『落下』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
落下
堕ちてゆく
堕ちてゆく
海の底へ?
天界から下界へ?
そうして
堕ちた先に
微笑む貴方がいるといい
私を
受け止めてくれると信じて
今日も
真っ直ぐに
堕ちてゆく
煌めく人魚の鰭(ひれ)も
純白の羽根も毟(むし)り取って
ただ貴方の元へ
男はひとり屋上に立っている。
彼は何もかもにうんざりしていた。
日々退屈でしょうがない。
もういっそ、終わらせてやろう。
どうせ、俺ひとり居なくなったところで誰も困りやしないのだ。
一度終わりを考えると、なぜもっとはやくそうしなかったのかと疑問を覚えた。なんだ、簡単なことじゃないか。
目の前のフェンスをつかみ、つまさきを穴にひっかけてよじ登ってみた。
視界が少し高くなった。他人事のように真っ青な空がそのぶん近くなった。
息をすいこんだ。気持ちは落ち着いている。ためらいや迷いも特になかった。これ以外に正解はないように思えた。
男はするするとフェンスをのぼり、とうとういちばん上に腰掛けた。目をつむって、両手を離す。視界がゆっくりと傾いていく。
さよなら、せいせいするよ。
ごうごうと空気の流れる音を聞きながら落ちていく。男はつむっていた目をあけた。一瞬だと思っていたのに、意外と長い。
視界は普段エレベーターでみる景色の逆再生だ。窓からみえるすべての人間が、こちらを気にもとめずに一心不乱に机にむかっている。
ざまあみろ、俺は一足先におさらばだ。
そろそろ地面に到着か…案外あっさりだな、男が再び目を閉じるその一瞬、窓際にいた女と目があった。女はぽかんとこちらを見ている。
あ、俺のことをみている。
誰にもみられず終わるものだと思っていたのに。
でも、けっこう悪くないな。
男は不思議な満足感を得て、そのままもう目を開くことはなかった。
“落下”
落ちる―――
目の前でマグカップが傾く。
ジャンプしてきたキジトラのマーロの後ろ足が当たった。
マーロも気づき、すまなそうに俺を見る。
―ダメなんだ、それは―
彼女がどこか旅行に行った時に買ってきてくれた。素焼きの一点物らしい。
―マグカップぐらいは大切にしてね―と、いい加減な俺にわざと嫌味混じりに言った。
これは大事にするんだと決めたんだ。
俺の身体は宙を舞った。
次の瞬間、凄まじい音とともに、積み上げた本やガラクタが崩れ落ちる…そして、俺も床に打ち付けられた。
マーロは慌てて隣の部屋へ逃げていったらしい。
俺は…仰向けになったまま、天井を見つめホッと胸をなでおろす。
こんな時に、野球部で培われた瞬発力が急に発動された。
―間に合った…―
「落下」
心の闇の中へずるずると落下していく。
落ちるところまで落ちていく。
自分の人生に絶望したから。もう前の自分には戻れないと僕は思った。
《落下》
最初は、面白い技を使う人だなぁ、くらいの印象だった。
真面目で物腰は柔らかい人なのに、あんなに大胆に敵を連打するんだ。
そのインパクトが強くて、一番心に残る人だった。
それだけだと思っていた。
相棒と一緒に改めて彼の足跡を追う。
空を飛ぶ鳥達を見つめる優しい横顔。
見知らぬ旅人にもふわりと笑いかける人当たりの良さ。
国に裏切られ利用された絶望を払いのける力強さ。
己を虐げてきた家族も救おうとする深い心。
育ての親を喪ってなお前へ進む決意の固さ。
決して折れない正義に燃える瞳。
丁度よい距離感だと思っていたんだけどね。
もう、遅い。
気が付けば、心は強く引き寄せられてあなたの下へ落ちていた。
知らなかった。
本当に強い想いは、ことりと落ちる音すら聞こえないものなんだ。
かなり昔、小学生の頃の話。
としまえんの絶叫アトラクション「トップスピン」に乗っていた時の出来事。
簡単に言うと座席ごと上に上がってくるくる回って下がる的なアトラクションなのだが
その時前の座席におじさんが乗ってた。
上に上がってくるくる回り始めてしばらくして下がろうとした時、
おじさんの髪の毛がぷわ〜っと浮いて
あ!これはダメなやつ!
