『落ちていく』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
どこまでも落ちていく夢を見て、思わず飛び起きる。
周りはまだ真っ暗だったので、枕元にあるスマホを手に取り、時間を見ると午前2時の真夜中だった。
寝直そうとすると寒い空気を肌に感じた。
おかしい。
エアコンをつけているので寒くなるはずが無いのだ。
寝ぼけ眼をこすりながら、寒さの元をたどると窓が開いているようだった。
しかも閉まりきってなくて少し開いているというのではなく、窓全開である。
寒いはずだ。
寒さの原因は分かったが、ひとつ疑問が残る。
窓が全開で開いていると言うのに、私が今まで寒さを感じないのはおかしい。
つまりついさっき誰かが開けたということだ。
その瞬間、私は背中に気配を感じ、振り返るが誰もいなかった。
念のため部屋を見渡していると、窓の外からドサッという音がする。
何かを落ちたのだろうか?
そう思い外を見ようとして―
さっと横に体をずらす。
すると後ろから私の背中かを押そうとした人影が、勢い余って人影の体半分が窓の外に出る
人影は驚いたようにこっちを向くが、その顔には何もなく完全な闇であるため、私は相手が悪霊だということを確信する。
悪霊は体勢を立て直そうとするが、その前に私は力いっぱい悪霊突き飛ばし、窓の外に押し出す。
悪霊は何か言おうとしたようだが、そのまま下に落ちていく。
ここはアパート十階だ。
悪霊とはいえ、ただでは済むまい。
ここ最近、さっきの悪霊が毎晩窓を開けるので困っていたのだ。
しかし、悪霊は退治したので、寒くなることはあるまい。
私は清々しい気持ちで眠りに落ちていくのだった。
落ちていく
落ちていく。雲に浮かぶような心地で。
また最後になった。薄暗いフロアで、自分のデスク周りだけが明るい。ため息をついて、一区切りついたファイルを保存すると、ノートパソコンの電源をオフにしてバッグに突っ込む。そのまま部屋を出てセキュリティカードで最終の戸締まりをした。
エレベーターの方へ向かおうとした時、後ろから足音がした。まだ誰か居たのか。
「今帰りか?」
振り向くと彼が居た。同期の彼は頼りになるし気が合う方だけど、今は会いたくなかった。目線を合わせずに尋ねる。
「お疲れ、まだ居たの? 最終だと思ってもう戸締まりしちゃったよ」
「いい。あっちの会議室に籠もってた。荷物は持ってる」
「そう」
彼は立ち上げてるプロジェクトが佳境らしいけど、深く尋ねる余裕が私にはない。私の質問に簡潔に答えた彼は、歩きながらこちらを伺うように言った。
「何かあった?」
目敏いんだから。舌打ちしたい気分で思った。だから会いたくなかったのに。大雑把なところもあるくせに、こういう時はよく気づく。
――このタイミングで聞かれたら愚痴りたくなるじゃない。
エレベーターホールに着いて、下へのボタンを押す。階数表示を見上げると、こんな時間だからすぐに来そうだ。
「◯さんにダメ出しされた。理想はわかるけど、もっと現実を見て無駄を減らせって。……残業多いし」
他にもいろいろ言われたけど。
「上はそう言うわな。お前、仕事遅くないしそんなに気にすんな」
彼はさらに言葉を継いだ。
「……いつもお前は、クライアントの要望や会社の利益や理想とかのバランスを考えてるよな。そういうのしんどいと思う。
でも理想とか理念って絶対に要るんだよ。それがなければ人は手段を選ばなくなる。そうして、できるやつほど多くの人間を傷つける」
彼はそこで少し笑った。
「らしくないか。ま、体壊すなよ」
耳から入った言葉がゆっくりと胸に染み込むような気がした。この人は分かってくれている。目の奥がじわっと緩んできた。だめだ泣くな。
エレベーターが来てドアが開いた。乗り込んで彼の指が閉のボタンを押した。大きな手だ。ドアが閉じて、エレベーターが動き始める。
私は彼に表情を見られないように外を眺めた。この高層ビルのエレベーターはガラス張りで街の景色がよく見える。遅くなった時、一人でエレベーターに乗ると、この景色をひとり占めしている気分になれる。
「いつも思うけど、こんな仕事帰りに見るにはもったいない夜景だよな」
「……そうだね」
「お前がそうやってもがいてるの、俺はいいと思ってる。そういうやつは信用できるから」
低く呟く声に思わず彼の方を見た。彼は私を見ずに窓の向こうを見ている。
