『花束』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
3度目のデート
ランチ、映画、お買い物
王道デートコースだ
車に戻るとピンクと白で統一された
大きな花束が目の前にあらわれた
「好きです。付き合ってください。」
男性に花束をもらうのは初めてだった
王道デートにシンプルな告白に花束
なんでもいいよ、が口癖の私
実は案外ロマンチストなんだろうな
この嬉しかった告白を
塗り替えてくれませんか
はたまた私が塗り替えてやろうか
それもいいな、それがいい…
花束の重さが年々増していく。
1本の重みを知ったのは、
貴方がいなくなってからでした。
「卒業、おめでとう」
昼過ぎの教室。窓からは駐車場に向かっていく家族達が見える。泣いていたり、笑っていたり、卒業式の看板の横で写真を撮っていたり。きっと、彼らにとっては輝かしい青春の一幕となるのだろう。
そんなことを考えて物思いにふけっていると、教室の扉が音を立てて開かれた。こちらを見て目をまん丸にした彼女は、焦ったように弁明した。
「ご、ごめんね…!人がいるとは思っていなくて」
「別に気にしてないよ」
そう言うと彼女は安心したようにため息をついた。少し暗い茶色の髪をおさげの三つ編みをしていて、スカート丈も長い。学校で目立つタイプでは無いのだろう、3年A組のバッチをつけているのに、彼女の名前は思い出せなかった。彼女はおどおどしながら周りを見渡していたが、意を決した様子でこちらに話しかけてきた。
「あ、あの。あなたはつづきみはなさん?」
つづきみはな。都築美花。私の名前だ。肯定したが、見ず知らずの彼女が自分の名前を知っているのが少し不気味だった。彼女はその重いを知っていてか知らずか、話を続けた。
「あなたがここを去ってしまうまでに、話しかけようと思っていたんだけど勇気が出なくて」
手元を見ながら頬を赤くして話している。とりあえず横の椅子を引いて座ってもらうように促すと、彼女は「ここで、話させて」とそれを断った。
「今日を逃したらきっともうあなたに会えないと思って、急いで来ちゃった。帰ってたらどうしようって思ってた。」
埒が明かない。このままではきっと何時間も時間をかけて話すのだろう。要件を聞くと、彼女は一言、お礼を言いたいと言い出した。
「お礼?何の。あなたを助けた覚えはないよ」
「この姿で会うのは初めてだから。」
もしかしてこの子、不思議ちゃんなのだろうか。そう思い始めた時、ふと裏庭を思い出した。枯れかけた木下のベンチ。そこが自分のお昼休みのテリトリーだった。ある時、気まぐれで水をかけてやった事があったってけ。それからその木はみるみる元気になって……
「まさかとは思うけど…あなた、あの木?」
「そうよ!美花ならわかってくれると思ってたの!」
彼女は喜び、口元を緩ませた。
「あの時は水をくれてありがとう。それがあなたの気まぐれだったとしても嬉しかったの。居なくなった仲間も帰ってきて、裏庭はすっかり元通りよ」
居なくなった仲間とは、きっと花のことだろう。色とりどりの花に囲まれて食べるパンはいつもより美味しかった。記憶を思い返していると、彼女は後ろに隠していた何かを持って教室に入ってきた。
「美花、裏庭でよく話していたでしょう?オヤコカンケイもニンゲンカンケイも良くないって。よく分からないけど、きっとそれは辛いことなのでしょう?これからもきっとそれは続いて行くのだと思う。だけどそれはここでおしまい。今日は卒業の日なんだもの。辛いことも、嬉しいことも、きちんと終わらせなきゃ」
