『衣替え』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
衣替えをすると、思いもかけない服が出てきて驚くことがある。それは確かに自分が買ったものの筈なのに、しまい込んでいるうちに忘れてしまったものだ。
少し可哀想だな、と思う。服だって自分に着られるのを楽しみにしていただろうに、と。
だからこの服は自分の元にいるべきではないのだと思う。
「査定の結果額についてですが……」
自分ではない誰かに大切にして貰えるといい。少ししか値のつかなかったレシートを見ながら、自分勝手にもそんなことを思った。
肌に合わなくなったものは、いっそ仕舞い込んでしまうこと。そういう手段はいつも必要だ。もしかしたら、もう二度と袖を通さないものがあるかもしれない。もしかしたら、その中で穴を開けられて、密かに息を引き取るかもしれない。そういういろんなしがらみに、目を逸らすように、蓋を閉めること。たぶん、そういう手段が必要だ。
衣替え
9月上旬に灼熱のなかUSJいったお土産が、まだ消化されていない。
ついこないだまで半袖だったのにな……と嘆きつつ、薄い生地の服を仕舞う。
今年の夏は暑かったのに、だんだんその肌の感覚を忘れつつある自分に驚いた。
そうしていると家族にこれから寒くなるぞと忠告され、私は渋々コートを取り出した。
「来るべき冬に備えて衣替えを決行します…!」
寒がりな君が羽毛布団とフリースのシーツを持って宣言した。暖かな太陽が出ているうちに冬物を干し、その間にベッドカバーをふたりで引っ張って整える。手触りはふんわりして贅沢な、毛の長い猫を撫でているようだ。
「新しいやつ?」
「うん、布団蹴飛ばしてもシーツでくるめば暖かいかなって。猫ちゃんみたいでしょ」
寒いと熱を求めて無意識に君がよってくる。それも猫みたいに。それが可愛くてしばらく眺めている時もあるけれど。
「たぶん、君が布団を蹴たくった瞬間に俺が気付くから心配いらないよ」
「あなたがいない時の話」
「じゃあシーツの猫ちゃんに頼んでおこう」
太陽を目一杯吸収した俺と君の冬服を取り込んだ。お揃いのセーターを丹念に確認し整えた君の顔が明るくなる。
「虫食いも穴あきもなし!」
「よかった。今年もたくさん着ようね」
ニコニコと引き出しに畳んで入れて、冬には君のトレードマークとなるコートを部屋へ戻せば衣替えは終わるはずだった。
「さて、問題です」
「どうぞ?」
じゃ、じゃん!とコートを着た君がベランダで両腕を広げた。
「去年と違うところはどこでしょう?」
顎にゆびを添えて君のコートを観察する。
「間違い探し?実は新品とか?」
「ううん、同じ」
「ちょっと背が伸びたとか?」
「健康診断は変わりなく…」
少し余ると言っていた袖も確かにそのままで一回ほど折ってある。
「ヒント」
「今さっき気付いてショックなこと」
「えぇ…?」
「答え…カビ」
「あちゃー…」
「クリーニングにも出したし大丈夫だと思ったんだけどな。お部屋の湿気に負けてたみたい」
いそいそと脱いで項垂れる。「明日冷えるって言うから着ようと思ったのに…」今から探しに行っても満足な買い物はできそうにない。
「暖かければいいの?」
「うん」
クローゼットを開けて自分にはもう小さいジャケットを君に羽織らせた。ぱちくりと瞬いている。服に着られているがそれもまたアクセントと言えばお洒落の上級テクニックのように思える。
「いいんじゃないかな。流行りのオーバーサイズってことで」
俺が袖を通せば足りない布も君にはまだまだ余るらしい。手首が見えるまでくるくる折って見つけた手を掴んで。
「明日の飲み会に着て欲しいな。男避けも兼ねて。ね?」
「衣替え」
長袖から半袖になるよりも半袖から長袖になる方が寂しいのは何故なのかな。
服が重くなるから? 明るい夏が終わったことを実感するから?
わたしたちが箱庭から卒業する日が近づいているから?
