『花畑』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
花畑
みんなホントに美しいね
中には咲くことができなかった花もいるのかな〜
咲いた花も咲けなかった花もきっと頑張ったんだね
目を閉じても美しいね
【花畑】
辺り一面に広がる、アニメみたいな花畑を
見てみたい。
おいかけっこしていたり、寝転んでいたり、
花冠を作っていたりといろいろな場面が想像
できますね。
#28「花畑」
地元で有名な花畑があって。
季節ごとに色々な花が咲いてて。
その中でも、ダントツの一番人気が向日葵で。
私も何回も写真を撮ってるし、友達に案内したりも。
なんだろう、とくに花が大好きってこともないのに。
何故かあの花畑には何度も行っちゃうんだよね。
もうね、呪なのかな?それともなにかしらの魔力?
なのに中には、そんな花を踏んだりする奴も居て。
ちゃんと踏まないように策だってあるのにさ。
そんな時はわざと大きな声で言ってやるんだ。
「ここの花を踏むと呪われるよ!ここ有名だなら」って。
そしたらすぐに柵からでるんだよねwww
そんなことをしちゃう私だから。
私自身が意識しちゃってるのかもね、だって綺麗だし。
大切にしてほしいし、またあの花畑をみたいから。
けど今更「呪われるは言いすぎたかな?」って。
よく言う頭の中がお花畑が
私である
詰めが甘かったり
楽観的過ぎる
ただ
そういう感じも悪くない気がする
陰鬱よりは良い
楽なのか
どうかは
分からない
他人になったことはないので
分からない
ただ
陰鬱な自分もある
無いことはない
頑張っているのかもしれないけれど
自覚は無い
自分のことすら
分からない
大丈夫か私
花畑
はあ、はあ。
息を切らしながらも、足を止めることはない。
「…もうすぐ、つくからね」
私は下を見て、彼の頬をそっと撫でた。
「ちょっとまだ土臭いね、もう少し洗ってあげるべきだったかな」
そう話しかけ、小さく笑う。
彼が返事をしてくれる事はない。
前に、彼と約束をしたのだ。
結婚式は、花畑の中でやりたいね、と。
ウェディングドレスを花畑の上で引きずり、明るい太陽の下で、みんなに祝ってもらうの。
二人でシャボン玉を吹いて、お花で冠を作って…。
ずっと夢だった。
だから今日、叶えに来たのだ。
まだ夜で森は暗いし、予定していたのはここでは無いし、シャボン玉も祝ってくれる人達もいない。
それでも私は叶わない。
貴方と結婚式を挙げられるのなら。
頭の中が花畑って、こういうことを言うんだろうな。
僕みたいな、諦めの早い奴。
もちろん他のことも言うかもしれないけど、僕はこうなのかなぁって思う。
なにかにやる気にはなるけど、1度やればすぐ飽きて、他の人に回したりする。
前の僕、そういうことを平気でやっていたんだって。
一部の人は、子供なんだからしょうがないみたいに思うのかもしれないけど。
やっていい事とやってはいけないことがある。
悪いことはしてない…けど、それで周りがどれだけ嫌な気持ちになったのかがわかる。
ちょうど俺の時かな。
腹が立ったから1度殺したけど。
人に迷惑はかけたくない。
かけられるのは好き。
そういうのが好きなんじゃなくて…何か物事を頼まれると、嬉しくて何もかも受け止めてしまう。
こんな僕でも頼られるんだ!こんな僕でも!って。
だからどれだけ面倒くさいと思ってても、嫌だと思ってても、無理してでもやってしまう。
人望がない人は、どんなことでも嬉しいんだよ。
まぁ、断れないのもあるかな…人から頼まれたものを、嫌だとはっきり言えない。
言うことも大切だとわかるんだけど…。断ったら嫌われる、迷惑がられる、辛い思いさせちゃうって。
