『見つめられると』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
生まれは最悪、育ちも最悪、覚えた技術は暴力のみ。
そんな人間が行き着く先が裏社会以外にあるのなら、誰か俺に教えてほしかった。
今の仕事に不満はない。
かつての父親や母親に似た社会の塵を、ひたすらに殴って、蹴って、取り立てて浄化する仕事だ。
当然法律には違反しているし、見つかれば捕まる。
けれど、昔の俺を拾ってくれたボスのためなら、それでもいいと思えるくらいには、俺はボスの忠犬だった。
そんな俺が捕まった時、唯一心残りになるであろう男がいる。
現在進行系で銃声を響かせる、今真隣に居る男。
コイツは、数年前にボスが拾ってきた、俺と似たようなガキだった。
世界を諦めて死んだような目に、やたら痩せ細った体。無駄に伸びてしまった身長と、激しい暴行の痕。
ボスがコイツの世話を俺に任せたのも、俺が一番、こういう奴の心情を知っているからかもしれない。
コイツは俺によく懐いた。
これまで誰からも顧みられなかった者に、俺が3食を与え、安全な家と寝床を与え、上手くできていたか自信は無いが、紛いなりにも愛してやった。
それなりにコイツへの愛着はあったし、俺なりに可愛がってやったと思う。
その成果か、成長したコイツは長いこと空席だった俺のバディに立候補し、見事その枠に収まってみせた、というわけだ。
小さい頃を見てしまったのも相まって、俺が捕まったら、コイツはどうなってしまうのかと、心残りなのだ。
だが、最近少し気になることもある。
もちろん、奴のことは心配しているし、まだ可愛がっている。
子供扱いするなと拗ねられることもあるが、俺だって、初めて自分一人で面倒を見た子供が可愛くて仕方ないのだ。
そんなガキの目に、最近妙な色が混じっている、気がする。
幼少期に金で俺を好き勝手した大人達と似たようでいて、それとは少し違う色。
何かは分からないが、あの目を見るとどうにも動けなくなる。
今日も背中に絡みつくような視線を感じながら、すっかり俺の身長を抜かしてしまった彼を連れ、俺は任務へ向かった。
振り返ることはしない。振り返ってしまったら、またあの目を見てしまったら、また、動けなくなってしまう気がしたから。
テーマ:見つめられると
何かが見ている。
少年が感じたのは、心に余裕が出できたからだろうか。
閉ざしていた瞼をゆっくり開くと、視界に入ったのは格子状の何かだった。
「……ここ、は……」
妙な気怠さと重さを感じながらゆっくりと身体を起こした。
その途端、じゃらじゃらと言う金属が擦れ合う音が耳に入る。見ると両手首と足首に枷のようなものががっちりと嵌められており、彼の動きを封じる。
「……」
牢の外に吊るされている薄ぼんやりした明かりを頼りに見ると、枷に鍵穴はなく、少年のほっそりした手首や足首にまるで絡みつくように拘束していた。
――これは、外せない。
暫く手枷をいじっていたが、やがて諦めたように着物の上に落とした。
――あれ、これ、僕が着ていたもの、じゃない。
少し触れると、肌触りがいやにいい。色は白く、内側には赤い着物が見えた。
「……これ、まるで、白無垢の、よう、な……?」
少年はぼんやりとした頭で考える。目が覚めたときから感じていた重さの正体はどうやら枷と着物のようだ。
少し落ち着いたのか、彼は胸のあたりに両手を重ねて握る。
――ど、すれば、ここ、から、脱出、を、できるか、考えない、と。
少年は冷静に考えようとした。
だからこそ異変に気づいたのかもしれない。
格子から自分を見ている何かに。
「……ひっ…っ」
少年の喉から引きつったような声が漏れた。
『それ』には、目の機関はない。だが彼は、自分を見ていると認識した。
証拠に『それ』は的確に少年に触手を伸ばしていた。ぬめねめとした蛸の様な手は格子の近くにいた彼を絡め取らんばかりに、数本、別々から攻めようとしている。
(……花……屍……)
――どう、して、僕、の、名前、を。
