『街へ』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
出掛けよう、あの場所へ
君と回った、色んな店へ
君と揃って笑いあった、噴水へ
沢山の思い出が詰まった、展望台へ
そして、それが終わったら
君と過した記憶を、辿る旅へ
---二作目---
寒い冬の外に足を伸ばして
君の待つ街の広場へ
幸せな思い出を、今日も作りに行く為に
#街へ
195作目
『ねぇ!この街に行こうよ!』
「えっ...なっなんで...」
『なんでって言われてもなぁ〜』
『僕が行きたいから?かな〜』
「やめろ...」
『ん?』
「行くなよ...」
『それってどういう...どうかしたの?』
「やっぱり、お前には見えないんだろ」
「あの街の姿が...帰ってきてよ...」
『えっ?ぼっ僕はここに居......』
街へ、今日も街へ。
教会に行くために街へ。
グラウンドを跨ぎ、街と名の着いていた場所へ。
荘厳なる御堂。豪奢なステンドグラス。白いイエス様の像。十字架。オルガンには、広げられたままの楽譜。朽ち果てた回廊、螺旋階段。
シトリは、この教会で祈るのが好きだった。
それは、神様の不在を物語っていたからだ。
神様がいない感じがするのが、好きだった。
十年前、戦争が起こった。
結局、この国は負けた。
そんな戦争の後の廃屋には、瓦礫の下の死体ぐらいしか祈る者もなく、その死体も白骨化してもう影もまばらだ。
彼は、神父であった人、逃げ惑う人々を匿い、そこにミサイルが落ちた。
ミサイルは、住人ごと、教会を半壊させた。
消えていく命と、親子の叫び。
それから……。
そこまで夢想して、シトリはなにか考えあぐねたように空を見た。
神父様、なぜ神に祈らなかったんです?
どうして、それを信じられなかったんです?
シトリは無神論者だ。
けれど、神様が共にある人の事は分かる。
霊魂の声がした。
「私は、結局私を信じられなかったのだ」
と。
田舎町に生まれた僕は。
都会の喧騒を夢見て暮らしていた。
テレビや映画で見るキラキラした世界。
いつか住むんだと思いながら生きてきた。
そして、この春ついに憧れの街へと向かう。
なのに、車窓に映るこの街を見ると寂しさが押し寄せてくる。
こんな気持ちになるなんて思いもしなかった。
もっと大きくなって帰るから。今、次の街へ。
私がいない街は、それでも普通に続いていく。
ただ、君が月命日に私の骨を撒いた海を訪れるのが気がかりだ。
忘れなよ。こんな、ろくでなしのことは。
忘れないで。一生引きずってほしい。
置いてかれるよりは、置いてく方がずっといいや。
街。外の世界。
そこはピカピカと照明が輝く夜かもしれない。
そこは真っ白な雪景色かもしれない。
はたまた太陽がギラつく灼熱地獄かもしれない。
私が思う街は レンガで建てられた家が集まる住宅地。アニメでよく見るからだろうか。
あなたの街も、きっとすぐそこに。
#街へ #2
夜まで1歩も外へ出ないとふんで
寝巻きのまま部屋をうろつく休日
郵便のバイクが止まりドアのポストに
手紙がコツンと落ちる音
もう街へは行かない今日は
街へ
暗く肌寒い夜の時間
ひとつの灯火が街中に広がり
心温まる思い出になるでしょう
何をしても筒抜け
今日もどこかで誰かが誰かの話をしてる
人と違う事をしたら、おかしな子だって言われちゃう
暇人共の格好の餌食にならないように
目立たないようになんて
地味に生きる様な真似はできない
私は、私の個性を大切にしたい
こんなところ絶対逃げ出してやる
誰が何をしてても気にしない
冷たいようで暖かい
いつかテレビで見たあの街へ
ー僕の左ー
いつも君と行ってた場所を一人で行ってみた
“君が隣にいたらいいのに“
そう思った
特別な場所に行ったわけでもない
スーパーやショッピングモール
そういった“日常“に君はたくさんいた
僕たちはきっともう前と同じ気持ちでは
一緒にいられない
でも、君を好きな気持ちだけは
これからも変わらないんだろうなと思う
君の右には今、誰かいるのかな
誰もいないといいな
街へ
『はるま』のラーメンが食べたい。
