『脳裏』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
『脳裏』2023.11.09
脳裏に浮かんだのは、この黒ずくめの男がただものではないというヴィジョンだ
己の力で勝てる見込みはないし、逃げ遂せることも出来ないだろう。
なので、慇懃に「こんにちは」と話しかけてきた男に、同じように挨拶を返すことしかできない。
厄介なヤツに好かれてしまった。
オレがこうして「ここ」にいることが面白いらしく、男は小難しい言葉を並べながらニコニコと笑う。
よくよく話を聞くと、オレの古巣にいたリーダー格とこの男は遠い親戚のようなものらしい。
そんな気はしていた。文字を多く並べたような言い回しも、紳士然とした態度も。そして、辞書に載っているような「笑顔」も。
胡散臭いと形容するにふさわしい男は、オレが気に入ったようで、食事にでもいかないかと誘ってきた。きっと断ることを是としないだろう男は、上手く表情筋を動かして、ニッコリと笑った。
女の子なら卒倒しそうなぐらいの完璧な笑顔。端正な顔立ちからそんなものを繰り出されては、否とは言えないだろう。
男の魅力はともかく、今のオレに否と応えるだけの猶予は無い。
脳裏に浮かんだヴィジョンには、男が良からぬことをするイメージもいたからだ。
だから、オレは甚だ不本意ではあるが是と応えることしか出来なかった。
「脳裏」
海しかないじゃない
思い出すのは……
あの海は何処に行ったのだろう
今の海は何処に消えたのだろう
私には
分からない事ばかり
でもね
いろあって
悩んで
怒る事ばかりだったけど
誰に言ってるのかも
そんな事分からない
誰が聞いてるのかも
分からない状態
散らついた記憶と
元に戻せない時間
全て幻の海が引き起こした事の始まりだったから
頭から離れない
"脳裏"
空を見上げていると『あの雲の形、兎みたいだなぁ』って思ったり、『なんかこの葉っぱ、この前スーパーで見かけた洋梨みたい』って思ったり、たまに全く別の『何かに似ている』とちょっと面白がったり遊んだりしてる。
いい大人が何やってるんだ、ってその度に自分を叱ったりする。やめようやめようって思っているし気を付けてもいる。けどまたやってしまう。
こんなガキみたいな事、もういい加減やめたいのに…。どうやったらやめられるんだ…?
それぞれ違う目的地に向かってたくさんの人が行き交い交差する。夜だというのにこの辺り一体を明るくしてしまう電光掲示板。
人々の騒々しい声、重く鈍い音、うるさいブレーキの音が遠く聞こえる。
待ち合わせていた友人の最後の笑顔が脳裏に焼き付いていた。
『ほんとに女の子だ』
そう言って君が笑った。
何ヶ月も続いた文字だけのやりとりを
『遊びに行っていい?』そう言って終わらせた君は
想像していたよりもずっと華奢で
だけど想像していた通り 無邪気な女の子だった。
同じ年齢で 同じような傷を抱えて
バーチャル世界に逃げ込んだ私たちは
離れた場所にいたはずなのに、確かに出会って
異性だったら恋に堕ちるようなスピードで仲良くなった。
出会った頃は未成年だった私たちが
お酒を飲める歳になって
それぞれにパートナーを得て
家族を増やして
『おばあちゃんになったら さ…』なんて
未来の話をしたよね。
それなのに
君はおばあちゃんにならないことを選んだ。
ねぇ?
目を閉じて浮かぶのは
初めて会ったあの日に一緒に見たイルミネーションで。
何をどうしたら、一緒におばあちゃんになれたのか?
今も そればかり考えてる。
【脳裏】
蘇る。
ただ、
飛行機が見えた。
それだけ
なのに。
大丈夫だよ。
わたし。
もう
あの時の
わたしとは
違うの。
絶望
悲しみ
後悔
全部
あの時のもの。
わたしは
もう
今を生きる
ことに決めたから。
思い出してもいいから
落ち込まないで、
わたし。
#脳裏
脳裏には、いつも趣味で書いている小説のことがある
今はちょうど、登場人物の一人が新天地に旅立つところで、テレビを見ながら、頭の中には駅のホームの別れの場面があったりするんだ
もちろん、ちゃんとテレビも見てるよ
いつもそんな感じ
いつも僕の脳裏によぎるのはあの顔だ。
だけど今日は今日だけはいつもより美しく瞳に映った。
ただそれだけで僕の心は、はち切れそうだ。
脳裏
その金色の髪は晩夏の空の下で光を弾き、チカチカと跳ねるような輝きを脳裏に焼きつけた。
「もう金髪にはせんのですか、上官」
会議室からの帰り、西陽が差し込む休憩所で缶コーヒーを受け取りながら尋ねれば、相手は一瞬不思議そうな表情を浮かべたあと、いつものように苦笑した。
「さすがにねぇ。怒られちゃうから」
誰に、とは言わないが一人しか思い当たらない。いや、嫌味を言うであろう人物を含めれば二、三人は増えそうだ。
けれどもそれが金髪にしない理由ではないだろう。怒られようが嫌味を言われようが、彼は一度こうと決めたらそのままとりあえず突っ走る男だ。あとのことは走ってから考える。今も昔も、その点は変わらない。
だから亜麻色に染められている彼の髪が金髪にも元の黒髪にも戻らないのは、その必要がないからだ。