とアトラクションどころではなくおじさんの髪の毛から目が離せない。
おじさんの髪の毛飛んでいかないで!落ちるな!と心の中で念じてた。
知らないおじさんだけど子供ながらにヒヤヒヤ。
だけど思いは届かずどこかに飛んでいっちゃった。
笑いたかったけど我慢した。
今は無きとしまえんでの懐かしい思い出。
虹色の衣纏いしシャボン玉
ふわりふわりと舞い降りる
風に揺られて右左
自由気ままに流される
のんびり降りて地に触れて
パチンと爆ぜて夢消える
「落下」
落下
(本稿を下書きとして保管)
2024.6.18 藍
時折俺は、果てのない記憶の海に落ちて行くことがあります。
初めて会った時の貴女。
貴女の守りに入ってから見た、その次の貴女。
そのまた次の貴女。
更に次の貴女。
どの貴女も可愛らしく笑い、美しく育ち、人を愛し、人に愛されて死んでいきました。
そうして俺の思考は、今の貴女に辿り着きます。
今貴女がこうして生きていること。
そのこと以上に俺が幸福を感じることなど、ありません。
どうか、それを分かっていてくださいね。
フィクション
辛かった。苦しかった。けれど、言葉に出すことは無かった。
これは私が自殺をする理由となっているのだろうか。
私は、そもそもなぜ、自殺をしたのだろうか。
櫻井 花。私は自殺した。マンションの二回から飛び降りた。怖かったんだもの。初めは確実に死ねる十五回から死んでしまおうと思った。けれど、そもそも下を見れなかったのだ。高所恐怖症の私にとってそれは難しくて、苦しいことだった。
なんでだろ。今から死ねるのに下を見るだけで苦しいだなんて。私、おかしいんだよね。
まあそういうことで、今は病室。あーやだやだ。死ぬ前のことを思い出す――。
「先生、花はいじめられていたんです!先生の見えないところで何度も殴られたり、カツアゲされたり、それを花は私に何度も報告してくれた!」
私の親友、亜希は私が亜希に送ったメールを先生の前に出した。
『あー、今日も殴られて足引きずらないと帰れないかもw亜希いっしょに帰ろー!』
『お金もう小銭すらないんだがwおすすめのアルバイトある?』
『まじであいつらうざいんだけど!でも亜希がいるしがんばる!』
『明日学校休んでもいい?』
『ねえ辛い』
『助けて』
『やだ』
『どうしよ』
『電話したいよー』
『もう無理かも』
ずらーっと並ぶ私の送るメールと、その後何分か間を空けて送られてくる亜希のメール。きっと、送る言葉を選んでくれていたのだろう。
「なのに私、何も出来なかった。ただそばに居ただけで……。親友失格だよ。ごめんなさい、ごめんなさい……」
私に深々と頭を下げる亜希。
なにそれ、もう遅いのに。
私、人殺しなんだよ?――。
「……飯うまいか?」
「……おいしいです」
そして、私は私の弁護人をした佐藤 優さんと暮らし始めた。
初めの頃はとーっとも冷たかった。
けれど、どこかで私のことを思っていてくれていて、誰よりも私を知ってくれている人。そう思っている。
「……優さん、私、間違ってたのかな」
「ははっ、それ初めてあった時も言ってただろ。何も間違ってやないさ。おれだって上司を今にでも殺してえよ」
暖かいハンバーグを橋で続きながら、ゆうさんに言うと、ははっと軽く笑って、私の頭を撫でてくれた。
ああ、暖かい。これを愛というのか?嬉しい。幸せだ。ふふ、前まではそんな文章に書くようなことを心で思ったことなんてなかったのに。
「花は生きているだけでいい。ただ死ぬな。俺はお前が年老いて死なないと仕事クビだからな」
「そうなの?私、責任重大じゃん」
「ああ、だから死ぬな」
死ぬな。
その言葉。いっちばん嫌いだったなあ。でも、今になるとその言葉が薬となる。
落下した先にあったのは幸せの玉手箱。
No.33『落下』
気付けば私は落ちてしまっていた。
深すぎて抜け出せないところまで。
落ちるのは一瞬だった。
そしてそこに突き落としたのはあなた。
そう、それは私の恋の相手。
落下
深いけど
いつか来てしまう
その痛み
後回しには出来ない
この恐怖
逃げてしまいたいけど
どんなに足掻いてもぼくはいつか消えてしまう
・9『落下』
思わせぶりな態度をとっていた
駆け引きはこの浅瀬と同じように安心で安全なはずだった
私が海で一生を過ごす?あの男と?