いいように利用されやすい性格だね。
僕はそれでもいいって思うけど…友人さんは嫌だって言うんだって。
よく分からない。自分のことじゃないのに。自分はそんな思いしないのに。
こういう性格してるから、クズなんだけど。
花畑なんて撮るようなものじゃない。
便利な機械、所謂スマホやカメラってやつらが出てきてから人間はなんでも機械越しにものを見るようになった。
ふとした瞬間に出会う、綺麗な景色や花。
この感動を忘れぬようにと機械の中に閉じ込めるのが最近の流行りだけれど、結局それをしたところで常に見返すわけでもないだろうと周りの奴らを見て思う。
それに気づいてからスマホは持ち歩かなくなった。
今は綺麗だと思った花や景色に出会ったら、何年経ってもすぐにその情景を思い出せるくらいにまじまじと見つめている。
目があるのだから、記憶する力があるのだから、使わずに生きるのなんてもったいない。
誰よりも人間を満喫してやるさ、私は。
青い空の下には、色とりどりの綺麗なお花。
赤いお花、白いお花、ピンクのお花、黄色いお花
花びらの上で蜜を吸っている蝶や蜂
麦わら帽子に虫取り網を持っている子供
それを幸せそうに見ているパパとママ
コーヒーを片手にベンチに座りながらお花見するカップル
杖をつきながらお散歩するおじいちゃん、おばあちゃん
《花畑》
九の月。
いつだってこの月になると、私の心は暗くなる。深い深い沼へと沈み込んで行くのだ。
まだ青さを残した木々は、まるで嘲笑うかのように窓の外で揺れる。
「……やめて」
そんな筈はないとわかっていながら、制止の声を上げて蹲る。
きっと、窓の外へ行けたら、お前を叩き切ってやるのに。
恨めしくそう思っても、どうせ行けやしないのだ。考えるだけ時間の無駄というやつである。
ちょうど立ち上がった時、扉の向こうに気配がした。誰か来たのか。
「……なに」
短く聞くと、相手は遠慮なく扉を開いた。
私が目を覚ましていればそれだけでいいと思ったのか。
「失礼する。ご機嫌いかがかな、俺のお姫様?」
「誰があんたのお姫様よ!」
使用人の誰かかと思えば、まさかの友人枠。
幼馴染のベンジャミンだった。
失礼する、と言ったのも礼儀としてだろう、本人は一切気にした風もなくずかずかと部屋に入って来る。
「というか淑女の部屋に許可もなく入るとか論外よ! 出直してきなさいな」
「うん? ああ、大丈夫だ。俺はソフィア以外にこんなことしないから!」
眩しい笑顔で何言ってるんだろうこの人。
「それは私が淑女じゃないってこと?」
「いや、ソフィアのことだから身嗜みは既に整っているだろうし、時間を取るまでもないだろうと。それと、君は乙女だからな」
「信頼どうもありがとうだけど、なお悪いわよそれは!」
付き合っていられない。
いつものことだが、この調子ではいつになれば本題に入るのかわからない。
私がソファに座ると、ベンジャミンも対面に腰を下ろした。
人の部屋には勝手に入る癖に距離を取る辺り、礼儀はなっている男である。
「……それで、なにかあったの? 突然尋ねてくるなんて珍し——くもなかったわね」
ここ十日ほどなかったため忘れていたが、この男、三日に一回は我が家でくつろいでいるのだった。その内ひと月に四回は連絡も寄越さずに来て、誰に止められることもなく私の部屋まで通される。
幼馴染とはいえ年頃の令嬢と二人っきりというのはいかがなものか。と、苦言を呈したいが一応彼もそこは考えているらしく、いつも扉は半分ほど開けたままにしてある。
まあ男爵令嬢と子爵令息がどうなろうと揺るぎはしない社交界だが。
また今日も——今日は、扉を閉めている?
