』の作文集

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』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど

6/12/2023, 9:19:44 PM

お題:街


白い地面
橙の街灯
紺色の空
頬が痛い
叩かれた様だ

キザな服装の男が一人
橋の上でタバコを吸っている
街灯に照らされて
はっきりと見える
大粒の雪

どこかの店の扉が開いて、また開いて
呼び鈴が鳴る
路地裏には切なさや寂しさが溜まっている
ここは、ある都会の夜の冬の街
騒がしい都会の冬の街

6/12/2023, 4:46:50 PM

「街」
街は正直苦手、、
うるさいし、人混みも多いし、車もいっぱいはしってるし。
歩くだけで疲れる。
でも街は色んな人が出逢う場所でもある。
色んな事が起こる場所。
街は全てを繋いでいる場所の一部なのかもしれない

6/12/2023, 9:54:12 AM

「たまには、のんびり散歩しない」
よく晴れた休日。キミからの提案に乗り、歩いて街に出る。
「あ、こんなところに花が咲いてる」
「ホントだ。気付かなかったな」
毎日通る道。けど、いつもは車で今日は徒歩。のんびり歩くことで、小さなことにも気付ける。
「のんびり歩くのも、いいもんだな」
「でしょ。カフェで飲み物買って、公園行こうよ」
「公園か。子どもの頃以来、行ってないな」
「そうなの?なら、早く行こ」
キミは俺の手を取り、引っ張る。
「わかったわかった」
二人で笑いながらカフェへと向かう。きっとこの先、街の風景は様々に変わるだろう。でもその変化をキミと楽しめたらいいな。と俺は思うのだった。

6/12/2023, 9:48:14 AM

電車から見る街並みは、いつも変わらないけれど変化している。

6/12/2023, 9:35:56 AM

山にある神社の鳥居まで階段を登ると、眼下には住んでいる町並みが見える。

いつも行っている本屋やスポーツショップがジオラマのように小さい。
遠くにたまに出かけるショッピングセンターのピンクの看板が見える。

「おれ、ここに住んでるんだなぁ」

歩いている時は周りが大きく見えて、"自分"を感じることが出来るが、一度視点を変えてみると、ただ街(せかい)の一部でしかないことを知った。

それでも嫌な気分ではなくて、その小さな一部が合わさってこの景色が出来ているのだと思うと、自分もその景色を構築しているのだとどこか誇らしくも感じた。

遠くの高速道路に小さな車が走っていくのが見える。
もうすぐ6時。きっとあの中のどれかに父が乗っている車がある。

「父ちゃんが帰ってくる前に風呂沸かしとこ!」

階段に腰掛けていた尻の砂をはたき、元気よく階段を駆け下りた。

/『街』




「優しくて、面白くて、包容力があって、
私のこと好きでいてくれる。

家事もできて、掃除もマメだし、料理も上手なの。
でも神経質って感じじゃなくて、やり方とか押し付けないの。

私のこと大好きで、
離れたくないって言ってるけど束縛はしなくて、
私のこともほどほどに放置してくれて、
でも私が誰かとごはん行ったりすると嫉妬したりして、
でも束縛はしないの。そこまではないの。

それでね、家に帰ったらぎゅーってハグしてくれるの。
夜だって優しいよ。

それでね、それでね――――」

「まだ続くの?」

好きな人の相談をされた私は、げんなりとして言った。

「執事雇うか、アンドロイドでも作れば?」


/5/20『理想のあなた』

それは好きな人ではなく、好きなタイプの話でしょう?

