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通り雨
天気予報ではあと数十分でこの雨は止むらしい
折りたたみ傘は毎日持ってきているので、急に雨が降ってきたからといって困ることは無い。ただ、あと数十分待てば少しも濡れずに帰れるというのなら、あと数十分待とうと思った。
「珍しいね、いつも早く帰るのに。今日は帰んないの?」
前の席の彼が話しかけてきた。
「雨が止んでから帰るつもり」
「傘もってきてないのか?」
「持ってきてない」
本当は持ってきてるけど、傘を持ってると本当のことを言ったら、彼と話す時間は減ってしまうのではないかと思い、誰にでも優しく接する彼はいつもすみっこで本を読んでるような私にも声をかけてきてくれる。席が隣になってからは、前よりも話す回数が増え、私は、彼のことを気になり始めた。そんな彼が話しかけてきた。話の話題を作ってくれた雨に感謝しなければ。
「君は傘もってきてるの?」
彼に聞くと、
「毎日オレは傘持ってきてるよ。最近急に降り出して濡れることが多いからさ」
「そうなんだ」
毎日折りたたみ傘を持ってきているということに私は親近感が湧いた。
「確か君と帰る方向一緒だよね?」
「そうだよ」
そう答えると彼は笑って、
「じゃぁ一緒の傘に入る?相合傘!」
と言った。思考が止まった。
もうみんな帰っており教室には私と彼の二人きり。ザーザーという雨の音だけが教室に響いた。
「相合傘?」
聞き間違いかもしれないと思って、もう一度聞いた。
「そう」
「相合傘はカップルとかがするんじゃないの?」
「君が嫌なら別に。濡れて風邪ひかれても困る。話し相手が居なくなるじゃん」
私以外にもはしている人は沢山居るのに、そんなことを言うなんて…なんで思わせぶりな人なんだろうと思った。まぁ、片思いなんて勘違いしたもん勝ち。
「私は全然良いよ。雨に濡れたくないからね」
特に予定もないためあと数十分位なんて待てるし、傘も持ってきてるので、一緒に帰る必要性はないけれど、近づけるチャンスだと思って、一緒に帰ることにした。
いつもより近い彼との距離。周りから見たらカップルだと思われてるのかな。彼はどう思ってるのだろうか。気になって仕方がないけど、いつも通りの平常心を保って、彼と会話をしながら帰った。私の家の方が彼よりも学校から近いため、先に私の家に着いた。着く前に雨が止んだため、途中からは傘を閉じて歩いた。こんなにも通り雨に怒りの感情が湧いたのは初めてだ。
「傘入れてくれてありがとう」
お礼を言った後に彼は、
「一緒に帰りたかったからね。また雨が降って、君が傘を持ってなかったらまた一緒に帰ろうね」
と言った。今度からは午前中晴れで、午後が雨の天気予報だったら、傘を持って行かなくていいかなぁと思ってしまった。
「わかった!また明日ね」
別れた後、リビングのソファに寝転んで抑えきれない興奮を何とか抑えようとしたが、なかなか収まらなかった。今までは濡れたり、湿気でベトベトしたりして、雨の日はあまり好きではなかったが、今日で雨の日が大好きになった。
また雨降らないかなぁ。次の雨の日が楽しみだ。

9/27/2024, 2:10:22 PM