『誰にも言えない秘密』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
誰にも言えない秘密は
夜中山奥に埋めてきた
深く深く 誰にも見つからないところ
自分からもぜったいに見えないところ
それが宝箱なのかびっくり箱なのか死体なのか
ぜったいに掘り起こさせないよ
もうふれさせないよ
草が生えて跡形がなくなるまで
秘密だよ
『誰にも言えない秘密』
おまじないって信じるか?
ボクは全然信じてない。
だけど、最近、クラスの女子で流行っている、とあるおまじないがある。
それは「自分の消しゴムに好きな人の名前を書いて使い切ると両思いになれる」というものだ。
それを聞いた時、ボクは鼻で笑った。
信じるに値する根拠も何も無いじゃないか、と。
それとは全然関係無いけど、ボクはある日、図書室で1つの消しゴムを拾った。
それは、可愛らしいピンクのウサギのイラストがついた消しゴムだった。
心当たりのないその消しゴムには、なぜだかカタカナでボクの名前が書いてあった。
ちなみに、ボクの下の名前だけ。苗字は書かれていなかった。
この消しゴム、誰のだろう?
図書室は学校中の生徒が利用する。
この名前はボクと同名の誰かだろうか?
それとも……。
ボクはブンブン頭を振った。
そうやって、突然うるさくなった鼓動を振り払う。
この消しゴムの持ち主が、あのおまじないを信じてる根拠なんて何も無いんだぞ。
そう。ボクは、おまじないなんて信じてない。
信じるに値する根拠も何も無いじゃないか。
だけど、その時、ボクは。
ちょっとだけなら信じていいかも……。
……なんて思ってしまったのは、誰にも言えない秘密だ。
あなたのことが好き
言ってしまったらもう戻れない気がして
誰にも言えない秘密
誰にも言えない秘密を、心の奥にしまっている。
その秘密があるから、私は今でも生きていける。
死んで一緒に朽ち果てるまで、密やかにずっと。
「結婚」という契約に 嫌気がさしています。
#誰にも言えない秘密
好きも嫌いも何もかも
昔はもっとオープンだった
けれどいつしか溜め込んで
本音は口から出なくなった
心の奥に隠された
人に見せない私の全て
それを見るのは誰だろう
思いを馳せて眠りについた
「誰にも言えない秘密」
昔、一つの指輪を友人から預かっていた。
金でできた歪な形の刻印が入っている指輪。砂時計のような模様が異質さを漂わせていたことが印象的なその指輪は、不思議な力を持っていたらしい。
友人が言うには、その指輪は過去に戻ることが出来る力を持っていて、使うことの出来る条件は限られている。一つは明確な過去に戻って何をするかという願望を持っていること。もう一つはソレを発動させるほどの力。ありえない話、魔力を持っていること。
大まかな条件はこの二つ。例外はあるようだが絶対的にその二つを持っていなければ指輪の力を使うことは出来ないらしい。
預かった当初はそんなことは知らなかった。
ただ友人に『死ぬまで持っていて欲しい。』と言われたから約束通り持っていただけ。
四年も失踪していた彼からの最後の言葉が指輪に関することだったからというのもあるけど、捨てる気にもなれなかったから持っていたのだ。
その指輪に違和感を持ったのは、いつも通り過ぎていく日々のほんの一瞬だった。持っていろと言われた手前、そこら辺に置くのは抵抗があった俺は指輪をネックレスにして首から下げていた。正直女避けにもなるしちょうど良かったこともあるが、何より少し目を離したらどこかへ消えていくような漠然とした不安があったのもある。
「その指輪、変な形してますね。」
学生時代の部活の後輩と久しぶりに飲もうとなった時、ふと指輪を見た後輩が言った。
「俺の母親ジュエリーショップで働いてて、昔から色んな宝石を見てきたんですけど。その砂時計の真ん中にある小さな石、今まで見たことないです。どこで買ったんですか?」
後輩はほろ酔い状態なのか楽しそうに指輪を見ている。小さな石?今まで気づかなかったことに驚き、ネックレスを外して、貰った時以来初めてじっくりと見つめた。よく見ると砂時計の砂を表す部分に青い宝石がついていた。
けれど、青い宝石なんて誰でも見た事があるはずだ。サファイアなどは有名な部類ではなかろうか。と後輩の方を見ると、わかってませんねぇと彼は顔を赤くしてニヤリと笑う。