6/12/2023, 9:35:53 AM

【街】

 ルドルフにとって、外に出るのは三百年ぶりのことだった。誇張ではない。彼がハンターとの戦いに敗れてから、実際にそれだけの年月が経過していた。自分を封じていた忌々しい結界が消えたので、体を黒い霧に変えて、棺桶の隙間からようやく外に這い出ることができたのだ。
 教会裏の墓地に封じられ、体を締め付ける結界の力に歯を食いしばり、正確な体内時計で月日を数える時間だけを過ごしていた。自分を封じたハンターへ復讐しようにも、とっくに骨になっているだろう。もう、どうでもよかった。長年の封印で、身体も精神も疲弊していた。今はとにかく、女の血を吸いたい。なるべく若い女の血だ。それさえあれば、元の力と人型を取り戻せる。憎いハンターどものことを考えるのは、そのあとだ。
 外は薄曇りの真昼だった。弱い吸血鬼ならここで灰になっているだろう。しかし、太陽光はルドルフの敵ではない。ルドルフはもともと昼間の活動を好む吸血鬼だ。いくら夜目が利く吸血鬼であっても、人間と同じく、光があるほうが獲物を探しやすい。それに、明るい時間帯なら、獲物も油断している。
 ルドルフは光のもとで、三百年ぶりの教会をまじまじと眺めた。墓地を有する大きな教会は、変わらぬ忌々しい威風を保って――いなかった。瓦礫の山になっていた。なにがあったかはわからないが、おかげで封印が解けたということはわかる。
(人にとってはなんらかの悲劇だろうが、俺にとっては僥倖だな)
 瓦礫を横目に教会の敷地から抜け出て、ルドルフは目をみはった。街はすっかり様変わりしていた。教会前の広場は、三百年前に戦ったときと比べて狭くなっている。広場を囲っていた石造りの建物が、瓦礫になって広場になだれ込んでいるからだ。三百年のあいだに街が廃墟化したのかと思いきや、人はたくさんいる。埃と血にまみれた男たちが、大声を上げながら、懸命に瓦礫を取り除いている。
(本当になにがあったんだ? 地震か? そんな揺れは感じなかったが……)
 火事も起きたのだろうか、広場を覆う焦げ臭さに、顔をしかめる。いろんな人間の血の匂いも、混ざり合って漂っている。これでは、目当ての獲物――若い女を見つけにくい。なのに、血の匂いのせいでひどく腹が減るばかりだ。
(ええい、このさい男でもいい。とにかく一滴でも血を……)
 目眩を覚えながらもふらふらと血の匂いにつられて、一人の人間に歩み寄る。地面に横たわって呻いている若い男だ。傷口に巻かれた布が、茶色い血に染まっている。
「おい、野犬に狙われてるぞ! 気をつけろ!」
「追い払え!」
 周囲から瓦礫の石が飛んできた。ルドルフは慌ててよけた。今の状態で大きな傷を受けたら、治癒できずにそのまま死にかねない。
(男たちは気が立っている。女たちは泣いてばかりだ。いったいなにがあったかは知らないが、ここは危険だ。獲物を漁るのはべつの場所にしたほうがいいな)
 男たちの怒号を背に、広場から走り去る。
(人型であれば、こんな状況でも女の一人や二人、たやすく誘惑できるものを……!)
 小型の狼にしか化けられない現状が歯がゆい。この姿で誘えるのは、せいぜい子供ぐらいだ。しかし、街の子供は泣いてばかりで、ルドルフには目もくれない。
 ルドルフが駆け抜けた大通り沿いの街は、さらに様変わりしていた。瓦礫になっているのは教会付近の一角だけで、広場からちょっと離れれば普通の街なのだが、見慣れた石造りの建物よりも、見慣れぬ建材でできた建物が多い。大通りも、石畳ではなく真っ平らな灰色になっている。道のところどころに、大きな金属の箱のようなものが置かれている。四つの車輪がついているから、現在はこれが馬車の代わりなのだろう。走っている金属の馬車も見かけた。金属の尻から、馬糞の代わりにへんな匂いをまき散らしている。
(あれこれ匂いがきつくて、気に食わぬ街になってしまったな。腹を満たしたらさっさと出よう)
 三百年前は、この街を気に入って十年近く滞在していた。不老の見た目ゆえ同じ街に長居できぬ吸血鬼には、珍しいことだった。しかし、こうも街の雰囲気が変わっていては、以前のように気に入ることはできない。次の食事が、この街最後の食事になるだろう。
 一通り走ったところで、足がぴたりと止まった。鼻が気づいたのだ。その匂いに。街全体を覆う焦げ臭さの中に、かすかな甘みが混ざっている。今のルドルフが渇望してやまぬもの――狼の尾が、歓喜に激しく揺れた。
(若い女が血を流している!)
 獲物はすぐ近くにいる。ルドルフの足はふらふらとその方向へ誘われていく。
(なんという甘美な香り……これは極上の血に違いない!)
 牙の隙間から涎が溢れ出そうだった。
 果たしてその女は、人気のない路地にいた。まるでルドルフのほうが誘い込まれたかのようだ。女は左腕を押さえて路地に座り込み、ぐったりと壁に背を預けている。美しく、若い女だ。しかも、上半身は袖や襟のない薄着。血を吸うのにおあつらえ向きだ。いや、わざわざ首や手首に牙を立てて吸う必要はない。舐めるだけで充分。左腕を抑えている指の隙間から、赤い雫が垂れているのが見える。ルドルフの目に、それはなによりも美しく輝く宝石として映った。
(ああ、そういえば、この街で最初に食事した路地裏も、このあたりだったか。三百年間、よくぞ残っていてくれたものだ)
 くねる細い石畳に懐古の念を覚えつつ、ルドルフは恍惚として地を蹴った。大きく開いた口は、まっすぐ、女の左腕を目指す。
 しかし、飛びかかった先にはなにもなかった。着地してはっと気づくと、女がすこし離れた地面に転がっていた。体をひねって避けざまになにかを投げたような姿勢だ。その手から鎖が伸びている。鎖の先は、ルドルフの首輪に繋がっていた。
(首輪!? いつの間に……!)
「捕まえたぞ、吸血鬼ルドルフ」
 じゃらり、と鎖を引っ張って、女が不敵に笑った。


