12歳の叫び

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フィクション

辛かった。苦しかった。けれど、言葉に出すことは無かった。
これは私が自殺をする理由となっているのだろうか。
私は、そもそもなぜ、自殺をしたのだろうか。
櫻井 花。私は自殺した。マンションの二回から飛び降りた。怖かったんだもの。初めは確実に死ねる十五回から死んでしまおうと思った。けれど、そもそも下を見れなかったのだ。高所恐怖症の私にとってそれは難しくて、苦しいことだった。
なんでだろ。今から死ねるのに下を見るだけで苦しいだなんて。私、おかしいんだよね。
まあそういうことで、今は病室。あーやだやだ。死ぬ前のことを思い出す――。
「先生、花はいじめられていたんです!先生の見えないところで何度も殴られたり、カツアゲされたり、それを花は私に何度も報告してくれた!」
私の親友、亜希は私が亜希に送ったメールを先生の前に出した。
『あー、今日も殴られて足引きずらないと帰れないかもw亜希いっしょに帰ろー!』
『お金もう小銭すらないんだがwおすすめのアルバイトある?』
『まじであいつらうざいんだけど!でも亜希がいるしがんばる!』
『明日学校休んでもいい?』
『ねえ辛い』
『助けて』
『やだ』
『どうしよ』
『電話したいよー』
『もう無理かも』
ずらーっと並ぶ私の送るメールと、その後何分か間を空けて送られてくる亜希のメール。きっと、送る言葉を選んでくれていたのだろう。
「なのに私、何も出来なかった。ただそばに居ただけで……。親友失格だよ。ごめんなさい、ごめんなさい……」
私に深々と頭を下げる亜希。
なにそれ、もう遅いのに。
私、人殺しなんだよ?――。
「……飯うまいか?」
「……おいしいです」
そして、私は私の弁護人をした佐藤 優さんと暮らし始めた。
初めの頃はとーっとも冷たかった。
けれど、どこかで私のことを思っていてくれていて、誰よりも私を知ってくれている人。そう思っている。
「……優さん、私、間違ってたのかな」
「ははっ、それ初めてあった時も言ってただろ。何も間違ってやないさ。おれだって上司を今にでも殺してえよ」
暖かいハンバーグを橋で続きながら、ゆうさんに言うと、ははっと軽く笑って、私の頭を撫でてくれた。
ああ、暖かい。これを愛というのか?嬉しい。幸せだ。ふふ、前まではそんな文章に書くようなことを心で思ったことなんてなかったのに。
「花は生きているだけでいい。ただ死ぬな。俺はお前が年老いて死なないと仕事クビだからな」
「そうなの?私、責任重大じゃん」
「ああ、だから死ぬな」

死ぬな。
その言葉。いっちばん嫌いだったなあ。でも、今になるとその言葉が薬となる。
落下した先にあったのは幸せの玉手箱。

6/18/2024, 1:16:57 PM