『貝殻』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
[※hrak二次創作/成代?/twst×hrak]
『ねぇねぇ、ホホジロザメせんぱぁい』
背後から伸し掛かってきたデカい図体の後輩は、相変わらず何の基準で付けたか分からない渾名で俺を呼んだ。聞く人が聞けば恐怖に震えるだろう猫撫で声で、何でかは知らないが腕を前に回してこちらに抱き付く他寮の人魚は、これまた猫の真似事でもするように頭を僅かに擦り付けてくる。頭撫でろってか。視線は手元の端末に向けながら反対の手でターコイズ色のサラサラとした髪を梳いてやると、背中に張り付いている後輩は満足そうな声を出した。
『毎回思うけど何でホホジロザメ?』
『んーと……小エビちゃんが『サメも臆病な性格だ』って言ってたんだよね。オレらからしたら天敵って印象しか無いから結構びっくりしたんだけど、イグニハイド寮生のセンパイもそういうところあるじゃん。だからホホジロザメ』
『……分かるような、分からないような』
『あとねぇ』
『まだあんの?』
『ホホジロザメセンパイって、いっつもオレらの考えてること大体察してるでしょ? ──サメってさ、第六感があるんだって』
────ほら、センパイにぴったりじゃん。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
──何で今、思い出すかな。
目の前にあるのは沢山の貝殻で作られた風鈴。夏休みの自由研究で、クラスの"誰か"が作った"拙い作品"だった。……いや、『拙い』は言い過ぎか。エレメンタリースクール──小学生の作る作品にしては、かなり出来が良くて手の込んだ代物ではあるのだし。我ながら何様だとは思うが、なまじ『前の人生』でいろんな意味でレベルが高い連中と連んでいたせいもあってどうも自然と求める基準が高くなりやすい。良くないことだな。
ふぅ、と息を吐いて作者を確認した。『誰か』なんて惚けてみたけれど、本当は誰の作品かなんて分かっている。
名前の欄には、まだ慣れていない筆跡で『爆豪勝己』と書かれていた。
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あっちはどう思っているか知らないが、俺達は世間一般で言う所謂『幼馴染』というやつで、アイツは『個性』も派手で何でもできる『才能マン』というやつだ。その代わり口も悪ければ性格も残念……というか、みみっちい。別に悪いヤツではないしヒーローに憧れるような可愛げはあるけれど。ただまぁ誰にだって生理的に受け付けない人間ってのは居るもので、カツキ──『爆豪勝己』──は同じく幼馴染の『緑谷出久』に対してはかなり暴力的だった。お前らチビのときは一緒に遊ぶくらい仲が良かったのにな、何でだろうな。まぁ斯く言う俺も緑谷のことは苦手だけど。『良い子』ではあるんだろうけれど、一挙一動から漂う『RSA』臭が、もう、なんか…………俺には無理だった。閑話休題。
何が言いたいって、"多少"思春期とか反抗期のアレソレで暴力的ではあるものの親から一心に愛情を注がれて育ったそんなヤツが、漫画の一話で出番が終わるモブキャラみたいな俺と何で10年も連んでいるんだって話で。
……何を考えているんだろうな、本当に。
同じような声で、同じような獰猛さで、同じようにときどき甘えを見せてくるカツキは、容姿は全く似ていない癖にどこかあのウツボの人魚を思い起こさせた。
あぁでも、超が付くほどの気分屋な後輩と違って、カツキは割と静かな方かもしれない。付き合いが長いからかは知らないが、俺やもう一人に対してはそんなに声を荒げたり威嚇したりはしなかった。
緑谷に関しては論外です、関係修復は自分でガンバレ。イカれてる自覚も無ければ、幼馴染を色眼鏡で見続けている今のお前には無理だろうけど。