「今朝のミサイルで教会が崩れたからな。おまえのことだ、三百年程度では消滅せず、きっと這い出してくると思っていたよ」
「誰だ、あんた……」
 ルドルフは女を睨み、喉奥で唸った。気の強そうな吊り目も、彫りの深い鼻筋も、やや厚みのある唇も、なにもかもがルドルフ好みの若い女だ。だが、記憶にない顔だ。そもそも三百年も封じられていたのだ、人間の知り合いなどいるわけがない。なのに、女はルドルフのことを知っていて、自らを囮にして罠を仕掛けてきた。
「私のことはノーラと呼んでくれ。私の家に、おまえを封じた記録が伝わっていてな。つまり、おまえの憎き仇の子孫というわけだ」
 ルドルフの全身の毛が逆立つ。
「あんたもハンターか!」
 噛みついてやろうと口を開けるも、首輪がきゅっと締まって痛みが走る。
(くそっ! これじゃ結界の中にいるのと同じじゃないか!)
 せっかく三百年の棺桶牢獄から抜け出せたのに、一滴の血も吸えぬまま罠に掛かって女のハンターに首輪で捕らえられるとは、なんという失態、なんという屈辱。しかも、目の前で血のお預けを食らっているこの状況。理性をかなぐり捨て、ありとあらゆる言葉で女を罵りそうになる。
「吸血鬼ハンターなんて今どき食っていけないよ。私は街の警備兵だ。まあ、街を荒らす吸血鬼を成り行きで狩ることもあるがね」
 首輪を外そうともがくルドルフを見下ろし、ノーラが満足げに笑う。
「私の先祖はおまえのことをだいぶ気に入っていたようでな。記録が詳細に残っている。おかげで、弱っているときは狼の姿になることもわかっていた。その封印の首輪は、先祖がいざというときのために用意していたものだ」
「くそっ! わざわざ結界に封じたりこんなふうに捕まえたりするぐらいなら、いっそひと思いに殺せばいいだろう!」
「先祖のハンターが殺せなかったおまえを、私が殺せるわけないね」
 なにを思ったか、ノーラは鎖でルドルフを引き寄せると、狼の身体を抱きしめた。獲物の甘い匂いが狼の鼻をくすぐり、ルドルフにないはずの鼓動が、大きく跳ねる。グルルル、と意図せぬ唸り声が涎とともに漏れた。
「おまえは強い吸血鬼だ。少量の血で動ける。だから人を殺すほど吸ったことはないのだろう? 誰かを吸血鬼にしたことすらない。吸ったあとの記憶操作のケアも万全。その点では、蚊よりも大人しい生き物だな」
「誇り高い吸血鬼を蚊と並べることが、どれほどの侮辱か知ってるか……?」
 怒りのためか、飢えにもがいていたルドルフの頭がすっと落ち着いてきた。
「おまえが蚊ほども人を殺していないから、祖先はおまえを殺さず、封印だけに留めた。ほかのハンターからおまえを守るためでもあったようだが、それはそれで、誇り高い吸血鬼には地獄だったろうな」
「まったくだ。ただ吸血鬼だというだけで、どうしてあんな苦しみの中に封印されなくちゃいけないんだ? それに、自分の身ぐらい、自分で守れる。あんたの街からも出ていく。無害というなら、放っておいてくれ」
「そうしたいのはやまやまだが、吸血鬼の存在は人の恐怖心を生む。完全に無害というわけにもいかなくてな。野放しにはできんのだ」
「つまり、首輪をつけて飼われろと?」
 ノーラの手がルドルフの顎を撫で上げた。
「私の飼い犬は嫌か? 三食昼寝散歩付きだぞ。……いや、さすがに三食は無理だな、一日一食までだ」
「十日に一食で充分だ。だが、あんたのことは気に食わない。交渉は決裂だ」
「そうか、また墓に戻すしかないな」
「ふざけるな!」
 ルドルフは唸った。が、筋肉質のノーラにがっしりと身体を押さえられていては、暴れることもできない。
(また棺桶に戻るのは嫌だ! なんとかして助かる方法はないのか!?)
「ところでおまえ、その姿なら鼻が利くのだろう? 人助けをしないか? 対価に解放と、私の血をくれてやる」


