『蝶よ花よ』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
蝶よ花よと可愛がられた兄とは対照的な育て方をされたと自覚している私。言葉のイメージからすれば『蝶よ花よ』とくれば可愛らしく育てられた女の子が連想されるだろうが、我が家ではそうではなかった。
生まれたときから見目麗しく、しかし身体が丈夫でなかった兄。それこそ古い時代の「女の子の格好をさせておけば男の子を長生きさせられる」との言い伝えを忠実に守らせて、その格好が本来女として生を受けた私よりも愛らしかったようで。可愛い子を可愛がる、大人の庇護欲は大層満たされることであろう。
数年後に生まれた私は兎角平凡。健康上の問題もなく、見た目も美しくないかわりに不細工でもないと言われた。放置して自由にさせたほうが手がかからず、というか大人の負担面が軽かったのだろう。
そういうわけなので、私はこのように育ってしまった。
【蝶よ花よ】
家の掃除をしていたら、ガレージの奥にボロボロの菓子箱を見つけた。
なんだこれは、と厚く被った埃を払い、黄ばんだセロテープをピリピリと剥がしていく。
手触りの悪くなった紙製の蓋を取ると、箱一杯に大小様々なサイズの写真が入っていた。
一番上は何処かの飼い犬を写したものだった、手にとって暫く眺めていると、ああ、と思い出す。
昔、両親とよく遊びに行った公園の隣にあったカフェの看板犬。
艷やかな純白の毛色の、ほっそりとした大型犬で、生まれて初めて美しいと思った、……気がする。流石にそこまでは思い出せない。
一枚一枚捲っていって、ボロボロの写真に手が止まった。
ハサミで切られた端が折れ曲がり毛羽立ち、所々表面が剥げた、薄いセピア色の写真。
家族写真だった。
父と母の間に、まだほんの子供の私が座っている。
父も母も、私も、幸せそうな笑みを浮かべて。
ああ、あの頃は確かに幸せな時間が流れていた。
何時までも続くと信じて疑わなかった幸せな時間は、しかし、呆気なく終わってしまった。
――ねえ、パパ。
もしも、あのとき、何かしてあげられてたら、この結末は変わっていたのかな。
テーマ「蝶よ花よ」
蜘蛛のように狡猾で
蜂のように高貴な
あるいは
竹のように強かで
大樹のような貫禄を持つ
ものは山へ 隠され覆われ
蝶と花だけが大手を振ってひらひらと笑う
平易な美的印象の香りに絆される民衆
今日もそうして蚊を殺し 雑草を踏み潰す
石鹸とレースのハンカチで漂白された蚕は
コンクリートとアスファルトで固められた街並みを
何食わぬ顔で風を切って舞い歩くのだ
<苦手なもの>
題: 蝶よ花よ
─蝶よ花よ─
この世界は美しい。
とても美しくて、綺麗で、苦しい。
楽しく幸せに暮らしている人が居れば、
辛く悲しい暮らしを送っている人も居る。
有名になったあのアイドルの下には、
一緒の立場だったライバルが居る。
世界に注目される程、良いことをしたあの人の下には、
沢山の努力と、思い出がある。
良いことの下には、原因と言う名の悪行がある。
そんな悲しい世界にある、美しいもの達。
その下にも、色々なものが、思い出があるのだろう。
美しいもの達よ、美しい花よ、美しい蝶よ。
努力が認められなくても、美しいものは美しい。
この世の中で『諦める』なんてことをせず、
世界を代表するように。
色々な悪行を隠すように。
いつまでも美しく、綺麗なままで居て。
皆さん、忙しくてお話を投稿出来ませんでした。
申し訳ありません。
これからは少しづつ投稿スペース上げていきます。
ご理解よろしくお願いします。
以上、作者より
蝶よ花よ
舞いなさい
散りなさい
ズタズタになるまで
泥だらけになるまで
世界が終わっても
命のない存在となった僕と踊ってくれませんか?
蝶よ花よと育てられたといえば
かぐや姫かな。
他には、うーん。
シンデレラの義理の姉達?
