『胸が高鳴る』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
【胸が高鳴る】
それは色んなシーンで起こること。
例えば…楽しみにしていたこと
夢中になり興奮し始めること
何だかわからないできごと
人間の本能で起きること
酔いにより起きること
妄想に没頭したこと
危険を感じたこと
何か知ったこと
癒されたこと
嬉しいこと…のように
我々は今日もココロを弾ませながら旅だって行った。
……可愛いお洋服、綺麗な宝石、美味しいプチガトー。私の心を彩る魔法のアイテム。今日もMILKBOYで買ったお気に入りのスカートを履いて外に出よう。お店のショーウィンドウで着飾った私を見ると胸が高鳴る。
今日も私が世界一可愛い
はぁ「胸が高鳴る」
新しい会社、良い職場だといいな
これ以上自分を嫌いになる前に
辞められてよかった
仕事ってやらなければいけないけれど
それで悩まされたくないもの
もういいんだ、やった、嬉しい
楽しみすぎる
胸が高鳴る
ついさっき、彼から一言だけ
「〇〇、ごめん」とLINEにメッセージがきていた
今日のお題は「胸が高鳴る」だけど
高鳴るどころじゃねんだわ
返信もねーから、怖いし、不安だし、焦ってるし
どーしていいか分かんない
なにがなんでも
あんたにだけは、うんざりするくらい
縋ってやるんだから
私の胸の中も、頭の中もこんなにあんただけに
しやがったのに
無責任に捨てるなんて、絶対させないから
この瞬間を待っていた
ずっと会いたかった人に会える瞬間
この瞬間だけはドキドキして心臓がうるさい
なぜか不思議に歩く速度は速くなり歩幅は大きい
街のノイズさえも今は音楽
会う前の不安は会ってしまえば楽しみと嬉しさに変わる
こんなに幸せな気持ちになるのであれば、会えない時間も苦ではない
こんな幸せな瞬間がずっと続けばいいのに
胸が高鳴る____
2024.03.19
胸が高鳴る。きみの香りがする。動けなくなる。きみの声が聞こえる。まばたきすら惜しくなる。きみのぬくもりがすぐそこにある。わたしの世界が色鮮やかになる。
「紛れもなく、それは恋だね。」
唯一の親友の言葉がぼんやりとした頭に響く。
「初恋おめでとー。」
かけがえのない親友の視線は未だ小さな画面に向けられている。
わたしが何も返さないことを一つも不思議に思わないらしく、その目は動かない。まるできみに恋をするわたしのように。
「いやー、あたしも早く恋したいなあ。」
その言葉に心臓が踏み潰されたように、呼吸が荒くなる。
「ねー、どんな奴?」
決して広くない世界で、けれどその世界を丁寧に愛することができるひと、と言おうとした。
いま、目の前にいるひと、と言おうとした。
けれど、なにも言えなかった。
だって、きみを前にするとどうしようもなく唇が震えてしまう。
胸が高鳴る
待ち合わせには余裕がある時間なのに
家を飛び出して走る
きちんと整えてきた髪が乱れても
構っている余裕なんてない
君が来るにはまだ早すぎる時間なのに
そわそわと辺りを見渡す
我ながら挙動不審と思うけど
気にしている場合じゃない
もう少しで君に会える
それだけなのに
どうしてこんなに
胸が高鳴るのだろう
懐かしのバス停に一人たたずむ
あれから何年たったのか分からないくらい
時間は過ぎたけど
いまでも、あの場所に帰ってくると
手を振って送ってくれた彼の笑顔を思い出す
いくつになっても胸が高鳴る場所がある
整えられていない黒髪に、少しがに股気味の短い脚、お世辞にも高いとは言えない背丈。
私は、あの人を見た時に初めて、心臓の拍動する音を聞きました。
ふつふつと沸く血液が体内に流れて、身体中が熱くなったのを覚えています。
あの人は普通の人でした。目を引くような容姿をしていた訳ではありませんでしたし、一般的に見ると少し選り好みされる方でした。ああ、けれど、やはり顔は整っていたようにも思えます。少なくとも、悪く言われる貌では無かったと思います。
あの人は詩人でした。
綺麗な詩人でした。
綺麗な世界を書いているのでは無いのに、全ての詩が耳に美しく聞こえました。
あの人の声が耳に入る度に、私はこの人に尽くそうと思いました。他人の私が尽くそうと思っても、何もできはしませんけれど。
恋では無いのです。
恋のようなものではありません。
それは、キリスト教徒が神に拝謁するようなものなのです。自分が根本から作り変えられていくような、不思議な感覚がしました。
けれど、嫌悪感はしませんでした。今までの人生全てを失っても、この人に捧げられるのならば良いと本気で考えていました。
私はあの人を崇拝しています。あの人は神なのです。
あなたが分かってくれなくとも構いません。あの人の神聖さは、私だけが知っていれば良い。いえ、そうでなくてはならないのです。
ああ、あなたは可哀想な人!