「その指輪、月明かりに照らされると赤く光ってるんすよ。ずっと首につけてるから気づかなかったのかもしれないですけど、街灯のない道で綺麗に光ってて驚きました。べキリーブルーガーネットって知ってますか?その宝石は太陽のもとだと青くなるんすけど、白熱灯に照らされると赤くなるんです。最初はそれかなと思ったんですけどねぇ。どうも、街灯に照らされるとすぐに青くなるんで、俺の知ってる宝石じゃないなって。」
酔いが回ってきたのか、砕けた話し方になってきた後輩に代わって水を頼む。これ以上飲ますのはアルコールに弱い彼に良くなさそうだ。
後輩の言葉に引っかかった俺は、その日から指輪のことについて調べ始めた。
市の図書館、県の図書館、国の図書館、古本屋など手当たり次第に調べてみたが、指輪に関する文献は見つからず。時間がただただ過ぎていくだけだった。
「…?じゃあなんでお兄さんは、指輪のことを知ってるの?調べても見つからなかったんでしょ?」
目の前の少女は小さな頭をこてんと傾げて丸い瞳で俺を見つめている。その瞳に映る自分自身は、指輪を持っていた時よりもだいぶ若かった。
目を瞑ると、今でもまぶたに焼き付いて離れない景色がある。絶望的な状況下、周りからの歓声と悲鳴、その中に取り残された俺を包み込む光。その光の発光場所が自分の首にかけていた指輪だと理解したのは、昔懐かしい実家の天井を見た瞬間だった。
「うん。指輪のことは、誰にも言えない秘密だからね。」
少し頬を緩ませて言うと、少女は少し考えるように唸ったあと、公園の出口の方向を見て花が咲くように笑った。
「お兄ちゃん!このお兄ちゃんもこの前話してくれた物語知ってたよ!でも指輪の話はやっぱり秘密なんだって!」
少女の視線の先に、困ったように笑う友人の姿があった。
【誰にも言えない秘密】
意味わからなかったらすみません。
45誰にも言えない秘密
2組の一卵性双生児が2組のカップルになって子どもを生むと、その子どもたちの遺伝情報は同じになる。子どもが実子でないことを疑っても、不貞の相手が配偶者の片割れである場合はDNA鑑定で親子関係の不存在を証明できない。
非常にこじれた、そういった疑惑の末に、双子の兄である夫が、もう一組の姉である妻を刺殺した。
事件の担当刑事である島田さんは、苦い顔をして署内の喫煙所でタバコを吸っていた。僕はただの窓口係だが、こうしてこっそりと事件の情報を教えてもらうことがある。今回は僕が双子だから、意見を聞きたいんだと言われた。
「かみさんは否定を繰り返したけど、実子じゃないことが分かったんだってよ。不倫してた、夫の双子の弟の子だと。それでベットに寝ていた妻を刺した」
「ひっどい話ですね。でもどうやって確証を得たんですか?」
「兄だけ無精子症だった。怒りと絶望が深かったんだろうな」
「うわ…」
双子として男として、僕には子どもはいないけどおそらく父親としても、大変やりきれない話である。思わず顔をしかめた。
「でな、俺、どうもこの事件、まだまだ秘密がありそうな気がするんだよ」
「? というと」
「妻側の双子姉妹のほうも相当仲が悪かったみたいでな。どうも殺されたの、姉じゃなくて妹のような気がするんだ。そっくりな双子を自分のベッドに寝かせておけば、できない話じゃないから」
「うそでしょ。それはさすがに」
いくら男女関係がドロドロだったとはいえ、双子の妹を身代わりに殺させたりするだろうか。そんなにうまく、夫に殺してもらうことなんて、できるだろうか。確かにそれをすれば、不倫相手の弟と何食わぬ顔で人生をやり直せるけど。妹になって生き直したい、なんてさすがに飛躍がすぎないか。
「さすがに荒唐無稽すぎるか。まあまだ勘の域だからな。忘れてくれ」
島田さんは苦笑し、タバコを消して去っていった。ありえないだろ、と思いつつも、気になる。島田さんの勘は当たるから。
「でも、いくらなんでもなあ…」
呟きながら、休憩時間にいつも覗いているSNSを開いてみた。たまに「双子あつまれ」みたいなグループに参加している。
そこにひとつのコメントをみて、僕の指がとまった。
『明日から新しい人生がはじまる。片割れをなくすのは悲しいけど、これも仕方の無いことだから』
「……まさか、な」
日付は事件の前日だ。アカウントネームは「ひみつ妻」……
「島田さん!!」
僕は喫煙所を飛び出して島田さんのあとを追った。
考えすぎだとは、思う。
でも、もしかしたら。そういう気分だった。
優しくあろうとするんだ。
そうすれば君たちは私を、
私を良い奴だと思うでしょう?