彼女は持っていたものをこちらに渡す。
それは、色とりどりの花束だった。
「これは、都築美花への餞別。もう私はあなたの話を聞けないけれど、辛くなったら思い出して。裏庭は、いつまでも美花の味方よ。この花束がその証明」
泣きそうで、それでも強がってありがとう、と呟けば、彼女は一言笑って言った。
「卒業おめでとう、美花!」
あなたが慈しんだのは、白。
ぱっと華やかな赤よりも、つややかに深い青よりも。
あなたの心の深くに根ざして、やがて咲いた色。
いつかなにもかも思い出になっても、忘れはしない。
かすみ草の花束を抱えた、あの日のあなたのことを。
#花束
花束を送りたいと思えるような相手がほしいと花屋の前を通るたびに思う。渡したところで邪魔になるのではとか数日たてば枯れてしまうものだとか相手に迷惑になるのではないかというそういうことをあれこれ勘繰って仕舞わないぐらいの信頼関係のもとでただ相手のために喜びが浮かぶように願いながら思いを込めて送ってみたいとぼんやり浮かぶ。案外に様々あるのだと思いながら幸せの花束みたいな愛をたくさん持ってみたかった。心から送り先のない愛がすっかりと枯れていくのをさみしく思いながら生きていく。どうしょうもないさみしいが根をはる心とともに。
鍵を回す。扉を押し開ける。振り返って鍵を閉めて、部屋の電気をつける。そうやって最初に目に飛び込むのは、一段高くなったフローリングに寝そべる、乾ききった花たちのミイラだった。
彼女がくれたものだ。
生まれてこの方二十五年、結婚どころか恋愛とも無縁だった。学生のときも、友人が気になる女の子にアプローチするのをその他大勢として教室の隅で眺めては、どこか遠い世界のことのように感じていた。
そんな俺がはじめて恋と呼べる気持ちを抱いたのはまあまあのやる気で受かったまあまあの企業の、ふたつ歳上の隣の部署の先輩だった。たぶん特別かわいいわけでもなくて、なにかすごく人を惹きつけるような人でもなかったけれど、それでも彼女の近くはとても居心地が良くて、そういう意味で人気な人だったと思う。
男の社員よりは女性社員に囲まれていることの方が多かったし、俺と接する時もきっちりパーソナルスペースを守って、少し遠くから様子を窺うような人だった。他人の物に触れる時は、必ずひと言断りを入れてから触れていたのが印象に残っている。
はじめて俺の家に来た時もそうだった。ドアノブ、スリッパ、洗面台、トイレ。彼女は律儀なまでにひと言断り、使い終わったあとはていねいにお礼を言ってきた。付き合ってからもそうだった。生き物が好きで、動物園や植物園によく一緒に行った。人のごったがえすシーズン真っ只中の花畑でさえ、列に十五分並んでようやく見れた芝桜にさえひと言、失礼しますと言っていた。そういう光景を見続けたものだから、俺も彼女の物に触れるときは、ひと言断るようになっていた。彼女の親に挨拶したときも、同居を決めたちいさなマンションに一緒に荷物を運び込んだときも。
血に塗れた白いダウンジャケットに、震える手で触れたときですら、その言葉は自然に口からこぼれ落ちた。
通りがかりの子供を庇って通り魔に刺された彼女は、そのまま帰らぬ人となった。ふたりでちいさな幸せを積み上げるはずだったマンションには、俺だけが取り残された。
