『貝殻』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
貝殻
鎌倉の由比ヶ浜で見つけた桜貝の貝殻。淡いピンク色のその貝殻は、私達夫婦にとって素敵な思い出である。
10年前、付き合っていた私達はお互いに結婚を意識し始めていた。しかし、小さな町工場で働く彼はお金もなく、デートはいつもこの由比ヶ浜。私が握ったおにぎりと、ポットにいれたお茶を飲みながら、いろいろなことを話した。
「ごめんな、どこにも連れて行ってあげられなくて、でも、社長、優しい人でいい人なんだ。作っている物には自信があるんだけど、人が良いから、あっちの言い値で請け負っちゃうんだよなぁ。だからいつも儲からない。だけど、ああいう職人堅気な人好きなんだよなぁ」
私はあなたも充分優しい人よって思っていた。
そんなある日、突然プロポーズを受けた。
「うちの工場で何年も前から製造、実験していた物がやっと特許を取ることができた。銀行もこれには期待していて、お金も貸してくれるみたいなんだ。そしたら社長がお前、結婚しろって。これが売れなくてもお前だけは守ってやるから彼女と結婚しろって、、。
今は指輪も買ってやれないけど、ユキ、俺と結婚してくれるか?」
私は泣きながら頷く。
そして、私の左手をそっととって、淡いピンクの桜貝を指に乗せてくれた。
あれから10年。特許を取った製品が見事に当たり、工場も大きくなった。
春に産まれた女の子の名前は「さくら」。
あの時もらった桜貝は大切に取ってある。
私達の淡いピンクの思い出である。
双子のように、しかし他人のように
どこか欠けている完成しないパズルを
たった一つのピースでうめて
作り上げたい 繋ぎ合わせたい
貝合わせのように
僕だけの半身 僕だけの唯一
きみとつくりあげた大作はその日貝の中に閉じ込めた
#貝殻
海底で静かに潜んでいるのは、今にも壊れそうな貝殻。
『貝殻』
海を見ると、いつも胸が押し潰されそうになる。
理由は分からない。あの世界的な水害が起こった時、自らの資産をなげうってまで被災者を助けなければいけないと思ったことと関係があるのだろうか。いくら考えても答えは出ないので、とにかく一人でも多くの被災者を救うため、私は世界中を回った。
時折こうして浜辺に来て自問してみるが一向にその理由は分からない。
私は海岸線に沿って浜辺を歩く。寄せては返す波の音が私の心を鎮める。不思議と、海は嫌いではなかった。
ふと足元を見ると、貝殻が落ちていた。私は屈み込みそれを拾い上げる。虹色の美しい巻貝だった。それを見て、ある魚を思い出した。浜辺で傷だらけになって息絶えていた、虹色にまばゆく光る美しい魚を。
貝殻を耳に当ててみる。波の音と共に、少女の笑い声が聞こえた気がした。私は理由もなく悲しくなり、その場にうずくまって泣き続けた。
#70 貝殻
好きな人にピンク色の貝殻を渡すと、恋が叶う-
海が近い、この学校の女子の間で密かに流行っているおまじない。
ちなみに四つ葉のクローバー探しは人気がない。潮風の影響なのかシロツメクサの生育が悪くて、なんというか、そそられない。
貝殻の方は、濃い色であるほど効果が上がるとか、欠けたものを渡すと長続きしないだの、噂はつきない。
その割りに、恋が実った実例に関する内容は、あまり聞かない。代わりに卒業生の実話という名の都市伝説はあるけど、つまりそういうこと。
「とにかく、ヤローに渡すのはいただけない」
桜貝を翳せば、青空とよく映える。
ピンク色に光が透けてきれい。
「この綺麗さを分かってくれる人にならあげたいけど」
見ているだけで、どこか幸せな気分になれる。
うん、見ているだけでいい。
それで充分なんだ。
疲れた腕を引っ込めて、貝殻をポケットに突っ込んだ。
割れていたら、
そういう運命なんだって思うことにしよう。
桜貝のように淡い色した想いを、壊れやすい繊細さに託して帰途についた。