「……なに」
私の口から零れたのは、先ほどと同じ言葉。
けれど、そこには先ほどとは似ても似つかない非難の色を込めていた。
ベンジャミンが私と二人きりのときに扉を閉めるのは、これで二回目だ。一回目は、幼少期から少年期に差し掛かる頃。
そして、あれから一度も忘れたことのない彼が再びそれをした。とあれば、なにか意図を感じずにはいられない。
「そんなに警戒するなよ、ソフィア。大丈夫、なにも取って食おうってわけじゃないから」
「なにを——」
「今日は外に出ないのか? こんなにもいい天気なのに」
唐突だった。少なくとも、私にとっては。
たしかに空は澄んで涼しい気候の今、外へ出るのは気持ちがいい筈だ。
それだけのことを言う為に扉を閉める、この会話がそんな終わりではないだろう。
いや、本当は私はわかっている。
ベンジャミンがなにを言いたいのか。
「——いやよ。私は外に出られないわ」
「出たくない、の間違いだろう? ソフィア」
「そうじゃないの。出ることができないのよ、私には」
どうして。
ベンジャミンにだけは誘われたくない言葉だ。
わかっていて口にしたのか、彼は私の頷くのを待つように視線を送る。
「本当よ? それに面倒でしょう、いちいち使用人を呼んで一時間以上かけて着替えて……髪だって編む必要があるし、それに合わせた飾りも」
貴方が思っているよりも女の子の外出は面倒なのよ、と私は笑ってみせた。
額縁通りに言葉を受け取った、そう見えていれば成功だ。
ただ、彼はその演技を見知った人間に対してすることを無意味と思ったのか、少し笑う。
「なぁ、ソフィア。また、俺に魔法を見せてくれないか?」
まさかの直球。一瞬呆気にとられたが、
「……無理よ」
と、返した声は思いの外弱々しかった。
しかし、明確な拒絶。その意図はたしかに伝わったろう。
ベンジャミンは思案顔をして、ややあって立ち上がる。
「わかった。なら俺の魔法を見てくれないか? 新しく覚えたんだ」
「……見るだけならね」
私だって、ベンジャミンが魔法を大好きなことくらい知っている。
だから、それに少し付き合うくらいわけないのだ。
揃って一度玄関まで行き、中庭に出る。
花壇の花々も数多ある木々も、随分と楽しそうに風に揺られている。
周囲に問題がないようにと、念の為端っこの方で足を止めた。ここなら低木を気にするだけで済むからだ。
後で庭師に怒られるのは私だし、そもそも植物だって可哀想だから被害は最小限でいい。
「なんの魔法を覚えたの? ……って、もう聞いてないわね」
魔法は貴族であれば誰でも行使が可能だが、ベンジャミンは得意とはしていなかった。寧ろ逆で、苦手の部類に入る。
こうして、人が話しかけてもそれに応える余裕がないくらいに集中を高めて行使しなければならないほどには。
白く光り輝く魔法陣が、彼を中心として展開された。
私は彼の近くに立って、先程の軽薄さが鳴りを潜めた真剣な横顔を見つめる。
「【花よ花ども、今一度。咲けよ咲えとひとひらに】」
詠唱に呼応するかのように、魔法陣は魔法の規模に合わせて大きく広がる。
そして魔力の流れに沿ってゆっくりと回転し始めた。
「【いざ、花開け。その名の如く】!」
光が一際強くなった途端、私の目の前に花が——十輪咲いた。
私の好きな蒼い色の、小さな花だ。
「……きれい。素敵ね、ベンジャミン!」
しゃがみこんで、可憐な蒼い花弁を散らさぬようにとそっと撫ぜる。
ふわりと揺れるその花は、日に照らされて一層きれいに映った。
「……うん、まだ咲いた方だ」
ベンジャミンの呟きに、今更だが、魔法陣の規模に対して効果が少なすぎることに気付いた。本来であれば、この一角を埋め尽くすほどは咲く筈の魔法だったのか。
「これって最初は何本だったの?」
「……初めて成功した時は一輪だけだった」
