『通り雨』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
~通り雨~
出掛けようと外に出ると降ってるやつ
もう準備もしたから止めるのも
なんとなく悔しいし
店から出て来た場合だと戻るのも
気恥ずかしい
このストレス
どこにやれば良いのやら
~秋🍁~
夏🍁もあるけど
🍁と言えば、まぁ秋
青🍁もあるけど
🍁と言えば、まぁ秋
だから、秋ってことで
早く来てって、暑い
~窓から見える景色~
まるでフレームのように
風景を切り取る窓
そこから見える絵画のような景色
美術館に行かなくても
アートは楽しめる
あっ、すずめが飛んでいった
~形の無いもの~
欲しいものは形が無い
時間、利便性、愛情とかなんとか
形が感じられないからだろうか
今あるってことを忘れてしまう
だから無くした時に後悔するんだ
~ジャングルジム~
登ると世界が全然ちがって
見えたものだ
例え人から大した高さじゃないと
言われても
あの時みたいにグイグイは行けなくても
まだ登れるかな
~声が聞こえる~
それって、そら耳?
~秋恋~
暑いので
早く
あきこい
~大事にしたい~
いつもいつも大切なものは
大事にとっておいた
でも、人生いつ何が起こるか分からない
火事が起こるかもしれないし
強盗が入るかもしれない
だから、これからは
ショートケーキの苺は最初に食べる!
だって、一番大事だから
~時よ止まれ~
自分が動けなければ何の意味もない
自分以外が動けないなら、何も出来ない
なので、
時よ止ま…らなくても良いなぁ
今日は雨が降らないだろう。
そう思った私は間違いだった。
『通り雨だろうし、すぐ止むだろ』
「って、言ってたのはどこの誰でしたっけね」
そう言いながら、隣の男を睨み付ける。
分かりやすく目を逸らされた、この野郎。
雨が降っている。かれこれ20分以上。
降り始めよりもかなり強くなって。
こんなことなら、濡れるの覚悟でダッシュすればよかった。
明日提出の課題をやらないといけないのに。
妹に狙われているアイスが冷凍庫に眠っているのに。
昨日録画したドラマを早く見たいのに。
最悪。超最悪、な“はず”なのに。
「早く止まねぇかなぁ」
ーー悪くない、だなんて、そんなこと。
【通り雨】
男は復讐心で燃えていた
ある女を憎しみ、殺害を目論んでいた
男は雨の中、女の自宅へと向かっていた
コンビニに寄り道し、わざとゆっくり歩いている
その様子はまるで時間稼ぎをしているようだった
そうこうしている内に雨は止んだ
男は歩く速度を早め、女の自宅へ直行した
女の自宅のインターホンを鳴らすと、
女は叫ぶようにこう言った
「また嫌がらせですか?警察呼びますよ!」
男はそれを聞くとフッと笑い、礼をして立ち去った
男は雨が止み、インターホンから自分の顔が
はっきり見えるようになるのを待っていたのだ
男は復讐心で燃えていた
だが、復讐心に愛されてはいなかった
男は復讐心に身も心も委ねる事はできなかったのだ
だが男はそんな自分を十分理解していた
男は復讐心に全てを捧げる事ができるような
選ばれた人間でないことに安心したかったのだ
何者にもなれないその男は、哀れそのものだった
あぁ、堕ちるところまで堕ちることができたら
男にとってどんなに幸せなのだろう
『20』
朝のニュースで見た、
降水確率。
「あぁ…。」
/通り雨
通り雨
朝から憂鬱な日だった。
寝坊したわけでもないし、朝から怒られたりしたわけでもない。
何となく、起きたときから体が重くて、何となく、気持ちが沈んでいた。
嫌なことがあったわけでもないのに、ただ、苦しいとだけ感じていた。
そんな日もあるだろうと、いつも通り過ごしていれば気持ちも晴れてくるだろうと、無理矢理、鏡の前で笑顔を作った。
「だいじょーぶ、だいじょーぶ!」
