『誰にも言えない秘密』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
このお題で一応書いてはみたものの
納得いく出来には至らず
結局消してしまうことにする
消したポエムは頭の中に
誰にも言えない秘密となった
【誰にも言わない小さな秘密】
完全な匿名なんだから気にせず投稿しちゃえばいいのにね。見栄というか変な美意識が働くのがとても不思議。こういうのを自意識過剰と言うのだろうか。
実はね…私の部屋は汚部屋なんですよ、バレてないはず
秘密は誰にも言いたくないからある
信頼してる人、信用してる人などには"話せる"
でも、人は皆家族にすら言い難い秘密を、
1つや2つ持っていると私は思う。
人は秘密を持っていて、それを隠そうとするから
"嘘"を付く
そして嘘を付く事でお世辞や猫被りを覚える。
秘密があるからこそ、
この社会は成り立っているのかもしれない
お題〚誰にも言えない秘密〛
誰にも言えない秘密
ここで書いても、誰一人共感することも、失笑することも許されない。
だから書けるんだけど、、、
俺の前妻は別れて7年後、自ら命を絶った。
理由ははっきりとはわからないが、
その時、お母様から連絡があったんだ。
亡くなったと。泣きじゃくった。
それから、18年も経ったある日、遠い遠い彼女のお墓に手を合わせに行ったんだ。
年老いたご両親様が一緒にいらっしゃったんだ。
山の中にある少し寂しい場所に彼女のお墓があった。
何故か線香に中々火が点かなかったんだ。
そして墓石のてっぺんに小さなカエルがずっと俺をみていたよ。
『何年待たせたんだよ!今頃来やがって!』
帰り際に両親に言ったんだ。
「御嬢さんを幸せに出来なくてすみません。」 「まだそんな事言ってるのか。」母親の言葉はとても重く深いものだった。。。
帰り道の車中で、お墓参りの時に何故か出なかった涙が叫びと共に流れ落ちた。
ごめん。ほんとうにごめん。俺と巡り会ったばっかりに、こんなに早く命を落とすことになって、、。
『私の梅干し』
宮沢 碧
「あー、それ!それは動かさないで。いいの、いいの、そのままで!その代わりこれお願いできるかしら」
私は新しく入ったバイトさんに指示をする。
私たちは今日、引っ越しをする。母がカフェを始めてみたいと言うのでお店を新しくするのだ。何代も前から使っていたお店、前田煎餅店はこうしてまもなく伽藍堂になって行き、物を置いていて周りと色の変わってしまった壁や床を私はそっと触って歩いた。飴色に変わった床や棚、おじいちゃんが若かった頃によくタバコを吸っていたと言う窓。瓶がたくさん並んでいたカウンター。たまにお客さんまで入っちゃう掘り炬燵。
「ありがとうね」
からっぽで冷たくなったようなでも、まだほかほかの温もりのするような、まるで起きたての布団のようなぬくもりのする部屋に声をかける。引越しといっても通り2つ離れたところで、まぁ、別にここを売ったり壊したりする訳でもないのだけれども。
「あとはこの荷物だけですね。どこ、持ってきますか?」
私の足元にある大きな段ボールを指差して、焼き担当の職人、源二郎さんが話しかける。
「じゃぁ、私の助手席にお願い。重いので気をつけて下さい」
「わかりやした。おっ、本当だ、重い。そしたらあっしはこれでトラック出しちゃいますね。車で先にお店向かいます」
「ありがとう、そうして下さい。私もすぐ向かうから」
天地無用と書いてある箱を持って源二郎さんは店を出る。
カフェをオープンさせるのは初めてだし、本格的に店を継ぐことになるのはドキドキする。でもこうして私よりもずっと長い間この店で働いてくれているベテランの職人さんも辞めることなくついて来てくれる。新しいバイトさんも入る。初めこそみんなと同じ東京のオフィスワーカーみたいなりたくてどこか気もそぞろに働いていたけれど、これからは違う。母がとは言え、新しいことを始める。やっと自分の中でもワクワクする気がする。何より調べたり、自分の意見を聞かれたり自分が必要とされていることが嬉しくて自分から動こうと言う気が起きて来ていた。
戸締りをして私は車に乗り込む。シートベルトをする時、助手席の先程運んでもらった段ボールを見て心が弾む。天地無用。中身は私の漬け始めた梅干しだ。今年、私は内緒で梅干しを漬けたのだ。おばあちゃんが毎年の習わしのように漬けていた梅干しのように。この家に生まれてるのだから今更な言い方だが、実のところ梅を漬けるのはまるで『秘伝のタレ』のような気がしてこの家にすっかり馴染んでしまったようで伝統をすっかり継承してしまったようで気が進まず、今まですることができなかった。それを今年はふとやってみようと思えたのだ。勿論昔教えてもらったおばあちゃんのレシピで。心とは不思議なものだ。
車をゆっくり出す。さぁ、新しい始まりだ。この梅干しでお店に働いている人に賄いを出す。そしていつかは梅ざらめの梅に使えるような家族も職人さんにも認めてもらえるような梅を漬ける。お客さんに喜んでもらう。それが今の私の夢だ。これはまだ誰にも言えない秘密。
カフェ しだれふじ、前田煎餅店は一週間後にオープンする。
2023/06/05
お題 誰にも言えない秘密
誰にも言えない秘密
秘密、とまではいかないけどあんまり人に言ったことないこと
昔は替え歌を作るのが好きで、
中学3年間とか高校3年間をテーマに、自分の替え歌作ったりしてましたー!
