『踊りませんか?』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
私はあなたの手のひらの上で踊らされていたんじゃない。
あなたは知らないでしょうね。
─踊りませんか?─ #84
小学校の運動会で踊ったオクラホマミキサー
男の子と女の子で手を繋いで踊るこのダンスは
とてもドキドキしたのをおぼえてる。
異性と手を繋ぐなど普段の生活には全くない。
それだけでも一杯一杯なのに。
クラスの人気者のあの子が少し前で踊ってる。
あと少しであの子と踊るんだ!
足がふらふら、胸はドキドキ
たんたタンタンタンタン、タン・タン・タン。
…おわた…
「踊りませんか?」
放課後の委員会が長引き、
急いで帰ろうと廊下を歩いていると
その光景が目に止まってしまった
空き教室で風になびくカーテンと一緒に
フワフワとスカートを揺らしながら踊る少女
とても綺麗で見惚れてしまった
しばらく眺めていると、目が合ってしまった
急いで目線を逸らし、帰ろうとしたその時
「待って!」
少女に呼び止められる
近づいてきて、手を握ってきた
「あの、私の踊りみてましたよね?」
「私と踊りませんか?」
断ろうと思ったが、強く握られているため断れず
先程少女が踊っていた空き教室に入った
「左手で私の右手を握って、右手は私の背中」
言われるがままに、手を握り少女の背中に手をまわす
「じゃあ、いくよ」
少女がそう言うと、フワフワとまわりはじめた
彼女と一体になって、風になびくカーテンのように踊る
彼女の顔をみる
とても綺麗で幸せそうな笑顔をこちらに向けてくる
こっちも釣られて笑顔になる
下校時刻のチャイムが鳴った
ぱっと手を離す
下校時刻になるまで踊っていたのか…
少女が微笑みながら言う
「明日の同じ時間、また踊りませんか?」
それから毎日、同じ時間同じ場所で、
名前も学年も知らない少女と踊っている
『踊りませんか?』
私たちの学校は、体育祭の演技の中でフォークダンスがある。自由参加だから踊るのはほとんどがカップルだ。
つまり、そのダンスに誘うということが、告白と同義になる。まさに今、体育祭1週間前。この時期が絶好の機会という訳だ。誘う、誘われた、誘いたい、誘った、ここ最近はダンスの話で持ち切りだ。
「ねーね、桜はダンス誘われたりした?」
昼休み真っ只中。一緒にご飯を食べていた真菜が、まるで頭を覗いたかのように話しかけてきた。
「はぁ、される訳ないでしょ…、」
「えーーー、分かんないじゃーん!」
「てゆうか、誘う方もオーケーする方も、両方頭いかれてんだろ。」
「しかも、人前でダンスするなんて死んでも嫌だね。」
「相変わらず捻くれてんねー、そもそもダンスする相手なんていないくせにぃーもぐもぐ」
口に入れたまま喋るな。
「私は、こういうイベントに乗っかるやつが一番嫌いだ」
「つまんないのー」
「いいと思うけどね、私は!こういうイベントだからこそ勇気出して気持ち伝えられる人がいるんじゃん?」
「そんなちっぽけな気持ちなんだったら、一生内に秘めてろ」
教室の隅っこで食べてないとできない会話だ。こんなの陽キャさん達に聞かれたら、もうクラスで生きていけない。
「厳しー」
「でも私、桜のそういうとこ好きだな」
「チッ」
「まさかの舌打ち!」
「でもでもさ、私は誘われたいなー、だってもう最後の体育祭だよ?まさかラブキュン展開無しに、3年生になるとは…さすがに私にも春が来て良くない!?」
「もう秋ですけどー?」
「誰か誘ってくれたらなんかしてくれたりしないかなー」
「────じゃあ、私と踊る?」
「……は?」
「うそうそ」
「冗談にき──」
ガタガタ
「まーーなーーさん!」
「え、なに」
「俺と一緒にダンスを踊ってくれませんか?」
クラスの男子が現れた。突然。多分桜にとっては。
桜がこっちを見るけど、私にはどうすることも出来ない。だって私は、桜が誘われるのを知っていた。盗み聞きしてた訳では無いけど、男子たちの声がうるさかったから勝手に聞こえてきてしまったんだ。仕方がないだろう。
「………え、っと」
だからこっちを見るなって、あんなに誘われたいって言ってたじゃないか。喜べよ!相手だって、よく知らないけど別に悪くはないはず、たぶん。こんな昼休み真っ只中のクラスで、誘ってくるのを除けば、ほんとにそこ以外は、