汚く穢れた表面を隠し、綺麗な嘘で取り繕った黒で守っている。
誰も傷付かずに済むんだ、
僕が傷付かずに済むんだ。
いつか綺麗な白になると信じて、、?
やったね
【誰にも言えない秘密】
そもそも、「ほのか」が彼氏との待ち合わせ場所に早く来過ぎるのが悪い。
「だからさ、何で約束より3時間も前に来ちゃうのよ」
「だって、楽しみにしてたんだもん。彼に会うの、ホント久しぶりだから」
「そりゃ彼が忙しいのは俺だって知ってるし、ほのかがずっと前からこの日を楽しみにしてたのもよ〜くわかってるよ。でも、何で俺を呼び出したのよ?」
「だって、彼がいること他の誰にも言ってないし、1人で待ってるとドキドキして心臓飛び出しそうだし、他にこんなことお願いできる人がいなくて」
わかってる。ほのかに他意はない。
わかってはいるけれど、つい聞いてしまう。
「あのさ、ほのかは俺を何だと思ってるわけ?」
「え? それは…ほのが1番信頼してる大切な友達、だよ」
だろうな。そう言うと思ってた。
「俺は、ほのかを友達だと思ったこと1度もないよ」
「え? じゃあ何なの?」
本当のことを言えば、ちょっと鈍くて優しすぎるほのかをきっと傷つける。俺は、自分の本心に限りなく近い言葉を選んだ。
「今までも、今も、この先も、ず〜っと気になってほっとけないヤツ」
「何それ? うん、でもありがと。嬉しい」
「あ、時間だ」と言ってほのかが席を立つ。
彼女の腕を掴んで「行くな」と言いたい衝動をグッと抑えて俺も席を立った。
「本当にありがとう。じゃあ、行くね」
ほのかが今日イチの笑顔を見せた。でも。その笑顔は俺に向けてのものじゃない。
「また何かあったら俺んとこ知らせて」
「うん、わかった。また連絡するね」
嬉しそうに駆け出すほのかの後ろ姿が眩しい。きっとこの先も、俺は彼女が気になって気になって放っておけないのだろう。
「ほのかが嬉しそうなのが俺の最高の幸せ」
なんて本人はおろか、絶対誰にも言うものか。
誰よりもあなたが好きで
誰よりもあなたを傷つけてしまいそうなこと
つづき
はじめは誰にも言えない秘密にしてた
けど流石に日に日に大きくなる体を
全然誤魔化せなくなって
SNS等で拡散されると
即座に有名な双子になった
通称Bスリー
日本では、BB兄弟!
ビッグボディブラザーかな?
有名になったせいで研究者たちが
よってたかって調べてくれる
ひとつ解ったことは
あくびをするたびに
約1cm体が大きくなるらしい
現在約25mある、およそ15倍
あくびを止める薬はないので
空調と酸素濃度調整出来る所へ
といっても改装した倉庫だ
生活のすべてがビッグになり
周りの支えでなんとかなってる
この体を何かに活かせないかな?
