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街へ、今日も街へ。
教会に行くために街へ。
グラウンドを跨ぎ、街と名の着いていた場所へ。
荘厳なる御堂。豪奢なステンドグラス。白いイエス様の像。十字架。オルガンには、広げられたままの楽譜。朽ち果てた回廊、螺旋階段。
シトリは、この教会で祈るのが好きだった。
それは、神様の不在を物語っていたからだ。
神様がいない感じがするのが、好きだった。
十年前、戦争が起こった。
結局、この国は負けた。
そんな戦争の後の廃屋には、瓦礫の下の死体ぐらいしか祈る者もなく、その死体も白骨化してもう影もまばらだ。
彼は、神父であった人、逃げ惑う人々を匿い、そこにミサイルが落ちた。
ミサイルは、住人ごと、教会を半壊させた。
消えていく命と、親子の叫び。
それから……。
そこまで夢想して、シトリはなにか考えあぐねたように空を見た。
神父様、なぜ神に祈らなかったんです?
どうして、それを信じられなかったんです?
シトリは無神論者だ。
けれど、神様が共にある人の事は分かる。
霊魂の声がした。
「私は、結局私を信じられなかったのだ」
と。

1/28/2024, 10:13:51 AM