いぐあな

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300字小説

とある春の日

 朝の空の下、淡いピンクの吹き溜まりがところどころに出来た道を歩き出す。全く知らない街。ホテルで何度も確認した地図を見ながら地下鉄に乗る。一つ二つ、駅を通過する度に降りる人で空いてきた車内に似たようなキャリーケースを持った人が現れる。SNSのTLにも会場に向かう呟きが増えてくる。
 最寄りの駅で降りる。可愛らしい女性が同じ方向に歩いていく。あの人がフォロワーのナオさんだろうか。あっちの男の人はトオルさんかもしれない。
 会場の建物が見えてくる。このキャリーの重みが帰りにはどれだけ軽くなってくれるのかは解らないが、宣伝の呟きについた『いいね』を半分くらいは信じて。
 胸を高鳴らせながら私は入場受付に向かった。

お題「胸が高鳴る」

3/19/2024, 12:18:37 PM