(ニコニコ動画組曲を使ってうまい具合に自分verに替え歌…)
他の人にはイタイ子と思われるかもしれない
でもそういうこと好き、今でも楽しい
思い出詰まった
色とりどりの風船
ひしめき合って
ギュウギュウ詰め
爆破して
一つ一つ消してきた
どうしても
消せなかったものも
触れないまま
漂わせているうちに
少しずつ萎んで
小さくなった
君だらけで狭かった
この心の部屋
今はもう
何事も無かったように
静かに
伽藍堂
「狭い部屋」
『誰にも言えない秘密』
「これは誰にも言えない秘密だったんだけれどもね」
大きな木に寄りかかり、木漏れ日の下でまだらな陰影に身を染めた友人が囁くように告げる。軽く吹いた風が6月の青さを増した葉を揺らし、軽い音を立てて続く言葉を遮った。私は怪訝な顔をして、そんな友人を見つめ返した。何を言おうとしているのだろうか、澄んだ水に墨を一滴落としたように、ジワリと私の胸のうちに不安が広がる。
「どんな秘密なの」
聞きたくないと思いながら聞き返した私の声は僅かに震えていた。それを受けた友人は「それはね」と前置きをしてにっこりと笑った。
「この下に死体を埋めたんだ」
まだらな陽を受けた友人が、トントン、と一度掘り返された形跡のある足元の地面を蹴って鳴らす。
何を言っている?なにの?なんで?いつ?
様々な疑問が浮かんで、音にならないまま頭の中に反響して消えていった。
長いような短いような沈黙の後、最後に残った疑問がポロリと口から零れ落ちた。
「誰の……?」
「君の。だから良かったよ」
風に乗って、濃い土の匂いがしたような気がした。
誰にも言えない。
誰も知らなくて良い。
言葉にしたら、己の醜さが全て溢れてしまいそうで。
こんな穢れた気持ち、私以外知らなくて良い。
─誰にも言えない秘密─
私には、秘密にしている事がない。
何故なら私は完璧だから。
誰にでも優しく、自分には厳しい。
また、人を差別しない。
そして才能に満ち溢れている。
勉強も、スポーツも、得意だし、
音楽も弾けて、コミュニケーション能力もある。
まさに完全無欠の存在。
私を羨ましいがったり、妬む人は居るけど、
私はそんな人程話しかけている。
嫌われていない。むしろ周りに好かれている。
...本当に、そうなのかな。
いいや、違うんだ。
ただ気づかないふりしてるだけで、周りから嫌われている。
才能があっても、何をしても、完璧だから。
話したくない、比べられたくないのだろう。
だから私は、いつも一人。
この才能を、ある人に譲って貰ったなんて、誰にも言えない。
それが私の、誰にも言えない秘密。
待ってる人居ないと思いますが、
遅くなって申し訳ありません。
今日のお題は早めに書きますので、許してください。
以上、作者より
2023/06/05 【誰にもいえない秘密】
俺には、誰にもいえない秘密がある。
z家の事情とか、性癖とか、それこそ自分だけの秘密基地とかそういうのじゃない。
-そんなことよりも、もっと残酷で、暗く、重く、悲しいことだ。
もう日が沈みそうな時間帯。後ろを振り向くと、太陽が町中を淡く照らし出していた。俺はそのまま、ある山の裏側周って行く。山に隠れたせいか、一気に暗くなったように感じた。しかし、それでももうほとんどの光が見えないくらいに暗くなり始めている。もうほとんど日が沈んでしまったのだろう。俺はポケットから小型の懐中電灯を取り出して歩き始める。
街の裏側にある、ちょっと小さな山にあるこれまた小さなお墓。そこで、約一ヶ月ぶりとなる墓参りに来ていた。ある墓の前で止まって、よくみたら花がまだ新しかった。その花には見覚えがあった。
-まさか、あいつがきたのか?