怯えきってしまった少年の頭の中に突如として『それ』から呼ばれた名前に花屍は反応した。
「……あ、あ、なた、は、だぁれ?」
言いながらも彼はずりずりと後ろへと下がる。白無垢と枷のせいでうまく立ち上がれないのだ。その間も蛸のような触手は液を垂らしながら、花屍を捕らえようと伸ばしてくる。
『それ』は花屍からよく見えない。座敷牢の明かりはいつの間にか消されていた。
――た、ぶん、誰か、が、消し、たんだ。
今の状況は誰かに仕組まれたものなのだろう。さっき一瞬だけ上から感じた視線。あれは人間のものだった。 それに気をとられたために接近を許してしまったのだ。
花屍は噂で聞いていた。ある伯爵家には美しい人間を時折欲する化生が飼われていることを。
花屍には関係のない噂。彼は自分を美しい存在だとは思っていなかった。周りは彼以上の美しさを持っているもの達が多く、自覚がなかったのだ。
だが、彼は、花唇、花瞼、花顔、が揃うほどに美しかった。
それと不運もあった。
「た、すけ、て、だれ、か。たすけ、て。たすけて」
逃げる場所なんて限りがある。花屍は壁際へと追い詰められていた。迫る魔の手を前に、縋るように胸元にあるはずの首飾りへと手を伸す。
「……あ」
――そ、うだっ、た。
鍵のついた首飾り。彼には必要不可欠なもの。それがなくては彼は自身の身を守れない。帰ることも出来ない。だがそんな大切なものを。
――こ、わされ、た、ん、だっ、た。
手を握り締めたと同時に、粘ついた触手が花屍の手首へと辿りついた。
「……っ……んっ……」
花屍は座敷牢の真ん中付近にいる『それ』の触手に引きづられていた。
右手首に纏わりつくように絡めてきた触手を引き剥がそうとしたが、ぬめついたは中々外れず、着々と左手首、右足首、左足首へと絡みつく。
枷はいつの間にか外され跡形もなくなっていた。
花屍は、抵抗をやめずに絡みつく手を引き剥がそうとする。だが更に締めつけ、彼を諦めさせようといわんばかりに纏い付いてくる。
――き、もち、わる、い。
「んっ……い、や、はな、し、て……」
少しでも離れようともぞもぞと藻掻く。そのせいで触手からででいるぬめついた液が彼の着物をじとじとと濡らしていく。重かった着物が更に質量が重なる。花屍の動きは鈍さが目立つようになっていく。
ずる……ずる……と花屍は『それ』に徐々に近づき、ついに目の前へと引きづりだされる。
『それ』は花屍の目に入っているのに、何であるか認識出来ない。名も知らぬ化生の正体は不明なのかもしれない。
その化生は自分の前に来た花屍をじっくり見る為なのか、彼の腰に自身の触手を巻き付ける。
苦しさに下を向いた花屍の顔を『それ』は触手で無理やり自身へと向かせた。
顔に触れた触手は変わらず、粘ついて、ぬめついている。花屍は最早不愉快な顔を隠せなくなるくらい嫌悪との感情が湧いてきている。
化生はじっと花屍を見ているような気がする。
やはり目の機能はない。それどころか顔という機能や飾りすらない。
それでも花屍を頭の先からつま先の外見だけでなく、一挙手一投足すべてを眺めているような感覚を彼は感じていた。
手の拘束だけでも外したいと花屍が藻掻くと、愉快げな雰囲気がし、足を見ている時に彼が少しでも動くとつまらなさそうな感情が湧いてくる。
観察している中で、触手は花屍の愛撫を始める。彼は驚き、身体をよじったり、足で触手を蹴飛ばそうとしたが、まったく意味をなさなかった。
「や、めて。さ、わら、な、いで」
首を軽く締めてうっすら跡をつけたり、両足を無理やり開かせたり、着物襟に無理やり入れたり、とやりたい放題だ。
中でも股にずるりと触れてきた時が酷かった。一度ではなく何度も何度も何度も何度も何度も同じ行為を繰り返したのだ。
最初は花屍も足を閉じて抵抗したが、段々と力が弱くなっていった。
化生は徐々に弱々しくなっていく少年を愉快げに観察し続けていた。
暫くして花屍に対する愛撫をやめ、床へと下ろした。
自由の身となったにも関わらず、花屍は動く様子がない。
