り驚き目的地や家に急いで向かう人は大勢居るし、人の居ない新鮮さは十分堪能できる。
少しの雨でも洗い流してくれるような感覚や包み込むような暖かさはある。むしろ、通り雨の方が雨がすぐに止み、生き物が息を吹き返し鳴く音や、蜘蛛に隠されていた日の、強く元気な光が差し込み勇気づけられるような満足感に満たされることもある。
雨を嫌だと思う人は、この先もたくさん居るだろう。だけれど雨にも種類があり、それぞれいいところがあることを理解し、雨が降ったときは神経を研ぎ澄まし雨と少しでも向き合ってみて欲しい。そうすれば雨もきっと楽しめるようになるはずだから。
そんな綺麗で新鮮さをもたらし満たしてくれる雨だからこそ、私は雨が好きだ。
『色々な雨のいいところ』