『蝶よ花よ』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
ひら
ひら
ひら
儚く命散りゆくその姿はまるで花のよう
こんなにも私が愛した子は
こうも呆気なく散ってしまうのね
「なんで私じゃなかったんだろう」
静かな部屋で寝転んで天井をみつめる。和室特有の葦草の香りとか土壁の匂いとか、窓の外から吹き込む湿っぽい風がぐちゃぐちゃとかき混ぜてどこかへいく。
こんな私の思考も感情もどこかへ運んでくれればいいのに風は無視してあっという間に去っていく。
いっそ、役立たずだと責めてくれたなら恨むこともできたのに。怒りで目の前が真っ赤になるくらい許せないのも悲しくて手を伸ばして縋りつきたくなるくらい情けなくなるのも、全部ぜんぶ受け止めて呪文のような謝罪を口にして捨てられるのだ。
はじめから私のものなんて何一つない。
この身体も心も言葉も感情もそれらすべて私のものだったことがない。お人形遊びをしているかのように、与えられた台本にそって動かされる。その間わずかに残っている意思が背筋がゾッとするようなことを考え続けた。
そうしているうちに私は私が大嫌いになっていった。
横たわる亡骸をみて悲しくて寂しくてしかたなかった。あんなにも強い人が亡くなってしまうなんて考えていなかった。冷たくなった手に触れる。なんの温度も感じないけど馴染みのある手だ。つい先日も触れたばかりなのになぜこんなにも遠く感じるのだろう。
泣くこともできず、言葉も出てこない。手を添えるだけでそれ以上のことは何もできない。私はなんて無力なのだろうか。
昔、お菓子を取り上げられて泣いたらまた叱られてそれ以上泣くことも言葉を重ねることもできず曾祖父母がよくいた部屋に入った。そこで曾祖母は静かに座っていて私をみてガラス戸の棚から茶葉を入れる缶を出した。内緒だよといって隠していたらしい角砂糖を1つずつ口に放りこんだ。
あまり口数の多い人ではなかったから、そういう小さな気遣いばかり覚えている。
大嫌いな私ではなく、優しい人が亡くなっていく度に口にする言葉。蝶よ花よと可愛がられて育った友だちには気味悪がられた言葉。病んでいるとまで言われて病院にまで連れていかれる羽目になった言葉。
私はどうすればよかったのだろう。
【題:蝶よ花よ】
蝶よ花よ(2023.8.8)
へぇ、私の言葉がわかるなんて、変わった人間もいたもんだね。私が何者かって?見たらわかるだろ、蝶々だよ、あんたらで言う「アゲハチョウ」ってやつ。羽が綺麗だって?あぁ、ありがとね。
それはそうと、あたしあんたら人間にひとつ言ってやりたいことがあるんだよ。「蝶よ花よと育てられる」、この言葉は絶対におかしいね。だってあんたら人間は蝶も花も愛でたりしないじゃあないか。あたしら蝶々が飛んでたら顔を顰めるし、蛾に対してなんてもっとひどい態度だ。それに、花だってやたら桜やらコスモスやらは褒め称えるくせに、道端の小さい花なんかには見向きもしない。挙げ句の果てに、せっかく咲いた花を引っこ抜いたり切り落としたりしてる。これのどこが「蝶よ花よと育ててる」のかね。全く、おかしいったらありゃしないよ。
あー、すっきりした。くだらない愚痴を聞いてくれてありがとね。あたしらが普段なにか考えてても、人間にはちっとも伝わらないからさ、ついぐちぐち言っちまったよ。
さて、忌々しい鳥どもが来る前にそろそろお暇しようかね。じゃ、またね。
蝶よ花よ
大事に大事に育てられたんでしょう
全て持って生まれたあなた
私はあなたの毒の花になりましょう
さぁ、この蜜を吸って
産まれてからずっとこの大きな屋敷で暮らしてきた、手を鳴らせば執事やメイドがすぐ飛んでくる。
学校へは通わず、専属の家庭教師を付けられて一般常識から一切を学んだ。
欲しい物はどんな物だろうと手に入り、蝶よ花よと育てられ何不自由無く育ってきた。
所が、大事に育てられ過ぎて外への関心が一切無く、当主が学校へ行くように進めるが撃沈、全てを屋敷の内部で済ませる形に収まっていたのだ。
だが、今やご令嬢も15歳になり気持ちに変化が現れた。
それは天気の良い日に敷地内の庭園で寛いでいた時だ。屋敷の塀の先に二人組の女子の会話が聞こえて来てからと言うもの、人生で初めて学校生活に大きな憧れを抱いたのである。
