夢にまで見た瞬間。
ついに願いが叶うと、確信めいた気持ちが膨らむ。
いつもより鼓動が早い。頭の奥が熱くなる。
恋にも似たこの感覚。
この瞬間、私の中途半端に長い人生は正にこの瞬間の為にあった。
耐えて、泣いて、呻いて、耐えて耐えて耐えて耐えて、いつか来るこの日の為に学んで、唇を噛んで練習して、何度も何度も繰り返した。
ようやく、ようやく願いが叶う。
絶対に離さないように何重にもテープを巻いて。
絶対に邪魔されないようにあらゆる場所に鍵をかけて。
さぁ、いよいよ。
あとは寝ている彼にめがけて、思いっきり両手を振り上げるだけ。
END
「胸が高鳴る」
3/19/2024, 12:21:10 PM