俺たちもみんなの役にたちたい
そんな思いが二人とも湧いてきた
つづく
誰にも言えない秘密。なんだろうね。人に言えないことって沢山あるからなんとも。基本秘密主義だからね俺は。言わないでいいならなにも言いたくない。
それでもあえて言うなら小説を書いていることか。といっても典型的なワナビ、それもだめだめなやつなんだけどね。完結させた作品なんてごく短い短編くらいでなにも書いてないも同然。
作品のプロットを考えて設定を書いて力尽きる。プロローグぐらいなら書いたこともあったけど書いてもそのくらいだな。
どうにも飽きっぽいというか書けないんだよな。書くまでが大変というか、やる気が出ないんよ。気づいたらネット見てだらだらしてる。だってそっちの方が楽で楽しいから。
でも書きたいという気持ちはあるんだ。なら書けという話なんだけどいかんせん長年の怠け癖が染み付いてて結局なーんもせずに一日が終わる。
頭の中にある話をアウトプットしたい。それをうまく形にしたい。でもうまくいかないしそもそも始めることすらろくにできやしない。
大事なのは習慣なんだよな。小説を何時に書く。そういう習慣を作ることができれば俺だって小説を書けるはずなんだ。
量をこなせば質だって上がる。書き始めなきゃいけないし書き続けなきゃいけないんだ。早く小説を書く習慣を作らなければ。
お題 『誰にも言えない秘密』
「明日も来るね」なんて言ったけど、これが最後なんだ。
【誰にも言えない秘密】
私には、クラスメイトの誰にも言えない秘密があります。みんなを騙すのは心苦しいですが、神様との約束ですから、しかたありません。私の本来の仕事を休んで中学校へ通わせてもらうかわりに、「誰にも君の正体をバラしちゃいけないよ」と神様からかたく言いつけられているのです。私の正体がバレると、街に大混乱が起きてしまうから、だそうです。
「おはよーコンちゃん!」
神社から学校までの通学路を二本足で歩いていると、私を見つけたお友達が背後から抱きついてくれました。
「コンちゃん、今日も尻尾……ううん、後ろ姿が可愛いね!」
あけみちゃんは学校でいちばん仲良しなお友達です。可愛いものが大好きな、ごくごく普通の人間の女の子です。こんなふうに人間の子とお友達になって、きゃっきゃと会話しながら一緒に登校できるなんて、思ってもみないことでした。ああ、勇気を出して神様にお願いしてよかった! 憧れの学校に通えて、コンはいま、とても満足しています。
教室に入ると、クラスメイトのみんなが温かく迎えてくれます。
「尾崎さん、おはよう。今日もモフ……ううん、なんでもない。湿気が多いから髪が広がりやすくて大変だよね」
「コンちゃん、ちょっと抱きついてもいい?」
「俺も俺も!」
「男子はだめ!」
こんなふうに、みんなが私を囲んでわいわい笑顔になってくれるので、私も嬉しくなります。
そんなとき、後ろの席の神田くんは、もの言いたげな目で私を見つめています。彼はすごく無口な子で、席が近いのにほとんど喋ったことがありません。でも、しょっちゅう目が合います。もしかして、私のことが好きなのでしょうか? クールなイケメン神田くんとの恋の予感……なんて、そんな青春、私にはまだ早いですね! まずは人間の子たちとの暮らしに馴染まないと!
学校では先生たちも優しくて、授業でうっかりミスをしても、「人間はこうなのよ」と、丁寧に教えてくれます。人間生活にまだ慣れていない私には、とても頼もしい存在です。なかでも、担任の飯坂先生は面倒見がよくて、クラスメイトからも大人気。体育の先生でもあるので、体格ががっしりしていて、神様のほっそりした体つきとは正反対です。人間の大人ってこんなに大きくなれるんだなって、驚きの目で見上げちゃいます。先生のジャージ、いまにもはちきれそうです。
「尾崎ー! かけっこは二足だぞ!」
そうでした、いくら四つ足のほうが早いからって、狐みたいに駆けちゃいけません。私はいま、人間なのですから。
飯坂先生の体育が終わると、お昼ご飯の時間。お腹はちょうどよくぺこぺこです。この中学校はシリツだから、憧れの給食ではなく、お弁当です。最初はちょっと残念に思っていましたが、神様が毎朝持たせてくださるお弁当がおいしいので、いまではすっかり楽しみな時間になっています。
「コンちゃん、油揚げあげるー。あたし苦手だからさー」
あけみちゃんが私のお弁当箱に、ひょいと油揚げを入れてくれました。最近、あけみちゃんのお弁当には、油揚げが入っていることが多いのです。ご家族はきっと、あけみちゃんが油揚げ苦手なことを知らないんですね。私は大好物なので、両手を合わせて、ありがたくいただきます。
でも私、油揚げ大好きなこと、まだ誰にも言ってなかった気がします。なのに、どうしてあけみちゃんに知られてるんでしょう。ひょっとして、食べるときの顔でバレちゃったのでしょうか。いけませんね、もっと気を引き締めないと。うっかり正体までバレかねません。
神様、優しいクラスメイトと先生がたに囲まれて、私は毎日幸せです。学校に通わせてくださり、ありがとうございます。この素敵な日々を守るため、卒業まで頑張って正体を隠し通しますね!
