『踊りませんか?』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
【お題:踊りませんか?】
ゾーンに入る
という言葉を
初めて聞いたのは
元 体操選手
内村航平さんの
言葉だったと思う
ゾーンに入ると
集中力、身体、メンタルが
この上ないほど 整い
その能力が極限まで
引き上げられるという
スポーツ選手であれば
競技において
素晴らしいパフォーマンスが
できることになる
元水泳選手
岩崎恭子さんも、
金メダルを獲った
試合について
どんなに泳いでも
体が軽く 疲れは感じられず
非常に気持ちがよい状態だった
オリンピック決勝
ということを忘れて
ずっとこのまま
泳いでいたかった
ということを 後に話していた
今思えば 彼女も
ゾーン状態に
入っていたのだろう
ゾーンは なにも
スポーツ競技にだけ
見られることではないようだ
山岸凉子の
「アラベスク」は
バレエを題材にした漫画だが
最終回の 間際
主人公ノンナが
やはりゾーン状態に入り
この世のものとは思えぬ
踊りを見せる
静寂のなか観客は
肉体と精神が
極限まで
研ぎ澄まされたときだけに
到達できる境地へと
ノンナの踊りによって
誘われるのだ
4次元の世界は
肉体や時間の制約を
一切受けないというが
漫画という
2次元の媒体を通じて
私たち読者も
その4次元レベルの
極地の美を 垣間見せられる
ジャンルを問わず
その境地に
立つことができる者は
その技をもって
世の人々に
肉体を超えるような
感動を伝えてくれる、
真の意味での
芸術家なのかもしれない
─他人の掌の上で踊らされるくらいなら、死んだ方がマシだ─
昔そんなことを言っていたはずの彼は、再会した私に気づかずこう言った。
─踊りませんか?─
今宵一夜、すべての憂鬱を忘れるために。
(踊りませんか?)
「なんてツラしてんだ」
頭上から声が降ってきた。見上げると思った通りの人物。私の機嫌が悪いことにはとっくに気づいていたようで。いつまでも仏頂面をしてると周りが気を使うからやめろ、と言われた。
「……誰のせいよ」
「お前の親父さんも、本心はそういうつもりじゃないんだろうさ」
「でも、だからってひどい」
今日は私の15歳の誕生日。それを祝うために父が、隣国の要人を呼んで盛大にパーティを催そうと言い出した。けれど蓋を開けてみれば目的は外交関係を深くするための集いにしかすぎなかった。証拠にケーキもプレゼントもない。とりあえず私は正面台座に座らされてるけど、お祝いムードなんてこれっぽっちもない。控えめに流れている音楽にのって踊っている人たちもいるけど、かたやホールの一角では気難しい顔した大人たちが肩を寄せて何やら話をしていた。
「私をだしに使ってまで、そんなに他のお国と仲良くなりたいのかしらね。これじゃ何のためにおめかししたのか分からない」
「まぁそう言うなよ。身分のある人には色々事情がある。仕方ないだろ」
「それは大層な事情ですこと」
皮肉を並べる私の頭に何かが乗った。彼の手だ。幼い頃からずっと私の用心棒をしてくれている。1日のうちで1番行動を共にするのは親でもなく彼だから、私が今どんな気持ちかなんてすぐに読まれてしまう。
「少なくとも、俺はお前の誕生日だと思って今ここにいる」
「ほんと?」
「あぁ。だが申し訳ないことに何も贈れるものがない。お姫様に、個人的なものを贈るのは許されていないからな」
彼は両手を広げて肩を竦める。
「別にいーよ。欲しいものなんて何もないから」
「品物は贈れないが、少しばかり楽しい時間を提供することはできる」
「……どうやって?」
ふ、と笑った後、彼は私の前に跪き手を差し伸べてきた。
「せっかくのダンスフロアーだ。こんなところでじっとしてるのも勿体ないと思わないか?」
ちょうど流れていた曲が終わった。次の曲はわりとゆったりしたテンポだった。わらわらと、男女のカップルがホール中心に集まりだす。
「Devrions-nous danser?」
「……Avec plaisir!」
右手で彼の手を、左手はドレスの裾を持ち立ち上がる。優雅なワルツは不思議と私を祝福してくれるように耳に響いてくる。彼の隙のないエスコートを受けながら私は体を揺らせた。はしゃぐ私を見て彼が目を細めていたことには気づかなかった。
「Bon anniversaire., mignonne」
踊りませんか?なにかのCMを思い出しそうなフレーズなんだけどなんのCMかまったく思い出せない。
喉まで出かかっているんだけどそれがなんなのかわからない。思い出だと思っているだけで単なる気のせいかもしれないな。
全然思い出せないしCMのことはもういいや。しかし踊りなんてしたことないかもしれない。学校でなにか踊った記憶もない。