『ねぇ、佐伯。そろそろ私も高校生に上がる歳よね?』
「はい、左様でございます。」
『友人と呼べる存在が一人も居ないのも退屈だわ。それに学校生活という物にも興味が出て来たし…』
「ですが、学校へは行かれなくても家庭教師が居りますので、何ら心配は無いかと…」
『勉学に関しては問題無いかもしれないけれど、同学年ぐらいの方と比べたら、私には人生もそれに恋愛だって…経験が足りて無いと実感したのよ!そうだわ、行きたい学校をリストアップしてお父様に伝えなきゃ…』
思い立ったら吉日とばかりに自室に向かって駆け出した。
「やれやれ、お嬢様もやっと外の世界にご興味が出て来て私も一安心ですよ…」
佐伯と当主で仕込んだ数々の作戦が今やっと花開いたようである。
笑い声が響く。 特別大きくもないのに、君の声がいちばんはっきりと聞こえた。
ふとそんなことを思い出した。これかわって〜 とか、貸してーとか、言う君に、しょうがないなー!と微笑むと調子のいい笑顔をかえす君の顔を思い出した。
クイズをしている時に、答えがあってると正解!!と元気に返す君の笑顔を思い出した。
君を思い出すと、君の笑顔を思い出した。
もっと色んな景色を見てきたのに、君が咲かせた花が一番映えている。とても暖かい気温と甘い匂いに包まれている。
蝶よ、花よ、またその景色を連れてきてはくれないだろうか。
#116 愛されし蝶々
今日も舞う
華やかなライト
栄光の喝采
やまないアンコール
愛の紙ふぶき
休むことはありえない
私はみんなの私
いつの日か
舞えなくなる日が
来たならば
広げた羽をピンで留め
美しくおさまったガラスケースの中から
蝶よ花よと
愛されることになるのでしょう
「蝶よ花よ」
海の近くに旅行に来た。
海水浴を楽しんでから旅館のチェックインまで時間がある、私はお地蔵さんの絵が描かれたカフェに立ち寄った。
引き戸を開けると、瞬間にコーヒーの香り。人当たりの良い中年の男性が出迎えてくれた。ジャズピアノのbgmが程よく流れ、間接照明が暖かく照らす店内。お客は3組ほど。入った瞬間確信した、アタリだ。我ながらよく見つけた。ふふん。
深く沈んで思わず眠ってしまうのではないかと思うほど柔らかい椅子で、頼んだ抹茶ラテと珈琲ゼリーわらび餅を食べる。抹茶ラテは抹茶が濃く、程よく甘かった。ミルクが60度に設定されているそうで、冷たすぎることも無くとても飲みやすい。珈琲ゼリーわらび餅は、口に入れた瞬間きな粉の甘いさりっとした口当たり、噛めば噛むほど広がって、やがて餅の奥からゆっくりとコーヒーの香りが広がってくる。なんと贅沢なことか。
海水浴で疲れた体が糖分で癒されていくのを感じる。人にはやっぱり、ゆっくり寛ぐ時間が必要なのだ。あぁ、チェックインをもう少し遅くして、ミステリ小説でも持ってくればよかった。そうすれば、もう少しここに居れるのに。
家族と、友達と、華やかな時間を過ごすのも悪くない。だが、私にとってはこういうゆっくりと流れる時間が、蝶や花と同じくらい、大切なのだ。
#蝶よ花よ
蝶よ花よ、そう言って人を愛でるのは、
蝶が花の周りを舞っている様を
美しいと感じるからだ。
電気屋のテレビに写っているような花畑なんかは
その例だろう。
では、蛾よ草よ、と言うとどうだろう。
似た形をしていても、全くの別物になる。
手入れのされていない林などを思い浮かべてしまう。
「少年の日の思い出」に出てくる
クジャクヤママユは珍しい蝶だと名高いが、
その実、蛾である。
そう聞くと途端に美しくなくなったような気がする。
私の頭の中の蝶は、リアルな生物の姿ではなく、
"美しい"の象徴として存在しているのかもしれない。
蝶も花も、容易く壊れる
愛そうと思えば思うほど、それが出来なくなる
愛されるのが怖い私だって同じだ
愛すのも、愛されるのも、怖い
失うのに、何故か愛してしまう
どうせ私を置いていく癖に
君のせいだ
蝶よ花よ、私はきみたちに問いたい。
なぜ今日も変わらずきみたちは綺麗な色を身に宿し、今日も変わらず笑っていられるのか。
【蝶よ花よ】
カナコは蝶よ花よと甘やかされて育った。
両親は揃って晩婚で、歳を重ねてからカナコというひとり娘を授かったので、それも無理はない。