ゆっくりと上下する胸の動きから生きてるのはわかる。全身はぬめねめとした液と汗が混ざりあい、着物を身体に纏い付かせていた。目には嫌悪と恍惚が混じった視線を向けている。 反対に化生は愉悦だけを向けていた。
視線なぞ絡ませたくない。花屍はもはや視線のみでしか抵抗出来なかった。
ほんの数秒。まばたき一つだっただろうか。
花屍の意識はゆっくりと落ちてきた。
身体の限界が来たのだろう。
まだ眠ってはいけない。再び身体を弄られるかもしれない恐怖。目が覚めたときに花屍は花屍でいられるのか。
だがもはや花屍は目を開けている気力もなかった。
ゆっくりと瞼が下りていく。最後に見たものは、化生の『』だっ。
化生は花屍が眠りにつくまで、じっと見つめ続けていた。
こんな夢を見た。アラームで目を覚まし、私は体を起こす。
「もう朝…?仕事行きたくないなあ…」
何となく掛け布団の一点を見つめる。最初は気のせいだと思っていたが、少しずつ焦げそして煙が上がった。
「うわっ!」
驚いて立ち上がる。慌てて台所に行き、コップに水をくんで布団にかけた。水浸しになったが、火事よりはマシだろう。ふうっと息をつく。
「それにしても…」
今のは何だろう。一点を見つめたら、火が上がった。昔、理科の授業でやった虫眼鏡の実験みたいだ。
「もしかして私に見つめられると、燃えるのかな?」
試しに、壁に掛かったカレンダーを見つめた。じいっと見つめると、じりじりと一点が黒く変色していく。火が上がるといけないので、目を逸らした。もう一度見ると、やっぱり焦げている。
「やっぱり…」
私は、寝ている間にすごい力を手に入れてしまったようだ。何だか超能力者みたいで、カッコいい。
「でも、どうしよう…。これじゃ、仕事にならないよ」
そう、困るのだ。何をするにしても、必ず見つめなくてはいけない。身なりを整えるために、鏡で自分を見つめたら…。想像して私は身震いする。
「何とかしないと」
今日は具合が悪いと言うことにして、仕事を休もう。力を制御する方法を考えるのだ。職場に欠勤の電話を入れる。電話を終え、スマホを置くと私は目を閉じた。まぶたの裏が焼ける感じはしないので、目を閉じれば力は発動しないらしい。それからいろいろ試してみたが、やはり一点を見つめなければ焼けないことが分かった。
「でも、視線がずっと動いてるのって変だよね」
目を何かで覆うというのはどうだろう。仕事用の眼鏡をかけ、スーパーのチラシを見つめる。ボッと一瞬で火が着いた。
「うわわっ!眼鏡じゃ駄目だ!」
燃え上がるチラシを、あらかじめ水を溜めておいたタライに突っ込む。ジュウッ…と音を立てて鎮火するチラシに、私はため息をつき眼鏡を外した。危ない、危ない。やっぱり、仕事休んで正解だった。多分、凸レンズなのが悪いんだろう。他に何か目を覆う物は…。目をつむりながら、机の引き出しの中を手探りで探す。手に何か当たりつかんで見ると、派手な虹色のサングラス。これは、友人がふざけて買ってきた旅行のお土産だ。
「これも、試してみよう」
サングラスを掛け、古紙を見つめる。レンズに色が入っているのでよく見えないが、焦げてはいない気がする。恐る恐るサングラスを外すと、焦げは見つからない。
「やった…!」
喜んだのも束の間、私は気づいた。つまり私はこの力がなくなるまで、サングラスを着用しないといけないということ。面倒だが、度入りのサングラスでも買いに行くしかない。私は派手なサングラスを掛け、買い物に出かけた。店員に奇異の目で見られた気がしたが、背に腹は代えられない。私は、無差別放火犯にはなりたくないからだ。
「あー、疲れた…。でもこれでまた仕事が出来るし、仕方ないか」
ふと、窓の外に月が見えた。そう言えば、今日は満月だった。距離があるものを見つめると、どうなるんだろう?好奇心で月を見つめると、じりじりと月の表面の一部に黒い点が出来た。あ、しまった。
見つめられると3/29
文化祭の、軽音部のライブ。
次は、私のソロだ。
親、おばあちゃん、知らない人。
そんなに見つめないで。
見つめられると、とっても緊張しちゃうから。
ふと、片思いしている先輩を見つける。
