『貝殻』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
貝殻に住めたなら
さぞ 素敵だったろう
白い 巻き貝がいい
中は暗く ひんやりとして
ゆるやかな曲線に腰掛けて
てのひらで触れると
きっと 冷たいけれど 優しいのだ
壁に耳を澄ませると
遠い 波の音がする
たまに外を覗いて
明るさと騒がしさに驚いて
自分の住処の静けさに
その素晴らしさに
思いを巡らせながら
静かな午後を過ごすのだ
ご存知ですか?
シジミやアサリ
サザエやアワビなど
食べ終わった貝殻
燃えるゴミだって
調べた時は衝撃を受けました
アレはもしやタンパク質の塊なのかな
ほんと分別には骨が折れます
最後に海水浴に行ったのは
8年前で
三年生だった次女は
JKになった
私と次女は
貝殻を拾いながら
活発な
長女と旦那を
眺めていた
貝殻に混ざって
はまぐりが落ちていた
ハマグリを探すあの人
あの夏は戻らない
この貝殻綺麗だな。
持って帰って見せてあーげよっと!
私は貝殻をるんるん気分で持ち帰る。
帰って水槽に入れてやると心做しかメダカが活発になった。
▼ 貝殻
覚えているだろうか
忘れようとしているだろうか
『また来ましょうね。×××さん』
約束は無効になっただろうが、あの日の事実は嫌でも忘れられない
顔を見れば思い出してしまうけれど、きっと。
「テメェが一番、そういう事嫌いなクセによ」
久し振りにあの場所に行ってみようか
もちろん、独りで。
『貝殻』
どうしても
生まれ変わらなければならないならば
私は
深い海の底の貝になりたい
そう思いながら
最後の審判を受けた人が
あの時代
いったい何人居たのだろう
貝殻
「やっぱり海は良いね」
「来るとなんだかほっとする」
彼は内陸の出身だった。
だから余計に海に憧れがあったのか、来るととても喜んだ。
そしていつも、「安心する」と言っていた。
「この貝殻はどこから来たんだろうね」
「あ、でも元々は海の中にあったものが流れてきたのか」
貝殻を拾い、1つ1つにどこから来たのか問いかけていた。
そして最後は必ず
「元来た場所にお帰り」
そう言って、海に流していた。
持ち帰ることは1度もなかった。
なんか、浦島太郎が助けた亀を海に返してるみたいだね、と
笑いながら話していると
「誰にだって帰る場所はあると思うから」
と、返してきた。
あれから、数年。
自分は1人で海に来ている。
貝殻を1つ1つ手に取っては
「誰にだって帰る場所はあると思うから」
そんな台詞が頭を過ぎる。
彼の帰る場所はどこだったのか。
少なくとも自分ではなかったのか。
確か出会ったのもこの近くだったな。
もしかすると、彼は
海には、揃えて置かれた靴だけが残っていた。
Fin.
貝殻
夏になると、ビニール袋をもって近くの海へ行く。
裸足で砂浜を駆け回り、綺麗な貝殻を選んでビニール袋にしまう。
白や紫、オレンジに黒。何に使うわけでもない貝殻を片手に、家へ走る。
祖母に貝殻のはいった袋を見せて、綺麗だねと言ってもらう。
二度と戻ることはできない、無邪気な夏の一日。
10年前、この浜辺で貝殻を集めていた。
その時、男の子がやってきて一緒に遊んでいた。
もう、名前も顔も覚えてないけど、またいつか会えたらいいなぁ。
#貝殻
#18
あの家にあった貝殻のモビール。
あの子は一体何歳になったんだろう?
ミステリー。
全てを嘘と気持ち悪さで表現しようとしている。
粉々になった貝殻。
誰かが欲しがる答えを知っている人。
その人を追っている。
全ては貝殻の外側に。
あの子がモビールから離れた瞬間、壊れた何か。
たまに聴こえる癒やしの声に、
何度も騙された。
正しさなんて知らないくせに。
愛。
それを探していたのか。
貝殻は粉々なのだ、貝殻は粉々なのだ。
もともとそこに何も探していたものは無かった。
愛なんかなかった。
記憶なんて嗅ぐんじゃないよ、時々場面一つ思い出すくらいが
美しいってもんだよ。
嘘と気持ち悪さで美しさになるんだ。
あの子の名前も、顔も覚えていない。
それでも、あの家にいたあの子を知っている。
それだけのことで幸せを感じて
いる…。
双方向に目を向けると、顕になった一つ。
貝殻の破片。
今日は親友に会いに、海に来た。
近くをまわる青くまるい生き物にきのみをあげる。
__ちゃん、来たよ。
そう想いを込めて、ポケットから白く細い笛を取り出す。
広大な大地に繊細で優しい音が響く。聞こえるのは生き物の鳴き声、かすれる葉音、蒼く広い海の声。
世界が、わたしと自然と大地しかなかった。
今まで見ていた世界は狭かったはずなのに、笛を吹くとどこまでも響き渡っていくような気がした。
すてきな笛を聴かせてくれたおれいに、とでも言うように、いや、言って、さっきの青くまるい生き物から、
ひとつの貝殻をもらった。
ありがとう。