それは、死んだ母が好きな花だった。その時期になってはよく花屋で買って花瓶に生けていたのを覚えている。でも、それを知っているのは、俺以外に、“今は”1人しか いない。
-“あのこと”を知ってるんだったら、なんで何の連絡もよこさないんだよ。あのクソ親父。
俺たちを捨てたあの親父がここ駅たのなら、なおのこと腹が立つ。
俺はいけてある新しい花を抜き取り、今日自分が買ってきた花を添えた。そんなことを躊躇なくできるようになってしまった自分にも吐き気がする。
-でも、もう遅い。
もう後戻りができないところまで来てしまったんだ。暗闇の中懐中電灯に照らされた墓石が妙気味悪く感じられる。その墓石が、自分に何か訴えているような心地にすらなった。
「-兄ちゃんが必ずお前の仇を取ってやるからな。」
さっき懐中電灯が入っていた場所とは別のポケットから取り出したものを見て、俺は幾らか心が救われた。そこに映る、今はもう亡き妹を見て。
俺は、懐中電灯の明かりを消して歩き始める。もうすっかり日が暮れて周りには人っ子一人いない。その中でも月明かりは健在で、町中を明るく照らしていた。
俺は自分のハッグからあるものを取り出した。
満月の月明かりを、無骨なナイフがやけに反射していた。その光が、危険な色を孕んでいた。
誰にも言えない秘密
ない
この人にだけは言えない
これはある。
でもやっぱり一つだけあるかも。
10年たった今でも苦しい。
考えるだけでゾッとする。
いつになったら忘れられるんだろう。
忘れることも恨まなくなることもないだろう…
きっと奴がいなくなるまで。。。
私はいつまで縛り続けられるのだろう。
自分で解決しなきゃいけないのかな…
辛いよ。
誰かに言えたら楽になるのかな。。。
誰にも言えない秘密。
それは、なかなかストーリーは浮かばないけれど、書くことが好きで、このアプリを使っていること。
本当は、身近な人にも読んでほしいな。って気持ちはある。けど、何て言われるか怖いし、恥ずかしいから誰にも書いていることは言ってないし言えない。
今日のテーマ
《誰にも言えない秘密》
誰にだって人には言えない、言いたくないことのひとつやふたつはあるだろう。
私にとってのそれは「将来の夢」がそれである。
小学生の頃、仲の良い友達に打ち明けたら、翌日にはクラス中に知れ渡っていた。
正確には、彼女が率先して言い触らしたわけではない。
彼女がしたのは、ただ、口の軽い他の友達に話してしまっただけ。
お調子者の男子から散々からかわれたのは苦い思い出だ。
その時の私は、悔しさと恥ずかしさに身を焼かれる思いをしながら「本気で言ったわけじゃない」と強がった。
当時と今では抱いている夢の内容は変わったけど、それでもそれ以来、将来の夢の話は決して誰にも明かすことはしていない。
小学校の卒業文集には、当たり障りのない無難な職業を書いておいた。
中学以降は誰かに聞かれても「特にない」と答えている。
そして高校生の今、私は一枚の紙を前に、頭を悩ませている。
「あれ? 進路調査の紙、まだ出してなかったのか?」
「うん……ちょっと、迷ってて」
「まだ受験まで間があるし、これから変更もできるんだからそんな難しく考えなくてもいいんじゃね?」
「それはそうなんだけど」
先生にはもちろん、親にも話してない、将来の夢――漫画家になること。
家族や親しい友人には絵を描いてることは隠していない。
みんなきっと単なるオタク的な趣味だと思ってるだろう。
でも、本当は、私はこれを職業にしたいと考えていて。
大人に話したら、たぶん荒唐無稽な夢だと否定されることだろう。
私だって本気で「なりたい」とは思っていても「なれる」という自信はない。
このまま趣味で終わらせた方が、挫折を味わわずに済むだろうとも。
本気で目指すとしても、そのことは誰にも明らかにしないまま、密かに挑戦し続けた方が……
「おまえの漫画、すごく面白いし、漫画家でも目指せばいいのに」
「え?」
「ネットに上げてるだろ。実はこっそりフォローして毎回チェックしてるんだ」
「ちょっと待って、なんで私のアカウント知ってるの!? 誰から聞いたの!?」
たしかにネットに漫画をアップはしてる。
ただハンドルネームは当然本名とは違うものにしてるし、そういう趣味で繋がってる友人以外には教えていない。
なのにどうして彼は私のアカウントを知ってるなんて言うんだろう。
それとも、もしかしてカマを掛けただけ?
