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『踊りませんか?』

私はいつもひとりだった。
みんなそうなのかもしれない。でも、みんな手を取り合って生きてる。

支え合って、笑いあってる。泣いたとしても、笑ってる。泣けなかったとしても、それを隠して笑うのだ。

学校は“社会に出る練習”なんて大人は言う。でも、練習にしては難易度が高すぎる。辛すぎる、でも笑う。
それが出来ないから私はひとり。
学校に行って、ともだちに挨拶する。一日がすぎるうちに何度も何度も〈私が居なくてもいいんだろうなぁ〉と思う。

帰ってきてソファーに落ちる前に、手馴れた手つきで制服を脱ぐ。母が置いていった1000円で今日は何を買おう?何を買ったら笑えるのかな―

目を落とすとテーブルに化粧道具が置いてあった。
高そうなやつ。しかもたくさん。また男の人と出かけたのかな。私はお母さんのマネをして、化粧をした。我ながら上手くできた。服も、靴もお母さんのを借りて外に出た。

外を出ると、あたりは真っ暗だった。ハイヒールはとっても歩きにくかった。ドレスで歩幅は小さくなるし、ピチピチだ。夜の街はきらきらしててきれいだった。ぜんぶがぜんぶ。

その中でも、きらきらしてた場所に入った。 なにかのパーティー会場みたいだった。私と同じような格好をした女の子と髪をカチッと固めた男の子が笑って踊ってた。
踊り方がわかんないから、私は隅っこで夢の世界を見ていた。

そしたら、隅っこにいた男の子と目が合った。ニコって笑って、近づいてきて。

『こんにちは。あ、こんばんはか。』
「こ、こんにち、は。」
『はじめて?』
「う、うん。はじめて。」
『俺も。一緒。』
「そ、そうなんだ。」
『あの、お、俺と踊ってくれませんか?』

踊ってる時、私は自由に慣れた気がした。ほんとに笑えた気がした。自分がひとりじゃないって分かった気がした。

10/4/2024, 1:37:28 PM