衣替え。
数刻前、ある知り合いの連絡先を削除した。
人間関係の衣替え。
近ごろめっきり寒くなった。クローゼットの奥にしまってあった衣装ケースから長袖の服を引っ張り出す。何でもいいからあったかいものを、と思って適当に出したのに。まさかこの朱いカーディガンとは。
色物の服なんて選ばない僕に、彼女がプレゼントしてくれたもの。絶対に似合わないと思っていたのに、勧められて着てみれば意外としっくりきた。この色にこういうトップス合わせるといいよ、とか、パンツは細身のほうがかっこよくキマるよ、なんてアドバイスをもらいながら僕なりに着こなした秋。あれから数年が経ってしまった。
袖を通して鏡の前に立った。だが、あの頃はあんなに着こなせていたのに、そこに映る僕の姿は想像していたものと全然違っていた。やはり彼女が褒めてくれてその気になっていたからうまく着こなせていたんだろう。1人になった今では、このカーディガンを活用する自信がない。それなりに着たから棄ててもいいだろう。そう思って畳んだそれを部屋の隅に置いた。代わりに羽織れる別のものを探すため再び衣装ケースを漁る。ついでにタンスの中身も替えよう。衣替えだ。もうすっかり秋真っ只中なのだ。季節の移り変わりがこんなにも早いなんて。そりゃ僕も歳取るわけだ。
キミは、どうしているだろうか。元気に夢を追いかけているだろうか。キミと一緒にいた頃は本当に多くのものを貰った。物質的な意味もあるが、見えないものもそうだった。僕には無いものをキミは沢山持っていた。いつも瞳はキラキラしていて、自分の意志を持っていて、強くて優しい人だった。
思い出は物として形にできないけど、僕はあの時の楽しかった日々をずっと覚えてる。この先、キミと別れた秋を何度迎えても。
「……なんて、未練ったらしいか」
やっぱりあの朱いカーディガンは棄てよう。じゃなきゃ僕は決別できない。思い出は大事にするけれど、いつまでも縛られるのは良くない。まだ今年の秋は終わりじゃない。新しい服でも買いに行こうかな。今度は自分で朱いカーディガンを選ぼう。
急な肌寒さにくしゃみをひとつ
季節のずれた綺麗な服を着て
衣替えをしそびれたと、君は笑って言った
僕の好きな色、かたち
そうだ、僕はその服を着た君を可愛いとたくさん褒めた
可愛くて大事なのは君だからと
優しい君の体温が、逃げないように抱きしめた
(衣替え)
Tシャツ一枚からキャミソール、カーディガン、コートと着るものが増え気づくと一年終わってる
【お題:衣替え】
どういうわけか、
衣替えと聞くと
その音の響きからか
自分では たしかに
洋服を入れ替えるのに
頭のなかでは
洋服ではなく
着物を 季節に合わせ
替えている
そんなイメージが浮かぶ
そしてまた
国語の時間に習った
着物にまつわる
恋の歌らしきものが
思い出される
遠い昔の人が
詠んだものなのに
昔の恋人を思う、
その人の心が
息づくような
リアルさをもって
たちのぼってくる
その歌には
視覚、嗅覚
そして今思えば
袖が出てくるので
触覚もあるし
着物にも触れられる、
そういう間柄ですよ
ということも
含んでいるのだろうが
そこを汲めない
年齢だった当時の私にも
十分にその雰囲気が
伝わってくるような
魅力的なストーリーだった
香りは
一瞬にして
昔の記憶、感覚
を呼び覚ます
今の自分は消えて
その当時へ
戻ったかのような
そんな錯覚すら
覚えてしまう
さつき まつ
花橘の香をかげば
昔の人の
袖の香ぞする
歌に詠まれた
そのお相手も
詠み人のことを
季節がかわっても
思い出すことが
あっただろうか
「衣替えの、何が面倒って、収納の中身をいちいち総入れ替えすることだと思う」
オールシーズン着られる服が有ったら理想だが、
日本の冬は北だとバチクソ寒いし、夏は最近「酷暑日」なんて単語まで出てきちまってるから、きっと現実には無理なんだろうな。
某所在住物書きは秋冬用の部屋着を取り出して、眺めながら言った。
「服の量減らせば、衣替えの時の総入れ替えも、そりゃラクだろうけどさ」
それができりゃ、まぁ、苦労しねぇわな。物書きはため息を吐き、服を畳む。
――――――
最近最近のおはなしです。秋の入口のおはなしです。都内某所、某稲荷神社敷地内の一軒家に、人間に化ける妙技を持つ化け狐の末裔が、家族で仲良く暮らしておりまして、