あの人の美しさも知らないまま、死んでゆく!
私はあなたよりも早く死ぬのです
こんなにも心臓が早鐘を打っているのだから、私は誰よりも早く死ぬのと決まっています
それでも私は良いのです。あの人のために死ぬのなら、死ぬ理由があの人であるのなら、私は何にも構わない!
お題『胸が高鳴る』
高く跳ねる胸の旋律はあなたに奏でられたからわたしの心はあなた一人のオーケストラ。
日中の暖かい日差しを一掃するように、風が強く吹いた。方角はわからないけど、強くて冷たい風だ。私は思わず身震いした。
今朝、コートを羽織らずに登校しようとしたら、母に止められた。渋々いつもの紺のピーコートと白いマフラーを身につけて学校へ行った。友達はコートなしで登校している子も多かったから、三月にもなってコートを着るなんてちょっと恥ずかしいとさえ思っていた。
でもいざ放課後になって、部活も終える頃にはすっかり暗くなっていて、空気がひんやりする。日中の暖かさはどこへやら。あまりの寒さに冬へ逆戻りしたのかと思った。手袋は忘れてしまったから、手を擦り合わせたり、ポケットへ入れたりと忙しなく動かしていた。
こんなに寒い日は早く帰ろうと思う。でもなんとなくまっすぐ帰りたくなくてゆっくり足を動かす。ぼんやりと歩いていたら、いつもは通り過ぎていた本屋さんの前に差し掛かった。本は読まないし、欲しい雑誌も漫画も特にない。それでもいつの間にか足を踏み入れていた。
店内は人がポツポツといた。駅ビルの上層階にある本屋と比べて、こちらは静かで落ち着いている。いつも本屋へ行くと雑誌コーナーで立ち読むか、漫画コーナーで新刊をチェックする。今日はそんな気分でもないから、フラフラ店内を歩いていた。
文芸コーナーの中で一番目立つところに、厚みのある本が積まれていた。平積みの後ろには表紙が見えるように陳列されている。いつもなら気にならない場所なのに、思わず立ち止まってしまった。
著者は知らない。作品も知らない。本と一緒に並べられたポップには、"この町に住んで……"という見出しがついていた。"この町"とは、私が住んでいる地名だった。
急に親近感が湧いた。自分の住んでいる町に、小説家の先生がいる。郊外の閑静な住宅街である、この町に住んでいる人が、小説を書いて、本を作った。それがこの町の本屋に並んでいる。
不思議な気分で眺めていた。本の帯には"芥川賞作家"という文字が書いてある。ニュースで見たことのある言葉だ。とんだ有名人がこの町に住んでいる。どんな人なのか。どんな小説を書くのか。強く興味が惹かれて、ついには手に取った。
ずっしりとした重みがあり、硬いハードカバーに覆われていた。こんなに厚みのある本を手に取ったのは初めてだ。帯の背表紙や裏表紙の面を読んだ。"著者最高到達点"や"衝撃作"の文字を見て一気に期待が高まる。私はこの本を読んだら、読む前よりも賢くなるのかもしれないと本気で思った。
そんな熱も冷める文字を見つけてしまった。税込二千五百円。漫画だと五冊買えるし、雑誌は二冊でお釣りがもらえる。写真やイラストが載っていなくて活字しか並んでないくせに高い。高校生の買い物にしては高すぎる。
手に取った本をそっと戻した。誰にも見られてないからちゃんと確認して、平然と戻した。今月は好きなアイドルのCDリリース日が控えている。我慢するしかない。
諦めて棚から離れようとしたら、視界に入ってしまった。表紙を陳列している段に、なんと"著者サイン本"と書かれている。小説家の先生がこの本にサインしているらしい。この郊外の町で、サイン会でも開かれたのだろうか。でも、有名人のサインなら欲しい。棚に並んでいる数冊しかもうないみたいで、大変希少価値が高い気がしてしまう。