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きっと親や先生との約束を守って海には入らないと思う。思いたい。
まじないと言っても子供のすること。効果があるわけないとしつつも、それでも。
「貝殻」#26
時にはお土産に
時には笛に
時には見を守り
時には目くらましに
時には装飾品に
そして時には武器に
君はなんにでもなれる
君のポテンシャルは無限大、、、
「貝殻」
貝がら
それは魂の抜けた抜け殻
それでもなお
生きた頃の姿を残し
人々の心を動かすほどの力を宿す。
あるものは恋人の手のひらの中
あるものは名もなき芸術家の作品
あるものは心躍らせる女性のイヤリング
あるものは目を輝かせる子どもに握られて
美しき気高き生きた証
いきた証
わたしはなにをのこすだろう
「貝殻」
熱く燃える時
冷たく凍える時
繰り返される闘いに
生命の守りが 重なり
硬く 歴史が刻まれる
―「貝殻」―
貝殻
貝殻を集める君を見ていた。その横顔は真剣で、邪魔をしては行けないと思うのだけれどつい、邪魔してしまうのだ。
貝殻と聞いて
シジミやアサリの味噌汁が食べたくなった
でも砂抜きが上手くできなくて
何個かはジャリってする
ホタテの刺身やフライも美味しいよね
サザエを初めて食べた時は
苦くてびっくりした
さあ今日の晩御飯は何にしようかな
貝殻に耳当てたら波の音が聞こえた。
波が聞こえることずっと前から知ってたけど
私たちの子が笑顔いっぱいで言ってくるから
「ほんとだ!!すごいね!!」
そう言う
「物知りだから僕!」
なんて自慢げに行ってくるものだから
可愛くて仕方がない
私にくれた貝殻は今は家族の宝物
─────『貝殻』
貝殻
幼稚園の頃、「皆んなで何かをする」「周りのお友達と仲良く遊ぶ」のが苦手だった私にとって、好きだった時間は、教室に置かれた絵本を読む時間。その時間は、心が躍るように幸せだった。今も覚えている一冊がある。貝殻が描かれた、とても素敵な絵本。内容もあらすじも覚えていないのだけれど、鮮やかな絵本で、主人公の女の子が、大きな貝殻の中に入っていく場面がとても印象的だったことは覚えている。私はこの絵本が大好きで、お昼ご飯の時間や、ことあるたびに、何度も何度も読み返していた。何というタイトルの絵本だったろう…。その絵本を読んでいる時の、あのときの幸せな気持ちは、今も、心の片隅にずっと残っている。読まれた本は、今も何処かで、誰かに読まれ、記憶を紡いでいるのだろう。貝殻という言葉に触れるたび、今も蘇る幼いあの日の記憶と心。
ソンへ
『貝殻』
ふと中身が詰まった瓶を見つけた。
あの、青い春の出来事。
今では再現できないこと。
イツメンで海に行って、
貝殻を集めて、アクセサリーにしようって。
でも、そんなことができるほど
器用な人はいないなって笑いながら集めた。
瓶につめて、また集まろうと約束した。
でも、叶わなかった。
貝殻と言えば夕日の沈む海辺でその日の思い出に貝殻を持ち帰る、そんなシーンを思い浮かべる。
海に友人と行く機会もない私には、食卓の上で見るホタテやアサリ、シジミの貝殻の方がよく目に浮かぶ。
そこでシジミのエピソードを書いていこうかと思います。シジミは先ほどあげた貝でも小さく食べにくいと感じる人もいるのかなと思います。五年ほど前ご飯、キャベツ、みそ汁がおかわり自由のとんかつ屋に行った時にそんな食べにくいシジミを一粒も食べないお客がいたのを強烈に覚えています。その時は食べにくいからそんなお客もいるか程度だったのです。
たまたまみたアニメあたしンちにてみそ汁を作る時に味噌がないからカレーを入れてシジミカレーにしたエピソードがありました。そのエピソードでもアサリカレーはありでもシジミはないという話になりましたが、カレールーにまみれたシジミは相当食べにくいなと色々納得できました。
貝殻
貝殻
北海道に小旅行に行っていた叔父さんに、幼い頃貝のお土産を貰った。
「これは何という貝?」と聞くと、「イシダタミだよ。耳に当ててご覧。」と言われた。