 この女の血が対価、そう聞いて思わず尾を振ってしまった己が腹立たしい。女に首輪を掛けられ、鎖を握られ、四つ足で瓦礫の隙間に鼻をつっこむのは、かなり屈辱的な状況だ。黒い霧になってしまえば首輪から抜け出せるのに、首輪の力のせいで霧に変化することすらできない。
 ノーラの言う「人助け」とは、瓦礫に生き埋めになっている人間を見つけろ、ということだった。狼型なら鼻が利くと思われているようだ。確かに人より鼻は利くが、それは獲物となる若い女を見つけるためのもの。男の匂いなど知ったことではない。しかし、それを告げると血をもらえなくなりそうなので、大人しく従ったふりをしている。
(俺がまだ人を殺したことがないと見くびっているようだが、この女だけは思うままに血を吸い尽くしてやるからな、覚えてろよ……!)
 ルドルフが連れてこられたのは、教会前の広場とは違う地区だった。ここもいくつかの建物が崩れ、焦げ臭い匂いや焼けた血の匂いを漂わせている。瓦礫にすがって泣く女や男、子供を抱えて途方に暮れた様子の女、どうにか瓦礫をどかそうと奮闘する男たちがいる。
「この街でなにがあったんだ?」
「戦争だ。たまにミサイルが飛んでくる。そろそろ次の攻撃があるかもしれないな」
 ミサイルとやらがどういうものなのかルドルフにはよくわからなかったが、周囲の惨状を見れば、破壊力の高いものだということはわかる。できるだけ多くの人を殺すために作られた、戦争用の武器に違いない。
(愚かな……。三百年経っても人間は戦争を続けているのか。そしてこの街は、そんなものに蹂躙されているのか)
「逃げないのか?」
「逃げたいのはやまやまだが、私は街を守る警備兵だからな。住民を放って逃げるほど無責任じゃないさ」
「それじゃあ、次に埋もれるのはあんたかもしれないな」
「そのときはおまえが見つけてくれるのだろう? 私の血は、おまえが白目を向いて狂うほどにいい香りらしいからな」
「…………。おい、いたぞ」
 ルドルフはノーラを無視して吠えた。鼻を突っ込んだ先に、無視できない匂いを感じとったからだ。
「女、それも子供だな。隙間に挟まっているようだ」
「でかした! みんなこっちだ! 集まれ!」


