貝殻
砂浜を歩きながら、ボクは綺麗な真っ白の貝殻を拾う。
拾っては、持ってきた小さな蓋付きのガラス瓶に入れていく。
かれこれ1時間はうろうろして、貝殻の厳選。基準は形が整っている、真っ白であること。
意外に欠けていたり、白かなと思ったら茶色が少し混ざっていたり。
対象外はその場でリリース。ごめんねと思うけど、こだわっているから。
ガラス瓶を見るとだいぶ溜まっていた。優しく振ると綺麗な音が聞こえる。
ふふっと笑みが溢れた。そして、ある場所へと向かう。
良い匂いが漂う海の家。まだ人がガヤガヤとたくさんいた。
ボクは人混みをすり抜け、海の家の裏手に回る。そこには、ボクの大好きなお姉さんが休憩中だった。
日陰に腰掛け、片手にコーラ瓶を持っていた。すると、ボクの存在に気づくとヒラヒラと手を振る。
「お姉さん、今、大丈夫?」
「大丈夫だよー、まだ休憩中だから」
お姉さんは自分の隣をぽんぽんと叩いて、ボクにおいでと言う。
こそこそしながら、隣に腰を下ろす。そして、貝殻の入った瓶をみせる。
「わぁー、いっぱい取ってきたね」
「たくさん綺麗なのをとってきたんだ」
「そっか、そっか、すごいじゃん」
ボクの頭をわしゃわしゃと撫で回しながら、コーラを飲んだ。
「これ、お姉さんにあげる」
「いいの?せっかく、集めたのに」
「いいの、お姉さんのために集めたの。この真っ白な貝殻、お姉さんの髪の毛の色に似ていて綺麗だから」
白銀の髪の長い髪をポニーテールにしているお姉さん。
今日もキラキラと綺麗に輝いていて、貝殻と同じだ。
「あははは、ありがとう。嬉しいよ」
「あとは、お姉さんともっと仲良くなるため」
少し恥ずかしくなって、ゴニョゴニョと言ってしまった。
お姉さんはクスクス笑いながら、聞いてくれている。
「そっかそっか、もっと仲良くなるためか、いいね」
お姉さんの海のような青い瞳に見つめられるとドキドキしてきた。
ボクは勢いよく立ち上がると日陰から出る。
「ボク、もう行くね‼︎また来年、集めて持ってくるから」
手を振ってその場を離れた。お姉さんの顔はまともに見れなかったのが、残念だが。
きっと、ニコニコ笑っていたと思う。毎年そうだから。
来年もたくさん集めて渡そう。もっと、もっと仲良くなるために――
9/5/2023, 1:22:39 PM