「こいつさー、ずっと真菜さんのこと気になってたみたいで、ずっと相談されてたの」
「そーーなんだよ!」
「おい!余計なこと言うなよ。」
「………。」
「ご……めんなさい」
「突然だったし、いきなりダンスって言うのちょっと、」
「え、でもでも、こいつ良い奴だしさ。もう少しだけ、考えてもくれない?」
バシッ
「いて、」
「返事ありがとう、急だったのごめん」
「おい行くぞ」
突然やって来て、突然帰った。なんだあいつら。
高校生のノリまじわかんねー。
「はぁーーーーー、」
「なになになになにさっきの、」
「どゆこと、何まじで」
「誘われて良かったじゃーーーーん」
「バカ言うな、あんなん喜べるかい!とりあえず〜最後の体育祭だし〜ノリで言うか!っていうオーラ満載だったやん」
「それはまあ、うん、否めなくもない」
見るからにガチ感は無かった。断るのが最適解だったと思う。ほんとに。でも正直、あんなに誘われたいって言ってたから、ちょっとおっけーするかもと思ったのは言わないでおこう。
「あ!ねえねえ」
「────いいよ」
耳元で真菜が言う言葉の真意が分からなくて、聞き返す。
「?なにが、」
「だーかーら、」
「一緒に踊ってあげてもいいよって」
「………、は!?」
「そっちが言ったんじゃん」
おいまて、言ったよ確かに言ったよ。でもあれは、さっきの騒動でなかったことになったじゃん。
「そんな焦る〜〜?」
「2人して頭いかれたやつになろうよ。まあさすがに、体育祭では踊らないけどさ」
「ダンスに誘うって意味知ってるでしょ?それに応えるって言う意味も、」
知ってるから困惑してるんだろうが!!こんなイベントに乗っかって…、乗っかるだけならまだしも、さらに冗談にしようとしてたんだよ私は。私が大っ嫌いなやつに自分がなってんだぞ。
「ね!桜」
笑顔向けんな。
「だーーーー〜、もう!」
「好きだよ、真菜」
「…えっと、ガチの方で」
「──知ってる!」
君の心が後ろ向きなら。
毎日毎日溜息ついてるなら。
今日も愚痴愚痴言ってるんなら。
また物に当たったなら。
部屋の隅で泣いてるんなら。
そしたら。
私と踊りませんか。
「踊りませんか?」
本当は、一緒に踊るよりも、一緒に休みたい。
私と一緒に躍りませんか? 曲のリズムに合わせて。
あなたが踊るのを好きでも嫌いでも構いません。ただ、私はあなたと踊りたいのです。
音楽の地平線が奏でる演奏に合わせて。短い一曲でも良いのです。
凍てついた花の曲でも。魔術師や雷神の曲でも。東方の星々の曲物語でも。英雄の曲でも。
聞くだけでなく踊るのも楽しみはあるものです。
平和に花を咲かせるのが踊りなのですよ。戦場での踊りは誰からも好まれませんから。
嬉しい時も悲しい時も、踊りは自分の気持ちを表すためにもあるのです。殻に閉じ籠もるだけではつまりませんから。
私があなたに合わせます。なので、気楽に思うままに踊りましょう。
ただ、私はあなたと踊りたい。それだけなのですからーー。
「踊りませんか?」
ためらいが
ステップ踏み出す
足縛り
差し出された手
取れずじまいで
10年くらい前だろうか。私が幼稚園に通っている頃だった。私は踊ることがとても好きだった。
好きといっても、ダンス教室に通うなど、そんな専門的なことはしていない。私の踊りははっきり言って下手だった。顔は無表情、バランスはよく崩すし、何を意識して何を考えて踊っているのか分からない。あとから父の撮ったビデオを見返してみて思ったけれど、その様はまるで空気のない操り人形のようだった。
でも当時、私から見えている世界は違った。幼い頃アイドル私はアイドルが大好きだった。ステージで全身にライトを浴び、目は常に宝石のようにキラキラ輝き、可愛く整えた髪と衣装についたフリルがふわっとする度、心が踊った。テレビ越しでも生で見ても、現実にいるのかいないのかわからないくらいアイドルも自分もふわふわしているその感じがとにかくとても好きだった。
だから私もアイドルになりきって踊っていた。目の前を大きなステージだと思って、自分はその真ん中に立っている。ペンライトが視界の端から端まで私の大好きなピンクで埋め尽くされ、私がくるりと一回転するだけで髪が勢いに任せてふわっ