※ ※ ※
僕の前の席の尾崎コンは、どう見ても狐っ娘だ。しかし、本人(本狐)は、どうやら人間に化けているつもりらしい。それなら、できれば耳と尻尾はうまく隠してほしい。授業中、ふさふさの尻尾が揺れたり、耳がひょこひょこ動いたりするのが気になってしかたがない。
入学式の日は、彼女を中心にクラスがざわついていた。クラスメイトたちがおそるおそる「尾崎さんて……狐だよね?」と尋ねたとき、彼女は「え、違うよ、人間だよ、ちょっと目つきがきついだけだよ、やだなぁ、あはは」と焦りながらも必死に誤魔化していた。それを見たクラスメイトたちの顔には、ああ、この子は人間のつもりなんだな、という温かな笑みが浮かんだ。以降、正体バレバレなこと本人には内緒にしておこうね、という暗黙の了解が生まれた。中学校初日にして、クラスが一致団結した瞬間だった。
まあ、尾崎コンが神社住まいの神使の狐だからといって、このクラスじゃ、たいしたことではない。コンといちばん仲がいい九堂あけみさんはルーマニア出身の吸血鬼だし、コンの隣の席の二階堂大地くんは悪魔と人間のハーフだ。ついでに言うと学級委員長は魔法少女で、担任の飯坂先生は異世界に召喚されて勇者やってた過去がある。他にも、隠れヒーローやってる子とか、性別偽ってる子とか、異星人とか。このクラスには、秘密を抱えている者たちが多すぎる。
だからこそ、僕もこのクラスを選んだ。コンと僕が紛れ込むには、うってつけだったから。
僕の正体がコンの奉公先の神様で、神様だからクラスメイト全員の秘密をお見通しだなんて、誰にも言えない。もちろん、コンにだって僕の正体は秘密。コンが楽しんでいる学校生活を、ぶち壊したくはないからね。コンの変身がガバガバすぎて初日から正体バレバレなのは誤算だったけど、クラスメイトはみんな、コンへの注目を利用して、自分の正体を上手に隠している。コンという隠れ蓑でクラスがうまくいっているなら、それでいい。僕は神様らしく、後ろでそっと見守ってるよ。だからコン、せめてモフモフの尻尾は隠してくれ。
言っちゃ駄目って決まりはないよ。
ただ、後が面倒だから黙ってるだけで。
だからほら、葉を隠すなら木の枝に、木を隠すなら森の中に、なんて言ってるといつの間にか嘘と秘密まみれのジャングルが生まれたりする。
そしたらもう終わりだよ。
森は隠せないからナパーム弾……ってなるじゃん。
無かったことに、じゃなくて全部無くすんだよ。
************
誰にも言えない秘密
************
所感:
秘密なんて「ある」と思われた時点で秘密じゃない。
秘密と言うほどの秘密はないかなぁ
しいて言うなら
結婚して十数年、子供何人か産んでるうちに
いつの間に10kgも体重増えてたことかな。
でも痩せてもゴツゴツしないし、太っても腕や脚は太らないせいか、それほど太ったように見えないらしくて。
旦那からも「変わらないねー」って言われるから、変わってないってことにしてます!
[お題:誰にも言えない秘密]
[タイトル:鏡の中では]
高校一年生になった津々楽都にとって、最も忌むべきものは鏡だ。
母に選んで貰った洗顔クリームを使い、都は顔を白色で満たした。しっかりと肌に馴染ませつつ、必要な皮脂までこぞって落としてしまわないよう、素早く落とす。
そして化粧水、乳液、クリームと一通りを終えるとパッと顔を上げる。
洗面所の鏡に映る都の顔は、相変わらず普通の顔だ。
平凡な女子高生の顔。二重で、童顔で、少し膨れていて、思春期ニキビにはそれなりに抗えている。そんな普通な顔を、都は睨みつける。
気に入らない。
そんな思いの丈を目力に変えて繰り出すと、鏡の中の自分も同じ顔をする。鏡の中の顔が崩れると、都は少し気が晴れた。
少し断っておくと、これは都が自分の顔を嫌っているという事ではない。そんな風に思うのは自分の母に対してあまりにも失礼で、その実、都は母を尊敬していた。
だからこそ、順調に成長を続ける自分の顔が気に入らなかった。都には自分の顔が時限爆弾にしか思えない。
鏡に映る都が問う。果たしてお前の顔は、一体どちらの母親に似るのだろう?