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「"ケイ"、お前ピアス開けたんか」
「ん? ──あぁ、うん。でも開けてから学校で付けれねぇってこと思い出したわ」
「ハッ、バカかよ」
「ホントそれな」
何となく、本当に何となくで開けた。多分後輩が付けていたものとよく似たピアスを露店で見たからかもしれない。ターコイズブルーでコーティングされた、鱗型に加工されている貝殻と銀の金具の三連ピアス。ここまで来ると呪いみたいだな、あのクソ論外。どうしてくれる。
「……そのデザイン似合わねぇな」
「あー、やっぱり? たまたま目に付いて衝動買いしたけどコレジャナイ感が凄くてさ」
「んなジャラジャラしたもんよりシンプルな方がテメェに合ってるわ」
「あら、お前意外と俺のこと見てんのね」
「やるなっつっても平気で未成年喫煙する癖にツラだけは無駄に良いからな」
「ゔ、っ、うーん…………ソウ、ネ。煙草に関してはごもっとも」
本人は貶してるつもりなんだか何なんだかよく分からないが、カツキから見ても俺の顔は比較的整っている方だと認識していることは分かった。突然ぶち込まれたせいで変な返しをしてしまうくらいには驚いたが。お前それどういう感情で言ってんだ、聞きようによっては『ツラが良いから見てる』ってことになるぞ。言ったら高確率で喚き出すから黙っているけど。耳元でしゃらしゃらと鳴るピアスを外して制服のポケットに突っ込む。指先にライターが当たったが、素知らぬふりをした。
「おい、行くぞ」
「あ? どこに?」
「テメェのセンスじゃ、また似たようなの買いかねねぇだろ」
「あはは……仰る通りで」
【貝殻】
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リハビリ品。(訳:タイムアップ&着地点見失いました)
成り代わったのは巷で『刈り上げくん』って呼ばれてるあのモブです←
【貝殻】
みんなの貝殻の中には中身が入っているのに
どうして君には何も入っていないの?
みんな殻からでてくるときもあれば
隠れて殻だけしか見えないようにするのに
どうして君は一度も出てこないの?
私は空っぽだから
夢も目標も何もないし
本当の自分さえ分からなくなっている
だから見せるも何もないでしょ
そっかじゃあ君の貝殻割ってもいい?
君の貝殻の内側には何があったのか全部見つけてあげるから
いつか君の心からの笑顔が見てみたいな・・・
幼い頃に偶然見つけた桜貝。淡いピンクのグラデーションがとても綺麗で、それはわたしの宝物だった。
夏の陽射しに照らされながらも、春の陽気みたいに柔らかなきらめきを持つ貝殻は、もうわたしの手元にはない。遠くに行く友人に渡したそれが、今どうなっているのかも知りようがない。
けれど、もしかしたらまた巡り会えるのではないかと。わたしは何となく、信じている。
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きらめき / 貝殻
24「貝殻」
貝殻をひろう。
片方だけの貝殻。
私も今、この貝殻。
「なー知ってる?」
「知らない」
「まあそう言わず。チョークって、本来棄てられるホタテの貝殻を砕いたものと、炭酸カルシウムっていうのを混ぜて作るらしいよ」
「ふ~ん」
「つまり、今ものすごい量のチョークの粉を吸った私は海の幸を取り込んだことになると思うのだけれど、どう思う?」
「やっぱり君の頭って面白いくらい沸騰してるなあって思う」
▶貝殻 #6
8月26日
瞬く
きらめき
遠のく
呼吸
めぐる
季節の
うつくしきこと
#きらめき
『貝殻』
小さな貝殻、シーグラス、まあるい小石。
自分が濡れないように、打ち寄せた波で拾った宝物を洗う君。
「ね、見て!カニがいるよ!」
君は楽しそうな声とともに瞳を輝かせてこちらを見る。
「お!どこどこ?」
彼女の元へ向かいながら思い出す。