と動き、スカートはフリルと一緒にくるくると膨れ上がる。とにかくステージの上でふわふわしていて、観客席のファンをみんな非現実的空間に連れ込む。そんな想像をしながら好きな曲をかけてうろ覚えなダンスを踊り、下手なダンスを家族の前で披露していた。
だが幼い頃の私でも、部屋で1人で無表情で踊っている私を想像したら恥ずかしくてダンスなんて絶対にやらなかっただろう。実際、たまにそんなことを考えてしまい、恥ずかしくてたまらなくなった時が何度もある。
それでもアイドルを見ると何故かもう一度踊りたくなった。そして踊り始めると、私から見えている世界はステージの上だった。全てが夢の中のような感覚だった。ふわふわしていた。幼い頃の私は、想像だけで自分を違う世界に連れ込むことができたのだ。
現在私は高校生だが、今、幼い頃のようにステージやペンライトを想像して自分がアイドルになりきって踊る、なんて絶対にそんなことはできない。
得意だった想像力を働かせてもステージが見えるのは一瞬、すぐに散らかった部屋の中へと意識が戻り、現実に引き戻される。部屋でひとり、自分の容姿には似合わないアイドルのダンスを踊っているなどと考えると恥ずかしすぎて、足をばたばたして気を逸らさないと心が変に焦りだしてどうにかなってしまう。
でも、もしも、幼い頃の私に会えるとして。
幼い頃の私が「お姉ちゃん、アイドルごっこしよう!一緒に踊ろう?」
そう言ってくれたら、私はこの恥を捨てて幼い頃の私と思いっきりアイドルになるだろう。根拠はないけど。
でもきっと、幼い頃の無垢な私は、高校生の私を自分の想像の世界へ連れて行ってくれるだろう。そこにはきっと、裏も表もない。恥なんて最初から存在していないのだろう。
『踊りませんか?』
私はいつもひとりだった。
みんなそうなのかもしれない。でも、みんな手を取り合って生きてる。
支え合って、笑いあってる。泣いたとしても、笑ってる。泣けなかったとしても、それを隠して笑うのだ。
学校は“社会に出る練習”なんて大人は言う。でも、練習にしては難易度が高すぎる。辛すぎる、でも笑う。
それが出来ないから私はひとり。
学校に行って、ともだちに挨拶する。一日がすぎるうちに何度も何度も〈私が居なくてもいいんだろうなぁ〉と思う。
帰ってきてソファーに落ちる前に、手馴れた手つきで制服を脱ぐ。母が置いていった1000円で今日は何を買おう?何を買ったら笑えるのかな―
目を落とすとテーブルに化粧道具が置いてあった。
高そうなやつ。しかもたくさん。また男の人と出かけたのかな。私はお母さんのマネをして、化粧をした。我ながら上手くできた。服も、靴もお母さんのを借りて外に出た。
外を出ると、あたりは真っ暗だった。ハイヒールはとっても歩きにくかった。ドレスで歩幅は小さくなるし、ピチピチだ。夜の街はきらきらしててきれいだった。ぜんぶがぜんぶ。
その中でも、きらきらしてた場所に入った。 なにかのパーティー会場みたいだった。私と同じような格好をした女の子と髪をカチッと固めた男の子が笑って踊ってた。
踊り方がわかんないから、私は隅っこで夢の世界を見ていた。
そしたら、隅っこにいた男の子と目が合った。ニコって笑って、近づいてきて。
『こんにちは。あ、こんばんはか。』
「こ、こんにち、は。」
『はじめて?』
「う、うん。はじめて。」
『俺も。一緒。』
「そ、そうなんだ。」
『あの、お、俺と踊ってくれませんか?』
踊ってる時、私は自由に慣れた気がした。ほんとに笑えた気がした。自分がひとりじゃないって分かった気がした。
「踊りませんか?」
色とりどりのフクシアの花たちが可愛く問いかける。
まるで妖精さんとお話ししている気分。
★踊りませんか?
悲しいことがあったとき
キモいダンスを一緒に踊ろう
きみといつまでも笑っていたいよ
踊りませんか?
無性に爆音流して踊りたくなることあるよね笑
あの日の君と あの日の僕で
踊りませんか ただ一度きり
ラララ・ワルツが 奏でる色は
空色 虹色 恋の色
その指先を ほどいたら
消えてしまうよ 君が幻
✼•┈┈踊りませんか┈┈•✼
「踊りませんか?」
一度は憧れる、声をかけられたいその一心はみんな同じ。ときめきたいんだよね。
踊りませんか?