「なら上達してるんじゃない! それにこの花、少しの方が可愛らしくて私は好きよ」
ね、と彼を見上げると、その表情の暗さがよく見える。
まあ、完全に成功したとは言えないか。
ため息を吐いた私は立ち上がって、ベンジャミンの手を取る。
「今のは魔力操作が甘かっただけよ。もう少し頑張れば、きっと、たくさんの花が咲くわ」
「……本当は、もっと咲かせられると思ったんだ」
「そんな顔しないの。ほら、もう一回見せてちょうだいな。ベンジャミン、貴方ならできるわ」
落ち込んだ様子の彼に、流石に私も調子を崩される。今までも魔法でつまづくことはあったけど、この顔は何年経っても慣れない。
「……ソフィア。魔法の発動を手伝ってくれないか?」
「い、や! 私は、もう魔法なんて使わないって言ったでしょ」
誰よりもその理由を知っているくせに。
「花を咲かせるだけの魔法だ。誰も傷つかない。花に埋もれたって大丈夫だから」
解きかけた私の手を、今度はベンジャミンが強く握った。
「俺は、花に負けるほど弱そうな男なのか?」
「それは……思わない、けど……」
「なにも一人で魔法を使って咲かせてくれと言ったわけじゃない。ただ、魔力操作を手伝って欲しいだけだ」
「……あんたに怪我を負わせた、私に?」
今だってあの光景を、鮮明に覚えているのに。
——そう、あれは今から三年前の九の月。
私とベンジャミンはこの庭で魔法の練習をしていた。
当時は彼も私も、同じくらいには魔法が好きだった。でも、私の方が得意だった。
魔力操作だって上手にできたし、そもそもの魔力量も多かった私は魔法をたくさん扱えた。
それが、いけなかった。
ベンジャミンが使うことの出来ない魔法を見せてあげたくて、私は——庭を炎で埋めつくした。
庭師の作り上げた庭だ、美しかったその景色は姿を変え、ただ炎を拡げるだけのものへとなってしまった。
私にはその魔法を止めることもできず、暴走する魔法陣に命までもを吸い取られないよう踏ん張ることだけが意識の中にあった。
だから、ベンジャミンのことなど頭から抜け落ちていたのだ。
炎に呑まれ気を失った彼のことを。
結果的に大人が救出してくれたから良かったものの、彼はその一件で背中に大きな火傷を負ったのだ。
なにより、それで怪我をしたのがベンジャミンだけだったという事実が私を苦しめた。
その件で顔に傷でも負っていたら、まだ心が安らいだかもしれない。
だのに、私が負ったのは数ヶ月で治る様な小さな火傷を少しだけ。
彼が目を覚ましたとき、私は謝りながらたくさん泣いた。けれど、ベンジャミンは笑ってこう言ったのだった。
「ソフィアに傷がなくて良かった! それに、あの魔法は危険だったけど……初めて知った魔法だ!! きれいだったよ!」
その言葉がどんなに優しくて、心に傷を負うものだったかベンジャミンは知らないだろう。
こんなにも優しい人を傷付けてしまったのだと知った、あの衝撃を。悲しみを。
驕りのあった自分に対する、後悔を。
魔法を行使した自分に対する、軽蔑を。
思いの外精神的にも大きな傷を負ったからか、あの日から私は魔法が使えなくなった。
感情がぐちゃぐちゃになった所為か、魔力が上手く流れないのだ。
魔法は術者の想像次第で変わるからこそ、精神状態も反映されるという。
私が魔法を使えなくなったのは、当然の道理だった。
「——そうだよ、ソフィア」
それなのに。
ベンジャミンは、私を魔法に近付けようとする。
「なんで……私は、もう魔法が使えないのにっ」
「そんなことはない。絶対に使えるさ、ソフィアなら」
手を振り解こうとすると、彼の指がするりと指の隙間に入ってきて、更に強く握られる。
「っ!? ちょっと、」
「ソフィア。君は魔法を忘れてなんかいないんだから、大丈夫だ。今だって魔力操作は覚えているだろう?」