彼もこっちを見ていたのだろうか。
ビビっと目が合う。
目を逸らせない。
そんなに見つめないで。
見つめられると、胸がどきっとしちゃうから。
148.『夢が醒める前に』『ふたりぼっち』『ばかみたい』
【前回のあらすじ】
期末試験で赤点を取ってしまった百合子。
追試で合格できなければ、『春休みは返上』と教師に宣告されてしまう。
それを聞いた友人の沙都子は『入試を突破出来たのはおかしい』と馬鹿にするが、百合子は『評判のいい学食のために頑張った』と言い返す。
それを盗み聞きしていた教師は、百合子を追い込むため『追試に落ちたら学食禁止』を告げ――るのではなく、『成績優秀者のみが食べられる裏メニューの存在』について示唆する。
しかし、教師は『だがお前には無理だ』と断言し、沙都子からも『信じている』と言いつつ1ミリも信じてない態度を受けて、百合子は憤慨する。
そして、『絶対に裏メニューを食べる』と決意を固める百合子だった。
☆
あれから1週間、私は運命の日を迎えた。
今日の追試の結果如何で、春休みの予定が決まる。
短い春休みと言えど、休日を補習に捧げる気は全くない。
休みを満喫するため、そして華のJK生活を謳歌するためにも、絶対に負けられない戦いだった。
それに頑張る理由はもう一つある。
それは成績優秀者のみが食べることができる、学食の裏メニュー。
沙都子は絶対に無理だと思っているだろうが、私は絶対に食べてやると誓っていた。
けれども私は赤点常習者。
普通に勉強しても、テストで9割取るのは難しい……
だが私には秘策があった。
(カンニングペーパーを作って来たもんね)
これを見れば、百点間違いなし!
好きなゲームを我慢して作った、自慢のカンニングペーパー。
突然いい点数を取れば怪しまれるだろうけど、『裏メニューのために頑張った』と言えば問題ない。
そもそも先生から焚き付けてきたんだから仕方ないね。
もちろんカンニングを警戒されるだろう。
でも先生だって人間だ。
必ず隙はある。
その時を狙ってカンペを見ればいい。
楽勝だね。
気持ちを落ち着かせながら精神統一をしていると、先生が時計を気にし始めた。
「そろそろ時間だな、準備しろ。
…………始め!」
テストは始まった。
すぐに、じっと私を見つめる先生。
そんなに見つめたって、ボロは出さないぜ?
ほら、諦めて、早く隙を見せるんだ。
そうすればカンペを見て、鮮やかに問題を解いて見せるぜ。
そう、成績優秀者のように!
だから早く隙を見せて……
早く…… 隙を見せ…… て……
………
………………
……………………えっ、めっちゃ見てくる!?
先生が見てくる。
暇なカレー屋の店主の様に、じっと見てくる
なんで!?
私まだ何もしてないよ。
私がカンニングすると疑っても、さすがに見過ぎでは……
はっ!
今重大なことに気づいた。
こんな単純なことに、なんで早く気付かなかったのだろうか。
こんな単純なことに気づかないなんて……
――この追試、私しか受けてない。
この教室にいるのは先生と私。
つまり、ふたりぼっち……
先生は、私以外に見るべき人間はいない。
当然の帰結だった。
(なんという計算外……)
勉強はしていない。
カンペ製作に費やしてしまったからだ。
そうとも知らず、製作に時間を費やして、ばかみたい。
こうなったら別の方法で、先生の目線をそらすしかない。
「あの、先生……
見られていると、緊張するんですけど……」
「気にするな。
集中していれば、すぐに気にならなくなる」
「でも……」
「仕方ない。
三分だけ後ろ向いているから、その間に周りが見えなくなるくらい集中しろ」
と言って、黒板の方を向いた。
なんという優しさ。
私に追試を命じた人と、同じ人物とはとても思えないね。
とはいえ、助かったのは事実。
心の中で感謝する。
でもそれは一瞬だけ。
三分は長いようでいて短い。
すぐにカンペを見て、出来るだけ問題を解かないと……
――おや、カンペが無い。
ポケットをまさぐったりするが、カンペが無い。
どこかに落としてしまったか!?