ナイナイ。
今朝はもう姿も現さないしスキュラは帰ろうと海に背を向け歩き出した。足が重い。それに何か絡まってる。
海藻かゴミか……と思い取ろうとするとビラビラとしたモノは足とくっついていた
波が引く、波が足に触れる、そのたびに足に付いたビラビラは増えていく
スキュラは恐ろしくなってしりもちをつく。パニックになった。
手で顔を覆うがその手が人間のものではなくなっている事に気付いた
【続く】
落下
寝そうな時に
フワッと落下している感覚になって
目を覚ましてしまう時がある
これは体が自分のことを死んだ勘違いして
確認するためにおきているらしい
日々生きていたら寝るのを邪魔する嫌な感覚だけど
極稀に生きることを考えた時
体は生きたがっているって
心じゃなくて本能的部分で
黒い思いを
正してくれるんじゃないかって
そんなふうに思った
下に下に堕ちて行くそいつをみて僕はただ身震いをしただけだった。他の何もせずただ身震いをしただけだった。小さくなって行く彼の体はもう僕が知っている声を発してはいなかった。甲高くキーキーとした声で助けを求める声。だがその声ももう僕の耳には聞こえなくなっていた。僕はその場で束の間動けずただぼーっとしていただけだった。ハッとして我に帰った僕はすくむ体を無理やりに動かしてどこかに行く当てもなく助けを求め走った。僕の胸は縄で締め付けられたような感覚に陥った穴に堕ちて焦っているのは彼だというのに僕は自分のことのように焦りを感じていた。僕は走るフォームが乱れようと関係なく走り続けた。何分も何十分も走り続けたが疲れることもなく走り続けた。どちらかと言うと僕は疲れを感じれるような状態ではなかった。僕は急に立ち止まり、どっと押し寄せてくる疲れを気づかないふりをしてあいつの堕ちた穴に帰って行った。僕はそこに倒れ込むように堕ちた。
【落下】
「落下」(一行詩)
落下していく完成間近のプラモ おのれ…地震よ…
◆
落下していく部品は絨毯の毛の沼の底へ
◆
落下していく小皿から トマト味の野菜炒めは空中で踊る
◆
ビー玉がシュワシュワの中へ落下する六月
落ちた
何がって何がだろう
体が、心が、全ての気力が、底まで
全部真下 多分もう戻ってこない
やる気がない、生きる気力がない
首が落ちたならまだ楽なのに
落ちたのは地獄だ
気が滅入る
あの子、飛び降りしてたらしいよ。
あの子って、去年転校してきた?
そうそう。その子。
〝してた〟って何よ。過去形?
先輩は落ちるとこ見てたらしいよ。その後病院に搬送されたんだって。
あー……?納得しかけたけどおかしいでしょ、じゃあ今通ってるあの子は
誰?
題_7_落下
非常に私事なのだがここに書いておく。
私だけなのかは分からないが、夜、布団に潜り、目を閉じ、うとうととし始めてた時、時々、どこからか落ちていくような感覚になる。
そうだな、例えるなら某夢の国のテーマパークにあるアトラクション…急上昇し、天辺に到達した直後に落下する、あのアトラクションに乗ったような感覚、というべきだろうか。落下し続けている感覚がずっと続くような、そんな感覚だ。
何か身体の不調かと思い、一度調べてみたことがある。調べたところによると、この「落ちている感覚」というやつはジャーキング現象、と呼ばれるものらしく、横になり、全身がリラックスした状況を脳が「高い所から落ちている」という風に勘違いするらしい。
ひとまず不調な訳ではない、ということは分かっただけ良しとしたい。
今夜も落ちていくのだろうか。
気持ちは落ち着かない。 【落下】
「落下星」
いつからか
殻に閉じこもって
いつからか
皮を被って
歩くしかなくなっちゃったの
子供みたいに
無防備なまま
ぴかぴかで、にこにこのままだと
世の中の
ちくり
で
自分ごと
落ちたくなってしまうから
お題:落下