「おまえのおかげで三人の子供が助かった。礼を言う」
 日はすっかり暮れていた。最初に出会った路地裏に引っ込み、ノーラが笑顔を見せた。吸血鬼の夜目でなければ見られない、華やかな笑みだった。
「約束通り、解放して、血を吸わせてくれるんだろうな」
 ルドルフの尾はさきほどからちぎれんばかりに激しく揺れている。
「本音を言えばもうすこし働いてほしいところだが、腹が減っては戦はできぬ、と言うしな」
 ノーラは左腕に巻いていた包帯を解いた。
「あっ、もう血が止まっているか……。少し待て、もう一度傷をつける」
 ノーラが腰からナイフを引き抜いた、そのときだった。
 空を鳴らす奇怪な音。
「伏せろ!」
 ノーラが叫び、ルドルフの頭を抱えて、地面に倒れ伏す。
 周囲の悲鳴。それをかき消す轟音。また悲鳴。なにかが焼ける匂い。そして、甘美な血の――
 ルドルフが目を開けたとき、周囲は夜よりも暗かった。
「重い」
 ルドルフは呻いた。首から上をノーラの腕に押さえつけられていて、頭を左右に動かすこともできない。呼吸を持つ生き物だったら、窒息死しそうな状態だ。
「……ルドルフ、おまえ、予言の力があるのか?」
 くぐもったノーラの声。
「あるわけないだろ!」
 ノーラが本当に瓦礫に埋まるとは思っていなかったし、自分まで埋まるとは思っていなかった。頭をノーラに庇われたおかげで、腰から下が瓦礫に潰されただけで済んでいる。痛みはとっさに遮断した。
 首を動かせないので隣を伺うことはできないが、ノーラもきっと潰されているのだろう。瓦礫の先端が体のどこかに刺さっているのかもしれない。甘い血の匂いに、目眩がする――
 視界がくらりと回りそうになったところへ、鼻先にぴちゃりと温かいものが触れた。
 鼻腔を満たす、極上の香り。
「ちょうど、よかったな。舐めるぐらいなら、首輪も、締まらないはずだ……」
 言われるまでもなかった。ノーラの声などもはや耳に入っていない。ルドルフは狼の舌を伸ばし、夢中で鼻先の雫を舐めとっていた。
 甘美な目眩が体内を駆け巡る。毛がざわりと逆立つ。全身が歓喜にうち震えている。これだ、これが欲しかった。三百年、ずっと渇いていた。これっぽっちでは渇きは癒やせない。もっと欲しい。次の雫をがむしゃらに舐める。もっとだ、もっと必要だ。狼の喉元で、首輪が灰になって崩れ落ちる。ルドルフの体は黒い霧となり、瓦礫の隙間から抜け出した。霧はすぐに人型になった。古代風の長衣を身に着けた、金髪緑眼の若い男だ。男は瓦礫に手を掛けると、自分よりも大きな石の塊を次々と放り投げた。
 ルドルフは埋もれていたノーラをあっという間に掘り起こした。うつ伏せで倒れているノーラは、右手にナイフを握りしめていた。左腕には、ナイフで抉られた傷があった。瓦礫に埋もれる直前、咄嗟に傷をつけたのだろう。狼の鼻先に落ちた血の正体はこれだったのだ。――ああ、あの雫をまだまだたくさん飲める! ルドルフは血が溢れる傷口にしゃぶりついた。ノーラが痛みに呻くのもかまわず、啜り続ける。
「吸血鬼は、怪力と聞いていたが……すごいな……。狼より、そっちになってもらったほうが、人助けも、捗ったか……」
 腰から下が潰れ、うつ伏せで起き上がれぬまま血を吸われているにもかかわらず、ノーラが笑った。
「私はもう、助からない。血をすべて飲んでも、おまえが殺したことには、ならない、はずだ。存分に、吸ってくれ……」
「あんた、もう喋るな」
 ルドルフがようやく顔を上げた。口の回りについた血を、乱暴に袖で拭う。そして、ノーラを仰向けに抱え上げた。ノーラがさらなる痛みに呻く。
「……最後、ぐらい、ノーラって、呼べ……」
 ルドルフはその要望を無視した。
 ノーラの首筋に牙を立てる。血を吸うためではなかった。牙の管を通して、自分の血を送り込むためだ。
「あんたを生かしてやる。俺の血を取りこんでから十年、光の射さない場所で眠り続ければ、あんたは吸血鬼として目覚める」
 ノーラが大きく顔を歪めた。
「や、めろ……。血を、吸い尽くされた、ほうが、マシ、だ……」
「あんたは俺を封じた憎いハンターの子孫だ。俺に首輪を掛けたから、あんた自身も憎い。これは復讐だ。あんたに首輪を掛け返してやる」
 今が夜というのが悔しかった。老若男女を夢中にさせる繊細な美貌を、この女に見せつけてやりたかったのに。光の中で自分の顔を見た女の反応を、楽しみたかったのに。
 ノーラはいつの間にかぐったりと目を閉じて、深く長い眠りに落ちていた。
 ルドルフはノーラの額にそっと唇を付けた。
「十年後、この街に戻ってくる。そのとき、あんたは俺の眷属だ」


 大きな満月の深夜、とある街の古い墓地で、若く美しい男が一人、土まみれになってせっせと墓を暴いていた。
 掘り出した大きな棺桶の蓋をずらすと、月明かりが中に眠る者の肌を照らした。死体とは思えぬほどに美しい女だった。
 男の手がそっと女の額を撫でた。それが合図だったかのように、女が目を開けた。
「おはよう、ノーラ」
「街はどうなっている?」
「……第一声がそれか。戦争は終わらせておいた。街もどんどん復興している。一応、議員になって復興委員会に潜り込んだが、俺の出る幕がないぐらい、人間の力もたいしたものだな」
「そうか。なんだかわからんが、街がまだあるならよかった」
 男に抱き起こされ、女は月明かりの下で華やかな笑みを見せた。
「ルドルフ、狼のほうが私好みだ」
「ふざけるな。あんたの前では二度と狼にならないからな」


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「街」……? お題とはややズレましたが、ひとつの街への執着みたいなものをお話にしました。時間がギリギリ……!

