“落下”
落ちる―――
目の前でマグカップが傾く。
ジャンプしてきたキジトラのマーロの後ろ足が当たった。
マーロも気づき、すまなそうに俺を見る。
―ダメなんだ、それは―
彼女がどこか旅行に行った時に買ってきてくれた。素焼きの一点物らしい。
―マグカップぐらいは大切にしてね―と、いい加減な俺にわざと嫌味混じりに言った。
これは大事にするんだと決めたんだ。
俺の身体は宙を舞った。
次の瞬間、凄まじい音とともに、積み上げた本やガラクタが崩れ落ちる…そして、俺も床に打ち付けられた。
マーロは慌てて隣の部屋へ逃げていったらしい。
俺は…仰向けになったまま、天井を見つめホッと胸をなでおろす。
こんな時に、野球部で培われた瞬発力が急に発動された。
―間に合った…―
6/18/2024, 1:23:50 PM