と、素直に喜びながら、わたしは御礼を言った。
手におさまる小さなひとつの貝殻を見つめる。
今見ている世界が変わる。どんどん広く、その未来が見えていく。
__、お待たせしてしまったわ、ごめんなさいね。
わたしは、時代が変化していく中での一人の人物でしかないけれど、
今はそれが、
わたしにとって心地よい。
_2023.9.5「貝殻」
今日のお題の頭文字二文字の…あとその親友さん…。青い生き物は球体のアザラシの…。
貝殻のごときあなたの耳を噛み砕く、そうすると口の中に海水の味がひろがる。
貝殻
海でどっちが綺麗な貝殻を見つけられるか
そんなことをしている時間が幸せでたまらない
貝殻
砂浜を歩きながら、ボクは綺麗な真っ白の貝殻を拾う。
拾っては、持ってきた小さな蓋付きのガラス瓶に入れていく。
かれこれ1時間はうろうろして、貝殻の厳選。基準は形が整っている、真っ白であること。
意外に欠けていたり、白かなと思ったら茶色が少し混ざっていたり。
対象外はその場でリリース。ごめんねと思うけど、こだわっているから。
ガラス瓶を見るとだいぶ溜まっていた。優しく振ると綺麗な音が聞こえる。
ふふっと笑みが溢れた。そして、ある場所へと向かう。
良い匂いが漂う海の家。まだ人がガヤガヤとたくさんいた。
ボクは人混みをすり抜け、海の家の裏手に回る。そこには、ボクの大好きなお姉さんが休憩中だった。
日陰に腰掛け、片手にコーラ瓶を持っていた。すると、ボクの存在に気づくとヒラヒラと手を振る。
「お姉さん、今、大丈夫?」
「大丈夫だよー、まだ休憩中だから」
お姉さんは自分の隣をぽんぽんと叩いて、ボクにおいでと言う。
こそこそしながら、隣に腰を下ろす。そして、貝殻の入った瓶をみせる。
「わぁー、いっぱい取ってきたね」
「たくさん綺麗なのをとってきたんだ」
「そっか、そっか、すごいじゃん」
ボクの頭をわしゃわしゃと撫で回しながら、コーラを飲んだ。
「これ、お姉さんにあげる」
「いいの?せっかく、集めたのに」
「いいの、お姉さんのために集めたの。この真っ白な貝殻、お姉さんの髪の毛の色に似ていて綺麗だから」
白銀の髪の長い髪をポニーテールにしているお姉さん。
今日もキラキラと綺麗に輝いていて、貝殻と同じだ。
「あははは、ありがとう。嬉しいよ」
「あとは、お姉さんともっと仲良くなるため」
少し恥ずかしくなって、ゴニョゴニョと言ってしまった。
お姉さんはクスクス笑いながら、聞いてくれている。
「そっかそっか、もっと仲良くなるためか、いいね」
お姉さんの海のような青い瞳に見つめられるとドキドキしてきた。
ボクは勢いよく立ち上がると日陰から出る。
「ボク、もう行くね‼︎また来年、集めて持ってくるから」
手を振ってその場を離れた。お姉さんの顔はまともに見れなかったのが、残念だが。
きっと、ニコニコ笑っていたと思う。毎年そうだから。
来年もたくさん集めて渡そう。もっと、もっと仲良くなるために――
テーマ:貝殻 #296
海へ行ったのは11年ぶりのことだった。
貝殻を取りにそのときは行った。
こうして11年ぶりの海を見ると
記憶というのはやはり霞んでしまうんだなぁと思った。
しかし貝殻を拾うのが楽しかったのは、
明確に覚えている。
ふとしたを見るが、
同じ海岸で貝殻を拾っていたとは思えない。
貝殻の貝の字も見えなくなっていた。
丸い石ばかり。
海の波近くを歩いても砂ばかりだった。
私も年を取り変わった。
しかし、海も変わってしまった。
また年を取れば変わってしまうのだろうか。
きっと、そうだろう。
それが時の流れというものだ。
波打ち際に寄せられた貝殻。
どこから来たんだろう。
海の広さを知る。あの水平線の彼方から
来たのではないだろうか、と。
「貝殻」
海の音がした。
正確には波の音だ。耳に当てるとそんなふうに聴こえる。子どもの頃よく貝殻を見つける度に聴いていた。
大人になると神様はいなくなる。
貝殻から聞こえてくる音は周りの音の中でも特定の周波数を拾って、それが貝の中で反響して波のように聞こえるとか。そんなふうに真実を知る度に脚は重くなる。
子どもの頃の思い出も潔く捨てるか、と最後に一度だけ耳を当ててみる。
「ひどいことをするなあ!」
耳鳴りがした。
私の地元の話でーす
津波で海岸の砂がたくさん流されちゃったんだけど、最近よその砂をこっちに運んできたのね
で10年ぶりくらいに久しぶりの海開きをしたんです
そんで貝殻全然落ちてないよって話です
完
貝殻は、白く美しいけれど、固く鋭く、凶器にもなる。
落ちていた貝殻を拾った。
あの日の貝殻に似ている。
君とこの海に来た日の貝殻に。
あれから3年経つんだね。
今の君はどうしてるのかな、なんてね。
そんなの、もうどうでもいいことなのにね。
お互いに、さ。
潮風が吹く夕焼けの元。
戻って来ないあの日を思い出して、
今日も日が沈んでいく。
■テーマ:貝殻