こんなことあったな。
無意識に別の人を重ねてしまった。
僕はまだ忘れられていない。
叶わなかった、「また来ような」の約束を。
Theme:貝殻
子供の頃、「巻貝の貝殻に耳を当てると海の音がする」と聞いて試してみた。
確かに波の音がしたことをよく覚えている。
この貝殻の持ち主が故郷の海の記憶をしまっているのかなぁ…なんて思っていたけれど、実はちゃんとした仕組みがあるそうだ。
私たちの周りには常に何かしらの「音」がある。
図書館や自室などどんなに静かな空間にも、機械の駆動音や外を走る車の音、風の音など様々な音が存在している。
それらの音の高低が貝殻の中で共鳴し、耳に届く大きな音となって帰ってくる。
その音は周囲の環境と貝殻が造り出した音であり、それが「海の音」に聞こえるのはいわば思い込みなのだそうだ。
種明かしを見てしまうと「なーんだ」と少しガッカリするが、今の私には別の疑問が沸き上がる。
「じゃあもしも『海』を知る前のずっと幼い私が貝殻を耳に当てたら、何の音に聞こえるんだろう?」
風の音?ただの雑音?あるいは産まれる前に聞いていた音かもしれない。
分かりようもないのだけれど、だからこそワクワクしてしまう。
貝殻を身につけていた。
一歩、
また一歩と歩くたび、
貝殻が鳴る。
自分は今、ここにいるのだと
「貝殻になりたい」
「なんて?」
何を言っているのかわからなかった。
よく考えても、やっぱり意味はわからない。
「貝になりたいーみたいな?」
漫画かなにかでそんな文言を見た気がする。
今貝殻になりたい彼女はついさっきカレシの浮気が発覚して、盛大にカレシも浮気相手も罵倒してきたところだ。
さもありなん。
放課後の教室は昼とはうってかわって静かで、夕焼けの熱が室内の温度を上げていく。
べったりと机に顔を伏せて唸っていた彼女はゆっくりと顔を起こし、教卓に背中を預けて文字を打っていた友人をむっと頬を膨らませて見上げる。
「貝になったって意味ないじゃん。貝殻になりたいの」
「どう違うのさ、それ」
「今日の日本史の授業を忘れてしまったのかね」
嘆かわしい、みたいな顔をして、身体をおこし、机の中から大事に使われてることがわかる擦り切れた日本史の資料集を取り出した。
パラパラめくって、平安時代の貴族の遊びのページを開く。
「貝合わせって言ってね。たくさんのハマグリの貝殻を並べて、対になる貝殻を見つける遊びなの。神経衰弱みたいなゲームだね。ハマグリみたいな二枚貝は対になる貝殻としか組み合わせることができないんだって」
貝殻の内側に描かれた綺麗な絵の写真。それをなぞりながら、彼女は小さく笑みを浮かべた。
「対になる貝殻はこの世に二つとなく、ぴったりとはまるの。夫婦和合の象徴として嫁入り道具にもなるのよ」
「嫁入り道具、ねえ」
「だから貝殻になりたいの」
たった一人。
決して違えない、私だけの対が欲しい。
寂しそうに呟いて、勢いよく資料集を閉じる。
「よし、帰ろうか」
「………ん」
立ち上がった姿を見て、通学カバンにスマートフォンを放り込む。
彼女とお揃いの、色違いのくまのストラップが揺れた。
(貝殻になりたいのは私の方だ)
私はいつも、彼女の隣にしか立てない。
バラバラに並べられた貝殻なら、彼女と試されることもあったのだろうか。
お題「貝殻」
お題 貝殻
海が聞こえる
ザバァーン ザバァーン ザバァーン ザバァーン
私の心は波のよう
貴方への想いは絶えず押し寄せて引く
貝殻はその名残
砂浜に刻まれるわたしの思い
#124 砂になるまでリフレイン
浜辺の波が奏でる唄は
流れ着いた貝殻の
秘めた記憶の
遠い遠いどこかの唄
長旅の末、欠けてしまった貝殻の
欠けた唄の不完全なメロディーを
波は構わずにリフレインします
繰り返す波に洗われて
貝殻が砂となり
唄が消えてしまうまで__
お題「貝殻」
波音と砂音 それは静かなデュエット