「……いいえ。今の私は、魔力が乱れて操作どころじゃないわ。ベンジャミン一人の方がきっと上手くいくもの」
「ソフィア」
名を呼ばれ仕方なく目線を合わせると、真っ直ぐな目に射抜かれる。
ああ、私はこの目が好きだった。
「魔法は嫌いか?」
いつだってこの目は、私の本心を見付け出してくれるから。
私がたくさん理由を重ねて、隠して、どこかへ追いやってしまった想いでも。
変わるべきだったのに変われなかった、どうしようもない私を見付けてくれるから。
「——好きに、決まってるじゃない」
だから大好きなんだろう。
私はあの事件で魔法を嫌いになるべきだった。大嫌いになって二度と関わるものか、と言い切ってしまうべきだった筈なのに。
「大好きに決まってるじゃない……! だって魔法はきれいなのよ、ずっと、ずっと大好きなのよっ……!」
魔法という名の、奇跡が好きだ。
私はどうしようもなく魔法が好きで、それが誰かを傷付けたとしてもその気持ちは変わらなかった。
「奇跡みたいでしょう? 素敵なものでしょう? 魔法は誰かを傷付ける為のものじゃない、笑顔にする為の奇跡なの……!!」
それを自分自身で裏切ってしまったことが、ただただ衝撃的だった。
魔法をそんな風に扱ってしまった私が嫌いで、魔法は大好きなままだった。
「……なら、俺と一緒に花を咲かせてくれ」
「私にはできない。だって間違えたんだもの、魔法の価値を」
「俺のお姫様は、そんなつもりであの時炎を放ったのか?」
「そんなわけないでしょ!」
敢えて「お姫様」と呼んだのは、彼の優しさだろう。俺の、はこの際無視する。
「だったら問題ないなー! さあ、諦めて魔法の行使を手伝ってくれ」
「だから、私は」
「大丈夫だ。ソフィアは俺を信じてくれさえいればいい。そうだろう?」
「……私じゃなくて、魔法の下手なあなたを?」
「それは言うな!」
耳まで赤くしたベンジャミンに思わず吹き出すと、彼も笑った。
ああ、今なら、花を咲かせるくらいの魔法は大丈夫かもしれない。
大好きだった、魔法を、もう一度。
暴走しないように、あなたの手に導かれて。
深呼吸をして、手を強く握り返す。
「ベンジャミン、詠唱を」
「! ああ——【花よ花ども、今一度】」
手から魔力を繋げて、今にも暴れ出しそうなベンジャミンの魔力を私の魔力で包み込んでいく。
不必要なところに広がらないように、魔力の通るべき道を指し示していく。
「【咲けよ咲えとひとひらに】」
そうして拡がった魔法陣は、先程より大きなもの。それがゆったりと音に連れて回転する。
「【いざ、花開け】」
魔法陣から零れた光がふわりと拡がって、辺り一帯を伝っていく。
「「——【その名の如く】」」
気が付けば私の口からも音が漏れていた。
あ、と気付いた時には白い光が世界を埋め尽くしていて。
「……わぁっ!」
「……おぉーっ!!」
光が収まって、すぐ目に入ったのは、蒼。
庭の一角に留まらず半分程を覆う色だ。
「……花畑できちゃったね……ベンジャミン」
「あぁ……ああ! やっぱり凄いな、ソフィア! 格段に魔法がきれいに行使できた」
いや、そんな笑顔で来られても。
「元の魔力量はあなたに依存してたから、ポテンシャルはこれだけあるってことでしょ」
「なら、今引き出してくれたソフィアに感謝だな! ありがとう!!」
可憐な花々には悪いが、ソフィアの視界には今ベンジャミンの眩しい笑顔とやらが満開である。心臓に悪い。
その輝くような表情から逃れるべく、繋ぎっぱなしだった手を引こうする。だが、ベンジャミンは離そうとしないで指を絡ませたままだ。
「ねぇ、離してほしいのだけど」
「なにを?」
「手を」
「……そんなことより、魔法が成功して良かった! こんなに咲くとは思わなんだ」
「いや成功は嬉しいけど……驚いたのは私も同じだけど……離してほし、」
