生まれは最悪、育ちも最悪、覚えた技術は暴力のみ。
そんな人間が行き着く先が裏社会以外にあるのなら、誰か俺に教えてほしかった。
今の仕事に不満はない。
かつての父親や母親に似た社会の塵を、ひたすらに殴って、蹴って、取り立てて浄化する仕事だ。
当然法律には違反しているし、見つかれば捕まる。
けれど、昔の俺を拾ってくれたボスのためなら、それでもいいと思えるくらいには、俺はボスの忠犬だった。
そんな俺が捕まった時、唯一心残りになるであろう男がいる。
現在進行系で銃声を響かせる、今真隣に居る男。
コイツは、数年前にボスが拾ってきた、俺と似たようなガキだった。
世界を諦めて死んだような目に、やたら痩せ細った体。無駄に伸びてしまった身長と、激しい暴行の痕。
ボスがコイツの世話を俺に任せたのも、俺が一番、こういう奴の心情を知っているからかもしれない。
コイツは俺によく懐いた。
これまで誰からも顧みられなかった者に、俺が3食を与え、安全な家と寝床を与え、上手くできていたか自信は無いが、紛いなりにも愛してやった。
それなりにコイツへの愛着はあったし、俺なりに可愛がってやったと思う。
その成果か、成長したコイツは長いこと空席だった俺のバディに立候補し、見事その枠に収まってみせた、というわけだ。
小さい頃を見てしまったのも相まって、俺が捕まったら、コイツはどうなってしまうのかと、心残りなのだ。
だが、最近少し気になることもある。
もちろん、奴のことは心配しているし、まだ可愛がっている。
子供扱いするなと拗ねられることもあるが、俺だって、初めて自分一人で面倒を見た子供が可愛くて仕方ないのだ。
そんなガキの目に、最近妙な色が混じっている、気がする。
幼少期に金で俺を好き勝手した大人達と似たようでいて、それとは少し違う色。
何かは分からないが、あの目を見るとどうにも動けなくなる。
今日も背中に絡みつくような視線を感じながら、すっかり俺の身長を抜かしてしまった彼を連れ、俺は任務へ向かった。
振り返ることはしない。振り返ってしまったら、またあの目を見てしまったら、また、動けなくなってしまう気がしたから。
テーマ:見つめられると
3/29/2026, 8:57:45 AM