現在、夏毛から冬毛への生え変わりが、丁度まさしく、始まった頃。
換毛期。すなわち、衣替えです。稲荷神社在住の狐一家は、これから夏のスリムを脱ぎ捨てて、冬のモフモフに着替えるのです。
このおはなしに登場する、狐一家の末っ子も、コンコン、夏毛が抜け始めました。
ペロペロ毛づくろいして、カリカリ抜け毛をかき出して、それでも抜けない分、舌や爪が届かない分は、父狐や母狐に、あるいはおじいちゃん狐やおばあちゃん狐に、ブラッシングをお願いするのです。
今日もぽかぽか、朝日の暖かさをたっぷり吸った夏毛が、ふわふわ、ふわふわ。
ブラッシングで抜けて、まとまって、小ちゃな毛玉になってサヨウナラ。
抜け毛のむずがゆさがスッキリして、子狐はご機嫌。
神社の広場の、明るい陽だまりの真ん中で、フサフサしっぽを枕にして、幸せにお昼寝を、
しようと思ったら、なんかイジワルそうなオジサンが、それでも藁にすがる悲壮を心に、稲荷神社に参拝に来ました。
「わるい人間だ」
コンコン子狐は不思議な狐。人間の、心の奥の奥の匂いが分かります。
「人間をいじめる、わるい人間だ」
子狐が嗅ぎつけたとおり、参拝に来たオジサンは、
つい最近まで、自分の仕事を全部部下に押し付けて、終わった成果だけ横取りする、上司にゴマスリしてばっかりのオジサンでした。
なぜ「つい最近まで」って?
今月の最初、具体的には10月5日頃、自分のゴマスリと仕事成果の横取りが、職場のトップに、ダイレクトにバレてしまったのです。
悪いことは、するものではありませんね。
で、トップから直々に御叱責を賜りまして、自業自得ながらストレスで、頭の生え際後退がマッハ。
厄払いをお願いしに来たのです。それから少し、「毛が戻りますように、増えますように」の神頼みも。
「『毛が増えますように』?」
ゴマスリオジサンを遠くから観察して、匂いを嗅いで、コンコン子狐思いました。
「人間にも、かんもーき、あるヒトいるのかなぁ」
お洋服も衣替え、夏毛と冬毛も衣替え。人間は2個も衣替えしなきゃいけないから、大変だなぁ。
ぶっとんだ勘違いでオジサンにちょっと同情します。
「それとも、あのひとも、化け狐か化け狸なのかな」
化け猫の雑貨屋さんが、丁度すごくサイコーなブラシを入荷してくれたから、オススメしてこようかな。
でも悪い心のやつだから、いっそ、高い値段で売りつけて、ボーリをムサボルすれば良いかな。
コンコン、子狐いっちょまえに長考しまして、でも陽だまりの陽気があんまり心地良いものだから、
ゴマスリオジサンが厄払いしてもらって、祈祷料等々支払って、稲荷神社から出ていく頃には、
こっくり、こっくり。幸せに、寝落ちてしまっておったのでした。
おしまい、おしまい。
「衣替え」
あー全部ひっくるめて
ぜーんぶ替えたい
なにもかも煮詰まってるわー
10/22「衣替え」
バタバタと元気のいい足音と、キャーキャーという笑い声を聞きながら、衣替えと要らない服の処分をしている。
アツヤの仮面ライダーの服も、マイのプリキュアの服も、来年着ることはない(流行り物は商売上手だ)し、そもそも来年はもう入らないだろう。子どもが育つのは本当に早い。
アツヤの6歳の夏も、マイの4歳の夏も、もう二度と来ない。
冬はもっといっぱい家族で出かけよう。いっぱい家族写真を撮ろう。
まあ、毎年そんなこと言いながら、何気なく過ごしてしまうのだけど。
(所要時間:7分)
10/21「声が枯れるまで」
叫ぶ。叫ぶ。戻って来いと。
あいつは仲間で、親友で、共に戦ってきた。背中を預けられる唯一の相手だった。
それが今、俺の前に立ちはだかっている。魔物と融合した巨体で。
どうしてこんな事に。
防戦しながら、叫ぶ。元に戻ってくれと。
「こ…ろせ」
あいつが言う。
「おれの…心の…弱さが、おまえを…殺さ…ない…うちに」
どうして、こんな事に。
長い戦いの果て、あいつだったものの亡骸を前に、俺は声を上げて泣いた。声が、涙が、枯れ果てるまで。
(所要時間:7分)
10/20「始まりはいつも」
始まりはいつも、一目惚れ。困ったな、また恋に落ちちゃった。
でも大丈夫、これは運命。彼もきっと、私のことを好きになる。
学校帰り、私服の子と歩いてるのを見かけた。妹さんかな?