こうやって、笑顔を作って無理にでも明るくしていれば遅れて気持ちも着いてくるだろう。
私のジンクス、思い込みだ。
気休めかもしれないが、しないよりはましだろう。
そんなこんなで、もう登校時間だ。行きたくないが仕方がない。
「いってきまぁーす!」
うんうんバッチリいつも通りに振る舞えた。お母さんも気づいてないし完璧。私って演技上手だったりして。
まぁ、そんなことどうでもよくて。
学校に着くまでには、少しはましになってると良いな
と他人事のように考えながら通学路を歩いていたとき、
通り雨に遭った。
本当についていない。
これじゃ気持ちが晴れるなんて無理だ。
さっきまであんなに天気は良かったのに…
傘なんて持ってきてないし。最悪。
でも、この信号を渡れば学校はすぐだし、行きたくないけど、濡れるのはもっと嫌。
と、気持ちが沈みきったまま、学校に行くため、そして、これ以上雨で濡れないために、赤の信号に、速く青になれと、念を送りながらみていた。
そのとき、ふと、信号の向こうの空に、薄く水彩絵具で描いたような虹がかかっていることに気がついた。
淡くぼんやりとしているが、確かに虹だった。
意識することなく、自然と顔がほころんだ。
自分でも少し驚いた。
さっきまであんなに沈んでいた気持ちが、今ではすっかり晴れてしまった。
変なの。
空は雨が降っていても私の気持ちはスッキリ青空。
それも、よく目を凝らさないと見えないくらいの淡い虹のせいなんて。
こんなに不格好な虹なのに。今の私にはとってもきれいな虹に見える。
優しく背中を押してくれているみたい。
あぁ、今日も頑張ろう。
こんな簡単に気持ちが変わってしまうなんて。
本当に変なの。
でも、それが楽しいんだもんね。
自分でも単純って思うけどそれで良い。
この虹を綺麗って思えるのなら、私は単純で構わない。
赤だった信号も青に変わった。
さあ、虹に応援してもらった分、今日も頑張ろう!
私は心からの笑顔でそう、思えた。
今日は朝からラッキーな日だ。
突然雨に降られて、俺は近くの駅で足止めを食らってしまった。
今日は全日晴れ予報だった為、沢山の人がここで雨宿りをしていた。
雨模様の空を見ていると、何となく気分が落ち込んで、虚しい気持ちになるから、あまり好きではなかった。
「早く帰りたいんだがな...」と言う気持ちも相まって、心の中で愚痴を零しながら、小さく溜息をついた。
「こんな所にいたのか...結構探したぞ...」
話しかけられたような声が聞こえたので、視線を動かしてみると、
雨の中傘を差しているあいつがいた。
「...は?なんでお前居るの?」
ポロリと思いついた疑問が零れてしまった。
「貴様が突然の雨で困っているかと思ってな...迎えに来てやったんだ、とりあえず帰るぞ」
と上から目線に言われ、当然のように傘の中へと手を引かれた。なんだこいつ年下のくせに...なんて思いもしたが、実際困っていたのは事実だっ
たので素直に「...ありがとな」とお礼を言った。
「...素直に礼を言うなんて...明日は大雨でも降るのか?」
「現在進行形で降ってんだろクソガキ」
俺が怒りを含ませながらそう言うと、冗談だと言わんばかりにふとした笑みを零した。
...その顔はずるいと思う。
「...そんなにムキになるな...いいからさっさと帰るぞ」
「へいへい、分かりましたよ...あと、ムキになってねぇからな?」
...そんな感じで談笑しながら、二人で帰り道をゆっくりと歩いていった。
偶には、こんな雨の日も悪くは無いな...と思いながら。
--二人の手は優しく繋がれていた
END
#通り雨
71作目
確かに
にわか雨の予報
だったけど
土砂降り…。
縁側に
2人で
並んで
腰掛ける。
もうちょっと
雨が止んでから
また観光しよう。
あ、
止んできた!
