いぐあな

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300字小説

見覚えのない懐かしい景色

 手術が成功し、退院してから、私の脳裏にある景色が流れるようになった。
 穏やかな田園風景。緑の丘が地平線まで広がり、牧畜と思われる動物がのんびりと草を食んでいる。青い空に浮かぶ白い雲。緑の中の小道を子供達が笑いながら駆けて行く。
 ドーム都市で生まれ、ドーム都市以外、ほとんど出たことの無い私には全く見覚えの無い景色。だが、懐かしさを感じる景色を描いてSNSに流すのがいつしか日課になっていた。そして……。

 フォロワーのフォロワーを辿って教えて貰った場所に行く。農業区域の小さな町。脳裏と全く同じ景色が広がる。この町の誰かが脳死状態になり、その心臓が私に。
「帰って来れたね」
 私は胸に手をおいて、そう語り掛けた。

お題「脳裏」

11/9/2023, 1:02:06 PM