何だろ、この残念感。
今となっては実際に見たのか、話を聞いてその光景を想像しただけなのか覚えてないんだけど、ケンタがまっ裸のアツトを買い物カートに乗せて、2人で爆笑しながら寮の私たちの棟の周りを疾走するっていう、ホントあの2人はしょっちゅうバカやってたね。私にはチャラ過ぎてなかなか近寄り難い2人だったんだけど…
でも実はね、2人は私を否定しない優しい子たちでね、ケンタが同郷だったせいか気にかけてくれて、誰も見てないときに声かけてくれてたんだよ。サカイだけじゃなかったんだよ。
一度、ドアを開けたまま昼間にうとうと眠ってしまった事があって、ケンタが「ドア開けっ放しでそんな無防備に寝てたら襲われちゃうよ」って起こしてくれた。
いつもふざけてるのに、私に優しく笑いかけてくれたんだよ。その時に、この人全然チャラくないじゃんって分かった。
アツトとケンタは同室だったんだけど、部屋に行ったときチェストにアツトの下半身がしっかり写ってる裸のポラロイド写真が貼ってあって…さすがにそれは衝撃的だったなぁ。
フォロワーとオフ会したら人じゃないものだったら良い。
エイリアンとか、不定形生命体とか、名状しがたいものでも別に構わないのだけど、「あんり(HN)さんって、その、ご種族は⋯⋯?」「♯*★♪♡'〉です」って発音出来ないものだとお互い気まずいから、出来れば地球上の生命体の、トカゲとか、トガリネズミとかだと良い。
「え〜、映雑賦(HN)さんが言ってた上司ってギラファノコギリクワガタなんですかー!」「そうなんですよー」「どこも横暴な人がいるものですねぇ」「そうですね、まぁうちの上司は人じゃないですけど(笑)」みたいなやり取りをしたい。
人じゃないものなら、なんでもいい。
蝶でも、花でも、プランクトンでも、何でもいい。
私の疎外感にほんの少し寄り添ってくれた貴方が人じゃないなら、私もほんのり人じゃないのかなって、空虚感に疑問符を詰め込んで埋めてしまいたい。
蝶よ花よ
夏休みだよ、と部室に入った途端に叫んだ先輩はそれはもうウキウキとしていた。
「そうですね。長い夏休みの始まりです」
中学生の頃は夏休みが始まる度にわくわくとしたものだが、今年はそんなこともない。俺も成長したのかもしれなかった。
「先輩は何か予定でも入ってるんですか?」
あんまりにも楽しそうにしているので、聞いてあげることにした。先輩はとにかく喋るのが大好きなので。
「親戚の持ってる島に遊びに行くんだ。海で泳げるんだよ」
「へぇ、楽しそうですね」
先輩がきょとんとした顔をしてから俺にすすっと近付いてきた。
「なに他人事みたいな顔してるの? 君も行くんだよ」
「……え?」
首を傾げる先輩が、俺をじっと見上げた。しばしの無言。
「……俺の予定とか聞いてないのに勝手に予定を入れてるんですか?」
「後輩は先輩と一緒に夏休みを過ごすものだよ!」
「それ、俺の知らない常識だなあ」
先輩は俺に先輩面をしてくるし、実際先輩ではあるのだけれども、たまに常識がズレていることがあった。蝶よ花よと可愛がられて育った箱入りっ子のような気がする。
「……えー、駄目だった? 君、どうせ用事なんか入ってないでしょ?」
「し、失礼すぎるなこの先輩」
「だって、君っていつも授業が終わったら部室に来るじゃないか。暇なんじゃないの?」
「……俺にも一応、友達はいますからね。真面目な生徒なので部室にちゃんと来てるだけですよ」
先輩は興味が無さそうに、そうなんだあと返してきた。
「まあ、とにかくさ。君は夏休みの予定空いてるんだろ? 僕と島に行こうよ〜! 海だよ、海。避暑地だよ? 今年の夏は暑いんだぞ?」
俺を熱心に口説く先輩の瞳はきらきらとしていた。それを眺めてから、俺は口を開いた。
「仕方ないですね。良いですよ」
「よし、言質は取ったからね。絶対行こう。海で砂の城を作ろうね」
部室に入ってきた時よりもご機嫌になった先輩に、こちらも少し楽しくなる。楽しい夏休みになりそうだ、と思っていた俺は夏休みだからといって事件が休んでくれる訳でないことをまだ知らない。
蝶よ花よ
可愛い子猫
どんなに可愛がっても足らない
無心にもっともっと可愛がってとやって来る
ひたむきなまでの貪欲さ
「蝶よ花よ」
今僕がいる世界はとても綺麗だ
流れる川もとても透き通っている
君がいたらどれだけ嬉しかったか…
ここには僕しかいない
こんなに寂しい思いをするなら…
あの時…
君を置いていって行ったのは僕なのに…
もう戻ることも出来ないこの空間に
もう何年いるんだろう
長崎に原子爆弾が投下されて………
大好きだったよ