混乱する私をよそに、彼は悪戯に笑ってスマホを操作すると「ほら」と画面を見せてくれた。
そこには確かに私の漫画が表示されている。
「フォローしてたのは結構前からだけど、少し前に授業中にノートの端に描いてるの見て気づいたんだ」
「う……」
予想外のところからの身バレに顔が引き攣った。
隣の席だからこそのバレ方ではあるけど、だってまさかクラスメイトにフォロワーがいるなんて思うわけないじゃん。
恥ずかしいなと思いながら、よくよく画面を見て二度目のびっくりが私を襲う。
だって表示されてる彼のアイコンに激しく見覚えがあったから。
「え? もしかして、このアカウントって」
「うん、いつも“いいね”してくれてありがとな」
それは、私が大好きな漫画をアップしている人のアカウント。
更新される度に評価とブックマークを欠かさずしてるほど。
アイコンとハンドルネームからてっきり女の人だと思ってたのに。
「実はさ、誰にも話したことないんだけど、俺、漫画家になりたいんだ」
「そうなんだ」
「うん。でも1人で目指すのは挫けそうだから、道連れにしたいなって」
「何それ」
「だっておまえの漫画、超面白いし。あくまで趣味で、職業にまでするつもりないっていうなら無理強いはしないけど、それじゃもったいないなって思うから」
「……」
「やる前から諦めるより、やって諦めた方が後悔も少なくて済むだろうしさ。だから、おまえさえよければ一緒にプロ目指さない?」
教室に残ってるのは彼と私の2人だけ。
たぶん彼は私の夢を打ち明けても嗤ったりしないだろう――漠然とだけどそう思えた。
だって、彼は私よりもずっとまっすぐに目をキラキラさせながら夢を語っているのだから。
だから、私は小学校の頃以来、初めて自分の夢を口にすることにした。
叶うかどうかは分からないけど、彼と一緒に、その夢を目指すために。
誰にも秘密の同志として。
「じゃあ、約束ね!」
指切りげんまんと小指を絡める。
約束好きなあなたに触れられる唯一の時。
「貴女はきちんと約束を守ってくれるから、大好き!」
笑顔のあなたを見る度に、内心複雑になる。
どうして私がこんなにもあなたとの約束を守っているか、貴女は分かり得ないだろう。
貴女と友達になってもう十年経つけれど、ひとつだけ。
たったひとつだけ、貴女との約束を破っていることがある。
「お互いに秘密はなし。なんでも話すこと。約束ね!」
八年前にした約束。
いつも名残惜しくなる離れる小指を、この時ばかりは早く振りほどきたくて仕方なかった。
ごめんね。
これだけは、貴女にも話すことが出来ない。
(私たちの好きは相違しているのよ)
贅沢な望みは言わない。
ただ、貴女の小指に触れる。それだけでいい。
それだけを許して。
/『誰にも言えない秘密』
とても窮屈な部屋にいる。
まっくらで、身動きも取れない。
手足は折り畳まされ、目を開けても壁があるだけ。
“生きる”ことしか許されない部屋。
早く出たい。
どんどん窮屈になる部屋に不安を覚える。
なのに不満がまったくないのは、温もりに満ちているから。
(早く出ておいで)
遠くで何よりも安心できる声が聞こえる。
新しい世界へ出るまで、あと数十日。
/6/4『狭い部屋』
「正直者が馬鹿を見る」から、ずるく生きようとしている。
そんな純粋な人ほど、バカを見ているのではないのかい?