外に出たら
虹が
はっきりと出ていて
すごく
綺麗。
#通り雨
通り雨
カランとアイスコーヒーの氷が音を鳴らした。
カフェのカウンターで1人。
小さくため息をついたその時、スマホが鳴った。
お待たせの文字、駐車場にはいつもの青い車。
「すいません、アイスコーヒーL、テイクアウトお願いします。」
外に出ると地面は濡れているものの、空には虹がかかっていた。
通り雨だから、いい
傘に入っていかない?と言って来たその人に精一杯の抵抗をした
勝ったのは私の自尊心
負けたのは私の切ない想いだ
その人は遠い街で事故にあって死んだと聞いた。
もうその時は私にはかけがえのない家族がいたけど、
外を出るとあの日と同じような雨が降ってきた
あの日の雨は、本当は夜更けまで振り続いた
通り雨は『偶然』
通り雨のあとの"虹"は『奇跡』
見上げたとき
トクンと心音が鳴るような幸せが
通り過ぎるんだよ
「うそ…雨?」
予定のない雨音がした
降り始めたばかりの通り雨?
コンクリートの地面がポツポツと濡れて行く
「うわー。下校に合わせたような雨だね」
「!?」
昇降口で靴を履き替えながら
横並び
同時に雨空を見上げたのは
大好きな先輩だった
通り雨は『偶然』、こころの虹も『奇跡』だ
ザアッと幸せが通り過ぎるものだから
待って待って!と
雨が止まないようにと願ってしまう
#通り雨
最初に思ったのは、どの口が。だ。
例え今はニンゲンの姿をしているとはいえ、この畜生だって理解している筈だ。
ブルースが。ぼくのブルースが。
かつて畜生共にも慈愛を恵んだ、最たる神の存在であることを。
「……貴公、近くへ」
畜生がブルースを呼ぶ。
なんたる傲慢だ。
跪かせたうえに、ぼくのブルースを呼び付けるなんて。
名を口にしない点では評価したが、あまりの狼藉に、つい、戸惑いながらも立ち上がったブルースの手を掴んでしまった。
「クラーク?」
ああ、ああ。
オドンを介しているにも関わらず、きみの奏でる音はどうしてこんなに甘美なんだろう。
きみの音だけが、ぼくの鼓膜を震わす。
「……ブルース、行かなくていい。きみが傅く必要はないし、きみの居場所はぼくの隣だ。用があるなら畜生からくるべきだ」
本来なら視界にすら入らない存在であり、仮初めであっても姿晒すことはないのだけれど、ブルースと同じ姿をとるが故、仕方なく現した体で、オドンの孕み袋を見据える。
オドンの子を宿す道具でありながら、ブルースに手を伸ばした、強かといえば聴こえはいいが、業の深い畜生。
大人しくオドンの精子を啜り永遠に産まれない血の赤子を求めれば良かったものを、あろうことかぼくのブルースに手を伸ばした汚物。
「クラーク? 何を…」
「お願いブルース。行かないで?」
「っ」
きみってば、ほんとうにかわいくて。
生まれ変わろうが、ぼくのお願いにはいつも甘くいてくれる。
だいすき。だいすきだよブルース。
「し、しかし、彼女が…」
「………構わない。貴公は特別だ。…そうだな、本来なら私から出向くべきであった。……これを」
玉座にしなだれかかる畜生がゆっくりと立ち上がり、ブルースの前へと歩み寄る。
途端漂うは鼻を付くような甘い気怠い香り。
棒切のような腕がこちらへ伸ばされ、その指先には小さな輪っかが鈍く輝く。
誘われるよう腕を伸ばしたブルースを遮り、代わりに僕がそれに手を伸ばした。
確認しなくともわかる。かつてブルースが生み出した、穢れたオドンの血族が唯一誇れる神との誓約の証。
婚姻の指輪と呼ばれる、上位者が特別な意味を込めて作る、赤子を腕に抱く者の誓約。
"ブルース"の慈愛が込められた特別な指輪。
差し出す指の向こう、畜生の表情が揺れた気がしたけれど、気にせず"ブルース"の遺物を手中に収めた。
ああ、ああ。なんということだ!