彼の耳がほのかに赤く見えるのは気のせい? 胸の鼓動がますます速くなる。そんな事をあんたに言われたら――。
頬が熱くなるのが分かった。私は彼から目を逸らして、ガラス越しに輝くビルの群れを見る。
エレベーターが滑るように下りていく。まるで夜空に落ちていくみたいだと思った。雲に浮かぶような心地で。
#97
きっともうあの頃のあなたは戻らないのでしょう。
きっとそうあの頃のあなたは幻だったのでしょう。
辛くて苦しくて、なんにもなかった私に、
神様が見せてくれた一時の夢。
その一時の夢に甘く浸ることは許されても、
夢を手にする傲慢な願いは
叶えられることはなかった。
微笑んでくれたあなたは、
優しく撫でてくれたあなたは、
暖かく包んでくれたあなたは、
ただの夢で淡い幻想で。
鋭くて冷たいその眼光と、
荒々しく掴みかかるその掌と、
突き放すような態度に声色だけが、
それだけが現実で本当で真実で。
本性で。
ただ偽りだった。
それだけのことで。
見限ればいいなんて。
わかっているのに。
離れればいいなんて
分かっているのに。
優しい頃のあなたが
目を閉じるだけでチラついて。
大好きだったあなたが
頭から離れなくて。
偽りでも
夢を見せてくれたあなたを。
どうしても、どうしても。
『私は、あなたが好き。』
【落ちていく】
【落ちていく】
ようやく泣けた
本当に泣けた
今までの悲しみや苦しみが
とめどない涙とともに
遥か彼方へと落ちていく
やがて涙は穏やかに流れ
私は静かにその川を渡る
この先に続いている
あたたかい光の射す方へ
仕事をしなくなる。
楽をするために逃げるようになる。
やがて、
それが普通になる。
いつの間にか、
怠惰になっている。
そして、
周りに人が居なくなる。
#落ちていく
日が昇り、僕は活動を始める。
モーニングルーティンを行う。
朝から、良い達成感を味わえる。
金曜日だ!
今日頑張れば、休みが僕を待っている!
という大きな希望を胸に玄関に行き、ガチャとドアを開ける。
外の空気が一気に口と鼻に流れてくる。
少し寒く、澄んだ良い空気。
さんさんと照らす太陽。
いい天気だ。
日中は、タンタンとやることをこなす。
あっという間に過ぎていく時間。
あ、もう帰宅時間。
よし、帰ろう!
今日は金曜日。
お風呂に浸り、鍋を作り、好きな音楽を聴きながら、ゆっくり食べよう。
やっぱり、ビールを飲みながら、ダラダラとテレビでもみるか。
金曜日の夜は、良いことしか考えられない。
これは、月曜日から頑張ったご褒美なんだろう。
頑張ったから、こういう気持ちになるだろう。
お疲れ様、自分。
お疲れ様、皆さん。
好きなことをして過ごそう。
もうこんな時間。
楽しい時間は、すぐに過ぎ去る。
その時間は短く感じるけれど、満足感が体に染み渡っている。
そろそろベットに入ろうかな。
僕は、わたしは、皆さんも
今日も眠りに落ちていく。
お題 落ちていく
落ちていく。落ちていく。
なんて書くと、有名なアニメの予告編みたくなっちゃう。
何に対して落ちていくんだろう?
いったいどこまで落ちるのか?
落ちた先にはなにがあるのか?
そして戻って来られるのだろうか?
そんな不毛な事を考えて、今夜もまた深い夜に落ちていく……
私の住んでる団地は5階建てで、そこの2階に住んでいる。
まだ小学生の時にいつも通り家に帰ってくると団地の入り口で
バシィ!と弾けて何かが割れた。
辺りが水で濡れていて、水風船の欠片が落ちていた。
団地を見上げると、4階と5階の間の踊り場から
水風船を投げ落とす手が見える。
すると瞬く間に水風船が落ちてきて破裂した。
仕方ないので、ちょっと離れて見上げていると
私を狙っているのではなく、真下に落として割れるのを
面白がっているようだ。全く…
この団地の子供か他所の子か知らんが、しょうもないな。
それにしてもまあ落ちていく水風船がなんか可哀想だなと
見守っていたら、地面に激突しても割れない水風船が
ぼよんと跳ねて転がっていったので笑ってしまった。
上でも大爆笑していた。
そのあと4階の住人にこっぴどく怒られているようだったが
後日聞いた話、全然他所に住むいい大人三人だったらしい。
…こわ。
あら、結構ですわ。そんな顔で着いてこられても迷惑ですし。貴方様はそこでみっともなく蹲っていらっしゃればよろしいのよ。
なにより、あちらでも貴方様にお手を掛けさせるだなんて、それこそ私の面子が丸潰れじゃありませんか。そんな思いを私にさせないで下さいまし!