踊りというと真っ先に思い付くのはコサックダンスかな。あれほど個性的な踊りは中々ないだろう。名前も覚えやすいし。
そろそろ終わりが見えてきたけど最近ゲームにはまりすぎて疲れている。久しぶりにゲームにはまったけど面白いものだ。
ゲームが終わったら小説を書かないと。でもゲームを終わらせて小説書く時間ができても小説を書く気力が出てくるかはまた別の話なんだよな。
桜色の彼は綺麗に舞います
私には追いつけないほどの
スピードで
誰にも真似出来ない
舞をします
彼はそれを
"踊ひ''と言いました。
お姉さん
私と いっしょに踊りましょう
【踊りませんか】
「踊りませんか?」
手に手を取ってステップ踏んで
人生のリズムをあなたと
何十年か先、ふとこの瞬間を思い出す日が来るだろう。そしてきっと、それが私の青春だったと……そう思う日が来るのだろう。
何となくそんな気がした。そんな日の出来事だった。
***
「引越し?」
「……うん。夏休み明けからは違う学校」
親友の由佳から出たのは、思いがけない言葉だった。
同じアパートのお隣さん。幼稚園からの付き合いの由香とは幼馴染であり、親友だった。何をするのも何処へ行くのもいつでも一緒。だから、同じ習い事をするのだって必然だった。
小学校に上がって始めたダンス教室。子供の運動能力とリズム感を上げる事を基礎としていて、ジャンルに囚われない様々なダンスを教えてくれた。
その中でも私達が特にハマったのは社交ダンスだった。本来は男女のペアになるものだが、女子ばかりのダンス教室では、必然的に同性同士のペアとなる。大会に出る訳ではない。せいぜい街のお祭りや発表会で披露する程度。その為、私はダンスを習い始めてからこれまで、ずっと由佳とペアを組んできた。中学に上がり、本格的に社交ダンスを始めても尚それは変わらない。私にとっての由佳は幼馴染であり、親友であり、そしてパートナーだった。
「引越し……急だね」
「うん。でもお父さんはもう来月にでも引越しするって。お父さんのお母さんが病気になっちゃって……それで、お父さん実家のお店継ぐ事にしたから、家族みんなでお引越しするんだって」
「由佳のおじさんの実家って確か……」
「九州だよ」
「九州……遠いね」
「そうだね」
ここは関東。日本地図では真ん中辺りに位置してはいるが、やはり九州となると遥か遠いものに感じる。ましてや中学生の私にとって、九州なんてのは未知の領域だった。行き方もわからない、遠い遠い国に行ってしまうような感覚。
まだ6月が始まったばかりなので、夏休みの終わりとは言っても時間はある。そうは言っても2ヶ月もすれば由佳は居なくなってしまうのか。そう思うと次第に悲しくなる。いつも当たり前に隣に居た親友に会えなくなってしまうのだ。
気付けば溢れ出した涙が頬を伝っていた。
「泣かないでよ〜。まだ先だよ?」
「そうだけど……そうだけどさ、もう2ヶ月もないんだよ」
「知ってるよ…。私だって、本当は行きたくないし……昨日言われて、まだ自分の中でも整理出来てないんだから」
「ずっと……ずっと一緒だと思ってた。高校も、東校一緒に行こうねって、言ってたのに」
「行きたかったよ!私だって、莉乃と東校行きたかった!修学旅行だって行きたかったし、学祭も今年は発表で金賞目指したかった。体育祭……今年こそは優勝しようねって……」
話しながら、次第に由佳の瞳にも涙が溜まっていく。2人でやりたかった事、やろうとしていた事、2人一緒だからできた事、未来の話も思い出話も…話始めたらキリが無かった。この先の未来にお互いが居る事が、当たり前だと思って過ごしていたから。
どれ位泣いただろうか。ポケットティッシュは底をつき、泣き疲れて声も涙も枯れ果てた頃徐に立ち上がった由佳は袖で涙を拭いてこちらに手を差し伸べた。
「踊ろ」
「踊る?」
「うん」
「ここで?」
「ここで」
「……」
「踊ろう。思い出だよ。うちらって言ったらやっぱこれしかないじゃん」
「確かに」
由佳の言葉に、私も涙でぐちゃぐちゃの顔をタオルで拭く。もう拭いているのが涙なのか鼻水なのかわからない。
「私と踊ってくれませんか?」
改めて差し伸べられていたその手に、私は自分の手を重ねた。
「喜んで」
浜辺の公園。学校帰りの放課後。帰宅部の2人が夕日をバックに踊っていた。
音楽なんてオシャレなものはない。6時を知らせるチャイムがけたたましくなっていて、カラスの鳴き声が歌声だった。
笑いながら、しかし涙は溢れていた。きっとこれが青春なのだと、この瞬間を忘れる事はこの先も無いと思いながら、私達は示し合わせもなく大好きなあの曲を踊ったのだった。
いつか見た映画のワンシーンの様に。
#いつかの思い出 【踊りませんか?】
踊りませんか?