貝の口の様な部分をそっと耳に被せた。遠くで波の音が聞こえた。
私は嬉しくなって、「ひろしおじちゃん、何で波の音がするの?」とはしゃいだ。
「あきよちゃんの為に、おじさんが海の音を貝殻に閉じ込めて帰ってきたのさ。」
「すごーい。ねぇどうやって?」何度も問いかける私に叔父さんは「それは秘密だよ。大人になれば分かるよ。」と笑った。
今年の春、優しかったひろしおじちゃんは、病気で帰らぬ人となってしまった。
貝殻が何故なみの音がするのか、大人になって謎は解けた。
私は貝殻を目にするたびに、いたずらっ子のような、あのひろしおじちゃんを思い出すのだろう。
貝殻
昔は貝殻をよく拾った。
きれいな桜色のものを集めたり、日に透かしていつまでも眺めていたり。
まだ家にある。
大きなもの、小さなもの。
様々なものがある。
だけどいつからだろう、海に足を伸ばさなくなった。
海に行くということは、祖母の家に行くということだから。
体調を崩してから遠出ができなくなり、浜から遠ざかる。
塩ゆでしてもらった貝が恋しい。
久しぶりに貝殻を取り出して、浜を懐かしみたい気分だ。
【貝殻】
巻き貝を耳にあてれば、ざぷんざぷんと波の音が響く。この音色はいつだって私に、故郷の海を思い起こさせた。
深い青色の美しくも雄大な海だけが取り柄の、何もない田舎町。それが私の生まれ故郷だ。忙しなく働く両親になかなか構ってもらえず、同世代の子供も周囲に少なかった幼い頃の私は、いつも浜辺に座って寄せては返す波の音を聞きながら、学校の図書館で片っ端から借りた本を読んでいた。
君に出会ったのは、雪のちらつく寒い寒い冬の日。マフラーに顔の下半分を埋めながら本のページをめくる私に、声をかけてきたのが君だった。
「いつもそこにいるよね。本が好きなの?」
咄嗟に顔を上げる。真冬の暗い色合いの海の中に、人影が立っていた。明らかに異様で不可思議なその存在を、だけど私は恐ろしいとは思わなかった。
少年とも少女ともつかないその子供は、私の話し相手になってくれた。それでも海から出れば良いのにという私の提案にだけは、決して頷かなかった。
気がつけば日が暮れていて、名残惜しむ私へと君は帰宅を促した。
「ねえ、また会える?」
私の問いかけに、君の纏う空気が少しだけ寂しそうなものに変わる。訪れる夜の気配に包み込まれてその表情は見えないけれど、きっと悲しそうな顔をしているのだろうと想像がついた。
「……うん、きっとまた会えるよ」
それは嘘だった。あれから何度通っても、君が私の前に姿を見せることはなかった。だけど私が大学進学を機に故郷を離れる最後の日、浜辺にひとつだけ貝殻が置いてあった。私がいつも座っていた特等席に、まるで見つけてくれと言わんばかりに。
きっとこれは、君からの餞別。今でも君はあの海で、静かに人々を見守っているのだと、そう私は信じている。
貝殻から響く波の音が、君の涼やかな声のようで。懐かしさを胸に抱いて、私はそっと瞳を閉じた。
お兄ちゃんは海に帰った。
私のためにきれいな貝殻を見つけてくると言って。
お母さんとお父さんにこのこと言ったら、
ずっと怖い顔で私を見てくる。
あなたのせいよ!!
おまえのせいだ!!
私はぶるぶる震えながらお兄ちゃんが浜辺でくれた
『貝殻』をギュッと握った。
#貝殻
太陽光に反射して、キラキラと光る貝殻を見つけた。
なぜ、貝殻はこんなに綺麗なのだろう。
何も無い、空っぽなのに。
私とは大違い。
もし、私がいつか死んで、生まれ変わるなら貝殻になりたい。
ただ、そこにあるだけで、誰かを幸せにできる貝殻に。
「綺麗な貝殻だね。」
「ほんとだ。」
「はい!!これあげる」
君がくれたのは、貝殻のブレスレット。
「ありがとう、大事にするよ。」
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僕の腕には、君があの時くれた
ブレスレットがある。
あぁ、なんで先に居なくなっちゃうのかな
「会いたいよ…」