6/12/2023, 9:30:52 AM

街は今日も、絶え間なく動き続ける。僕の目の前を。僕の知らないところでも。動き続ける人々の顔は様々だ。無精髭を生やして、猫背のまま、ビルのなかに入っていく人たち。明るい表情を浮かべながら、道の上を歩く学生達。動き方も、動く回数もバラバラだが、彼らは動き続けている。そして、彼らは色々なものを動かしてもいるのだ。 そして、今日も僕だけが昨日と同じ場所で足踏みを続けていた。

6/12/2023, 9:21:20 AM

見慣れた商店街の路地裏の向こうには、色のない黒い街がある。住人は皆影、影、影……顔の見えない人ばかり。窓辺の看板猫すらも、本当に黒猫なのかは知らない。空はいつも夜みたいに真っ暗。時計はあるけど朝はない。ポツポツと灯る街頭の明かりを辿りながら、横目で小さなお店の並びを眺める。ショーウインドーの小さなランプに照らされて、不思議なアンティークの小物が光っている。ここの人たちは、とても優しい。声も言葉も無いけれど、なんとなく、動作の一つ一つが温かい。彼らが営むこの街が、とても愛おしい。今は心の穴を埋めるために時折訪ねてくるだけだけど、近いうちに、私もここに住むことにしようかしら。
はたと足を止めて振り向いた先、目についたお気に入りの喫茶店のメニューボードに、見慣れない名前があった。ざっくり見るとスイーツらしい。
「あ!新作出したんだ!」
私は心が踊るまま、いつもより軽い足取りで店のドアを潜った。カランカランとなるベルの音を、影の行き交う石の道が静かに聞いていた。

「黒い街」Ⅰ

6/12/2023, 9:18:15 AM

【街】

私はこの街が嫌いだ

生まれも育ちも嫁ぎ先も同じこの街
誰かがくしゃみをすると、直ぐに伝わるような狭い街
土地が狭いのではなくて住む人の心が狭いようなこの街

見えない視線があったり、さりげなく干渉されたり…
親睦という名で行事に参加させられて、拒否すれば影で悪口言われそうなこの街

結束が良い?
そんなのは表面だけ。
地区のボスが何か言えば誰も反対できないから、黙って従っているだけ。

田舎だから仕方がないと言えばそれまでだが、そんな街で生き生きと暮らせるのはどんな人だろうかと思う。

だから私は子どもに
この街を出て良いと、好きなところでやりたい仕事をすれば良いと話してきた。

確かに都会は隣の人の名前も顔も知らないかもしれない。
孤独な人にとっては本当に孤独かもしれない。
でも顔を知っている人、名前を知っている人、会えば話す人がたくさんいたとしても
孤独を感じないとは言えない。

仲間がいたとしても心が通じない人ばかりだとすれば、そこは孤独なところなのだから。

他の街に行っても孤独はあるだろう。
この街を出てどこかで住んだとしても、その街も好きになれるとは限らない…

とはいっても、やっぱり
私はこの街が嫌いだ。
でもたぶん私は嫌いなこの街で老いて死んでいくのだろう。

6/12/2023, 9:10:10 AM


私の望んでいない街
みんな泣いてる街

でも、好きだよ

6/12/2023, 9:07:49 AM

~街~

今は小さな集落ですが
ここは大きな街だったのですよ
この教会がその名残です

56文字の黒の史書

6/12/2023, 9:04:57 AM

君が許してくれるなら
昼食を作ろう


台所はきっとぐちゃぐちゃ
謎の液が飛び散ってるかも


君は怒って 料理の味を褒めたあと
大きなため息を吐いて
掃除を手伝ってくれる


そのタイミングで
大声で叫ぶ曲をかける

2人でシャウトして
掃除しまくったら
終わる頃には
君はスッキリとした顔をしてるはずさ



夕食にはピザを頼もう
君の好きなワインを付けるから


僕の腕の中 ほんの少しうたた寝どうだい



16

6/12/2023, 8:59:41 AM

ベランダから畑がみえる
少し先には小さな林が集まって鬱蒼としている
野焼きの煙臭さ、草を刈った後の青々とした匂い
季節が移り変わるたびに聴こえてくる虫の声

高い建物なんて一つもない、広い広い空

街灯が点滅する薄暗い夜道

ベンチが2つあるだけの公園

嫌で嫌で仕方なかったのに
ありふれた情景が心に焼き付いて離れない

この街には、思い出が多すぎる

6/12/2023, 8:58:55 AM

身軽に
気楽に
街から街へ
日々飛び越えて暮らせたらどんなに楽しいだろう

しがらみなんていらない

自由な部屋と
自由なわたし


♯街

6/12/2023, 8:48:49 AM

10000000➖1➕1‥

僕が知らない間にも

出会いと別れが繰り返される

街でたまたま見かけたあの人にも同じように

電柱、学校、お店

今日も何も変わらないようにみえ、

その人、その人にドラマがある

100000000➖1‥

統計上では、無味乾燥

でも、どうして僕はこうも悲しいのだろう

6/12/2023, 8:44:33 AM

いつからか、人の流れに逆らうことが苦痛になった
街に溶け込む自分は色を喪い
モノクロの河で彷徨っている

(街)