あなたの様な身分で?
踊りたくなったのです。
一人で踊りなさいな。
一人ではいつでも踊れます。
でも、あなたと踊るなら、あなたがいないと駄目なのです。
身分不相応よ。
身分と踊りたいのではないのです。
ただ、あなたと踊りたいのです。
生意気ね。
子供のようなわがままを言うのだからそうでしょう。
失礼ね。
あなたの言う事を聞かず、自分の願いだけを通そうとしているのだからそうでしょう。
馬鹿なの?
聞き分けも無いのだからそうでしょう。
私と踊って自慢したい?
誇りにしたい事をそういうならそうでしょう。
愚か者。この夜会で私はあなたと踊りません。
そうですか。それでは、私は去りましょう。
ただし、この後、私はこの後、一人になります。その時、あなたが誘うなら。
誘うなら?
ちゃんと、エスコートしてくださいな。
私、踊りに自信がないの。
咲き乱れる花々の上で美しい蝶が飛び回るように
蜜という歓喜に震えて踊りませんか?
あなたとだから踊りたい
あなたとこそ喜びあえる
優雅でなくとも踊り始めれば
ほら、怖くないでしょう?
#踊りませんか?
いいですよ、踊りましょう。と返せたら
自分も少しは変われるんじゃないかと思うけれど、恥ずかしくて出来ないです。だから他の方法を考えます。でも別に変わる必要もないのかな。個性ってことにします。
『踊りませんか?』
テレビの画面の中で、王子様がヒロインに、吹き替えられたイケボでダンスに誘っていた。
たまたまそのタイミングで口を付けていた缶ビールが、タプンと揺れる。はあぁ、とため息をついた。
金ローで、私の好きな声優さんが昔の洋画に吹き替えをするというニュースを見て録画してみたが、ストーリーも良いし、声も良い。いつの間にか感情移入してしまって、健気なヒロインを応援していた。
一人の女として、いわゆるシンデレラストーリーというものは、幼い頃から憧れてきた。ただ大きくなってくると、自分は恋愛物語の中でいう主人公の恋敵にすらなれない友達役なのだと思うようになった。異性から愛されたことなんて一度もないし、臆病だから積極的に行動するのを恐れる。気弱だから、ずっと動けないで結局主人公の良い友達ポジションでとまってしまう。そのくせ性根はあまり良くない。
私もいつか、こんな風に迎えに来てくれる王子様と出会えるのだろうか。
10/4「踊りませんか?」
「伯父さんも踊ろ!」
姪が手を伸ばしてくる。
ディスコは人でごった返し、チカチカと色とりどりの明かりに照らされ、大音声で曲が流れている。
「馬鹿馬鹿しい。こんな大人を捕まえて何を言ってるんだ」
「あたし、知ってるよ。伯父さんて昔、踊る人だったんでしょ?」
言葉に詰まる。
「楽しんだもの勝ちだよ! 踊ろ! ほら!」
姪に手を引かれてホールの中央に出る。
「…馬鹿馬鹿しい」
呟きながら、30年ぶりのステップを踏み始めた。
(所要時間:6分)
10/3「巡り会えたら」
「どうしても、行くんですか?」
「何言ってんだ。依頼が解決したら次の土地に行くのが冒険者ってやつのあり方だろ」
マントを羽織り、荷物を持つ。宿を出た所だけでなく、村のはずれまで、その小僧は見送りについてきた。
ここまででいい、と言うと、小僧は思い切ったように声を張り上げた。
「あの、僕、冒険者になります!」
思わずきょとんとする。小僧は続けた。
「冒険者になって、お姉さんの助けになります。…いつか、必ず!」
ははっ、と口から笑いが出た。こんなひょろっとした小僧が何言ってるんだか。
「そうかい。精々鍛えな」
「はい!」
嬉しそうに答える小僧。悪くない表情だ。期待しないで待っておこう。
まあ、この広い世界でもしまた巡り会えたら、な。
(所要時間:10分)
『踊りませんか?』
「邪武、踊りませんか?」
沙織お嬢様からその言葉を聞いた時は聞き間違いかと思ったが、こちらに微笑み手を伸ばすその姿は幻覚ではなく、オレは内心舞い上がりながらも努めて冷静に「喜んで」とその手を取った。
遂に! オレの時代が来た!
