しじま

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家の掃除をしていたら、ガレージの奥にボロボロの菓子箱を見つけた。

なんだこれは、と厚く被った埃を払い、黄ばんだセロテープをピリピリと剥がしていく。

手触りの悪くなった紙製の蓋を取ると、箱一杯に大小様々なサイズの写真が入っていた。

一番上は何処かの飼い犬を写したものだった、手にとって暫く眺めていると、ああ、と思い出す。

昔、両親とよく遊びに行った公園の隣にあったカフェの看板犬。

艷やかな純白の毛色の、ほっそりとした大型犬で、生まれて初めて美しいと思った、……気がする。流石にそこまでは思い出せない。

一枚一枚捲っていって、ボロボロの写真に手が止まった。

ハサミで切られた端が折れ曲がり毛羽立ち、所々表面が剥げた、薄いセピア色の写真。

家族写真だった。

父と母の間に、まだほんの子供の私が座っている。

父も母も、私も、幸せそうな笑みを浮かべて。

ああ、あの頃は確かに幸せな時間が流れていた。

何時までも続くと信じて疑わなかった幸せな時間は、しかし、呆気なく終わってしまった。

――ねえ、パパ。

もしも、あのとき、何かしてあげられてたら、この結末は変わっていたのかな。

テーマ「蝶よ花よ」

8/9/2023, 5:43:25 AM