そう思って教室を見渡す。
とその時、廊下に沙都子が教室を覗いているのを見つけた。
(何しに来たんだろう)
もしかして応援?
普段は私を馬鹿にする沙都子だけど、なんだかんだで親友思いなんだな……
そう思っていると、なにやら紙のような物を取り出して――って、おい!
沙都子が持っている紙、あれは私のカンペじゃないか!
いつの間にすられたんだ。
道理でどこにも無いわけだよ!
じっと目を凝らしても、距離があるので全く読めない。
私が歯噛みしていると、沙都子が「バーカ」と口を動かして去っていった。
いや、本当に何をにした?
ただ私をバカにしに来ただけか!?
「五分経った。
あとは慣れろ」
そして先生はじっと見てきた。
暇なカレー屋の店主の様に……
「くっ」
沙都子の悪質なイタズラにより、カンペが無くなってしまった。
あとはもう実力だけでやるしかない。
けれど、私の脳みそでは九十点どころか合格すら怪しい。
それでも、必死に足掻いてみよう。
九十点には届かないかもしれないけれど、部分点を重ねて行けば合格ラインまでに届くかもしれない。
そう思い、テスト用紙に目を落とした。
『問一、7×8=?』
私はゆっくり瞬きした後、問題が変わらないことを確認してから、顔を上げた。
「掛け算とか舐めてんのか!」
私の魂の叫びをあげる先生はまったく表情を変えずに言った。
「先日、教師陣で話し合った結果だ。
今までの態度や点数から、小学生の学力すら怪しいという結論になってな。
まずその確認のテストだ」
「掛け算くらい出来るわい!」
「なら良かったな。
90点以上取れば、裏メニューが食べれるぞ」
まったく表情の読めない声で、淡々と告げる先生。
悔しいやら悲しいやら。
舐められているのは分かっているのに言い返せない。
だって私、裏メニューを食べたいんだもの……
「掛け算とはいえ、油断するなよ。
一ケタ同士のものから、5ケタ以上の計算まで。
掛け算だけだと飽きるから割り算も入れて、あらゆるバリエーションを取り揃えている。
楽しんで解くといい」
📜📜📜📜📜📜📜
「追試突破おめでとー」
目の前で、憎き沙都子が満面の笑みを浮かべながら拍手する。
まるで『百合子の事、信じていたわ』と言う顔をしているが信じてはいけない。
やつはカンペを持ち去った裏切り者である。
「何浮かない顔してるのよ。
念願の裏メニューが食べられるんだから、もっと嬉しそうにしなさいよ」
実際のところ、私はテストで9割以上取った。
カンペではなく、純粋な私の実力によって。
その結果、裏メニューのチョコレートケーキが目の前に置かれていた。
でもなぜだろう、全然嬉しくない。
「なんで落ち込んでいるのよ!
先生が『まさか百点取るなんて思わなかった』って驚いていたわ」
「掛け算ばかりだからだよ。
小学生でも取れるよ」
「え?
もしかして本当に気づいていないの!?」
沙都子が目を丸くして驚く。
私も、沙都子が驚いたことに驚く。
「たしかにほとんど簡単な計算だったわよ。
でも、最後の方は先生がふざけて、平方根の√とか複素数iとか出して、極めつけは対数logの計算とか出てきてたのよ。
もっと後で習うことなのに、なんで解けるの!?」
「ちょっと何言ってるか分かんない」
「何で分からないのよ!?」
沙都子がツバを飛ばしながら叫ぶ。
何をそんなに興奮しているのだろうか?
ただの掛け算なのに。
「アナタはね、人によっては挫折するレベルの計算を、いとも簡単に解いて見せたの。
誇りなさい」
沙都子には珍しい素直な賞賛に、体がむず痒くなる。
明日は槍でも降るのかな?
