『距離』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
距離。
遠くても近くてもきっと同じ気持ちになっていたでしょう。
物理的に遠くなっても、時間の経過があってもあの頃、あなたが与えてくれた温かい心は今も私を温めます。
あのときは素直にごめんなさいと言えなくてごめんなさい。
この気持ちはいつ伝わるのでしょうか。
一生伝わらないかもしれませんね。
幸せでいてくれさえすればそれだけでこの気持ちは浮かばれます。
すべてにおいて遠くなってしまったあなたへ。
人との距離感について普段からよく考える。
近づきすぎると相容れないところも見えてくる。それでも一緒にいられる関係性を作れればよいが、多くの場合そこで一歩引く。
つかずはなれずの間柄が平穏なのは間違いない。
この人とは合わないと感じても、どうしても切れない関係もある。家庭、学校、職場などで。
物理的な距離は置けないけど、心理的な距離は置きたい。双方が暗黙の了解で適切な距離感を保つのがベストだが、自分が遠ざかろうとしても向こうがずずいと詰めてくるときもある。
世の中には、寂しがりやなのに人付き合いを避けている人が意外にいそうな気がする。
仲良くなりたい気持ちはあっても、いろんな目に遭ううちに最初から人と距離を置くようになる。
自分だって人間関係の煩わしさと一人の孤独感のどちらを取るかと問われれば、迷わず後者である。
お互いに距離感を持って仲良くできればそれが一番いい。──距離感というか、遠慮というのはどんな関係性であれ大事だとつくづく思う。
『距離』
これ、縮尺いくつだっけ?
実際は、もっと長い?
とても短い?
縮尺?ないよ。
好きに決めていいのね。
ここから、ここまでの長さ。
ここから、ここまでの、距離。
今日は希少な幸せな日です
恐怖感と不安感がないです
心配事はありますが苦しくないです
どうしてみんな、私から離れていってしまうの?
どうして距離を置くの?
私はみんなと一緒に話したくて、一緒に遊びたかっただけなんだよ
不意に甘い香りがした。香りのするものを身につけたり置いたりしてこなかった身だが、この香りは悪い心地がしなかった。
香りの出どころを探す様に鼻をひくつかせる。
ドアが開いているのをこれ幸いと盗み見もした。
そうして元いた場所から二つ先のドアからより甘い香りが漂う。
香りの正体は生けられた花だった。
香りに詳しくなければ花もよくわかっていない。
ただテレビで見る様な高そうな花が生けられている。
ドラックストアで手に入る品であれば、思い切って買ってみるかと思っていたが、これは諦めざるを得ない。
もうすこし香りを楽しむ為ゆっくりと通り過ぎることにした。
‐距離‐
君とボクとの
心の距離は
遠く離れて
四萬光年
いつか星坐の
ひとつに成らう
距離
君と知り合ってやがて一ヶ月…週末には待ち合わせをして、映画や水族館なんかに出掛けたり、一緒庭と食事に行ったり…お互いにプライベートな話題もしている…
なのに、近くで過ごしているのに、偶に触れる指先庭と、胸が早鐘を打つ…本当は、せめて手を絡めてたい…いや、キスくらい…君と向かい合い乍ら、近くて遠いこの見えない距離が切なくて…
【距離】
ぽつりと雫が地面に落ちる。
あ、と空を見上げると、今すぐにでも泣き出しそうな鉛色をしていた。
「やべ」
何となく家に帰りたくなくて、ゆっくりと動かしていた足を速める。
だが、空というものは思っていたよりも堪え性が無かったらしい。
腕に水滴が落ちた感覚がしたと思うと、あっという間にザーザーと視界が湿度100%の光景になった。
教科書を濡らさないように、バッグを腹の方に抱えて少し前屈みになって走る。
あー、最悪だ、だとか。風邪引きそう、だとか。降り注ぐ雨に負けないくらい頭の中で色々とぐちぐち思っていたが、今びちょ濡れになっている事実は変えれない。
何だか教科書を必死に守っている事とか、自然現象にイラついている事とか、全てが滑稽に思えてしまう。
もう濡れているのに何でこんなに急いでるんだ?という考えに至って、最初のゆっくりとした速度に戻した。
別に雨だって悪いものじゃないしな。
冷たい雫達に体を撫でられながら、俺はそう思うことにした。
ー?ー?ー?ー
ぽつりと雫が地面に落ちる。
あ、と空を見上げると、そこには雲一つ無い青色がいっぱいに広がっていた。
今日の最後の授業が理科だったせいか、雲量が0~1で快晴だな。と変なことを考える。
「やべ」
何となく家に帰りたくなくて、ゆっくりと動かしていた足を速める。
どんどんと足元に落ちていく雫達を見ないようにして、年中長袖の腕で目を拭った。
拭った時にじん、と腕が少し鈍く痛んで、そういえば昨日怪我したなと思い出す。
だが、いつものことだ。と一瞬腕に向けた意識を足を動かす方に移した。
家で酒を飲んでいるだろう父は、思っている何倍も堪え性が無いのだ。