焦がれ諦めていたブルースの一部が、何の因果かぼくに廻ってきた!
これは、この婚姻の指輪だけは手に入らないだろうと諦め、なかったものとして記憶から消し去っていたのに!
ああ、ああ、奇跡だ。こんなに嬉しいことだ!
「クラーク、それは?」
「ふふ。これはね……」
そう口にして、はたと思いつく。
「ねえ、ブルース。きみの故郷では婚姻の指輪はどこにつけるの?」
「婚姻? 左手の薬指だが…」
「ふーん?」
ブルースの両手はどこにも指輪などはまっていない。
はまっていたとしても関係ないけれど。
「つけてくれる?」
「は?」
「これ。この指輪ね? かつての…そう、かつて存在した優しい優しい神さまが特別に誂えた、身に付けた人を護る指輪なんだ。だから、ぼくのだいすきなきみからぼくに、……贈ってほしいんだ」
ね、と促せば、ぼくのことをだいすきなブルースは、少しだけ赤くした耳先はそのままに、仕方ないな、と指輪差し出すぼくの指先に手を伸ばす。
婚姻の指輪。その昔、虐げられるニンゲンを想って作られた、ブルースの優しさがつまった指輪。ぼくもほしいとねだったけれど、ぼくのために誂えられた指輪に込められたモノは違うモノだった。それは当然で。だってブルースもぼくを愛してくれていた。憐れみなんかじゃない、ブルースの心臓が詰まった指輪。勿論それはそれは嬉しかったし、大切に大切に肌身は出さず持ってる。でも欲張りなぼくは、ブルースの生み出すすべてが欲しかった。
望めばなんでも手に入るぼくだけど、この指輪だけは終ぞ手にできなかった。
それが今、持ち主であるブルースのもとに戻り、ぼくへ贈られようとしている。
「いいのか?」
「うん?」
「左手の薬指で」
「うん。左手の薬指がいい」
溜め息を一つ。照れを隠すような仕草は昔から変わらなくて、つい目を細めてしまう。
愛しい愛しいだいすきなブルース。
ほんとうは生まれ落ちた瞬間からきみを拐って閉じ込めてしまいたかった。ぼくを、ぼくたちを思い出すまで真綿にくるんでずっと愛を囁きたかった。
あのあと。肉塊のままゆりかごの中で共に過ごすことだってできた。口に含んで永劫を共に歩むことも。
でも、でも。ぼくは見たかったんだ。
きみが望む夢を。きみが願う世界を。ニンゲンを愛するきみを理解はできなかったけど、できるだけ近くにいたかったんだ。きみの成すこと思うことをすべからくぼくも感じて、そうして微笑んですべてを包み愛し赦したかった。
かつてのきみが、そうしてくれたように。
ブルースの綺麗な指先が、ぼくの左手をとる。
左利きのブルースだからか、左手に指輪を、ニンゲンの赤い血が通う温かな右手がぼくの左手の甲に触れる。
滑らかなブルースの右手が戸惑うよう、ぼくの左手薬指を撫でた。早く、と急かすように下から重ねられた手を握れば、少しだけブルースの手が震えた。
ゆっくりとぼくの左手薬指に収まる、ブルースの慈愛が籠もった指輪。
銀色をした、デザインなんて何もないシンプルなソレ。
畜生に誂えられたはずの指輪は、不思議とぼくの指を締め付けることなく関節を過ぎていく。
それはそうだ。ブルースはあの畜生のために贈ったのではない。畜生から続く穢れた血族を護るために贈ったのだ。
代替わりを迎えても、加護が続くようにと。
銀色の輪っかが指の付け根に突き当り、ふ、とブルースが身体から力を抜くのが見てとれた。それがどうにもかわいくて、気付いたら抱き締めていた。
だって仕方ないじゃないか。ブルースがこんなときもかわいい。
「お、おい。クラーク」
「ふふふ。ごめんね。嬉しくってつい。そうだ、今度工房でブルースに指輪を作るね。強化結晶いっぱいの」
「不要だ。ずるはやめろといっただろ」
「えー? ずるじゃないよ。ちゃんとぼくがマラソンした」
「お前の存在がチートだからだ」
「えー!?」
ブルースを抱き締めたまま、左手に迎えた指輪を翳し見る。
指輪から微かに香る、"ブルース"の残滓とぬくもり。
いなくなってなお効力があるのは、それだけ強い願いが籠もっているからか。
懐かしく愛しい日々を思い出させる残り香に誘われるよう、対たる原初の上位者の一人であり、今はクラークと名乗るカル=エルは、鈍く光る銀色へと唇を寄せた。
end.