「というかこの後のことを考えていなかった! ソフィアのご両親に叱られるだろうな、これは。庭を散々にしてしまった」
手は気になるがそれよりも気になる単語が聞こえてきた。
満開の花畑を眼下に、頭を抱える。
「……どうしよう、絶対にやり過ぎたわ」
「俺が全面的に悪いから、取り敢えず全身全霊で謝り倒してからどうにかしよう」
「子爵子息のプライドは何処」
「その前に人として謝るべきだろう?」
「それはご立派。けれどね、その前に思い付いて止める方がいいのよね」
「……好奇心には勝てないだろ」
「……私はなにも言えない」
花を咲かせるだけだ、と思っていたが庭師にとってこれはかなりの脅威だったのではないだろうか。
とはいえ後悔しても遅い。
「……っ、決めた! この花たちを今から魔法で枯らす!」
「……ソフィア。やっておいてなんだが俺はそういう魔法を知らないぞ?」
ベンジャミンの瞳は不安そうに揺れている。
当然だ、できないものはできないのだから。
「ベンジャミン、この手、絶対に離さないでいてくれる?」
「約束しよう」
「ありがとう。……今から魔法を使う。上手くいくかはわからないけど、いいかしら?」
「……ソフィアが……そうか、わかった。俺が隣にいる、安心して使ってくれ」
信頼の目を向けられたのは、いつぶりだったか。私はとても嬉しくなった。
だからこそ、成功させなくてはならない。
「【花や花よ、誇り在れ】」
記憶の奥から引っ張ってきた、魔法の作り方をなぞりながら音を紡ぐ。
魔法陣が光を伴って展開される。
「【されど咲けば終焉を知る】」
回転する魔法陣は私とベンジャミンの頭上で輝く。
震えそうになる声を真っ直ぐに伸ばして。
「【さあ、花閉じよ】」
成功して、お願いだから。
そう願いを込めて詠唱する。
「【その名を逆さに】……!」
魔法の作り方はあっていた筈で、魔力も綺麗に流れた筈だ。
光に満ちた中、私の手には自然と力が篭っていた。ベンジャミンも。
「……成功だな」
美しかった花畑は姿を消し、元の庭に枯れた根が微かに残ってはいるものの元通りとなった。
私の魔法が成功したのだ。
「……うん、成功した。ありがとうね、ベンジャミン」
「なんだ、もっと感動するのかと思った。落ち着いているな」
「それはそうでしょう。魔法に感動するのはもう、貴方が先に魅せてくれたもの」
安心と綯い交ぜになった感情がせり上がってきて、視界の端が滲む。
「……ソフィア」
「ベンジャミン、ありがとう。私——わたしっ、魔法使えたのね……!」
零れる雫を彼の目に映したくなくて、顔を手で覆う。
どうしてか、涙が止まらない。
でも、嬉しかった。
こんな私でもまた魔法を使うことができた。
大好きな魔法が、また、手の中に在る。
「……ソフィア、おめでとう! これで漸く君を魔法の特訓に付き合わせられるな」
「……っ……ばか」
「ははは! 冗談だ、冗談! ……めでたい気持ちは本当だけどな」
「ああそう……まぁ、いつでも付き合ってあげるわよ。——私の騎士様」
かつての私が彼をそう呼んでいたことを、ふと、思い出す。
いくつから蓋をしていた記憶なのか、わからないけれど。
「俺のお姫様は寛大だな! 頼りにしよう」
「……だれがあんたのお姫様よ」
私がそう返すと、ベンジャミンはまた破顔した。
「これは手強い」、と。
馬鹿なあなたが大嫌いでした。
突拍子もない行動で周りを振り回しては、悪びれもせずのらりくらり。
人間として尊敬出来る点があるかと言われればそれもなく、おどけた調子でいけしゃあしゃあと私にベタベタと近付く、その性根。
あなたの、頭の中を覗いて見たかった。
いや、そんなことをすれば、脳が腐り落ちてしまう。
しかし、予想外の方向から引きずり回されるのは、もううんざりだったのです。
鬱陶しくて堪りませんでした。
あなたが消えてくれれば、どんなに心安らぐか!