こんなことしている場合じゃない。早く帰らないと。
だって、また怪我が増えてしまう。痛いのは誰だって嫌いだろう。
何で俺だけがこんな目に…なんて、思っていないさ。
だって、あれが父さんから貰える愛情だから。
冷たい視線、言葉、暴力、色んなことから目を逸して、あれも俺を愛しているからなんだ、と。
そう、思うことにした。
(雫が落ちる距離は、幸せの距離と反比例)
遠いと、たどり着けなくて、嘆く。
近づけば、もっと近づきたくなって、やがて見えなくなる。
願望との適度な距離とは、果たしてどのくらいなのだろうか。
距離が結局 邪魔をする
この焦りも あの後悔も
心は言葉をもってしても無力
単純で強力な障害物だな
電波に託したって無駄だ無駄
"距離"
「みゃあ!」
居室の扉を開けると、ケージの中の子猫が大きく鳴いて出迎えた。
「おぉ、ただいま。悪い、腹減ったよな?今飯持ってくる」
飛彩に支えられながらケージに近付く。先程までみゃあみゃあ鳴いていたのに急に大人しくなったと思ったら、目線の先は俺ではなく俺を支えながら入ってきた飛彩だった。
──こいつ、興味津々な目で見てる。
飛彩を横目で見ると、こいつも子猫を見ていた。子猫と成人男性が見つめ合っているのは、なんだかシュールな絵面だ。
気付かれないように小さく笑いながらケージの前にしゃがみ、扉を開いて中の皿を取り出す。
「飯作りに行く」と言ってゆっくり立ち上がる。
子猫と見つめ合っていた飛彩は俺の声に我に返ったのだろう。ぱっ、とこちらに顔を向け「あ、あぁ。分かった」と言って再び俺の体に手を添える。
「あ、や…きょ、今日は猫缶にしよう。部屋に何個か買って置いてあんだ」
そう言って飛び退くように離れて戸棚を開き、子猫用の猫缶を一つ取って猫缶の封を開け中身を皿の上に乗せる。柔らかなゼリー状の固形物が、皿の上で蛍光灯の光をてらてらと反射する。
「ほーら、ご飯だぞー」
ケージの中の定位置に猫缶の中身を乗せた皿を置く。
すると子猫は「みゃあん」と一声鳴いて皿の前に行き、はぐはぐと食べ始めた。
「なんか唸りながら食べているが、大丈夫か?」
「あぁ大丈夫、平気だ。子猫にありがちな事らしい。俺も最初は驚いた」
救急に連れて行って検査を受けた後、子猫に初めてご飯をあげると「うみゃうみゃ」言いながら食べ始めて、何か病気なんじゃないかと思い慌てて電話で聞いたら、食べながら鳴くのはいわゆる《子猫のあるある》らしい。
「美味しそうに食べているな」
その言葉に子猫を見る。いつも通りの食べっぷりで、皿の中を見ると、もう半分くらい食べ切っていた。
「そんながっつくなっていつも言ってるだろ。…実は初めてやったんだが、口に合って良かった」
子猫を見やる。
本当に美味しそうに食べている。
すると急に片手で肩を、ぐいっと引き寄せられた。
「っ!?」
驚いて横を見ると、飛彩の端正な顔がすぐ近くにあった。思わず顔を逸らしてしまう。
ばくばくと、心臓がうるさい。痛い。
「みゃあ」
足元から鳴き声がした。驚いて首を動かして目線を下げると、扉を開けっ放しにしていたケージからいつの間にか出てきて、俺の足元に来ていた。
両手で抱き上げ、胸に抱くと喉を鳴らす。
「本当に貴方に懐いているな」
そう言いながら子猫に指を伸ばして頭を撫でる。子猫は嬉しそうに「うみゃあ」と小さく鳴いてみせた。
──良かった。獣医の言った通り、あんまり人見知りしないタイプみたいだ。
実は、居室の扉を開くまで少し心配だった。だから初対面の人間がいても、いつもと変わらぬ子猫の様子を見て安堵に小さく息を吐いた。
──ん?待てよ、この構図…傍から見たら、《親子》じゃ…。
距離
物理的な距離ではなく、心理的な距離。
信頼を失わせてしまった人との距離は、絶望的に遠い。その信頼を取り戻すには、並大抵の努力では足りない。
物理的だったら、時間とお金をかければ距離は近づくけど、信頼を取り戻すには、誠心誠意の対応ときめ細やかな心遣い。
それから、相手次第だからご縁もありだと思う。
なんだか、距離の話から、信頼を取り戻す方法の話に代わってしまった。
一体何を遠ざけて
安定を求めようとしたのか
そうじゃない
もっと近づきたいよ
会えない時間
離れているときも
そばに感じる
「距離」
いつかのきみに愛を込めて
肩が触れ合うくらい近くにいても、
心がいくら通じ合っていても、
奥の方に秘めた想いだけは伝わらない、伝えない。
もしも僕が僕じゃなかったら、
きみと出会えなかっただろうけど。
僕が僕だったからきみとは結ばれないんだね。
笑いかけるその顔も、甘えたようなその声も
ずっとずっと僕のものだったのに。
いつか知らないものなる。
あの日交わした、欲を滲ませた約束は
言葉にできない、永遠の誓い。
先に破ったのは僕だった。
【お題】距離
パーソナルスペースに入らないで。
私に近づきたいのなら、もっと親しい関係になってくださりませんこと?