「よく分かんないけど……
実は私、天才だってこと?」
「先生たちも、それに関して悩んでいたわ。
学校一の問題児か、有史以来の天才か……
どちらにせよ、あんまり先生を困らせるのはやめなさいね」
正直な話、沙都子の言っている事は分からない。
けれど『実は頭がいい』なんて言われたら、ちょっとだけ嬉しい。
「まあ、これからは勉強を真面目にすることね。
才能があっても、それを磨く努力をしなければ宝の持ち腐れよ。
食べ物絡みだけの才能かも知れないけれど、大切にすべきだわ」
(勉強の才能か……)
生まれてこの方、そんな事考えたこともなかった。
今まで自分には才能がないと、勉強せずにゲームばかりをしていた。
頑張ったのは、入学試験くらい。
けれど、沙都子から認められるくらいには、自分には才能があるらしい。
本当かは分からない。
でも、これからは少しだけ勉強を頑張ってみるのもいいかもしれない。
そう思った。
「ほら、早くそのケーキ食べなさい。
アナタ、それが食べたくて頑張ったんでしょう。」
そうだ!
なにはともあれ、これが食べたくて勉強を頑張ったのだ。
勉強の才能とか、難しい話は後!
これを食べたら、私は春休みを謳歌して――
「言い忘れてたけど、先生からの伝言。
補習は無しだけど、宿題出すってさ」
「夢が醒める前に、現実に引き戻さないでくれる?」
「全部やったら、来年からの新メニューを最初に食べさせてくれるって」
……頑張るか。
見つめられると、
背けてしまった思い出
もう一度
見つめたい
風が隣にあれば
探す
探された
あの人を
愛言葉
私は、FMラジオの戸塚さんにお便りを書いた。
先日は、友達がお手紙を書いてすみません。読んで下さりありがとうございました。私は、あんずといいます。夏音ちゃんとは、仲よくしてもらっています。ところで、戸塚さんは、あの3人の王子さまは夢じゃありませんから。フランソワ、トパーズ、ガーネット。
うんうん。と戸塚さんは、優しく頷いた。でも、イケボだな〰️。
私は、ベッドにおいてあるラベンダーカラーのぬいぐるみのくまさんを抱きしめながら聴いていた。
夏音ちゃんのお便りを読んだら、あんずちゃんは、ドラマチックな方たちと出会ったんだね。心が動いたんだね。
キラキラの舞踏会で、眩しいくらいの王子さま3人。3人3様。
王子さまということは貴族かな??
あんずちゃんは、その王子さま3人が好きになったんだよね??
書いてないけれども、行間で理解るよ。これでも、パーソナリティですから!🎀エッヘン、wwwカラカラと戸塚さんは、笑った。
あんずちゃん、秦基博さんのラズベリーラバーという、曲を知っているかな??夏音ちゃんから、あれから、手紙をもらったんだ。夏音!!私の声です。ハイ。あんずちゃんは、作家志望なんだよね??ラズベリーラバー、はぼくから、作家を目指す君に、プレゼント🎁します🌟
視点をズラした、歌詞が今のあんずちゃんに響くと想うな。
3人の王子さまとは、素敵な想い出かな??夏音ちゃんが少しだけ、心配していたよ……。今のあんずは、心此処にあらずと書いてあったんだよ。じゃあ、僕から、あんずちゃんに歌のプレゼント🎁をあげるね。
愛言葉3だった。素敵な恋したんだよね??フランソワ、トパーズ、ガーネット……。ありがとう。で、句読点を打たれた。違うけれども、違わない。
まさか、お便り採用されるなんて、戸塚さん、ありがとうございます🧸
ドキドキが加速したな。
放送が、終わった後に秦基博さんの〚ラズベリーラバー〛聴いた。
妖しくて、禁断のシンデレラに恋した方の心模様だった。
〚何んで、硝子の靴を拾うのは僕じゃなかったんだろう。…
…〛主人公の問いかけや、お姫さまを想う気持ちや、
君が好きだ。と、いう切なくて、痛いほどの想い、見返りなんていらない、でも、君が好きだ❤毒入りのラズベリーで僕は、死んでもかまわない。フランソワの優しいはじめに出会った頃のウソと、微笑みを記憶いだした。私は、胸の中がざわざわして。口を両手でおおっていた。ヤバい……。
戸塚さん、私には強炭酸過ぎます…。うわ。🍓
終わり
後ろから、じーっと見てみてみる。「そうすると、振り向くかもよ」って言うから。あ、少し横向いた。だめか。後ろまでは、気づかないか。
「もっと、思いを込めなくちゃ」。気付いてーと、少し強く思ってみる。しばらくすると、また顔が上がった。後ろ! すかさず念じてみる。
頭がゆっくり動いて、ふーっと後ろを振り返ってきた。あっ。目が合った。不思議そうに、じっと見てくる。「ほら、笑って」。言われるままになんとか笑顔を作る。
すると、向こうも目元がふっと緩む。その優しい眼差しに、ドキドキする。もうこれ以上は無理だ。でも、隣の彼女は、こんな駆け引きをうまく積み重ねることができるらしい。
「見つめられると」
えっ恥ずかしい…!