俺は、彼女が運び込んだまま開けることはないダンボールひとつにすら触れられずにいる。それに指を伸ばしては自動的に喉が震えそうになって、そのたび、彼女と寄り添った時間がフラッシュバックする。彼女のあたたかさ、柔らかさ、いつまで経ってもていねいな口調が、まるでそこにいるかのように俺の周りをくるくる周る。気道が締まる。呼吸ができなくなる。彼女の命を奪ったくせに、のこのこその辺の誰かにやり返されてとてもとても安全な檻の中にいるアイツが許せなくて、殺意に頭が痛くなる。
だから。こんなに醜い気持ちに満ち溢れた身体で、きみが微笑みながらそこに置いた美しい花束に触れることなんて、できないから。
すべてが茶色に染まった花束は、まるであの上着にこびりついた血のかたまりのようだった。
俺は、今日もそれに触れられないまま、ダンボールに埋め尽くされたままのリビングに縮こまって、アイツが檻から出てくる日だけをただ、待ち続けている。
花束
個人的にはいいなって思います、花束。
いろいろな趣が感じられて。
色や匂い、花言葉なんかもオシャレで、貰ったあとに1人で意味とか調べちゃって。
花束って一時的な感情の高まりで勢いで買うと思ってて、だんだん花束が枯れていって、あげた側なんかもその時に込めた思いなんて忘れていくんでしょうね。
でもふとあの時とおなじ花束を見かけて
思い出すことがあったら素敵ですよね。
立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花。
あなたが花なら、それは素敵な花束だろう。
『花束』
「今までありがとう」とか、「沢山迷惑かけてごめんね」とか、「あなたと一緒にいられて幸せでした」とか。
そんな想いの一つ一つを丁寧に束ねて、貴方に贈ろう。
目の前に差し出された色とりどりの花々を見て、貴方はどんな顔をするだろうか。
ふわりと綻ぶ笑顔が見たくて、私は一歩踏み出した。
両手で抱えた花束を、貴方の元へと届けるために。
花束なんて、貰っても。
取って置けないし。嵩張るし。
現実的なことばっかり考えていた。
捨てる時なんて悲惨だ。しおしお。カサカサ。
やっぱり花なんてもらっていいものじゃない。
それが好きな人から貰ったらなおのこと。
会社のイベントの一環で手渡された小ぶりの花束。私以外にも渡している。
それでも間違いなく好きな人からだ。
どうしてくれる。未練がましく捨てられないではないか。
スマホでドライフラワーのやり方を調べることになるとはつゆにも思わなかった。
花束で伝えてくれたその思い忘れることは無いでしょう
ー花束ー
あの、これ落としましたよ
そう言って1本のバラを差し出してきた君
今思えば運命だったのかもしれないね
今度は僕から
108本のバラの花束を持って君に会いにいくよ
花束
お花はプレゼントするほうが多い
最近はアレンジメントでのプレゼントが増えたかな
お花屋さんから持ち帰る時、花束はその存在感をなかなか隠しきれない
大きくても小さくても関係ない
すれ違う人の視線を感じることも
確かに私だって逆なら見ちゃうしな
「これから誰に渡すのかな?」「プレゼント?」
「きれいだな!」「お祝いかな?」なんてね
花束って貰う側はもちろん嬉しいけれど
買う側もとてもハッピーな気持ちになれる
特にお店で出来上がる工程を見ていたら尚更だ
渡す相手のことを考えてワクワクする高揚感
そんな幸せを感じていると、私も花束の一部になったみたいに素敵なオーラを纏っているのかもしれない
明日は特別なことは何もないけど、自分のために好きなお花でも買おうかな~
なんのお花にしようか
明日の楽しみを妄想して幸せな気持ちで眠れそう!