例えば、ほら。
私が恋する人になってみる、とか。
#距離
"君ってさ、人との距離近いよね"
そう、男友達に言われた。
そうだよ、わざとだもん。
でも、それあなただけ特別近い事知ってる?
小学校からの幼馴染で、私の初恋の人。
頭の良いあなたと同じ高校に行きたくて、
勉強頑張っていた事知らないでしょ?
無事に同じ高校に入学できたけれど、
変わらない私たちの距離。
色んな人にくっつくふりをして、
あなただけにくっついてドキッとしてくれれば
いいのになんて思っていたけれど、変わらないあなた。
むしろ、嫌われちゃったかも…。
でも、今年で卒業だから告白する事にした。
友達として隣で歩くのはもう飽きたから。
次は恋人として隣を歩きたいな。
ピンチのときに
差し伸べられた手があった。
すごくその手に頼りたいのに、
力加減も掴み方も今度こそ
失敗したくなくて
強度を、試してしまった。
そのうちに手は弱くなって
引っ込んでいった。
#距離
【126,お題:距離】
早朝のカフェ、おうちご飯も良いけどたまには外食したいじゃん!
という彼からの提案で、近場のカフェで眠気を覚ます、初冬の朝の日
隣に居るのに、貴方の視線はいつも遠くの誰かを見つめている
ここには居ない誰か、私以外の誰か
付き合ってしばらくした後、彼からぽそっと話してくれた
きっと、前の彼女さんを見ているんだろうなぁ
彼がとても良い人なのは知っているし、私もそこが好きで「付き合って」なんて言ったんだ
でも、付き合ってもずっとどこか上の空で、「どうしたの」って聞いたら、おもむろに話してくれた
前の彼女さんは、病気で亡くなってしまったこと
突然の発作で「貴方は、絶対に幸せになるのよ」って言い残して、彼の腕のなかで冷たくなったこと
話を聞かされた後、彼は困ったように笑って柔く涙をこぼした
私は、少しは同情してたんだと思う
だって最愛の人を失うなんて、悲しいし辛い
でもね、それと同じくらい嫉妬もしてた
もう居ないなんて、ずるい
そんなの、勝ち目ないじゃない
彼の心と前の彼女さんの心は、きっと私よりも強い絆で繋がってたんだね
彼は彼女さんの話をするとき、いっつも楽しそうで悲しそうな顔をする
それだけ心の距離が近かったんだ、私以上に
もう死んじゃっているなら、どうしたって勝てやしない
彼の心を拐うだけ拐って、もうこの世に居ないなんて
正直者で優しい彼が、ずっと一途に思い続けている人なんだ
悪い人なんかじゃないのは、彼が話す表情で伝わってくる
私じゃ勝てないくらい、良い人だってことも
どんなに私が見つめても、貴方の心の距離は前の彼女さんの方が近い
そんなこと分かりきっている、でも
頼んだホットココアを口に運ぶ、思ったより熱くて火傷したのか、舌先がジリジリと痛んだ
どろどろとした感情もまとめて、喉の奥に流し込む
「私だって、諦めたくないの」
ぽそりと発した言葉は、温かなため息と共に空に溶けた
「まぁさ、強い思いってさ、歪むよね。」
そう零す彼を横目に、私は雲高く何も言えぬ静寂が感じられる秋と共に、ひんやりと冷えたベランダに軽く持たれつつ夜の街を見渡した。