沙織お嬢様がとある企業のパーティーに出席することになった時、お供にオレを選んでくださった。星矢ではなくこのオレを! そして今、オレをダンスのパートナーに選ばれた。オレは諸手を挙げて万歳三唱したい気分になった。
しかし、浮かれ気分もそれまでだった。オレは社交ダンスなど踊ったことはなく、悲しいことに踊りのセンスも持ち合わせていなかったようで、沙織お嬢様の足は踏むわ、他の客にぶつかって舌打ちされるわで散々だった。オレだけならまだしも、一緒に踊っていた沙織お嬢様まで物笑いの種にされ、オレは情けなさと申し訳無さでダンスが終わった後、顔を上げられなかった。
「申し訳ありませんでした、お嬢様」
帰りのリムジンの中で、オレは沙織お嬢様に頭を下げた。
「あら、何がですか?」
一方沙織お嬢様は、まるで何事もなかったかのような返事をする。いや、むしろ上機嫌に見えた。
「ダンスの件です。オレのせいで、沙織お嬢様にまで恥をかかせてしまって……」
「その事ですか。人の噂も七十五日、言わせておきなさいな」
沙織お嬢様はオレに気を遣っているのではなく、本心からそう言っているようだった。訝しむオレに、沙織お嬢様は続ける。
「むしろ、あなたは期待通りでした」
「あの、無様な姿がですか」
「ええ」
沙織お嬢様はやんわりと微笑む。
「実はあの企業の会長のお祖父様が、自分の息子と私を結婚させたがっていて困っていたのです。でも今日の姿を見て、厳格なあの方のこと、『ダンスも碌に踊れない者など息子には相応しくない』と思ってくれることでしょう」
「そんな理由が……じゃあ、ダンスの相手にオレを指名したのも、オレが踊れないと分かっていてですか」
「だってあなた、社交ダンスなんて踊ったことないでしょう?」
そう言って沙織お嬢様は悪戯めいた笑みを向けた。その顔を見て、オレは言葉を詰まらせた。体よく利用されたわけだが、嫌な気分ではなかった。どんな形であれ、沙織お嬢様のお役に立てたのであれば喜ぶべきなのかもしれない。オレは沙織お嬢様に笑い返した。
「いつでもお呼びください。貴女のためならこの邪武、いくらでも道化になりますよ」
人は目的の為に身体を動かす
もしその手段を目的としたら?
身体の動きの為の身体の動き
動きは流れを生み 生まれた流れは動きを生む
常に満たされる目的は常に満たすための手段に変わる
踊りの為の踊り
それは踊る理由を閉じ込めた円の上で行われる
満たされることで満たされた円
そこで一緒にそんな踊りを踊りませんか?
誰かがその誘いに乗ったとする
しかしそこに円はない
踊りの為の踊りを踊ること
それを目的としたものには円は現れない
行きたくもないパーティーでダンスを踊る
私はそんなパーティーが大嫌い
私は話しかけられないように下を向いて
話しかけないでオーラを出していた。
そんな時
「踊りませんか?」
そう声をかけてきた人がいた。
彼は若い男性だった。
どこかの社長の息子だろうか
とても綺麗な顔をして私の顔を伺ってきた。
私は彼の手を取って踊った。
今までで1番の笑顔を見せて
─────『踊りませんか?』
・踊りませんか?