私はサイン本を手に取った。アイドルのCDはすぐにはなくならないけれど、このサイン本は絶対なくなる。それならすぐになくなってしまう方を買っておかねばならない。絶対これを逃したら、私は後悔する。
そうして、アイドルのCDに替わって買ってきてしまった。小説を読まない私が、どこの誰とも(一緒の町に住んでいる小説家)知らない人が書いたサイン本を。私は本を前にして、床に正座した。なんとなく、姿勢を正さないといけない気がした。
そっと持ち上げて、シュリンクを丁寧に剥がす。深呼吸をして、本を開いた。表紙を開けて早々、遊び紙のところに著者名と印鑑が押されていた。
「おおっ」
思わず声が漏れた。芸能人のようなミミズみたいななんかよくわからないサインとは違う。サインらしく少し崩れているけれど、ちゃんと著者名が読める。印鑑は四角い古印体だ。中学生の頃、美術の授業で彫ったことのある字体だから見覚えがある。なんだかこのページだけ御朱印みたいで神々しく感じる。
ただのミーハー心がくすぐられて、知りもしないのに買ってしまったけど、買ってよかったかもしれない。
私はページを捲って、とうとう本文に辿り着いた。ここからが、私自身との勝負である。せっかく高い買い物したんだからちゃんと読もう。読み切れるかの不安よりも、少しの好奇心が勝ってページを捲った。
この日から、新たに趣味の欄には読書の項目が加わった。
『胸が高鳴る』
夢にまで見た瞬間。
ついに願いが叶うと、確信めいた気持ちが膨らむ。
いつもより鼓動が早い。頭の奥が熱くなる。
恋にも似たこの感覚。
この瞬間、私の中途半端に長い人生は正にこの瞬間の為にあった。
耐えて、泣いて、呻いて、耐えて耐えて耐えて耐えて、いつか来るこの日の為に学んで、唇を噛んで練習して、何度も何度も繰り返した。
ようやく、ようやく願いが叶う。
絶対に離さないように何重にもテープを巻いて。
絶対に邪魔されないようにあらゆる場所に鍵をかけて。
さぁ、いよいよ。
あとは寝ている彼にめがけて、思いっきり両手を振り上げるだけ。
END
「胸が高鳴る」
手をにぎると
安心する。
ギュッってハグされると
ちょっと寂しくなる。
運転中、触れられる
手を拒否することもできなくて。
どうしていいのか、わかんない。
試されてる。
こちらが手を繋ぐのはダメなのに。
寝る時は手を繋いで、眠りにつく
あなたのお試しはなんだろ。
都合がいいのか。
その昔、自分のかいた作品を某SNSに投稿していた
始めたばかりの頃って作品についたいいね1コでも物凄く胸が高鳴ったもんだ
初心忘るべからず、と頭の片隅に置いてもいいねの数で一喜一憂することが多くなった
そりゃいいねがいっぱいついたら誰だって嬉しいさ
けど想定した数よりはるかにいいねがついたときは悪い意味で胸が高鳴った…なんというか不安になる
300字小説
とある春の日
朝の空の下、淡いピンクの吹き溜まりがところどころに出来た道を歩き出す。全く知らない街。ホテルで何度も確認した地図を見ながら地下鉄に乗る。一つ二つ、駅を通過する度に降りる人で空いてきた車内に似たようなキャリーケースを持った人が現れる。SNSのTLにも会場に向かう呟きが増えてくる。
最寄りの駅で降りる。可愛らしい女性が同じ方向に歩いていく。あの人がフォロワーのナオさんだろうか。あっちの男の人はトオルさんかもしれない。