翌日、告白。
「ごめん、オレ彼女いるから」
終わりはいつも、勘違い。困ったな、また一人になっちゃった。
いやまあ、もともと一人っちゃ一人かぁ。
(所要時間:5分)
10/19「すれ違い」
あれ、と首を傾げた。歩道橋で待ち合わせ、もう着いてるとLINEがあった。けれど彼の姿はない。
ははぁん、さては向こう側の降り口にいるな?
上るのは面倒だから、車に気をつけてダッシュで渡る。
いない。
まあいっか、もうしばらくここで待ってみよう。
うーん、と首をひねる。歩道橋で待ち合わせ、もうすぐ着くとLINEがあったのに、あいつが来る様子はない。
歩道橋を渡って反対側へ。階段の上から見下ろす。
いない。
まあいいか、もうしばらくここで風に吹かれていよう。
(所要時間:7分)
10/18「秋晴れ」
気持ちのいい晴れだ。抜けるような空、というのはこういうのを言うのだろう。
母が亡くなった。
長い闘病生活だった。
常に明るかった母も、晩年には「迷惑かけるから、早く死んだらいいのにねぇ」などと弱気になった。こちらもなかなかに苦労をした。
火葬が済んで建物を出、見上げた空はどこまでも青く澄んでいる。
天国というものがあるのであれば、母はそこへ行ったのだろう。
病のない国で、どうか幸せでありますように。
息子はそれなりに元気でやって行きます。
(所要時間:7分)
秋も深まり、大分肌寒くなった。
オレンジに染まった街並み木を見ながら通勤するのは好きだが、この寒さだけはいただけない。
そろそろ衣替えをしようか。
そんな考えが脳裏に浮かぶ。
風の温度に震えながら家につく。銀のドアノブもキンと冷えて、当然ながら家の中も冷たい空気が漂う。
これは明日はもっと寒くなるだろうな。今日のうちに済ませてしまわないと。
手を洗い、うがいをし、鞄を定位置に置く。いつものルーティーンをこなした後、早速取り掛かろうとクローゼットの奥にしまい込んでいた、プラスチックの衣装ケースを取り出す。
一年も経つと、好みも変わっているもので服を今年も着るものと、もう着ないだろうなと思う物に分けていく。
分別にも目処が立って来た頃、一つのカーディガンを見つけた。
あぁ、これは去年の秋の初めにミユキから貰ったプレゼントだ。肌触りが良く、かなり気に入っていたっけな。
ミユキとは、冬の終わりに別れてしまった。僕よりも好きな人が出来たと言われ、かなりショックを受けた。
カーディガンを贈ってくれた頃にはもう、その人に惹かれていたのだろうか?などと色々考え見る度に悲しくて、悲しくて、でも捨てられなくて奥にしまい込んだ苦い思い出の詰まった代物だ。しかし、最近はもうすっかり存在を忘れていた。
今はすんなりと思える。これはもう捨てても良いな。肌触りは相変わらず良いが、毛玉がいくつか出来ている。去年はシックな装いが好きだったが、今年の春はミユキと別れたショックから、気分を上げようと明るい服を選ぶようになり、いつしかそれが僕の好みになっていた。今の僕の服には、このカーディガンの色合いは合わないだろう。それに、僕には今新しい好きな人がいる。
僕の心は、疾うに衣替えをしていた様だ。
衣替え。秋がそろそろ終わって冬がくる。寒いのは嫌だね。
今くらいの気温がわりとベストだから冬なんてのはこの世から消え去ってもらいたいものだ。これ以上は寒すぎる。
それに冬はどうしても食べ過ぎちゃうんだよな。体がカロリーを欲するのがわかる。カロリーを熱量って言うのもうなずける。
今年の冬は暖房どうすっかな。年々寒さに弱くなってきたし今年はエアコンも買い換えた。ここは一つ暖房をつけるという手もある。
だけど暖房はやっぱ電気代がきちーわ。生活費だけで俺はもう破産しそうだよ。
ただ生きるだけで死ぬほど辛い。人生は格差がひどすぎますな。
そういや今日はジャンプの発売日だった。感想書こ。
最初に見たのは鵺だったか呪術だったか忘れた。まぁ鵺から書こか。
鵺の読み味はやっぱいいね。シリアスにギャグを入れるのはワンピースとかでもよく見る手法だけど鵺は天然というかゆるい感じがいい。
