ぱう

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花畑

はあ、はあ。
息を切らしながらも、足を止めることはない。
「…もうすぐ、つくからね」
私は下を見て、彼の頬をそっと撫でた。
「ちょっとまだ土臭いね、もう少し洗ってあげるべきだったかな」
そう話しかけ、小さく笑う。
彼が返事をしてくれる事はない。

前に、彼と約束をしたのだ。
結婚式は、花畑の中でやりたいね、と。
ウェディングドレスを花畑の上で引きずり、明るい太陽の下で、みんなに祝ってもらうの。
二人でシャボン玉を吹いて、お花で冠を作って…。
ずっと夢だった。
だから今日、叶えに来たのだ。
まだ夜で森は暗いし、予定していたのはここでは無いし、シャボン玉も祝ってくれる人達もいない。
それでも私は叶わない。
貴方と結婚式を挙げられるのなら。

9/18/2024, 8:46:25 AM