会場の建物が見えてくる。このキャリーの重みが帰りにはどれだけ軽くなってくれるのかは解らないが、宣伝の呟きについた『いいね』を半分くらいは信じて。
胸を高鳴らせながら私は入場受付に向かった。
お題「胸が高鳴る」
Day.14
今日は球技大会で青春の1ページを飾った。
迫力のあるバレーバスケフットサルの試合に
胸が高鳴り、自分の出場機会でも胸の高鳴りを
感じた。でも、1番はあの人のドッチボール。
俊敏に逃げボールを目で追うあの姿、
わたしの中では1番胸が高鳴った瞬間だった。
私の中の優勝はあなただった。
胸が高鳴る
胸が高鳴る…貴方の一言一言や、貴方がする態度毎に…貴方は、私の恋人。そして、私の未来の旦那様。もう知り合って二年も一緒にいるせいか、私の胸が高鳴る事は、何か、全て把握されてしまったね…そして、イタズラな貴方は、その私の胸が高鳴る事全てを私の弱点を知り尽くし、それらを時にイタズラに悪用するんだ。私がキュンとしてしまう事や、私の弱い事全て、君は、時にちょっかい感覚でしてくる…そう言う所、少し苦手だけど、凄く好き…私が元気無い時も、キュンとさせては、私を喜ばせてくれる…そして、私が元気無い時とかは、私が今何を求めているかをすぐに察し、貴方は、それを実践してくれたり、実現してくれる…何て優しい人なんだろう…貴方って人は…こんなに人の愛や、温かさ、温もりとかを身に染みて感じたのは、生まれて初めてかもしれない…だからこそ貴方を手離したくない…永遠に貴方の隣を堂々と歩きたいんだ…
“鼓動” (テーマ:胸が高鳴る)
「おい!あれ見てみろよ!!」少年たちは青空を指差した。機械仕掛けの飛行船だ。飛行船はゆうに全長100mは超えており、船の上に丸い気球の様な物が付いていた。太陽の炎と風の力だけで動いているようだ。この国では飛行船を見かけるのは珍しい。王都に行けば多種多様の飛行船が見れるようだ。この飛行船には大砲はついていなかった。あるのは気球と魔法がかけられた帆だけだ。きっと観光用か金持ち貴族の娯楽で造られた飛行船なのだろう。船の細部にはゼンマイや歯車など時計の部品の様なもので造られていた。
少年たちは胸を高鳴らせ、どうしたらあれに乗れるのだろうと討論しあった。1人の少年リュークは目を輝かせ、大きくなったら飛行船の操縦士になると心に誓った。リュークは周りの子供達に比べ、小柄だった。肌は雪をも嫉妬させる程の色白で、髪は朝焼けの様に眩しい金色。瞳は海を連想させる程の碧眼で愛らしい少年だった。リュークの家はとても裕福とは言えなかったが、愛だけは底なしだった。
リュークが操縦士になりたいと言った日も、父も母も否定することもなく笑顔で頷き受け入れてくれたのだ。
それから月日は流れ、リュークは操縦士の夢を叶え王都へと飛び立った。背丈は伸び、あどけなかった顔付きは勇ましく凛とした青年となった。ただ飛行船を初めて見た時の胸の高鳴りと瞳の輝きは残されたままだった。
初めての胸の高鳴りを刻み込むように。
次の年、リュークが操縦士2年目を迎えた年だ。
リュークが人生で2度目の胸の高鳴りを覚えたのだ。
そう、恋に落ちたのだ。飛行船での乗客を目的地で降ろし、飛行船のメンテナンスの為に整備場へと向かった時だ。「整備担当になりました。エレナですよろしく。」と声が後ろから聞こえた。振り返るとそこには、ルビーの様な綺麗な赤い色をした瞳と髪、赤色が映える綺麗な肌。目鼻立ちはシャープで美しく、女神が降りて来たのかと思う程だった。女性整備士というだけでも珍しいのに、こんなに美しい人が整備士に居たなんて。