「金髪の方が良かった?」
「いや、驚くほど似合ってなかったなと思い出しまして」
「ええー……」
情けない声を上げながら反論はしない。それなりに自覚はあったのだろう。
「じゃあさ、黒髪のオレと、金髪のオレと、今のオレと。どれが一番好き?」
「黒髪時代は生意気だと思いましたし金髪時代は馬鹿やってんなと思いましたし今は面倒クセェなこいつって思ってますよ。なんですかその面倒くさい彼女みたいな質問」
「ひどい!」
「まあ、一番長く見てて見慣れてるのは今の状態ですかね」
その髪も、制服も。もはや好きとか嫌いとかの話ではない。
その言葉を聞いて指を折り、年数をちまちまと計算していた相手が「本当だ!」と今更驚いたように顔を上げた。
「いや、数えるまでもないでしょ」
「そうなんだけど、なんか改めて年数として認識したらびっくりしちゃって」
「そういうところですよ」
思いついたらそのまま、勢いで走り始めてしまう。まっすぐに前だけを見て走り続けているから、こうして昔話をしないとうっかり意識の外に放ってしまう。
もちろん、忘れることは決してないのだけれど。
少しも似合っていなかった金髪が脳裏に焼きついているのは、足を止めかけていた彼が再び走り出す決意を込めた、晴れやかな顔を覚えているからだ。
その瞬間を自分だけはきっと、いつまでも鮮明に覚えているのだろう。
脳裏に焼き付いている、あの人の顔を
ふと思い出すときがある
脳裏にちらつくこの記憶
身に覚えが無いこの記憶
周りに聞いても覚えが無いこの記憶
しかし確実に見えるこの記憶
探してみせようこの記憶
脳裏の記憶が分かるまで
この記憶と共にこの旅は続く
お題『脳裏』
したり顔横切る脳裏黒猫が
幸福を呼ぶ鍵となって
(脳裏)
脳裏 理科室 月夜 呼び出し 親友 嘘
相談事 戸惑い 苛立ち 闖入者 社畜 苦労話
芝居っ気 計算ずく 苦し紛れ 冷蔵庫
巧妙 ウサ耳 身じろぎ 凝視 心拍数
裏口 血眼 高架下 煙草 コート
扉 乱射 遮断機 急行列車 シャウト 逃亡
海の家 沿岸警備 病室 ついたて 手錠
薄れゆく意識 君の顔
「脳裏」
#244
「私はあなたを許さない」
そう言ってから離れて行く彼女が脳裏に浮かんだ。
起きていつものように写真を眺める。
愛おしい彼女はもう二度と戻らない。
「…っ…ごめんなさい…お母様……」
ほかの執事たちが貴族のパーティーで出払ってる時に
何かに打ち付ける音がしてそっと音のする方へ向かう。
部屋の扉をそっと開けて中を覗くと、自らの手で鞭を持ち、自身の身体に打ち付けているアモンの姿があった。
脳裏に焼き付いて離れないとはこの事だろうか。
あれからアモンを見るとあの光景がフラッシュバックして、涙が出るようになり、アモンを自然と避けるようになった。
アモンのことは嫌いじゃない。寧ろ大好きだ。けど、なんて声を掛ければいいか分からない。
アモンはそんな私を見て「俺のこと、怖いんすかね~」
なんて、おちゃらけたように言っていたが悲しそうに笑っているのがわかる。
怖い訳では無い、でも、貴方がどうすれば救われるのか私にはまだ答えが出ないのだ。
imagination
頭の中の映写機が頭蓋骨に投影する
そのタイミングはきっと今
外側の有限をシャットアウトして
内側の無限にアクセスした時
夢じゃない
※脳裏
300字小説
見覚えのない懐かしい景色
手術が成功し、退院してから、私の脳裏にある景色が流れるようになった。
穏やかな田園風景。緑の丘が地平線まで広がり、牧畜と思われる動物がのんびりと草を食んでいる。青い空に浮かぶ白い雲。緑の中の小道を子供達が笑いながら駆けて行く。
ドーム都市で生まれ、ドーム都市以外、ほとんど出たことの無い私には全く見覚えの無い景色。だが、懐かしさを感じる景色を描いてSNSに流すのがいつしか日課になっていた。そして……。
フォロワーのフォロワーを辿って教えて貰った場所に行く。農業区域の小さな町。脳裏と全く同じ景色が広がる。この町の誰かが脳死状態になり、その心臓が私に。
「帰って来れたね」
私は胸に手をおいて、そう語り掛けた。
お題「脳裏」
イメージする時って
おでこの辺りでしないかな?
例えば
しあわせな映像を思い浮かべる時に
おでこの辺りに見えたりしないかな?
おでこの裏とでもいう場所に
それ大切なんだよね
ふとした時にみえるもの
なんのことか
わからなかったりもするけれど
それは
映像でのメッセージ
君が感じたままが答え
君ならわかると思うから
その映像を送ってきてくれてるよ
〜脳裏〜
[脳裏]
ちゃんと横断歩道渡ってるだろうか
ちゃんと信号守ってるんだろうか
ちゃんと挨拶してるだろうか
友達と仲良くしてるだろうか
ふと脳裏に浮かぶ我が子の一日
実際、どうなっているんだろうなぁ。
天才も、奇才も、鬼才も、おんなじなんだろうか?
凡人が違うのは解るけど、きっと同じなんだろうな、見た目は。
”脳裏”に掠めるものなんて、たかが知れてるけれど。
どこまでいっても変わらないことが、すごく悔しかったりするんだよね。
脳裏