幼い頃から可愛らしかったカナコは、母に連れられてキッズモデルとなり、それ以降、「可愛い」だの「綺麗」だのとチヤホヤされる毎日だった。幸い、大学教授をしていた父の遺伝子も受け継ぎ、勉強もできる方だったので、学校では皆から憧れられ、いつでも注目の的だった。欲しいものはなんでも手に入ったし、多少のわがままも許された。
大学に入ってからもモデルの仕事は続けていたが、持って生まれた資質だけでは立ち行かないという事を思い知らされるようになった。可愛い子は掃いて捨てるほどいる。その中でも食事に気を遣い、欠かすことなく運動し、自分の長所短所を知り尽くした上で上手く個性をアピールする子だけが成功する。カナコなりに努力はしたものの、自分がトップクラスに食い込む程のものは持っていないということに、やがて気づいた。
モデル業を辞めて就職活動に専念するかどうか悩んでいる時に、自動車整備士の男性に出会い、恋に落ちた。彼はそれまでに出会ったどの男性とも違い、とても不器用で、一生懸命にカナコを愛してくれた。照れくさそうにしながらも毎日カナコの事を綺麗だと言い、真摯に向き合ってくれた。それで、モデルも就活も辞めて、彼と結婚した。
結婚する、と話した時、初めて親から反対された。すぐに結婚しなくても、どこかに就職して、しばらくしてから考えても良いんじゃないか、モデルの仕事だって、もう少し続けても良いんじゃないか、相手の男性の稼ぎだけで本当に生活できるのか、などと言われた。今思えば、彼との結婚に反対されたのではなく、カナコの行動が軽率に見えて、それを指摘されたのだろう。
カナコは反対を押し切って結婚した。二人の息子を授かり、贅沢はできないものの、幸せだった。夫は相変わらずカナコを溺愛していた。
息子が乳離れした頃、モデル時代の友人がアパレルブランドを立ち上げ、そのモデルをやらないかと誘われた。久しぶりに華々しい世界でまた働ける、とワクワクし、二つ返事でOKした。
そこで、あるカメラマンと出会ってしまった。あとはもう、どうにも説明がつかない。「惹かれ合ってしまった」としか言いようがない。彼はファッションやモデルの世界をよく知っていて、話が合った。カメラを通して彼から見つめられるたびに背筋がゾクゾクしたし、彼が撮ってくれる自分は今までで一番美しく見えた。若かった頃よりもだ。
しばらくして、彼の子を妊娠し、夫とは別れた。
家を出る最後の日、息子たちの寝顔を見た時は、さすがに胸が痛んだ。それでも、夫を裏切った自分が引き取るよりも、夫に託した方が良いだろう、と思った。夫は息子たちをとても愛してくれていたし、夫の実家も近いので、そう困ることはないだろう。夫に不満など何一つなかった。とても優しくて、良い人だった。自分に落ち度がある事は分かっていたが、自分の気持ちにも嘘は吐けないと、本気でそう思っていた。
今、40を過ぎてもなおそのスタイルを保っているカナコは、疲れた顔で深いため息をついた。両手には、栄養バランスを考えて作った料理をのせたお盆がある。子供部屋に向かう階段の前で、今一歩、足が進まない。
あれからカメラマンの彼と再婚し、息子一人、娘一人を授かった。今の夫が浮気をしていないなんて断言はできないが、なんとか結婚生活は続いている。生活レベルは随分と上がった。不自由なことはない。
娘が産まれた時は本当に嬉しかった。両親がしてくれた事を娘にもしてあげようと心に決めた。
13歳になった娘は今、心を固く閉ざし、もう何ヶ月も自分の部屋から出て来ない。
なぜだろう。あんなに、蝶よ花よとかわいがったのに――――。
柔い頬、大きな目、ほんのり赤い唇
ふにゃりと微笑む顔は天使のよう
この子が、これからの人生幸せであるように。
『蝶よ花よ』
花はただそこにある。
どんな時も一歩も引かず、凛と咲く。
蝶は素敵なものを探して、どこまでも羽ばたく。
羽を広げ、軽やかにステップを踏む
蝶よ花よ
両者共に美しい。
それぞれの花鳥風月を穏やかに見つめる。
[テーマ 蝶よ花よ]
「蝶よ花よ」8/9(水)
いつも美しく柔らかな愛情を注がれている
あなたを見るのが辛かった。
蝶よ花よと呼ばれることが私には無かったから
酷く羨ましかった。