小さい歩幅のその先に 巻き貝が1つ
白と茶が混じるその色は
色褪せた思い出を 思い出しそうで
理由なく溜まる雫
その味は塩っぽかった
それを耳にかざして 目を閉じた
バキンッと音がしてようやく足下に目をやった。
粉々に砕けた貝殻が床に散らばっていた。正確な数は分からないけど、両手では掬いきれないほどたくさんある。
ぼんやりとそれらを眺めていたらまた金切り声が部屋の中に響き出した。無遠慮に踏み込んできてより一層声を荒らげ、ガクガクと私の肩を揺さぶる。
黙ったままその人の目をみていたら頬を叩かれた。痛そうな音がするな、と考えていたら今度は反対側を叩かれる。抗議の意を込めてその目をみれば、大粒の涙を零しながらギャンギャンと騒ぎ立てるだけでとても話しなどできそうにない。
―疲れた
その一言さえ発することを許されていないのだ。
偉そうに胸を張って他人を見下すその人こそ、私の生殺与奪の権利を有しているのに情けない。ただ邪魔だから消えろと言えばいいだけなのにそれすらしない。
ひたすら己の自尊心を高めるためだけの行動を繰り返す様は滑稽で、毎日笑いをこらえるのに苦労している。
足下に散らばる貝殻のように踏み潰せたら、なんて。
私もまた狂ってしまったようだ。はやく処分してもらえないかな。
口の中いっぱいに広がる血の味を飲み込んで、その人のヒステリックが終わるのを待つ。これが私の仕事なんだ。
【題:貝殻】
例えば大きな貝殻が、海に流されて砕けてしまえばそれを貝殻と呼ぶことは出来るのだろうか。
きっと全てのかけらが集まって、元の形と同じ重さになったとしても元に戻すことは出来ない。
そしたら、君がこうして小さくなって私が抱えられる程軽くなってしまったのは当の昔に消えてしまったという事だろうか。
海の匂いが鼻をつんざき、砂が目に入るから泣いてしまう。こんな所に撒いたって君は自由になれないだろう。
だって、私が縛り付けたのだから。
後悔なんてしていない、していない筈だったのに。
時に穏やかで、時に激しくて、時に自由な波に身を任せ。たどり着いた浜辺には数々の出会いのカケラが待ちうけているだろう。
『貝殻』
「貝殻」
マコは海のある町に住む小学四年生の女の子です。マコは海が大好きで、毎日海岸を散歩しています。
ある日、いつものように散歩していると、みたことのないきれいな色をした貝殻を見つけました。マコが知っているより一回り大きなホタテの貝殻です。一見真っ白に見えますが、日にあたって虹色に輝いていました。マコは貝殻の輝きに目を奪われて、砂浜から貝殻を拾い上げました。貝殻はずっしりと重く、マコはとり落としそうになって慌てて両手で持ちました。近くで見てみるとますますきれいに見えます。少し角度を変えると色が変わるのが楽しくて、マコは貝殻をくるくる回して眺めました。しばらくそうしていると、貝殻の中から小さな声が聞こえました。
「ううう、もうまわさないでぇ……」
マコは悲鳴をあげました。貝殻がぱかりと開いて、なかから小さな小さな女の子が涙を流しながら姿を現したのです。
「あ、あなたはだあれ?どうしてそんなに小さいの?」
尋ねてみると、女の子はべそをかきながら答えました。
「私は海の国から来たの。陸に行ってみたくて泳いでいたら、迷ってしまったの。おうちに帰りたいよぅ……」
「あなたのおうちはどこにあるの?」
「海の底にあるわ」
「うーん、それだけだとわからないな。とりあえず、わたしの家に来ない?わたしのお父さんは漁師なの。何か知ってるかもしれないよ」
こうしてマコは小さな女の子を家に連れていくことにしました。
お母さんは手のひらに乗るくらい小さな女の子を見てびっくりしましたが、事情を話すと優しい手つきで女の子をなでました。
「大丈夫よ。きっと家に戻してあげるからね」
お父さんは夜にならないと帰ってこないので、それまで待たなくてはいけません。マコは女の子の不安を紛らわすために、女の子とおしゃべりすることにしました。