リュークは時が止まったかの様に動きが止まった。酷く胸の音が耳に響いた。近くにいる誰もが自分の胸の音が聞こえるのではないかと錯覚するほどに。飛行船を初めて見た時の胸の高鳴りとはまた違う高鳴りだ。
微動だにしないリュークにエレナは不思議そうな表情を浮かべる。リュークは声を絞り出し「よろしく。」とだけ言い、顔を背けた。リュークにとってこれが精一杯だったのだ。
それから何度も会う機会があり、リュークはエレナの美しさに慣れることはなかったが、ある程度の会話はできるまでになった。そうして次第に打ち解け合い、2人は休みの日にはどこかでお茶をしようと一緒に出掛けるようになった。
リュークは人生3度目の胸の高鳴りを覚えた。1度目の時と2度目の時とはまた違う胸の高鳴りを。
焦燥感と不安感が混じった胸の高鳴りだった。今日はエレナの誕生日。両手いっぱいの花束と共に、愛の告白をしようと決めたのだ
待ち合わせの時間、時計台でエレナを待つ。胸の鼓動が激しく煩い。両手には汗がジワッと感じる。向かいからエレナが手を振り小走りでリュークの元へとやってくる。エレナがリュークへ朝の挨拶をしようとした瞬間、リュークは片膝を着き、まるでおとぎ話にでてくる王子様の様にエレナへ花束を渡した。
エレナは少し戸惑いながらも花束を受け取る。リュークは少し震えた声で「好きなんだ、付き合って欲しい。君さえ良ければ。」と真剣な眼差しでエレナを見つめた。エレナは顔を赤らめ大きく頷いた。「もちろん、もちろんイェスよ!」とそして「こんな素敵な誕生日は初めてだわ。こんなに胸が高鳴ったのも!」と満面の笑みで花束を抱きしめた。
ノヾ。_-*
/" ・;ヾ。`-;ゞ
`*;/`-。*
ヾ/ /`*ヾ:`- 春
|(_/`
川 ⋀,,⋀
川. _ (* ´ ω ` ) _
川.|.≡ (つ旦0. ≡.|
川`.T ̄ ∪∪  ̄T
【胸が高鳴る/168】
創作 「胸が高鳴る」
あいつの家をついにみつけた。寒さの厳しい北の高原にぽつりと佇む一件の家。ここにあいつが暮らしているはずだ。はやる気持ちを抑え、ドアをノックする。彼はすぐに現れた。
「久しぶり、元気してるか」
彼はしばしぽかんとして、
「軟禁状態のやつに元気もへったくれも無いだろう」
と、うんざりした様子で返してきた。 どうやら調子は以前と変わらないらしい。
テーブルを挟んだ向かいに彼が座った。俺の前にそっと紅茶が置かれる。
「あんたが来たのは、どうせ『うで』についての話しをするためだろう」
「流石。なら、単刀直入に言う。お前は何も間違ったことはしていない。『うで』がヒトに関心を持ったことは、ただの事故だ」
「王の命令に背いて、支給された文章以外を読ませことが間違いでは無いだと?ボクは好奇心の赴くままに、王の命令を蹴ったんだ。これがただの事故であるとでも?」
「なら、なぜお前は生きている。『うで』もこうして紅茶を淹れてくれた。それがどうしてなのかお前がわからないはずが無いだろう?」
俺たちはにらみあう。やがて、先に折れたのは彼の方だった。
「薄々、気付いてはいた。こんなへんぴな所にとばしといて、ボクと『うで』が生きていくのに必要なものは毎月届いていた。王はまだ、ボクに研究をさせたがっているのだとは、容易に想像できていたさ」
「じゃあどうして」
俺は紅茶で口を湿らせ、言葉を続ける。
「一通も返事をくれなかったんだ?」
彼は黙っている。
「心配していたんだぞ」
「返事しようとしたさ!でも、投函できなかった。あんたが胸を高鳴らせてボクの手紙を待ってくれているって想像したら、とてもロボットなんかに頼ってる場合じゃないって、思ったのだよ」
(終)