秋も深まり、大分肌寒くなった。
オレンジに染まった街並み木を見ながら通勤するのは好きだが、この寒さだけはいただけない。
そろそろ衣替えをしようか。
そんな考えが脳裏に浮かぶ。
風の温度に震えながら家につく。銀のドアノブもキンと冷えて、当然ながら家の中も冷たい空気が漂う。
これは明日はもっと寒くなるだろうな。今日のうちに済ませてしまわないと。
手を洗い、うがいをし、鞄を定位置に置く。いつものルーティーンをこなした後、早速取り掛かろうとクローゼットの奥にしまい込んでいた、プラスチックの衣装ケースを取り出す。
一年も経つと、好みも変わっているもので服を今年も着るものと、もう着ないだろうなと思う物に分けていく。
分別にも目処が立って来た頃、一つのカーディガンを見つけた。
あぁ、これは去年の秋の初めにミユキから貰ったプレゼントだ。肌触りが良く、かなり気に入っていたっけな。
ミユキとは、冬の終わりに別れてしまった。僕よりも好きな人が出来たと言われ、かなりショックを受けた。
カーディガンを贈ってくれた頃にはもう、その人に惹かれていたのだろうか?などと色々考え見る度に悲しくて、悲しくて、でも捨てられなくて奥にしまい込んだ苦い思い出の詰まった代物だ。しかし、最近はもうすっかり存在を忘れていた。
今はすんなりと思える。これはもう捨てても良いな。肌触りは相変わらず良いが、毛玉がいくつか出来ている。去年はシックな装いが好きだったが、今年の春はミユキと別れたショックから、気分を上げようと明るい服を選ぶようになり、いつしかそれが僕の好みになっていた。今の僕の服には、このカーディガンの色合いは合わないだろう。それに、僕には今新しい好きな人がいる。
僕の心は、疾うに衣替えをしていた様だ。
10/23/2023, 1:11:41 AM