「おなまえはなんていうの?」
「名前はないわ。海では名前を呼ばないの」
「じゃあわたしがつけてあげる。えーっと、貝殻姫とかどうかな?」
まるでおやゆびひめみたいだと思って言うと、女の子は初めてにっこり笑いました。
「かわいい名前。私、名前って初めてよ」
それからマコと貝殻姫はいろんな話をしました。マコが陸の話をして、貝殻姫が海の話をしました。貝殻姫はマコの話を聞いて喜んでくれたし、貝殻姫の話は聞いたことないような話ばかりで楽しいものでした。おしゃべりははずみ、外はあっという間に暗くなって、お父さんが帰ってくる時間になりました。
お父さんは貝殻姫の事を聞くと冷静にうなずきました。
「なるほど、海の底から来たんだね。僕はほたてが多くいるところを知っているよ。そこでかえせばいいのかな」
貝殻姫はこくんとうなずきました。お父さんは、明日漁をするついでに貝殻姫を送ってくれるといいます。拍子抜けするほど簡単に、貝殻姫は家に帰れることになりました。すっかり友達になったマコと貝殻姫は、ハイタッチして喜びました。
「よかった、帰れるんだね」
マコが言うと、貝殻姫は嬉しそうに笑いました。その笑顔を見た時、一瞬マコの胸がずきんと痛みました。せっかく友達になれたのに、貝殻姫とお別れしないといけないのです。
時間はすぐにたち、貝殻姫が出発する時間になりました。見送りに来たマコは、貝殻姫にビーズで作ったネックレスを渡しました。
「海に行っても、私たちは友達だよ。忘れないでね」
貝殻姫はおどろいたようにネックレスを見て、そして大切に握りしめました。
「こんなのもらったの、初めて。海にはこんなにきれいなものはないわ。大切にする」
貝殻姫はマコの人差し指をそっと握りました。
「ありがとう、マコ。私の初めてのおともだち。きっとわすれないわ」
そうして貝殻姫は帰っていきました。それを見送るマコの指には、貝殻姫とおそろいのビーズの指輪がはまっていました。マコはきっと、この不思議な出会いのことを忘れることはないでしょう。
今年のお正月の数日前、姉がおせちセットを送ってきてくれた。
箱を開けると密閉された袋に量は少ないが
結構な種類のおせちネタが一袋一袋入っている。
奮発してくれたのだろう。殻に入ったアワビがあった。
母がお重の真ん中に飾ると豪華なおせちになった。
松の内が過ぎ、台所にポツンと置き去りにされた
アワビの貝殻を見かけた。母のことだ、何かに使う気だろう。
キレイに洗って乾かしてあった。
そして次の日、シンクの縁にアワビの貝殻が置いてあり
その中に白く透き通った高級そうな石鹸が入っていた。
あら、オシャレ。横に並んだ穴から水も出るし。
ただ、シンクが傷むのを気にしたのか
キッチンペーパーが敷いてあるのが母らしくて笑った。
貝殻って色んな形あるよね
学校の帰り道にぼそっと呟くように彼女は僕に言った。
海辺に近い学校で当たり前のように一緒に帰る彼女。
僕の片思いの相手だ。
これは穴が空いてるよ、ちょっと痛そう
笑顔で貝殻を拾っては僕に感想を言う。
僕は特に何も言う訳でもなく、波と彼女の音を心地よく受け入れる。
いくつか拾ってきた物を彼女が僕に渡す。
両手で受け取る僕を見て彼女はまた笑う。嬉しそうな幼いえくぼがたまらなくて、慌ててポケットに詰め込む。
そろそろ帰ろう、と足早に進む。
ポケットの貝殻の数を感触で数える。
1、2、3、………あと8個。
今まで貰った貝殻の数とあわせてみる。
あと8個受け取ったら彼女に告白をしよう、なんて。
もうそろそろ片思いから抜け出す準備をしなければ。
そう意気込んで帰り道を進む。
後ろで彼女は小走りで隣に並ぼうと頑張ってる。
そんな姿を見て、僕は歩幅を小さくする。
明日も晴れるといいね、彼女は笑う。
僕もつられて笑う。
明日も晴れますように。
海には大きな貝殻、小さな貝殻などたくさんの種類の貝殻がある🐚