そう思わない日はありませんでした。
私はあなたに対して嫌悪感しか抱きませんでしたが、どうやら周りの人間はそうではなかったらしいのが、とても不思議でした。
私が嫌った性格も、周りの目にはひょうきんに映ったようで。あなたは、ムードメーカーとして人々に親しまれていたのです。
それを初めて知ったのは、あなたの葬儀でした。
あなたは最初から最後までふざけた人間で、遺影すらもまともに写れないようでした。
白目を向いた、いわゆる変顔をしているあなたの遺影を前にしながら、人々は悲しみに咽び泣いている光景は、酷く馬鹿馬鹿しい。
そう言えば、あなたは写真が嫌いだったことを思い出しました。
交流関係は広かったはずなのに、誰も彼もあなたの写真を持ち合わせていませんでした。
辛うじて存在していた数枚は、どれもまともな表情をしていませんでした。
まるで、自分の顔が人々の記憶から消えることを願っているようだと、そう、私は感じました。
葬儀は始終退屈でした。
理解出来ない言語を延々と連ねられているような感覚で、退屈は人を殺すという言葉が、身に染みるようでした。
長い長い時間をかけて、葬儀は終わりました。
虚無を抱いて、食事会の誘いを断った私は、電車に乗って遠い遠い花畑へ、足を運ぶことにしました。
この花畑は、あなたと訪れたことのある花畑でした。
ある日、私は私物のポラロイドカメラを、親に真っ二つに叩き割られてしまいました。
理由はテストの順位のことで、高校に上がってから学年一位を取れていなかったことを咎められたのです。
写真撮影は勉強漬けの私にとって、唯一の趣味だったので、これには随分と堪えました。
自分で撮影した美しい風景の写真を握り締めて、私はとぼとぼと近所を散策しました。
そこで、不運なことにあなたと遭遇してしまった。
落ち込んだ私の表情を一目見て、すぐにあなたは羽虫のように煩わしい絡み方で、私の周りを飛び回りました。
そして私の手の中にある写真を見付けると、しつこく何があったのかを聞き出そうと一層うるさく鳴くのです。
うんざりでした。
何故なら、私が一位を取れないのは、いつもいつもあなたが邪魔をするからで。
私が喉から手を伸ばしたくなるほど欲しいその席は、あなたの物だったのですから。
私は最初から最後まで、全てを説明しました。
屈辱感に劣等感。惨めでした。
翌日、笑顔で私の机の上に真新しいポラロイドカメラを叩き付けると、一言。
「写真を撮りに行こう」
周囲からの期待を背負う人生でした。
厳しく躾られたからでしょうか、そんな自分に疑問を持つことなど、無かったのです。
私がこうなってしまったのは、あなたのせいなのです。
あなたと訪れた花畑は、涙が出そうなほど美しく映りました。
少なくとも、当時の私にとって、この世の何よりも美しく映ったのです。
衝動のままに写真を撮りました。
この光景を、永遠の物にしたかった。
そして、周囲を手当たり次第に撮影して。
遂に、あなたがカメラに写りました。
美しい花畑の中心で、微笑ましそうに私を見つめるあなたを前に、私は――
小さなシャッター音。
目の前の花畑を私は撮影しました。
あの時とは違って、あなたが居ない花畑を。
さっそくカメラから出てきた写真を、私は一瞥もせずにライターの炎で燃やしてしまいました。
あなたが居ないという事実を、直視することが、何故か恐ろしかったのです。
嗚呼、どうか。
この花畑が、あの世のあなたにも届きますように。
『花畑』
お隣の寂しん坊将軍はさ、ミサイルなんかじゃなくて、花の種でも飛ばしゃいいのにな。
もしその種がきっかけで花畑が出来たりしたら、将軍様とお友達の会話にも素敵な花が咲くかもしれないぜ?
ミサイルなんかよりよっぽど将軍様と国家のためになる選択肢だと思うのですが……もしよろしければご一考いただけますと幸いです。
※この作品はフィクションです。実在の人物・団体・事件等とは一切関係がありません。
花畑
俳句では、
花畠(はなばたけ) 三秋
【子季語】
花畑/花壇/花園/花圃
【解説】
「お花畑」と「お」がつくと、一面の高山植物群を意味し夏の季語となる。花畠は秋の花々を咲かせたところ。(きごさいより)
別のサイトには、
花野、花園、花圃、花壇も秋の季語
とのこと
花畑 と お花畑 が違うとか
初見殺し…!