津々楽奏恵と津々楽美珠がパートナーシップ宣誓を行なったのは、都が産まれる三年前だ。それを聞いたのは都が小学生の頃、自分の名前の由来を調べる宿題を出された時だ。
「『都』は人で溢れているから、色んな人といっぱい関わって欲しい、って意味があるのよ」
そう言ったのは奏恵の方の母だ。美珠もうんうんと強く頷いている。
当時の都は、深く考えずにこれを聞いていた。同性パートナーの両親の口から出る『色んな人』が、その実どんな意味合いを持っているかなんて、小学五年生に分かるはずも無かった。
「まぁ、ぶっちゃけると都が元気なら何でもいいんだけどね」
美珠のその言葉に、奏恵は「それじゃ宿題にならないでしょ」と返す。けれどその顔は優しさに溢れていて、決して美珠の言葉を否定するものじゃない。
「他にどんな名前がありましたか?」
都は担任が示した質問リストに従って尋ねた。
「他? 他ねぇ・・・・・・」
「あ、ほらあれは? ミエとか」
「ミエ?」
ミエについて、美珠は適当な紙にスラスラとその漢字を書いた。
「『美恵』って、お母さんたちの名前?」
「そう。二人から一文字ずつ取って、美恵。都が産まれる前はこうしようって言ってなかったっけ」
曖昧に尋ねる美珠に対して、奏恵はきちんとその時のことを覚えているようだ。
「その名前考えてたのもっと前だったと思うけど・・・・・・確か、パート──じゃなくて結婚した時に、子供できたら一文字ずつ取ろうみたいな話してて・・・・・・」
「あー、そうだっけ」
盛り上がる二人に対して、都は何故か寂しさを覚えた。何か質問して混ざらなきゃ、という気持ちが沸々と湧き上がる。
「えと、結婚っていつしたの?」
「・・・・・・そうねぇ、都が産まれる三年前かな」
実のところ、厳密には結婚ではないのだが、それを都が知るのはもう少し後になっての事だ。
「それじゃあ・・・・・・」
「うん?」
言葉を詰まらせる都に、奏恵が心配そうに顔を見る。
「・・・・・・いや、やっぱり何でもない」
「そう? 宿題はこんな感じでいいの?」
「うん。大丈夫」
その実、都には他に気になることがあった。それは最近、友人の神志名鈴音に言われて気になり出した事だ。
「都ちゃんのお母さんってどっちなんだろうね?」
「どういう事?」
放課後、小学校からの帰り道で鈴音の質問に都は困惑してしまう。都は周りに自分の両親がどちらも母親である事は隠していない。友人たちも特段気にするような素振りを見せなかったので、都がその手の話題で気に病んだ事は無かった。
だから、この時はまだ鈴音の質問の意図は全く分からなかった。
「いやさ、ほら、保健の授業で習ったじゃん。子供って男女から出来るんだって、都ちゃんはどうなんだろうって」
「え、あー。確かに、どうなんだろう」
この時になって、都はようやく理解した。今までは父親が居なくても特段気にすることは無かったが、それは父親が全く存在していないという話ではない。自分が存在しているという事が、父親がいる証拠だった。
だとしたら、ようやく鈴音の疑問に立ち返る。
都を産んだのは、一体どちらなのだろうか、と。
そんな疑問を抱えながら、都は中学生になった。この時になると、都は父親については寧ろどうでもよくなってきていた。
何かあったから、というわけではない。寧ろ何もなさすぎて、興味を無くしていた。鈴音もあれ以降父親について言及する事は無かった。中学生にもなると、それがどれほどセンシティブな話題であるかに気付き始めたのだ。
けれど、いくら話題を避けていても、当人である都が逃げ切れるわけが無い。友人たちが美容やファッションについての話をするので、当然、都もそれを知りたがった。必然的に鏡の前に立つことが増えて、それは自分の顔をより意識させた。
小学生の頃からずっと成長した自分の顔。まだまだ大人らしくはないその顔に、しかし確実に大人に近づいているという感覚があった。
母親に近づいている。どちらかの母親に。
「私って母親似らしいんだけど、都はどう思う?」
鈴音のそんな言葉を思い出す。彼女の母親の写真を見せられて、そう尋ねられたのだ。確かに鈴音と彼女の母は似ていた。