私かなり単純です
母の日に買ったピンクのガーベラ
カーネーションじゃなくって
ピンクのガーベラ
おかあさんの好きな花
お仕事の日に駅前の
お花屋さんでラナンキュラス
花束じゃなくて2本だけ
はじめて自分のために
お花を買った誕生日
「花束」
君は花言葉なんて知らないかもしれないけどさ
君がくれた花の意味をひとつひとつ調べちゃうんだ
私は君にどんな花を返そうかな
色が散る 色は滲む
硝子のような透明に
花骸 花弁散り交ふ
色が滲む 水紋のよう
24時、独り孤月を眺めたり
地に落つる花を踏みつけにして
花は溶けて色滲むのみ
藍の海底に沈みけり
白骨の下キスをして
花弁散り交ふ 夢の中
お題【花束】
タイトル【心中愛歌】
#花束
風に揺られながらあの子に花束を渡した
学校の靴箱にドライフラワーの花束を置いた
白と水色で可愛い靴は邪魔だったから捨てた
皆恐怖のような顔で靴だけを見ていた。
ドライフラワーは綺麗だ
死をイメージさせる花と言われているけど
とても綺麗な花だと思う
彼女は死にたがっていた
花が枯れた
手首に増える傷、いわゆるアムカだ
僕は彼女を勇気づけた
家の鏡を割っておいたり、
文字が詰め詰めにされた札をポストに入れたり
彼女は泣くほど喜んでくれた
彼女が屋上から落ちてきた
真っ白な顔、目の下には黒く影が出来ていた
きれいだ…僕が望んだ彼女が見れた
僕は彼女の手を引いて橋を渡った
君だけが幸せになるなんて許せないよ
僕はきみに幸せを奪われたんだ。
許さないよ
いや、許せないんだ何をやっても
だから
僕は頭を冷やして空気になった
花束
きれいだし
飾っておきたいけれど
猫飼ってたらやめとこうかな
花によっては毒にもなるから
花束は大好きだ
お花そのものが大好きだ
純粋で強く美しい
たくさんでも
ほんの数本 一輪でも
そこにいてくれたら
明かりが灯ったように
その清らかな香りと光で
心を照らしてそばにいてくれる
花束を贈ること
優しく美しい静かな時を贈ること
花屋に勤めていたときがある。…と言っても、長くはなかった。
花屋さんごとに、お店全体の雰囲気が違うのだが、気にされたことは皆さんおありだろうか。花は生きものの種族のひとつだから、「どこの花屋だろうが皆同じ」などではない。違うのだ。
花がみんなドヤ顔で生き生きしている花屋さんで花を選ぶのが良いと考える。そういうお店は、花を大切に扱っている。わかりやすく「花が元気」、言葉を変えれば「品質が良い」のだ。
お題のイメージに水を差すような話になるが、葬儀の花輪の白菊を元気よくみずみずしい状態に在らしめる生花店は、ちゃんと花を扱っている。平たく言って、「花に無理をさせてない」、こころあるところだ。
昔、私が少しの間勤めた花屋は、そうではなかった。基本的に花は「モノ」として扱われていた。切り花といえども、生きる期間はそこそこある。しかしまだまだ生きられる花でも、一度使ったら放り出し、「それはもう捨てるから」と踏み拉いてしまっていた。そのくせ花輪のベースとして大きめの代金を取れる白菊は切り口を焼いて「水揚げ」して何度でも使い回す。暗く涼しい地下室に据えられた一口コンロのガス火で、束にして焼く。けれども、疲れはてて「火」で生命力を削られまくっている白菊たちが、その「水揚げ」で元気になんかならないのは、あまりにも当然だった。他の花屋の花輪の白菊と、その店の白菊の違いたるや、痛ましいほどだった。
私は白菊の扱いがどうであるかを知る前から、何とも言えない居心地の悪さや表現し難いストレス感を覚えながら仕事をしていたのだが、なぜその場所での仕事にひどい苦痛感があるのか皆目わからなかった。地下の冷蔵室に行く必要が出るまでは。切り口を火で焼かれるおびただしい数の白菊は、本当に衝撃の光景だった。花も生きてる。本来のありようとは真逆の「ひどいめにあう」とき、耳には聞こえなくても「叫んで」いる。
家の庭で、土に植わっている薔薇やラベンダー、水仙や鈴蘭やツツジの「安心感・安定感」に触れたとき、植物の放つ響きがあることを思い知った。
ある日、店の裏口前を通りかかった高校生の女の子が、ピンク色のグラジオラスが床に落ちているのを見て(そして踏まれて花弁の光反射が失せているのを見て)、迷いながら、でも嬉しそうにそのグラジオラスを持って行った。私は涙ぐんでしまった。そしてその仕事を辞めた。
花束は、贈り主があるならその心を伝え届けてくれるメッセンジャーだ。生きてるから。華道では「切るのだから最大に美しく、その生命を活かすべし」という考えがあると聞いたことがある。花は生きもの。親しいよき友として、暮らしの中に迎えてあげてください…