「僕と、一曲踊ってください」
魔法使いに懇願してまでやってきた、舞踏会。外にはカボチャの馬車。
それなのに…
王子様の顔が、全くタイプじゃなかったら、どうすればいいんだろう…
ごめんなさい?いやいや、じゃあ何のために苦労してここに来たんだよ。
みんな見てるし。
「よ、喜んで…」
分かっていた。ここに乗り込んだとき、その答えは確定していたって。
十二時の鐘に乗じて、理由をつけて抜け出した。
硝子の靴を落としたけど、構っていられない。魔法で作った靴だもの、足なんてつかないでしょ。
その夜、私は泣いた。ナルシストな雰囲気も、高飛車な物言いも、全部受け付けなかった。
やっと、私にも春がきたと思ったのに。なのにこんなのってない。
そんなことより金?もっともだけど、私はヤダ。
ああもう、救いなんてないのね。側には川が流れていた。飛び込んでしまおうかしら…
「やめてください」
え?振り返ると、息を切らした男性の姿があった。王子様が追いかけてきたのかしら。
来ないで、と叫ぼうとして、驚いた。見覚えがあった。私を美女に仕立て上げてくれた、魔法使いさん。
「何か、不具合がありましたか?ぼくの力不足です。お願いですから、早まらないでくださいっ…」
はあはあ息を切らしながら、彼は懇願する。その様子を見ていたら、何だか笑えてきた。なんて見当違い。なんて真っ直ぐ。魔法の効果は切れてしまったけど。
魔法使いさんに、一歩近づく。できる限り、色っぽく。
「ねえ。それなら責任とって、私と逃げてくれない?」
「踊りませんか?」
踊りたいけど踊れないの
臆病者の少女はまるで大地に根がはってしまったかのように足が一歩も動きません
少女は自分に自信がないのです
そのうち痺れを切らした少女の影がハサミを手に持ちチョキチョキチョキ
少女と影は離れ離れになりました
影は自由自在にステップを踏みます
とても愉しそうです
少女は羨ましそうに影を見つめています
そんな少女に声をかけてきた影がいました
その影の持ち主は少年です
少年も少女と同じように臆病者でした
少年は少女に恋心を抱いていましたが
声をかけられずにいたのです
少年の影が少女に耳打ちしました
「君は美しい、自信をもって」
影が少年の元に戻りました
少年は勇気を振りしぼって少女に歩み寄りました
「僕と踊りませんか?」
少女は恐る恐る少年が差し出した手に自分の手を重ねました
音楽にのせて身体と心を躍らせます
ふたりは音楽が鳴り終わってもずっとステップを踏んでいました
少年と少女はとても幸福でした
踊りませんか?
小さいころは踊っていた。クラシックバレエを習っていたのだ。
レオタードを着てバレエシューズで基礎練習。
しばらく踊ったらトウ・シューズを履いて振り付けをさらう。
正直、あまりうまくはなかったと思う。でも、ただ踊ると不思議と気分が高揚した。
上手に踊れるお姉さんの振りをみながら真似して足をあげたり回ったりするだけで楽しかった。
今からでも踊れるのだろうか。
まだ靴は置いてある。足のサイズは変わっていない。
定説通り2センチ小さめの19.5センチのバレエシューズ。
踊ろうか。不恰好でも不器用でも、ただ楽しく。
お題:踊りませんか?
「踊りませんか?」
手をすくい取って、引っ張って、引き寄せる
ぶち、ぶち、ちぎれてぶら下がった片手。
あれもだめ、これもだめ、全部千切れた。
ぽい、ぽい、積み重なって異臭を放つかたまり。
着飾ったタキシードもドレスもベトベトですね。
あなたも一緒に、お一ついかが。
もうこの際なので踊りましょ
踊りませんか?人生で言ってみたいセリフのひとつである。踊りませんか?ということは、多少自身も覚えがあるということである。その上で踊りませんか?と誘うのである。人生で踊ったことなどあるか?小学生のマイムマイムくらいしかない。無論、ダンス部などに入る人は別にしても、たいがいの人は踊ったことなどないのではないか?