……あら、もしやそれが目的? それじゃあ尚更ですわね。ここに残って下さいませ。
お忘れのようですからお伝えしますが、貴方様にも“お役目”があるでしょう。貴方様にだけ与えられた、とっても、とぉっても大切なお役目が。私には無いものが。
それは貴方様が自ら選んだことだとも伺っておりますけれど、そちらは果たさなくても宜しいのかしら? 貴方様が選んだものなのに?
これは私に与えられた、私にしか出来ないお役目ですわ。それを、貴方様は奪うおつもりですか?
……ええ、解っていただけたなら結構です。
そう、貴方様はここでいい子にお留守番なさればいいの。そうして貴方様が選び、与えられたお役目を果たすのです。それが、貴方様がここに在るただ一つの理由なのでしょう。
……いい加減泣き止んで下さいませんこと?
ああ、本当に鬱陶しい。いつまでも幼い人ね。
此処から落ちて、贄となるのが、私に与えられた唯一のお役目。そんな大切なお役目を恨んだことなど、私、一度たりとも御座いません。
これは私の大切な誇りです。
何人たりとも奪うことは赦しませんわ。
▶落ちていく #42
落ちた。落ちた。
必死だった。がむしゃらにやった。
好きなもの全部、預けた。
人生の100分の1、捧げたつもりだった。
ダメだった。何度見返しても変わらない。
終わりだよ。
飽きた。部屋にいるのに飽きた。
夕陽が浮かんでいる。まだ眠い。
疲れた。何もしてない。
お金が欲しい。無尽蔵の無駄を捧げて、
僕は見つけた。
最期に空が見れてよかった。
跳んだ。0.4秒。大差ない。
押した。1.0秒。支障あり。
飛んだ。2.0秒。動かない。
人員不足。短期ですぐに終わります。
頬を伝って
落ちていく涙
気づかれぬよう
あわてて背を向けた
涙声を悟られないよう
何も言わずに君と別れた
雨が降ってきて
地面に落ちていく
私の涙も悲しみも
落ちていけばいいのに
#落ちていく
#39
落ちていく
冬の夕陽が落ちていく。
いつもの駅にいます。二階に東西通路で、その真ん中が改札。西側の窓は大きく、夕陽が差してきます。空が真っ白になるくらいの冬の夕陽が。
高校生がゾロゾロと改札に向かって歩いてく。人生始まったばかりの歩み。こちらは、もうそろそろお終いの歩み。還暦過ぎの歩みです。何故かどちらとも重たい足取り。
生きてくのは、いろいろシンドイね、若くても歳取っても。
夕陽が落ちていく、いつもの駅に。
『落ちていく』
今日も来てしまった。唯一の楽しみである昼休み。オフィス近くの、広いとも狭いとも言えないような公園。端のほうにある小さな四阿に足を運ぶ。滅多に人が立ち入らないのであろうか、薄暗く、蔦が覆いかけている。
今日もそこに座っていた。病院着を身にまとう女性が。
スケッチブックを膝に乗せ、おもむろにペンを走らせている女性が。
「こんにちは...」
「どうも...」
素っ気ない挨拶を交わし、腰を掛ける。華奢なシルエットを横目に、今日も眠りに落ちていく...
嫌なことをすべて忘れられるこのひと時。
目が覚めると、いつも彼女の姿はなかった。
一週間前から始まった、この不思議な昼休み。何か話すわけでもなく、ただ同じ空間を共有する。
その、半非日常感を静かに楽しんでいた。
来る日も来る日も、いつもの場所へ足を運んでは、素っ気ない挨拶を交わし、彼女を横目に眠る。今考えれば、かなり変なやつだ。でもそれはお互い様だったのかもしれない。
ある日、眠りから覚めると、いつも通り彼女は居なかったが、そばに小さな紙切れが置かれていた。
「ボタンが解れてますよ」
小さく丸っこい字で書かれていた。
見ると確かに解れている。直してくれる"カノジョ"が、まだいればなぁ。もしかしたら、今頃夫婦になってたかもなんて空想に浸り、虚しくなる。
次の日、また目を覚ますと、紙切れが置いてあった。
「今度、一緒にご飯でも行きませんか」
正直驚いた。まだ、ほとんど話したこともないはずなのに、いきなり誘ってくるなんて。
もしかしたら...