鈴音にとっては何気ないその質問が、都の心に波風を立てた。
どちらの母も間違いなく都を愛している。都もまた、母親の事が好きだった。だからこそ、どちらが産んだのかを言わない言わない母親たちに不信感を募らせた。
母親たちにとっては、どうでもいい事なのかも知れない。都は間違いなく二人の娘で、どちらが産んだのかは重要じゃない。養子縁組や再婚などで、血の繋がっていない親子なんてごまんといる。
そして間違いなく、都の遺伝子は片方からしか貰っていない。血の繋がりをどうでもいいと切り捨てるには、都はまだまだ年月が足りない。特に身体の成長と性を意識する度、どうしても頭に母親たちの顔が浮かんだ。
ある日、都は意を決して二人に尋ねた。
「私はどっちの子供なの?」
反抗期というのもあったのかも知れない。それがどれだけ残酷な質問か、その瞬間まで全く気づいていなかった。
奏恵はそれを聞くと、途端に泣き崩れてしまった。ごめんなさいと繰り返す奏恵に呆気に取られていると、美珠が都を優しく抱きしめた。
美珠がどんな顔をしているのかは分からない。ただそうされていると、何故か自分も涙が出てきそうになった。
「どちらが産んだのかなんてどうでもいいでしょ?」
そう言った美珠に、都は言葉も返せず頷いた。
ようやく都は気づいた。どちらが産んだのかなんてどうでもいい、というのは母親たちの願望だった。努めてそうでなくてはならないのだ。二人の娘であるというのなら、遺伝子に拘ってはいけない。たとえ心の端で気にしていても、口に出してはいけない。都が二人の娘だというのなら、絶対に。
それ以降、都はその話題を口に出さなくなった。都は奏恵と美珠の娘である、という事だけが重要だと自分に言い聞かせたのだ。それは大変な事では無かった。どちらなのかを知っている母親たちに比べると、全くと言っていいほど大変じゃない。
けれど遺伝子は残酷に真実を告げる。大人になる程どちらかに近づく。鏡の中の都が、誰も言わない秘密を暴こうともがいている。鏡の中の自分は二人の娘ではなく、どちらかの娘だった。
都は高校生になった。より大人になったが、どちらに近いかは意識しなければ分からない。自分が童顔である事に都は感謝した。
「行ってきます」
都は二人の母に告げる。母二人も同じように返した。
それを聞くと、都は玄関の扉を開ける。二人の顔は見ないまま、都は学校に向かう。
朝には母の顔を見ないのが通例になっていた。鏡を見た直後だと、どうしても意識してしまうからだ。
通学途中、道の端に猫を見つけた。特徴的な白と茶の真鱈模様の猫だ。その後ろには子猫がいる。白地に上から黒のソースを垂らしたような模様。
都が近づくと、二匹は一目散に逃げ出した。二匹で知らない家の塀の中へと入っていく。
都はそれに満足して、改めて学校に向かった。
夏休み明け、街は少し異様な雰囲気を帯びていた。
「ご協力お願いします!」
駅前で40代くらいの女性と50代くらいの男性が必死にチラシを配っていた。
「お願いします。幼なじみなんです」
横からチラシを差し出す自分と同い年ぐらいの女の子が立っていた。少しやつれ、目の下にくまが浮かび上がっていた。
私は受け取ると軽く会釈し商店街へ向けて歩いていく。
「ミチ!」
後ろから肩を叩かれ向くとそこには同じクラスの陽子が立っていた。
「さっき駅前のチラシもらってたでしょ?まだ必死に探してるんだね」
「そうみたい。幼なじみだって言ってた。あの子少し痩せていたね……」
「そうなんだー」
8月──1人の男子大学生が行方不明になった。
名前は山中ユウキ。友人と山に出かけたあと行方不明になったらしい。
その後警察が捜査していたけど、何故かすぐに打ち切られ家族だけが今も探している。
「でもどこに行っちゃったんだろうね?」
「え、なにが?」
「だーかーら、行方不明の人!」
あぁとつぶやき少し考える。
「さぁ、わからない」
「だよねー。そういえば、また小学校のニワトリがいなくなったんだって!」
返答に興味がなくなった陽子は別の話をしはじめ、別れるまで行方不明の話は出なかった。
『あなたに秘密はありますか?』