6/12/2023, 8:29:08 AM


あいつと出会った街
いい思い出のない街
あいつに話しかけられた学校
いつもより憂鬱な学校
あいつと仲良くなった昼休み
心が明るくなった昼休み
あいつと遊びに行ったゲーセン
話が膨らんだゲーセン

いつもの朝
珍しくあいつのいない朝
先生の顔
いつもとは違う暗い顔
ざわつく胸
いつもと違う
あいつとの別れを知らされた朝の会
呆然とした
話が頭に入ってこない朝の会
大嫌いな朝の会

帰り道
あいつのいない帰り道
重い足取り

あいつのいない道
ひとりぼっちの道

あいつのいない街
物足りない街

歪む視界
ほおを伝う
あいつと出会った街

思い出したくない街

6/12/2023, 8:15:50 AM

街は呼吸する

早朝の新聞配達の音のように

街は呼吸する

朝 パンの焼ける香りや

お味噌汁の香りを吸い込んで

街は呼吸する

お昼のチャイムに耳を傾けて

街は呼吸する

夕方 赤く焼ける商店街で

明かりの灯る住宅街で

街は呼吸する

夜中 私達の寝息とともに


街もわたしも静かに眠る

また明日 新聞配達の音から

呼吸がはじまる

6/12/2023, 8:14:23 AM

仕事帰り
金曜日
相手の会社前の公園のベンチ
駆け寄ってくる
待ってないと伝える
手を握ってくる
冷たさにびっくりされる
今日は少し寄り道してから帰ろう
この前近くに良さそうなカフェを見つけたんだ
ぐいぐいと手を引っ張る相手に連れられてカフェに着く
ドアを開ける
ふわりと広がる花のような甘い香り
若い定員さんが1人
他にお客さんはいない
カウンターに通される
ハーブティ専門店らしい
オススメは今日のブレンド
ペパーミントとレモンバーム
相手はそれにする
僕はスースーするのが苦手
では貴方だけのブレンドティーを作りましょう
普段からハーブティは飲みますか?
数えられるぐらいしか飲んだことないです
ではくせが少ないものにしますね
アレルギーはありますか?
えーっと、猫アレルギーです
ふふっ、飲食物のアレルギーはありませんか?
あ、はい ありません
隣で笑いを堪えてる
ちょっと間違えただけじゃないか 不貞腐れる
コホン 失礼しました。では最後に味の好みはありますか?
甘いものが好きです
分かりました。ではご用意しますね
定員さんがいくつかのガラス瓶を取り出しポットに入れていく
お湯を注いで砂時計をひっくり返す
棚に飾ってあった可愛らしいカップが目の前に置かれる
僕の前には小さな白い入れ物も置かれた
ハチミツです。お好みで使ってください。
相手の前にはお皿に乗せられた輪切りのレモン
そのままでもスッキリしてて美味しいのですが、レモンを入れても爽やかで更に美味しいですよ
相手が砂時計の砂が落ち切るのを今か今かと隣でソワソワしてる
砂が落ちきってカップに注がれた
まずはハチミツを入れずにのむ
ほのかに甘い、リンゴのような花のような味に思わず頬が緩む
カモミールティーです。安眠効果もあって、夜に飲むのにピッタリですよ
定員さんの話を聞きながら隣を見る、ニコニコと嬉しそうに飲んでいて可愛い
ねぇ、1口交換しようよ!
いいね そうしよう
スースーするかと思ったが、レモンの香りが爽やかで飲みやすかった
こっちもすっきりしてて美味しいね
相手に笑いかけた
うん!これも甘くてほっこりする
楽しそうに笑う相手からカップを受け取る
せっかくなのでハチミツを入れてみる
甘い、とろりとした甘さが口に広がる
美味しいれ ふわぁ〜
話してる途中であくびが出てしまった
隣からクスクスと笑い声が聞こえる
眠いんだね、もう少しゆっくりするつもりだったけど早く帰ろうか
《一回消して書き直そうと思いましたが、せっかく書いてたのを消したくなかったので下線から新しく書き直します》
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これはとある街で過ごす2人のお話