デフォルメキャラを多用してるからこのゆるさは意図的なものだろうけどきっちりしめるところはしめるし画力もある。いいまんがだ。
呪術はちょっと肩透かし食らったけどこれはこれでよかった。やっぱ呪術はキャラがいいよね。画力も圧倒的だし。なんだかんだ毎回面白くて次が気になる。
ままゆうはどうかな。ネットの人気はちょっと取り戻して来た気がするけど。ただ個人的にはバトルがいまいちのっぺりしてるというか迫力がないのが気になる。
ストーリーも際立って面白いわけじゃないからままゆうの今後が不安だ。でも期待してる。そんなまんが。
黒髪の少女が部屋の奥からやってきた。
「どうですか」
真っ赤なローブを着て、ひらりと回って見せる。
黒髪が踊り、深紅の滑らかな生地と相性がいい。不思議と見ていて収まりが良かった。
ここで「かわいい」とか「似合ってる」とかほんの一言でいいから気の効いた言葉を言えたら良かったのに。
「始めてみた服だ」
なんて言ったから。
彼女の顔がむっと不満げに膨れた。
「前にも見せました!」
「えっ。そうだっけか」
そんなのいちいち覚えておけないぞ。
「そうです!これを着たら前、秋らしくていいな、って言ってくださいました」
ああ。思い出した。この服。ファーが一部ついてて、中は起毛になってるから。抱き締めると細身の彼女がふわっとしてめちゃくちゃ気持ちいいんだった。
(感覚で覚えてるなんてオレは動物か…)
動物に失礼なことを思いながら、背を向けた彼女にそっと近づいて抱いてみた。
衣替え。
私は覚悟を決めようとしているとき。季節が変わろうとしている今、私の中にも変化が必要である。次の季節に引きずらないように、自ら変化する道を選ぶのである。
衣替え
夏から秋になり、朝晩の冷え込みも厳しくなってきた。そろそろ衣替えと思い、タンスから冬服を出すと、
「あれ?これしかないの?去年は何を着ていたんだろう」
と、考える。毎年のことだ。
こんな服もあった、こんな服もあったと出していくと、小さな胴のところに四つ、穴が開いたフリース。思わず笑ってしまう。
愛犬の散歩の時の服だ。衣替えをしている私の横で、いい子にお座りをしている。
「あーこの服、もう着られないね。一年でこんなに大きくなって。獣医の先生に太り過ぎと怒られるはずだ。」
小さな愛犬の服を、渡すとブンブンと振り回し遊び始める。お下がりをあげる子もいないから、好きにしなさい。
ふと思い、去年、この服を着ていた愛犬の写真をスマホで検索する。
「かわいい!」
愛犬の成長を喜ぶ、穏やかな日だった。
めんどくさいなあ
追記
昼に食べた豚カツの衣サクサクでした
『衣替え』
オレはカシオスを倒してペガサスの聖衣を手に入れた。それを纏って敵と戦ってきたんだが、少し前に不思議なことが起きた。
ある日いつものように聖衣を纏うと、聖衣の形が変わっていたんだ。
それまでは古代ローマの拳闘士のプロテクターのような、言ってしまえば無骨な感じがしたものだったのに、それとは全然違うものに変わっていた。
青味がかった銀色といった聖衣の色は、白を基調に赤を差し色にした華やかなものに変わった。全体の形も変わっていたけど、特に変わったのはマスクだ。以前はヘッドギアのような形状だったマスクが、ヘルメット型に変わった。それはペガサスの頭部を模したような形で正直嫌いではなかったけど、さすがに気味が悪いので魔鈴さんに聞いてみた。
魔鈴さんはオレの疑問を聞くと明らかに狼狽えた。この人が動揺する姿なんて初めて見たかもしれない。魔鈴さんはしばらく逡巡した後、「大人の事情」と答えた。
魔鈴さんがそんな煮え切らない答えを言うのも初めてだったので、オレは深く追及した。すると魔鈴さんは仕方無しにといった態度で、「アニメ化の影響」「おもちゃ屋の思惑」とか言って、「あんたもガキじゃないんだから受け入れな」と言ってきた。
そんな事言われても、オレには何のことだかさっぱり分からない。誰か、どういうことなのかオレに教えてくれよ!