ふとショーケースの中にあるテレビから聞こえてきた。
ぼーっとそのテレビを見ていた。へそくりがある人、奥さんに内緒でキャバクラに行った人、借金がある人などいろんな秘密が出てきていた。
私の秘密。確かにそれは人には言えないことだ。
家の近くにあるコンビニへよりお茶とカルボナーラを買って家路についた。
カリ、カリっと部屋の奥から引っ掻き音が聴こえる。
カルボナーラを温めつつ、ラジオを流す。懐かしい曲が流れていた。
私の好きな人がよく聞いていた曲だ。恋愛曲を歌うバンドだ。
私は苦手だったけど、彼が聴くのならと思いを私も聴いた。
チン!とカルボナーラが温まり、席について手を合わせた。
「あ、ご飯忘れてた」
もう一度立ち上がり、シンク下に入っているクーラーボックスの中から死んだニワトリを取り出す。
部屋の奥に進み、リビングの横にある扉の前にくる。中から「ううううう」と獣のような唸りが聞こえる。
「あー、ちょっと臭うな……。まーいっか」
ドアを開けると部屋の奥隅に人影が見える。
この人は私の愛しい人。
「ユウキさん、ご飯持ってきたよ」
そう声をかけるとドタドタと這いつくばってニワトリに貪りつく。
バキバキと音を立てて骨を砕き、滴る血を啜る。
「いつか、私もそんなふうに食べてしまうのかな?」
なんて言葉をかけてもユウキはこちらを見ることなくニワトリを食べ続けていた。
この人はもう人間ではない。
あの日山に私も行っていた。ストーカーと言うやつだ。わかっている。
ユウキとユウキの男の友人と女の子二人で山に登っていた。
山頂まで登り終えると無事下山していた。ここまでは良かった。
友人たちが悪ふざけでユウキを置き去りに車を走らせて行ってしまった。
文句をユウキはどこかに電話をしまた山の方へ向かっていった。その後を追った私だが彼を途中で見失ってしまった。
仕方なく下山した私は彼の友人たちが戻っていることに気づいた。彼らは私を見るとユウキを知らないかと写真を見せて聞いてきた。
多分彼だと思うといい上を指す。
彼らはすぐに山の入り口へ戻っていた。
最終的に彼を見つけたのは私だった。
早朝もう一度彼を見失った場所から探していった。
上に行ったり崖の下を覗いたり探していった。山頂近かく雑木林の中に彼は横たわっていた。
見るからに彼は亡くなっていた。私は怖くなりその場から逃げてしまった。
彼が亡くなったこと、そして事故ではないことがわかった。
首元には締められたような跡があったからだ。ホテルに戻った私は逃げてしまったことを後悔しもう一度深夜に彼のもとに行ってみることにした。
そこにはもう誰もいなかった。ただ鼻をつく悪臭が漂っていた。臭いを頼りに辿っていく。
ガサガサと物音がした。そこにいたのは死んだはずのユウキだった。
鹿の首に噛みつきジュルジュルと血を啜っていた。
私は何が起きたのかわからずその場にへたり込んでしまった。
その後はよく覚えていない。気がついたら彼を家に連れ帰っていた。
食われるかもしれないリスクを負いながらも私は彼を見捨てることができなかった。
「ずっとは無理でも入れるまで一緒にいてね」
人間性のない彼に言っても届かないのはわかってる。言わずにはいられないのが恋と言うものだろうか。
「蜉ゥ縺代※縲∬ィア縺輔↑縺??√≠縺?▽」
食事を終えたユウキは時折喋ることがある。だが言語として成り立っておらず、私には理解できない。
それでも私は一緒にいる。私の秘密はゾンビになった好きな人と暮らしてること。
その人は誰かに殺されたこと。行方不明の男子大学生であること。
誰にも言えない秘密だ。
そして私は彼をこんな目にした人を許さない。
私は彼の頭をひと撫でし、部屋をあとにする。
【宵闇ララバイ】
「誰にも言えない秘密」
それは、
「閻魔さまが知っていればいいこと」なので、
ここには書きません(笑)
けど……実は私…………
―――――
「狭い部屋」
その小さな部屋に入り、ドアを閉めると、
周囲の音が遠くなる。
賑やかな蝉の声も聞こえないちょっとした異世界
さあ、楽聖たちが遺した書を読み解きながら、どこまでも広がる音の世界へ旅に出よう。