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【街】

6/12/2023, 7:59:32 AM

ふわりとカーテンが波打った。
 めくれたその裾を左に退ければその街が一望できる。高台に位置するマンションの上階。彼はそこから運ばれてくる風に鼻を埋めてすぅーっと肺に満たしてみた。
 なんてことない環境のにおい。

 神がきっと外界のにおいを知らないのと同じく、彼も思い出せるほど――――思い出すための脳の引き出しにもにおいは入っていないのかも知れない。

 演算で動いているような小さなひと陰たちが忙しなく右往左往しているのを見下ろしながら、彼は目をきょろきょろと物珍しく動かす。

 車の往来。
 信号機がすべて赤になる瞬間。
 家から出てきたひとの服装。
 ベランダで時間を満喫するひとの動き。

 「あ」

 横目に見ていたモニターが見知った玄関を映し出す。
 彼は窓をきっちりと閉めて、廊下をぱたぱたと小走り。ダイニングに顔を出せば、彼の兄がポリエステルから日用生活品を次々とダイニングテーブルに並べていた。

 「あのね、おかえり」
 「えぇ、戻りました。何もありませんでしたね」
 「あのね、ぼくはね。けど、きみってば同じの二個買ってる」
 「え」

 手を止めた兄が見れば、だめになったお玉のかわりがふたつ。別の店で同じ用途のものを買ってしまったらしい。
 苦虫を奥歯で噛んだ彼は「ま、まあ、予備ですよ」と声を絞り出した。

 「ほんと、すっごいうかつでまぬけ」
 「ぐぅ……」

 そうして項垂れる兄だが、慣れているのか表面上はすぐに立ち直ってみせた。

 「あのね、お店をハシゴするから忘れるんだよ」
 「安いものは安いところで買ったほうがいいんです」
 「あのね、お野菜、赤い看板のとこじゃなくて紫のところのほうが今日は安いんだよ」
 「え」
 「ここの歯ブラシ磨きにくい。きみにも合わない」
 「……」
 「あとね、このカバン持ち手引きちぎれなくてよかったね」
 「うぅ……何なんですか…もう」
 「付け焼き刃ね、あのね、よくない」
 「……っ」

 今度はぐうの音も出ない。口をへの字に曲げて悔しがる兄に近寄ると、弟はすん、と鼻を動かした。わずかに寄せられた眉。それに気づいた兄が何です、と訊く。
 
 「たばこのにおいする」
 「あまり嗅いではいけませんよ」
 「あとね、甘い、ん……けほっ、こんっこんっ」
 「香水ですね。苦手なくせに嗅いで」
 「とんこつ背脂」
 「ラーメン店がいくつかありましたね」
 「あのね、排気口からラーメンのにおいするってほんと?」
 「まあ、そうですね。じゃなかったらどこからにおいがするのか、となります」
 「あのね、出入り口の開閉でねにおい外に出る」
 「……」

 すべて出し終わった購入品。兄がもう、もくもくと俯いてポリエステルのバッグを畳んでゆく。
 そこでふと、彼が顔を上げた。

 「羨ましがるならお前も外に出ればいいんです」
 「…ふぅん」
 「……何です、その顔」
 「あのね、別にぼくが行かなくてもきみが行けばぜんぶ解決する」
 「どういう」
 「これ」

 弟が指差したのは兄のシャツのエンブレム。とん、と指で弾けば硬い音がした。
 小型カメラ、と弟の唇が動く。

 「は」
 「気づかなかったの」
 「装飾とばかり」
 「この前着たときこんなのなかったでしょ。うかつでまぬけ」
 「私にプライバシーもお前にデリカシーもないなんて……」
 「きみが言うとね、わらえるね」

 そう大して表情を変えずに言う弟は、バス停前のきみの行きつけでモーニング食べたいね、と今度はくすりと笑う。
 兄が一瞬ぽかんとして、すぐに小型カメラのエンブレムを触った。

 「お前っ、いつから私の身の回りにカメラを…!」
 「ね、ぼくけっこう、この街のこと知ってる」
 「ず、随分前からですか⁉」
 「んふ。だから、きみが外でにおいをつけて来ればぜんぶね、分かっちゃうんだよ」

 だからぼくはお家でおとなしくしてるね。
 弟はもう一度スマイルを見せ、自分の好きな駄菓子だけを手に取って部屋に戻ってゆく。

 さっそくひとつ開けた駄菓子を口に含み、モニターの電源を落としてカーテンも閉め切って。




#街

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