どきどきしちゃうからもう見ないで!
✒︎(見つめられると)
見つめられると胸が締め付けられるようにギュゥゥゥゥ//////ってなる
見つめられると胸が締め付けられるようにギュゥゥゥゥ//////ってなる
『見つめられると』
いつもありがとうございます。
スペースのみです💦
夜。なんとなく彼の顔を見つめてみた。
案外まつ毛長いなとか鼻筋通っているなと思っていると、最初キョトンとしていた彼が顔を赤くして照れ出した。
「あ、ゴメン」
「いや、いい。いいんだけどさ…」
私が首を傾げていると彼はこう言った。
「君に見つめられるとドキドキする…」
【見つめられると】
その目が何を言ってるか秒速で考える
見つめる目は
口よりものを言う
寡黙なおじいちゃん、
ユーモアのあるおじいちゃん、
おばあちゃんのことが大好きなおじいちゃん、
最後まで自分の好き、 を貫いたおじいちゃん、
そのおじいちゃんが今、ベッドに横たわり、
この世の人ではない
それでやっと私はおじいちゃんを見つめられます
かっこいいおじいちゃん
私に見つめられて
どう思うのですか?
見つめられると
君の澄んだ目が私を追うように動く
ネエ、見えてるのかな
まだ1ヶ月だよ
見つめられるって
こんなに照れちゃうものだったっけ
でも手放しで嬉しいね
つぶらな瞳に話しかける度
自分の笑顔が赤ちゃんの眼差しに注がれる
君が幸せ色につつまれていく
ネエネエ、これって親子でアイ(目:愛)コンタクトしてるってことでしょ
ウワッ、今ニヤリとしたよ
ママはボクのものだって
そりゃないよ
お次はパパとにらめっこしよう
アップップー
見つめられると
私の誕生日にお父さんがお迎えしてきたはあちゃんは、黒と茶のミニチュアダックスフントです。
はぁちゃんは私の食べるものならなんでもジッと見つめて私が根負けしてはぁちゃんにひと口あげるのを待っています。
はぁちゃんの正式名称はハートなのですが、私がはぁちゃんと呼ぶので今でははぁちゃんが正式名称になってしまいました。
はぁちゃんが今日狙っているのは私が食べているたこ焼きです。ひとつ、ふたつ、熱々の鰹節が踊るたこ焼きを私がタコさんみたいになってフーフーして食べるのをじっと見つめています。
でもはぁちゃんこれすごく熱いから貰わない方がいいね。
私がそう思ってみっつめを爪楊枝で口に運ぼうとした瞬間、たこ焼きが破れて宙を舞い、そこにつぶらな瞳のはぁちゃんがバクっ!と割り込み…
熱い?熱いよねえはぁちゃん。貰えない食べ物には理由があるんだよ。
見つめられると
見つめられると
胸の奥で
ひそやかに波が立つ。
言葉より先に
まなざしが触れて
まだ知らない私を
そっと照らし出す。
逃げたいようで
立ち止まりたいようで
心はいつも
そのあいだを揺れている。
けれど
見つめられるたびに気づくのだ。
私は思っているより
ずっと
誰かの光を受け取る準備ができている、と。
まなざしが離れたあとも
余韻だけが
静かに胸に残り
小さな灯のように
私をあたためている。
眞白あげは
「ところで」
「ところで?」
「最初は照れてしまうが」
「しまうが?」
「誘ってると思うようになる」
「あー、大人だ」
「春だしねー」
「あー、春だもんねー」
お題『見つめられると』
見つめられると
忘れてると思ってたー
しばし休業中