/6/2『正直』
【誰にも言えない秘密】
よく「他の誰にも言わないでね」という相談を受ける。
私は、その口約束を破ったことがない。
いや、破れないだけなのだ。
正直、他人の秘密というのは、あまり興味のないものが多い。自分とは関係ない誰かの恋愛や家族事情に対して興味を持つ方が失礼かもな、と思っているからだ。
でも、そんなことを考えていても、考えていなくても、結局しばらく経つと、言われた秘密を忘れているから、他の誰かに暴露することなんて出来るはずがない。
ただ、自分に関する秘密だと簡単には忘れられないし、誰かに伝えることも難しい。あいにく、今の私は、まだこの場で秘密を打ち明ける度胸がないようだ。
大好きすぎて生まれ変わっても
また絶対会えるよねって信じてること
誰にも言えない秘密
それっは彼を2人で押していることです
友達と
「ひみつ?」
157個ある。
そうのたまった彼は悪びれもせずに図鑑のページをめくった。ペラペラな書物よりも分厚い紙面に印刷されたカラーのそれらは、彼が焦がれて止まない真空管の黒色を写している。
「は」
短く声を漏らした兄は目を泳がせた。弟の自室をぐるりと見回しても違和感はなく、昨日掃除機をかけたあとの配置と何ら変わりはない。
そもそも、これに秘密を内側で保っていられるはずがない、そう思い込んで高を括っていたのが悪かったのだろうか。それとも、その先天性のセンスを甘く見ていた落ち度か。
そんな兄の病的までの感情がこもった鋭い視線をものともせず、弟はぺらりぺらりとページをめくってゆく。その表情には何の色もない。ただただ常のスマイルを浮かべたまま。
薄い唇が開き、すぅ…と小さく息を吸った。
「ひみつがあっちゃだめ?」
「そういうわけでは…」
否、そういうわけだ。兄として、この生物の保護者として被保護者の行動や思考原理を把握しておきたい。しかし彼も人の子。決して咎めるつもりはないが、何だがひどく焦りが浮かび上がってくる。
どくんどくん、と耳の裏が熱い。
すると彼はくるりと振り返り覗き込むように見上げてくる。チェアに座ったままの足はぷらぷらと揺らされ、瞳の中には星屑のようにきらきらとした光が浮かぶ。
意図はない。
意図はないのだ、この生物には。
「だってぼくのひみつは、いくつあってもいいでしょ?」
「お前に秘密なんて…」
「んーん。いまは157個ある。明日は158個……んー、同じ数でいいや。あのね、お正月のきみのお皿にあった剥いた蟹の足、ぼくがたべた」
「どうりでやけに食べた気がしなかった」
「うかつでまぬけ」
「お前が食い意地張りすぎなだけです」
「ふふ」
くふくふと笑う弟ににため息をつきながら、兄は苦虫を奥歯で噛み潰したような顔をする。その顔色とは対照的に、弟の瞳には爛々と輝きが増してゆく。
「きみはひみつが多い」
「お前と何も違いませんよ」
「ちがう。ひみつってね、蜜に似てるね。なにをね、にやにやしてるのってこと」
「っ、」
「ひみつにしてた? ぼく以外には言わないよ。ね、まだひみつでしょ? それともぼくに知られちゃったらひみつじゃなくなる?」
「おっ、お前には関係ありません」
「ふぅん」
最後のページをめくり、ぱたんと閉じられた。図鑑はぐい、とテーブルの端に追いやられる。
「論文が読みたいからお金ちょうだい」
「…なぜです」
「定期購入なんだよ」
「なるほど。申し込んでおきますから、朝にサイトを見せなさい」
「うん」
素直に頷いてみせた弟に、ようやく手に持っていた梅のジュースをテーブルに置いた。グラスは結露して氷は随分と溶けている。
「あ」と声を上げた弟がぶすっと顔を歪めた。
味が薄くなった、ぬるい、先に置いたらよかったの、うかつでまぬけ。
「お前がおかしなことを言うから」
「聞いたのはきみ」
「ぐ…っ」
さっさと寝るんですよ、と言い捨てて兄は弟の私室を出た。プシューと背後で閉まるドア。液晶には赤色の背景に白色でLockの文字。
ずるずるとその場にしゃがみ込んだ兄は頭を掻いた。誰にも言えないのではない、言う必要がないだけだ、と自分に言い聞かせるように。
#誰にも言えない秘密
君が好き____
なんて言えたら
でも貴方には好きな人がいる
だから言えない
この気持ちは止まらないから
思い出として残しておきたい
【誰にも言えない秘密】#14