「踊るとね。楽しいんだよ!」一人の女の子が俺達に話しかけてきた。
「ねぇねぇお兄ちゃん!あたしが踊るから見ててね!」 俺は「わあ!すごい上手だね!」と言った。 すると女の子は目を輝かせ「ホント!?ありがと!お兄ちゃんも踊ってよ」と言った。
俺は女の子のマネをして踊った。すると「わぁ!すごい上手!」と言って飛びついてきた。オレはいきなり飛びつかれてぐらついて後ろに倒れてしまった。
後ろの女性に強くぶつかってしまった。すると女の子が「ママ…?」とても小さな声で言った。俺にはその声がぼやけて聞こえなかった
女性と俺は倒れ込み両者とも血を流していた。
「ママ…ママ!うっ…ママァ〜!」 キーン
その声は俺の頭に響いた。俺はこの子のお母さんにぶつかってしまったんだ… 女の子はお母さんに駆け寄り泣きわめいた。お母さんは軽傷で腕と足に何個か傷ができただけだった。
俺は頭から血を流し、クラクラしていた。友人たちが心配してくれた 「おい、大丈夫かよ!」 友人たちの心配の声が頭に響き渡って 心配されて嬉しい うるさい 痛い 感情が混雑していた
「お兄ちゃん酷い!ママが死んじゃうの!」
俺はそのまま気を失った
起きたとき病院のベットで寝ていた俺は結構重傷だったようだ。隣には友人達がいた。起き上がろうとしたら「痛っ!」「おい起き上がるなよ!」「あぁ…すまん」 なんで俺ってここにいるんだっけ?
っ…!そうだ女の子が!
動けるようになったら会いに行こうと思って、謝罪の手紙とフルーツとお金を少し準備をしておいた。お母さんが会いに来てくれた。「私、山崎沙織。ゆいか…女の子のお母さんで、あんたと私、ぶつかりましたよね?」「あ…はい…すいません…あと、これ手紙とフルーツよければ…お子さんに悲しい思いをさせてしまいました…。すいません…」 (深くお辞儀) 「私、結構体が弱くてね…とてもあのとき痛かったの。見たらそこまで酷くないって思うんだけどぉ〜、ほんっとに痛くて…ちょっとまだヒリヒリしてるんですよぉ〜?ナンカスルコトナインデスカァ〜?」 「は?(小声)」 「それはごめんなさい。これしかできることはありません。」「え?あなた、私を傷つけたんだからお金くらい払わないとぉ〜?」「もう払いましたよ?それに俺のほうが大きな怪我をしていて、お金ピンチなんですよ。」「こんなんじゃ足りないわぁ〜」「ちょっとこのクソババア俺の友達のリュウキになんてこと言ってくれんすか?」「は?じゃああんたが払いなさいよ、」「嫌です。これからこの病室に来ないでください。」
この出来事からお母さんが来るのが少なくなった。
数年後、傷は完治した
ある日のお出かけ
名札をつけた中学生がいた
その子の顔はあの時の女の子の面影があった
名札には 山崎 ゆいか
そう示されていた。
ドクン
俺、あの女の子に…
友人達 「どしたー?リュウキ」
「いや…なんでも…」
普通の帰り道
あの顔には見覚えがある…
お母さんに傷を負わせたあの男に…!
ドクン
絶対そうだわ!