#7 通り雨
足についた過去の懺悔を洗い、
次にこうべから水をかぶり一旦頭を冷やし、
そしてそのまま芯の後悔を流そう
そうすれば虹が迎えてくれる
2023/9/28
通り雨
さっきまであんなに晴れていたのに、急にどんよりと暗くなった。
そして、ぽつりぽつりと雨が降り始める。
嫌な感じの雨ではなく、どこか温かみのある雨。
空に目線を移すと遠くの方で青空が見えている。
もうしばらくしたら、雨が止むであろう。そう思っていると、雨足が段々遠のいていく。
何事もなかったかのように、また空が明るくなった。正しくその名の通り、通り雨。
ついでと言ってもなんだが、うっすらと虹が出ていた――
通り雨
たまに出会うくらい
今年はまだ出会ってないはず
出会ったら雨宿りしつつ
どうするかをしばらく考えて諦めて歩く
帰ったらシャワーだなってね
行きだと困るけど
行きだから仕方ないんだよね
行かない訳にも行かないし
最悪帰りにコンビニで傘を買う
通り雨って何故か毎回強い雨
雨ではないけど
通り霰に一回出会ったことがある
バイトの行きでしかも自転車
あれは困ったよ
遅刻でいいやってしばらく待ってた
割とすぐに止んだから遅刻はしなかった
出会ってしまったらどうしようもない
これが嫌な人間なら手段はある
でも空からは逃げられない
運が良いと
空に虹が出たりするから
ちょっとくらいなら悪くはない
雨に悪気はないんだから
人間よりはまだいいんじゃないかと思う
あ、通り雨だ。
でもすぐ止むから残念だ。あなたが私の傘に入ってくれるの、あっという間に終わっちゃうんだもの。
「通り雨」
通り雨
いきなり降ってきて、傘を買ったところで止むような雨。やんなっちゃうよね。
でも大気中の水分が雨になるのだから、いきなりだと感じているのは私たちだけなのかもしれない。
空気が湿ってきて、蒸し暑く感じて、手がべたべたしてくる。
むわりとした重い空気に、匂いがこもってくる。
それが通り雨の合図なのかもしれない。
僕の彼女は雨が降るといなくなる。
――ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
彼女との帰り道、通り雨が降ってきた。
僕は折りたたみ傘を取り出してワンプッシュで
開いた。彼女のグレーの傘は骨を一本づつ伸ばす
タイプのようで、少し手間取っている。
彼女の髪や肩を雨が濡らす。
夏のセーラー服が素肌に張り付いて
彼女の存在を浮き出す。僕は濡れる彼女に傘を
差し出すけれど、彼女は断った。
彼女は付き合った頃から、僕を近寄らせない。
彼女が傘を開き終わって、僕は前を向いた。
会話は無く、僕たちは慣れた道を黙って歩く。
ふと靴の音が
一つになった。
傘に落ちた雨粒の音も
半分になった。
隣に弾む傘が
見えなくなった。
彼女が消えた。
僕はどうしたことかと思って横を向くと、
薄い雨の膜からぼんやりと彼女の輪郭が現れた。
彼女は居た。消えたというのは僕の勘違いだった。
でも視線を外すと
雨音にかき消され
隣の存在は消える。
彼女は雨に溶けて
なくなるみたいだ。
僕は不安になって
何度も彼女を見てしまう。
足元に水溜まりがあることに気づき、そしてその
水面にもう波紋が生まれないことに気付いた。
雨は止んだ。彼女はそれに気づいていて傘の骨を
折り始める。一本一本雨の余韻を折るたびに、