【11,お題:蝶よ花よ】
俺は物心ついた時には耳が聞こえなかった。
だから言葉を覚えることは出来なかったし、喋ることもろくに出来なかった。
そのためなのか、俺は蝶よ花よと育てられた。
指差したものはなんでも買い与え、少しでも興味を示したものは全て与えられた
両親は俺のことばかり気にしていて双子の弟のことは見えてないみたいだった。
弟が不満そうにしているのは、薄々勘づいていたが
俺はどうするべきか分からず、なにも出来なかったのを後悔している。
ある夜、弟は俺をベランダに連れ出した。
その日は星が綺麗だったから、最初はそれを見せたいのかと思ったのだが
弟は一言二言何か言った後に、俺に掴みかかった。
「ーーーっ!✕✕✕ッッっ!?」
「ーっ!✕✕✕っ!ーーーーー!」
狭いベランダのなかで、揉み合う
手すりから上半身が乗り出したところで、初めて月明かりに照らされ弟の表情が見えた
泣いていた。
重力にしたがって落ちている、恐怖はなかった。
なんとも言えない変な感覚に包まれながらふと思う
俺、弟のことなんにも知らないな
好きなもの 好きなこと 得意なこと 苦手なこと、
全部知らずに、知ろうともせずにここまで生きていたんだ
ごめん。
............ドンッ!......。
蝶よ、花よ。
なぜそんなにも美しく散ることができるのだろう。
なぜ生きているだけで人々の目を
注目させられるんだろう。
なぜ人は頑張って生きている人を
嘲笑ったりする人がいるんだろう。
花は儚いから美しいのか。
なら僕も儚く散れば人に美しいと、
おかしくないと言ってもらえるんだろうか。
両親は躾には厳しかったが
第一子の私を大層可愛がってくれた
母方の従兄弟たちの中でも一番に生まれたので
祖母の愛も一心に受けた
どこかへ出かけるにも、中心はいつも私
容姿にも恵まれてどこへ行っても楽しいことしかない
そのまま成人した
異性も思うがまま
ただ私は気づいていた
他者の評価だけで生きてきた私には
自分がどこにあるのかわからない
この先老いていって
私は両親や祖母のようにあれるのだろうか
私は誰も愛せない
【蝶よ花よ】
あなたは誰の期待を背負っているのか。その期待を私に向けないでくれ。
あの頃から私は期待されることが怖くなった。解放されたと分かった時、この自由を自分のために使いたいと思った。そうしたら、私の自由を奪い得る存在全てに対して距離を置くようになってしまった。それは自分の意思からではなく本能的に危険を察知して我が身を守ろうとする生理的反応のようである。
今日もあなたを遠ざけ、傷つけた。あなたは怒っているだろうか、それとも悲しんでいるだろうか、呆れているだろうか。と、そんなこと考えたくもない。
この気持ちを分かってほしいんじゃない。誰も近寄せない方が楽になれることを知ってから、思い出したことがある。それはずっと昔、まだ社会に生きるということを知らない頃の素直な気持ち。今になってその気持ちを大事にしようと思えた。
#蝶よ花よ
「蝶よ花よ」
意味は、子を慈しみ愛するさまを言うらしい。
私は今日も推しさんを慈しみ愛していよう。
蝶よ花よと育て上げた我が愛娘が、今日、結婚する。
書類だけで結構だよと娘は言い張っていたけど、白いウエディングドレスに身を包んだ彼女は、とても綺麗だった。
感謝の言葉で、思わず涙が溢れてしまった。
パパ、ママ、育ててくれてありがとう。
その言葉だけで、ああ、私たちはこの日のために育ててきたのかと、想いが走馬灯のように蘇ってきた。
結婚おめでとう、これからもよろしくね。
蝶よ花よって日常会話で、言った事ない。
調べたら、
「親が子をいつくしみ愛する様」
私の親は、兄妹に対してそうだった。
私は産まれてくる家を、間違ったのだろうか…
長女は、優しいけれど芯のある子供に育ちました。次女は、少しお転婆でしたが周りをよく見る子供に育ちました。最後に長男は、まだ生まれたばかりで言葉で会話をすることはまだ難しいです。
けれど、それでも長女と次女は嬉しそうに長男である弟に話しかけます。おはよう、こんにちは、こんばんは、おやすみと話しかけるのです。そうすると、長男は笑うのです。姉である長女と次女が笑うと同じように笑みをこぼすのです。母である私は、それを見て共に笑い合うのです。
蝶よ花よ、いずれ飛び立つ日まで。
お終い
#蝶よ花よ
森の主が息絶えた。
屍は青々とした血を流し。
次第に主の周辺にたくさんの白い花を咲かせた。
夜には白い花は淡い色で輝き
蝶がその蜜を吸い上げていく
蝶よ花よどうか主お導き下さい。