霧夜

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突然雨に降られて、俺は近くの駅で足止めを食らってしまった。

今日は全日晴れ予報だった為、沢山の人がここで雨宿りをしていた。

雨模様の空を見ていると、何となく気分が落ち込んで、虚しい気持ちになるから、あまり好きではなかった。


「早く帰りたいんだがな...」と言う気持ちも相まって、心の中で愚痴を零しながら、小さく溜息をついた。

「こんな所にいたのか...結構探したぞ...」

話しかけられたような声が聞こえたので、視線を動かしてみると、

雨の中傘を差しているあいつがいた。

「...は?なんでお前居るの?」

ポロリと思いついた疑問が零れてしまった。

「貴様が突然の雨で困っているかと思ってな...迎えに来てやったんだ、とりあえず帰るぞ」

と上から目線に言われ、当然のように傘の中へと手を引かれた。なんだこいつ年下のくせに...なんて思いもしたが、実際困っていたのは事実だっ
たので素直に「...ありがとな」とお礼を言った。

「...素直に礼を言うなんて...明日は大雨でも降るのか?」

「現在進行形で降ってんだろクソガキ」

俺が怒りを含ませながらそう言うと、冗談だと言わんばかりにふとした笑みを零した。

...その顔はずるいと思う。

「...そんなにムキになるな...いいからさっさと帰るぞ」

「へいへい、分かりましたよ...あと、ムキになってねぇからな?」

...そんな感じで談笑しながら、二人で帰り道をゆっくりと歩いていった。

偶には、こんな雨の日も悪くは無いな...と思いながら。

--二人の手は優しく繋がれていた

END

#通り雨
71作目

9/27/2023, 12:49:15 PM