春にしては寒い日だったから、そんな思いがコウヘイの体を動かした。球体ベッドの中に収めていたゲル状の体でぬるぬると這い出し、外着に身を滑り込ませる。四足歩行式耐衝撃スーツは、首を根本で切られた馬のような外見をしている。スライミィ、いわゆる不定形生命体のコウヘイは、外へ出る際には儚いプルプルボディを守るため、こうしたスーツが必要なのだった。
馬に例えるならヒヅメの上にある、球節の部分に取り付けられている個人認証キーで家の戸締まりをし、カポカポと『はるま』を目指す。
『はるま』は十数年前に駅前にできたラーメン屋で、ヒト型から獣人向けまで幅広いラーメンを提供している。そのせいで味は「しょう油」しかないのだが、コウヘイは『はるま』の大雑把な空気が好きなので気にしたことがない。
閑静な住宅街を通り過ぎ、最寄り駅が近くなると自然と活気づいた雰囲気に包まれる。鱗も角も牙もないヒト種が着飾って電車を待っていたり、サイ系獣人がむっつりとパチンコ店の看板を手に佇んでいたりする。コウヘイと同じスライミィのグループが、似たようなスーツに身を包んで慌ただしく駆けていった。塗装まで統一されていたから、たぶん学生だろう。
コウヘイは過ぎ去った学生時代に思いを馳せながら、『はるま』の戸をくぐった。昼の一番忙しい時間帯は過ぎ去り、まばらに客が席についている。掃除は行き届いているのだが、全体的に古臭くてさびれた印象が、コウヘイは好きだ。
「ラーメンひとつ」
「ウッス」
バイトのエビ型マシンが首を縦に振った。触角で端末に注文が入れられると、待機していた大将がのっそりと身を起こしてラーメンを作り始める。
『はるま』の大将はヒト・サイボーグだ。三対の腕を器用に使いこなし、全部で十二個ある目で温度・塩分・麺の茹で具合・スープの濃淡をチェックし、しょう油ラーメンができあがる。
「おまち」
「ありがと」
スライミィ用ラーメンは他の種族用ラーメンと比較すると、冷えていると表現してよい。スライミィは急な温度変化に強くないので、摂取する食餌もできれば体温と似た温度が求められる。
使い古された器に波打つ茶色いゲルは、コウヘイにとっては〈熱いラーメン〉だ。給餌用のストローをスーツから突き出し、ちょっとずつラーメンをすする。熱いスープと、糸のように細い麺をすすり、フゥフゥはぁはぁ言いながら夢中で食べる。
最後の一滴もストローで吸い尽くし、冷えた飲料水で一服する。
端末でくだらない情報を読み、ラーメンの消化を待つ。体全体をあたためていた熱が落ち着いた頃、コウヘイは席を立った。
会計を済ませ、昼下がりのぬるい風をスーツの温度表示で知る。傾いた太陽がのんきな光を街へと注いでいた。
そのまま家に帰ろうかとも考えたが、せっかく外へ出たので目的なく散歩することにした。どうせ今日は休みだ。抱えていた案件も片付いたし、急に連絡がくることもないだろう。祈りにも似た気持ちでカポカポ、街をさ迷う。
〈都市〉はいちばん人口の多いヒト種に合わせて計画・建設されているから、スライミィのコウヘイが暮らすには不便な点も多かった。ビカビカと眩しくて、乾燥していて、スーツがなければまともにドアも開けられず、食料品店で売っているスライミィ向けのものと言えばマズい流動食しかない。
それでも――ヒトも獣人もマシンもモンスターも混在するこの街の野放図さを、コウヘイは愛している。
地元ではコウヘイの技術を活かせる仕事はなかった。反対する一族から逃げるように街へ出て、苦しいながらも自由な生活を謳歌している。自分だけの悩みだと感じていたことも、他種族も味わっていることを知った。
公園のベンチのそばで動きを止める。終戦祝いで植樹された桜が、ふっくらとしたピンク色のつぼみでいっぱいになっていた。
――やっぱ、ここに来てよかったな。
スーツの一部を開けて生身で桜を見上げながら、コウヘイは和やかな街の昼を愛しんだ。
街へ
いつもは、スニーカーにリュックと
ネックウォーマーでゆる楽スタイル。
友人とのランチで街へくり出すとき
は、少しヒールのある靴と手持ち鞄
に マフラーを巻く。
電車の窓から流れる街並みを眺めて
いる間に、気持ちがシャンとして背