(前に進む)友人達 「え?どうしたの?」
「ねぇ!あなた私のママに怪我追わせた最低人間でしょ!」
「っ…!」
「おい…あの時の女の子か…?」
コクッ
「よく聞いてくれ 」
「何?」
「こいつはわざと君のお母さんを倒したわけじゃない、」
「は…?」
「ただぐらついただけだ」
「そんなわけない!だってお母さんは…」
「ごめんね…。」
「何よ!あの傷、まだ腕と足に残ってるのよ!いつもバカにされる!」
「はァ…?りゅうき兄ちゃんだって、大怪我してまだ傷跡が残ってるんだぞ!」
「あんたが押したせいで!」
「え…?」
「なにそれ?誰が押したの?」
「お前だよ…!」
「そうなの…?ホント!?」
「うんそうだよ!謝れよ!罪被せるな!」
「おい…!もういいから、翔太…」
「…。」
「ごめんなさい。」
「っ…!」
「私が押したのに…罪被せちゃって…」
「いや…大丈夫だよ。君のお母さんも大丈夫?」
「うん…」
「うっ…うぅ…!」 (泣く)
「えっ、大丈夫?」
「ユイカちゃん!大丈夫?」
「うん…」
「なんでやった側なのにそんな泣いてるわけ?」
「こっちはまだ後遺症と傷跡が すごーく 残ってるの」
「おい翔太やめろ。」
「やった側はメソメソ、メソメソ泣いて!」
「翔太…!」
「やられた側は 2年 支障があったんだけど?」
「翔太!」
「…!」
「やめてくれ。」
「もういいだろ。過ぎたことだし」
「…。」
「山崎さん、俺は大丈夫。大丈夫だからそんなに気にしないで」
「翔太も謝れ。」
「なんで…?」
「そんな強く言わなくてもいいだろ。」
「これはリュウキ兄ちゃんのためだよ?」
「いいから。それ以上何も言わないでくれ。」
「…。ごめんなさい」
「いや…大丈夫元は私が悪かったから。」
「それ以上自分を責めないで」
「うん…。」
「聞いて。 私はダンスが元々大好きだったの。」
「だけど、お母さんの事故があってからあなたのことを思い出していつも嫌な気持ちになっていたの。」
「だけどこのことわかってよかった。」
「教えてくれてありがとう。」
「来週の火曜、体育祭で踊ることになったの。」
「私、中1 二組 紅組で… あの…見に来てくれない?」
「もちろん!」
体育祭当日
「次は1年生のダンスです。保護者の皆様。よろしければ一緒に踊ってくれませんか?踊れる方は娘、息子さんの前に立ってください。」
「あ…。私のお母さん来てない…。」
「山崎さんのお母さんは?… 来てない…?」
「よし!」
「山崎さん。踊りませんか?」
「いいの?ありがとう」
「踊りませんか?」
ある日、なこちゃんは、何もかもが嫌になって家出をしました。なこちゃんが持ってる一番大きいキャリーケースを引っ張り出して、洋服や下着、お気に入りのぬいぐるみやスケッチブックも詰め込みました。通帳やクレジットカード、スマホは小さなリュックに入れて、家出をしました。
家出をしたところで行き先はありません。
親戚や友達も、両親もいない、なこちゃんにとって唯一頼れるのは東京に住んでいる友達です。同じラッパーを推してる唯一の同世代。ですが、なこちゃんには、飛行機のチケットの取り方も分からないし、チケット代を払える余裕もありません。
なこちゃんは、沖縄生まれ沖縄育ちです。うちなーぐちとも言われます。
沖縄は貧困に苦しむ家庭が多く、セックスする年齢が他の県に比べて早いので、みんなお母さんは20代そこらです。なこちゃんは一度、妊娠したことはありますが、ストレスで流れてしまいました。それも家出をする一つのきっかけでした。
彼氏には逃げられたけど、この子だけは私が守るって強く思っていたのに、死んでしまったのです。お医者さんは、よくあることだと言っていました。お医者さんの気持ちも分かります。1日に何十人の患者を診て、その内1人くらいは、なこちゃんと同じ人は診てきてるはずです。お医者さんにとっては流産した患者の一人なんでしょうが、なこちゃんにとっては初めて流産した患者なんです。ネットで見ると、なこちゃんと同じくらいの周期で流産した人もいましたが、大多数になれませんでした。いや、なりたくなかったんです。
子を亡くすことが当たり前だと思いたくなかったんです。
なこちゃんは、ひとりっこです。
だからいつも兄弟の存在に憧れてました。妹だったら、私の秘密基地を教えてあげようとか、お兄ちゃんだったら、宿題を教えてもらおうとか、色んな妄想をしていました。子どもは2人は欲しい。女の子と男の子。名前だって決めてました。
でも、子どもは死にました。女の子でした。
風が吹き
月が雲から
顔出せば
最初で最期
あなたとワルツ
【踊りませんか?】
踊りませんか?
一度はそんなふうに言われてみたい
ダンスは苦手だけど、好きな人と一緒に踊ることができたなら...きっと幸せだろうな。
色のない世界が一瞬で、ぱぁっと明るくなるだろう。
きらりと輝く愛しい人よ
貴方が主役のステージに、私も立たせてください
君という名の、人生の舞台に
貴方と素敵な時間を過ごしたい
私の想いを歌に乗せて
甘酸っぱい気持ちを全身で表現させて
沢山の人が見守る中、
観客席からの私の視線に気付いていますか
ねぇ、私に光を当てて
知人のうちの一人にしないで
伸ばしたこの手を取ってください
どうか、私と共に
踊りませんか?