淡い期待が脳裏を過る。
しかし、その期待は、あっという間に砕かれた。
また次の日、また紙切れを拾い上げる。
「いつか、一緒にご飯行きませんか」
やっぱりそうだよな...
彼女は記憶を失っていた。毎日の記憶を。
抜け落ちているのだ。その日あった出来事が何もかも。
彼女にしてみれば、僕は毎日初対面の相手なんだろう。
初対面の相手を、いきなりご飯に誘うなんて、勇気のある人だ。
やっぱり変わらない。不器用で大胆なところ。
彼女の記憶に残ることはもうないのか。
非情な現実を突きつけられ、声を押し殺して涙を流した。
数週間前のあの日から、もう動くことのない時計の針を眺めているようだ。
共に刻んだ数年の 思い出 が、底のない沼へ落ちていく。
そんな"カノジョ"を横目に。
#落ちていく
花が 花が
舞い落ちていく
水が 水が
流れ落ちていく
人も人も
いずれ堕ちていく
涙 涙
なんで落ちていく?
なんて なんで
唱えてるのでしょ?
今日もまた
落ちていく
あなたとの
想い出の世界に
微笑みと
涙の世界に
すでに
過去でしかない
不毛の地に
# 落ちていく (329)
落ちていく。楽しいかな。怖いかな?
人生で1度はやっておきたい。
バンジージャンプ\\ ꐕ //
落ちていく
見えていたものが見えなくなる
眉を顰めで、見当をつける。
一年前の私はこんなではなかったのに、
ああ、老眼。
落ちていく
花びらや葉
落ちていく
羽ばたいた
鳥の羽根
落ちていくもの
とても
儚く綺麗と
私は思う──
(2023.11.23/落ちていく)
夢の中で彼は、旅に出る夢を見たんだって。
思わず僕は、あいつを引き留めた。
朝の木漏れ日に紛れて、彼は歩き出す。
大学のキャンパスの銀杏並木は、既に落葉しようとしていた。冬の準備だろうか。
人をかき分けかき分け、あいつの名を呼ぶ。木枯らしに消えて、聞こえないらしい。
それでも追いかける。心配だから。
今日はそういえばオープンキャンパスだったか、学ラン姿の高校生やら、妙に着飾った教育ママさんやらを見ながら、呼び続ける。そして、あいつが横断歩道にさしかかったとき、声が届いたのか、こちらを振り返った。だからなのだ。その夢は、正夢になる。
そんな自分の、自責心に、後悔の念に、
落ちていく、おちていく。
今日こそ、出よう。
このままじゃいけない。これ以上この人と一緒にいたら私は駄目になる。じゃないとどんどん依存してしまうから。いけないと思えているうちに離れないと。まだ今なら間に合う。
そう決意した夜。日中はあんなに暖かかったのに今は真冬みたいに寒い。彼は夕飯の済んだ2人分の食器を片付けている。私は静かに立ち上がる。
「ちょっと、コンビニ行ってくるね」
「今から?」
「うん。牛乳切らしちゃってたから」
「そっか」
気をつけてね、と私に言いながら彼はシンクの前に立つ。何も勘付かれてはいない。このままこの部屋を出て、私は二度とここへは戻らない。さようなら、ありがとう。靴を履いてチェーンを外す私の手をいきなり後ろから掴まれた。
「どこへ行くの」
キッチンにいたはずなのに。知らないうちに真後ろに立たれていた。心臓が次第に速く動き出す。
「だから、コンビニ」
「噓だよ。キミの嘘はすぐ分かる」
そのまま後ろから抱き締められる。全てを包み込む優しい抱擁だった。途端に自分の体が鉛のように重くなってゆく。
今日こそは行動を起こそうと決めていたのに。やっぱり駄目だった。
「行かないでよ」
たったその一言だけで、私の心は観念してしまう。微かな抗いはもう姿を失くした。チェーンから手をゆっくり離す。やっぱり、この人からは離れられない。
「行かないでよ」
「行かないよ、どこも」
「……本当に?」
「うん。ごめんね」
結局今日も、無理だった。きっと一生無理だと思う。こうやってだんだん自覚も鈍ってゆくのだろう。知らず知らずにゆっくりとこの人の中へ落ちてゆくのだ。私が彼の心に依存してるのか、彼が私の心に棲み着いているのか。多分、どっちもだと思う。どちらも、片方が居なくなったらきっと駄目になる。私たちは、2つで1つなのだから。