彼女はこの世界に滲み出てくる。僕は自分の傘も
差したままで世界に現れた蝶を見ていた。
やがて蝶はすべての骨を折って完全に存在を
取り戻した。彼女は笑いながら
「さっきからこっち見てない?もしかして今日の
私美しすぎる?」
と冗談めかして言った。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
通り雨
「雨が降ると消える彼女」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
雨が降ってきた。最悪だ。小さい頃から変えていない
折りたたみ傘を取り出す。灰色の傘は、まるで今の
心模様のよう。
彼の傘はボタンを押すと、一気に開く仕組みで
楽そう。少し羨ましい。私の傘はきっと、高校を
卒業するまではこのままだから。
彼が私に傘を差しかけてくれようとする。
私は断る。
私は、人ひとり分以内に近寄られるのが
気持ち悪いと感じるし、喋るのも好きじゃない。
その理由は、中学生のときの、世界からずれたような
感覚に帰結する。普通からはみ出してしまったと感じ、
まともに喋ることもできなかった時期。
高校に入ってからは、思春期も穏やかになり、他人と
話すことにそこまで抵抗を感じなくなった。
だけど、今でも人は少し苦手だ。
そんな私に、彼は好きだと言ってくれた。
特に下心もなさそうな、クラスでも優しいと評判の
男の子。なぜ私なのか、疑問は尽きなかったけど
こんな私を好きでいてくれる、彼の心を傷付けたくなく
ていい返事をした。私を肯定する彼を思って、
できるだけ良い彼女であろうと思うけど。
雨の日は、重たい雲や冷たい雨に、本当の私が
引きずり出される。自分がこの世で一番嫌いで、
消えたいと思う私。彼に1ミリの愛も返せない、
無様な私。雨音に紛れ湿気の中で蒸発してしまいたい
と思っている。
そういえば高校でできた友達と帰っているとき、
「今居る?」
と聞かれたことがあった。彼女は私がいなくなったと
思ったみたいだった。雨の日、私は消えたいと
思っていて、実際に消えたのかもしれない。
多分、いつもみんなが見ている私は消えて、
空っぽの本当の私が出てきたんだろう。彼女は本当の
私は見えなくて、消えたと思ったんだろう。
彼も今は雨の向こうに私を見つけることはできないだろ
う。でもいつか、この優しい人が私を見つけることが
できるように。
晴れたみたい。
傘をしまって。
まずは話すことから、始めてみよう。
「さっきからこっち見てない?もしかして今日の
私美しすぎる?」
笑って言った。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「雨が降ると消えたい私」
暗い心をまるごと
サーっと覆い
潤わせ包み労わり癒せよ
通り雨のように
地を濡らし
爽やかな風をもたらせ
#通り雨
通り雨
突然の雨に降られて
僕たちは近くの軒先に駆け込んだ
薄暗く空を覆う雲は流れていく
「まだしばらく止みそうにないね」
濡れた髪を束ねて見えた
うなじにドキッとして目を逸らす
ドキドキする心臓の音がうるさい
「あっ!虹!」
君の声に視線をあげると
薄い灰色の空に大きな虹がかかってるのが見えた
「きれいだね!」
そう言う君の横顔の方がきれいだった
悪くないな
通り雨も…