筋が伸びてくる。
ドアが開く。
ようこそ、この街へ。
「会いたい。いつもの場所で待ってる」
彼にLINEをして街を走った。
LINEを見るとまだ見てないらしい。
「そりゃそうだよね」
雪が静かに舞う中、私の息だけが白く消えていく。
涙がポロポロと出てくる。
彼との思い出の場所
綺麗な景色を2人で見るのが大好きだった。
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既読になるはずがないよね。
だって彼はもういないもん。
2年前 彼は「好きだよ」そう言い残してこの世を去った。 交通事故。 ブレーキとアクセルの踏み間違えたおじいさんの車に跳ねられ病院に運ばれたけど、助からなかった。
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君がいなくなった世界
それはいつも真っ暗
君がいたらどんな景色でも綺麗なのに……
「会いたい」
どこまでも高い蒼空に、入道雲が浮かんでいる。助手席の、少し開いた窓からは、ジリジリと蝉の声が聞こえる。今朝ドライブスルーで購入したシトラスティーの氷はとっくに溶けて、緑の人魚のロゴマークからは大粒の水滴が滴る。
「あっつい……」呟くと、隣から「夏だね」と返ってくる。溶けかけのナッツボンを口元に持っていくと、あんぐり口をあけて、「ん、溶けてる」と口を尖らせた。ややしばらくして、「美味い」とつぶやくのが聞こえる。
1車線の直線道路はやがて2車線に変わり、広告が並ぶ道に、歩行者がちらほら見え始める。
運転席から手が伸びて「もうすぐ着くよ」と青い看板を指さした。
【街へ】
いまはまだコロナのせいでどこも行けてないなあ。やはり温泉か銭湯に入って外界から逃れゆっくりしたいわ。
笑顔で駆け回る
まだ話したことのない君へ会いに。
「街へ」
「久しぶり、お元気ですか
もうすぐ一年になりますね
あなたが東京に行ってから
我が家はだいぶ寂しくなりました
不景気で気を抜いていられないので
お父さんは定年後も会社で雇ってもらうことになりました
おかげで、私はずっと家では一人で家事をしています
イチローは散歩の時間以外はずっとお昼寝だし
スミレも夜にならないと帰ってこないので
お家はとても静かです
東京はどうですか?
こっちよりは暖かいと思うけど
何をするにもお金はかかるし
それに、子供の頃から人見知りで優しい子だったから
上手くやれてるか心配になります
余計なお世話かな?
『うるさいババァ』って思うかもしれないけど
いつまでも世話を焼かせてくれたら嬉しいな
お父さんも、前と同じでずっとムスッとしてるけど
あなたが家を出た月は毎日あなたの事を話題にしてたし
今でも三日に一回はあなたの事を聞いてきます
でも、お母さんにも何も教えてくれないから
少し心配です
疲れたら、いつでも帰ってきていいからね
イチローもあなたの散歩じゃないと物足りないって感じなの」
休日の朝、携帯に届いたメッセージ
別に汚いわけじゃないけど、人を呼べない程度には片付いていない部屋
滲んで少し見えにくい返信欄
震える指で、熱くなった頭の中を文字に起こす
「お母さん、私…」
***
「−街へ−」
優しさ
施設にて
さわる
どなる
あまえる
を しない
じいさん
実に稀
****
街へ
告ぐ
福祉現場
新しい
職場に
かわったとしても、
ノリのいい
じいさんに
ニコニコいい顔
しすぎては
いけない
必ずや
憂き目にあう
見極めを
吊るされた蛇のぬいぐるみ
色とりどりの紙袋
靴音みだれ咲く街へ
街へ
山奥の人気のない所にたたずむ神社。
そこに住む僕はずっと一人ぼっちだった。
雨でも風でも台風でも快晴でも。
ある日、久しぶりに一人の女の子が神社に来た。
おかあさんがげんきになりますよーに。
願いをいったその子はすぐに立ち去ろうとした。
久しぶりの人を見たから話したかった。
行かないで。
声に出てしまった。
その子は聞こえたのか、振り向いた。
寂しいの。
うん。
じゃあもっと人のいるところに行こう。
どこ。
街だよ。
1人で行けないよ。
じゃあさ、
一緒にいこう。