一度も不幸が降りかかったことのない彼女が
とても穏やかな顔で私の頬を包み込んだ
「あなたはひとりじゃない」と
ひらりはらりと川沿いを歩いていると、煌々と怪しげに光る一軒の屋台を見つけた。
花に誘われる蝶のようにフラフラとその光に歩を向ける。
「いらっしゃいませ。何になさいますか。」
柔らかな声の方を向くと、バーテンダー姿の女性が立っていた。
一括りにまとめられた濡れ羽色の髪は、緩やかな弧を幾重にも重ねながら夜の闇に溶け込んでいる。
屋台でBARをやっているなんて珍しい。
そうしていると一杯のカクテルが出される。
次の日も同じ場所に向かってみたがそこに屋台は無かった。
蝶は‹不死・不滅›の象徴
花は‹愛情・美・幸せ›の象徴
蝶は美しく花の上を舞う
花は自然を美しく彩る
蝶の羽は脆い
一度破れてしまえば終わり
なのに蝶は不死・不滅の象徴
花は美しい
一度枯れてしまえば終わり
だが多くの種類を持ち、様々な顔を見せる
一つ一つに意味を持つ
お題〚蝶よ花よ〛
【蝶よ花よ】
私が笑えば、みんなも笑顔になれるんだって。
物心つくより前から、両親が何度も繰り返す言葉。
だから私は嬉しいときもそうでないときも笑う。
そうでないときなんて、ほとんど無いのだけど。
可愛いね、すごいね、って褒めるのは両親だけではない。
学校でも変わらなかった。小学校から高校まで。
みんな、きれいとか賢いとか言って私を褒める。
控えめな態度で謙遜すれば、本当だって言い募る。
家でも学校でも同じなら、バイト先でも同じだよね。
シフトの被った男の先輩に微笑んで話しかけた。
店に余裕があるときなら、少しのお喋りは許される。
でも、彼は心底鬱陶しそうに顔を歪めて無視をした。
なんなの、あの男は。帰宅後、ベッドを力任せに叩く。
私を優先しない人なんているはずがないのに。
「何を食べたい?」「何が欲しい?」すべて希望通りに。
苦手なものも嫌いなものも、私の世界にはいらないの。
だから、彼にも好きになってもらわないといけない。
私の世界からいなくならないのなら、好きになれないと。
きっと大丈夫。みんな、私を大切にしてくれるから。
可愛くて賢い私をいつまでも無視できるわけないでしょ。
シフトが被るたび、飽きずに話しかけた。
彼は冷たい目で一瞥しただけで、一言も発さない。
その頑なな態度が変わるとは思えないけど。
今さら引けなくなって、声を聞くまでやめないと決めた。
諦めずに話し続けて、どれぐらい経っただろう。
「あのさぁ」ようやく声を聞けた。
「よくそんな話すことがあるよね。暇なの?」
白い目と嘲笑。なんで笑顔になってくれないの。
【蝶よ花よ】
触れてみたいと思った。
艶やかな黒髪に、短い髭が生えて少しざらついている頬に、無骨で太い指先に、色も厚みも薄い唇に。触れてみたいと思った。思ってしまった。
「どうした?峯」
突然の声にハッとする。
おそらく無意識に観察してしまっていたのだろう。こちらを見あげている黒い瞳は少し戸惑いの色を含んでいた。
「珍しいな、峯がぼんやりしてるなんて」
「申し訳ありません」
「謝ることじゃねえよ。それより、一通り片付いたから飯でも食いに行かないか。腹がへって仕方ねえ」
「そうですね」
椅子の背もたれに身を預けて目頭を揉んでいる大吾さんの顔には疲労の色が浮かんでいる。頭の中に記憶してある飲食店のリストから今の大吾さんに合いそうな店をいくつかピックアップして伝える。
「んー。落ち着いた店もいいけどよ・・・今はハンバーガーの気分なんだよな」
「ハンバーガー?」
「ああ。スマイルバーガーが食いてえ気分」
(着地点が見つからないので途中まで。あとで編集する)
〜蝶よ花よ〜
歳を重ねる毎に綺麗になっていくあなた
あなたは私の誇りよ
あれはいくつの頃かしら
口紅がなくなっているのは
あなたの仕業だって気づいてた
お気に入りのワンピースも
あなたが気に入ったのなら持っていて
私の趣味ではないけれど
あなたが気にいると思って買ったアクセサリー
これもいずれはあなたの物ね
…こんな母を許して
あなたが輝く度に胸を痛めるこの母を
怖がりなこの母を
守る術を知らないこの母を
あなたが傷つき壊れてしまわないか怖くてたまらない
大切で愛しい私のムスメ
どうか幸せであれ