恋の魔法
不思議だよね、恋って。
前髪が上手くいかなかったり、友達のちょっと嫌なとこ知っちゃったり。
体育でみんなの前で失敗したり、先生に怒られたり。
そんな小さな積み重ねで、気分下がっちゃって「今日はだめだめな一日だったな」ってなる。
できるだけ早く家に帰りたくなる。
でも、君に一言話しかけられるだけで、君と仲良く話せるだけでさっきの気分が嘘みたいに消えて。
私の心の日記は「今日もいい一日だった」に書き換えられる。
さっきまでの出来事が全て笑い話や楽しい話になる。
君に褒められた日なんかは、一日中良い気分だし、楽しいし、いつもの三倍私が可愛く見える。
これが恋の魔法ってやつなのかな。
だとしたら、君はいい魔法使いなんだね。
仲間
友達とか、クラスメイトとかは良くある関係だと思う。
けれど、日常で「仲間」という関係性は個人的にあまりピンとこない。
調べてみたところ、仲間とは心を合わせて何かを一緒にする間柄を長期にわたって保っている関係のことらしい。
ああ、なるほどなって納得できた。
と同時に、素敵だなと思えた。
目標が違くても、一つの関係として結びつける事ができるのだ。
身近でいうと、部活などのクラブチームだろうか?
まあ、私には程遠い話だけれど。
手を繋いで
あなたは唯一、私の手を取ってくれた人。
私が女でも、あなたが女でも、あなたに好きな男の子がいても関係ない。
繋いだ手は絶対に離さない。
離れないように、赤い糸でぐるぐるにするから。
だから、もう一度あの時みたいに私の手をとって。
手を繋いで。お願い。
ありがとう、ごめんね。
十三年間も続いた「親友」という関係に終止符を打ったのは私。
九年間、ずっと片思いをしていた幼馴染の彼。
「親友」という立ち位置だけでも満足していたのに。
きっと、あの時の私はすごく焦っていたと思う。
彼を他の人に取られちゃうって。特別を取られるって。
だから、言わないとって思った。
そして夏祭りの日、気づいたら告白をしていた。
「ずっと、ずっと好きでした。付き合ってください。」
私の言葉を、彼はただゆっくりと困った顔で聞いていた。けれど、彼が返事を出すのは早くて。
「ありがとう…でも、ごめんね。俺、美咲とは付き合えない。」
いつも優しい彼。
そんな彼の言葉に傷つけられたのは初めてだった。
ああ、失敗したなって、心の底からそう後悔した。
「ほら、美咲は優しいし、かわいいし。俺なんかよりも、良い人がいるよ。もっと美咲を幸せにしてくれる人とこの先、出会うかもしれないだろ。」
彼の必死なフォローから、まだ私と親友で居たいと思ってくれてるんだなって嬉しくなった。
でもね、君より良い人なんて居ないんだよ。
居たら、こんなに九年間も同じ人好きになんない。
私は…私が、君が良いって言ってんの。
言いたいことはたくさんあった。
けれど、涙が溢れない様、目に力を入れて、唇を噛むので精一杯で。
だから彼の質問に対して
「なあ…これからも俺たち親友で入れるよな?」
「…うん。ありがとう、ごめんね。」
泣きながらそう返すのが精一杯だった。
部屋の片隅で
部屋の端っことか、なんかこう囲われてる感じって落ち着くよね。
昔はよく部屋の隅にゲーム機とか漫画をたくさん持ち込んで、ブランケットを引いて過ごしていたっけ。
懐かしいなあ。
あの時の私には、部屋の隅が唯一落ち着く場所で。
なのに、あなたに部屋の外へと連れ出されてからは隅っこで過ごす事はなくなった。
だから、こうして部屋の恥で過ごすのは久しぶり。
…こんなにも、寄りかかる壁が冷たく感じたのは初めてだ。
最初から突き放してくれれば良かったのに。
一度愛してきたから厄介なんだよ。