ちなみに三秋とは、8月8日頃(立秋)から11月6日頃(立冬の前日)までの3ヶ月間のこと 初秋・仲秋・晩秋
『花畑』
植物園やフラワーパーク、最後に行ったのはいつだったろうか。幼少の頃に花好きのおばあちゃんに連れてってもらって、おばあちゃん特製の重箱弁当を家族みんなで食べた。
あの頃は花よりも食べ物の方が気になって、
今ではもうどんな花が咲いていたのか忘れてしまったがおばあちゃんの手作りのおにぎりや卵焼き、料理名が未だに分からないアレ。はげた金色の水筒に手拭いのようなハンカチ。
美味しかった。楽しかった。
それだけははっきり覚えてる
-もう一度、食べたいです-
「花畑」
あれ…俺…車に轢かれて…
目の前に花畑と、遠くの方には川?
あれ…意識が…なくなっ………
花畑って、ロマンチックなようで、よく見ると泥くさい言葉だ。だって、「畑」だよ?!
花広場とか、花大地とか、まあどっちにしてもヘンだけど、他になんかなかったか?
畑っつうのは、大根や人参やキャベツやナスや…そういう場所。「農」の場所。
「花畑」には、そういう、食料とか、生活とかと結びついていないでほしいのよね。もっと、非日常であってほしい。
ま、見たら一瞬で現実忘れて乙女に戻っちゃうんだけどね。花って、すごいな
いつか来たことがある。
それは夢のようだった気もするし、
君と繋いだ手の感触や、
優しい風の匂いを覚えているから、
たぶん現実だったのだと思う。
髪が風になびいて眩しそうな顔をする君を見て
愛おしいと思った。
なに?と優しく聞き返す君に
なんでもないよ。と答える。
ただそんな風景には少しにつかない
メロディーが僕の頭の中に鳴り続ける。
ヴィヴァルディ
チェロ・ソナタ第5番アレグロ
僕は現実を夢に変えて
君との未来を放棄した。
君と話したことはほとんど忘れてしまったのに
素早いメロディーと生温い風が
今でも時々僕の耳に吹き付ける。
花畑
「あなたに合う花束を」
君は何色が好き?どんな花が好き?
僕は青と白が好き。優しい感じの花が好き。
妹は赤と紫が好き。可愛い花が好き。
父は黒と緑が好き。かっこいい花が好き。
母はピンクが好き。元気が出る花が好き。
かしこまりました!皆さんに合った
世界に一つだけの花束をお作りします!
あなたはどんな花束にしたい?
花畑
森の奥にある花畑は訪れる人の心の中を反映した様に姿が変わるらしい
ある人は名も知らない可愛らしくて小さな花がきれいに咲いていたといい、ある人はお日様のようなひまわりが見事だったといっていた
どの人もたくさんの花が咲いていたと言っていたのに、
今私の目の前に咲いているのは1輪の白いユリだけ
さっきまで聞こえていた鳥の歌声は消え、そのユリから目が離せない
これは私のなんの心を映したのだろうか
白い花畑の真ん中で目が覚めた。
ここは、妻と初めてデートに行った場所だ
どうして..、
貴方どうしたの?
不意に後ろから声がした
それは数年前に亡くなった妻だった。
つー…!
ごめん、ごめんっっ俺が浮気したからっ
……いいのだって貴方の事愛してたもの
幸せだったわ
妻は儚い笑顔でそう言った。
ほら、貴方の帰る所はあちらよ
決して振り向いては駄目よ
あぁ、わかった
俺は亡き妻との思い出に浸っていたかったけれど妻の笑顔がそうさせなかった。
俺は歩き出す、一歩一歩妻への贖罪を込めながら。
そうだ、これだけは言いたかったんだ。
俺は振り返る
花が赤く染まり、妻の顔がキスをするくらいの近さまで迫ってきた
『貴方だけ幸せになるなんて許さない』
・1『花畑』
コスモス。秋桜。
画角いっぱいのコスモス……のジグソーパズルをやらされている。
でかい。
これは難しいぞ……
【続く】